「リネージュII 2011感謝祭」において、エヌ・シー・ジャパンのプロダクトマネージャー・五條隆将氏にインタビューを実施。イベント内で公開されたアップデート情報や2012年の展望など、「リネージュII」についてさまざまなお話を伺った。
インタビュー
――まず、今回のイベントで発表されたアップデート情報について聞きたいと思います。日本での実装はいつごろになりそうですか。
五條氏:夏までには皆さんのところにお届けできる内容が含まれていると考えてもらっていいです。特に水着などはシーズン性のものですので、適切な時期に出したいですね。
――GoDではかなり初心者が育ちやすいアップデートになっていましたが、今後もそのようになるのでしょうか。
五條氏:初心者が育ちやすいだけでなく、攻城戦などでも広いレベル帯で活躍できる場面を増やしたいと考えています。グレシア大陸4番目の種「業火の種」を紹介させていただきましたが、あそこは様々なスタイルで狩りができます。パーティーでもソロでも遊べるエリアがあるので、多くの方が楽しめるようになるでしょう。
――最近のプレイヤーの傾向に合わせた感じでしょうか。一時期ソロプレイヤーがかなり多い感じでしたが。
五條氏:レベル差によってパーティープレイ時に獲得する経験値が少なくなるのですが、その影響でソロでプレイしたほうが効率がいい場面がありました。しかし、覚醒後に訪れる狩場はパーティー向けのものが多いので、今はパーティープレイのほうが多いですね。一時期に比べるとパーティーのマッチングの数は、かなり増えています。しかし、いろんなニーズに応えたい気持ちはありますので、今後もソロプレイは意識していきます。
――ヘアスタイルや武器、水着などの発表もありました。やっぱり個性を出したいという人が多いのでしょうか。
五條氏:多いですね。能力値を考慮していくと、みんな決まった装備や見た目になってしまうことがあります。レベルが上がっていくと、大好きだったあの防具を脱いで、こっちに着替えなきゃいけないとか。そういったときに、前に使っていた防具でも問題なくプレイできる仕組みはほしいと考えています。
――そういえば、水着動画では観客がかなり沸いていましたね。
五條氏:水着実装のご要望は昔からいただいておりました。開発チームに日本のニーズを伝える中で、ようやく実現できるようになりました。ほかのゲームにもある要素なので、今更いばって紹介するものではないのですが。「リネージュII」では、これをきっかけに、さらにもっと新しい要素を出していければと思っています。
――それでは今回のイベントを振り返ってみての感想をお願いします。
五條氏:ゲーム内のイベントであればFSのみんなも慣れているんですけど、生放送もありますから、如何にして視聴者を飽きさせず、スムーズな展開ができるかが企画していて難しかったです。流れが完全に決まった内容では先読みできて面白くないので、プレイヤーの動きが全てを握るPvP系のイベントをしたのですが、そうすると今度は僕らが先読みできなくなっちゃうんですね。そういう意味では、ほぼプログラム通りのタイムスケジュールで進行できたのが、一番良かったと思っています。
――PvPのチームバトルはハプニング続出という感じ、ライブ感がありました。
五條氏:そうなんですよね。放送を見て参加するお客様もいらっしゃるので、さらに読めない状況になるのですが、それがまた面白いと思うんです。
――今回のイベントではFSの座談会が特に印象に残ったんですが、これを実施するに至った経緯をお聞かせ下さい。
五條氏:今回は、「エヌ・シー・ジャパン10周年」という冠でやらせて頂いているので、やはり過去を振り返るテーマを入れる必要があると思いました。しかし、これまでのアップデートの歴史を振り返るだけじゃシナリオが読めて面白くない。じゃあ、お客様に興味を持ってもらえる話題って何だろうと考えたとき、運営の裏話ならば楽しんで頂けるのではないかと考えました。社内で面白いネタを募集したところたくさん集まったのですが、これはさすがに言えないだろうとか、これを言ったら当事者が特定されるから傷つくんじゃないかとか、ハタから見たら面白くても言うべきではないことが結構たくさんあって、どうしても無難なネタに落ち着いてしまうんです。なので、僕のほうで持っている秘蔵の写真をちょっと入れたりして。
――あれは事前に本人チェックとかは。
五條氏:なしですよ。たまに「見て見て~」という感じで社内に面白メールが飛ぶことがあるんですけど、そういうのが全部保存してあって、いつか使ってやろうと。特に最後の有吉(FSクロロク)の写真なんてのは、「これは出さなきゃいけない!」と思っていましたからね(笑)。
――あれは公開処刑でしたね。
五條氏:そうですね。でも、それぐらい体張ったほうが面白いと思うので。
――これからは社内で五條さんには変なメールを送れないですね。
五條氏:怖がる人は出てくるかもしれないですね。でも転送してもらうから(笑)。仕返しが怖いですけどね。
――不正行為の話もありましたよね。この業界では話題にしづらいと思うので意外でした。
五條氏:デリケートなネタですからね。ニコニコ生放送(以下「ニコ生」)のコメントが荒れることも懸念されました。しかし、怖がっていても面白いものはできないので協議を重ね、スレスレのラインを攻めてみました。
――ボツになったネタにはどんなものがあったんですか。
五條氏:「うずくまる老人」とか…幽霊ネタなんですけどね。前の社屋で目撃例があって。面白いけれどコンセプトと違うのでボツにしました。あと、お客様の名前が出せないので断念したネタでは「ずっと村でシャウトをしている人の話」とか。誰の事か分かっちゃうネタは避けました。
――GoD実装後、初めてのオフラインイベントだったわけですが、それ以前のイベントとのお客様の反応の違いはありましたか?
五條氏:今回はGoDアップデートによって入れなくなった「使徒のネクロポリス」を「ネクカタの戦い」で使いました。今は完全に封鎖されているダンジョンですが、データは残っていますので活用しました。懐かしく思っていただいた部分はあったかと思います。
――今後もそういったアトラクションで、廃止になったダンジョンが出てきたら長くプレイしている人はうれしいでしょうね。
五條氏:いろいろ活用していきたいと考えています。あと、イベントの運用のほうに関して言えば、覚醒をしたことでクラスの数が減りましたから、準備は楽になりました。
――ユーザーさんとはどんなお話をされましたか。
五條氏:実施したイベントに対する改善案や、職業バランスの面でご意見をくださるお客様がいらっしゃいました。ご意見をくださるお客様は、リネージュIIをもっと良くしたいという思いをぶつけてくださるので、とても貴重ですね。
――そういった直接の触れ合いはオフならではですね。
五條氏:そうですね。もっともっと頑張ろうという原動力になります。
――ちなみに、今日のイベントで反省すべき部分は?
五條氏:クイズが難しすぎました…。反省しています。
――ニコ生の投票で一番数が少ないのが正解って、けっこうありましたよね。それで盛り上がった部分もあったと思うのですが。
五條氏:こちらも引っ掛けようと思って作っている部分もあるので、ある程度は仕方ないのでしょうが、いくらなんでも難しすぎました。もっとバランスを考えないと楽しめないですよね。
――この1年の活動を振り返ってみて印象に残っていることを聞かせてもらえますか。
五條氏:これは誰に聞いても同じことを言うかもしれませんが、やはり東日本大震災です。ちょうどその時期は、バレンタインデー、ホワイトデーの締めくくりとして、結婚式のイベントを実施する予定だったのですが、急遽延期することになってしまいました。ゲーム内でカップルの方を募集したので、時期を変更して実施しました。また、「リネージュII」が「Goddess of Destruction」アップデートに向かうにあたり、世界の破滅や、死の世界を連想する暗いイメージのストーリーへと進まざるをえない部分がありまして、様々な表現にかなり配慮しました。他には、2月にリアルのユーザーさんの結婚式に招待して頂いて実際に伺ったのですが、最近そのカップルに赤ちゃんが誕生しました。
――その子がいつかプレイしてくれるようになるかもしれませんね。
五條氏:それまでサービスが続けられるよう頑張りますよ。
――では、反省すべき部分は何でしょう。
―五條氏:イベントがワンパターンになってきているかなと感じている部分があります。コミュニティを盛り上げるイベントも最近はちょっと減ってきていましたので、力を入れていきたいです。
あと、PvPコンテンツを盛り上げる施策が不足していたと感じています。陰湿で暗いPvPではなく、健全に楽しめるスポーツライクなPvPをもっと盛んにしていきたいです。お客様の中には「僕はPvPしないんだ」と決めている方もいらっしゃるのですが、そういった方の意識を変えられたらいいですね。
――PvPは本当に好き嫌いが分かれますよね。
五條氏:後々しこりが残ることを恐れたり、仲のいい相手との関係が崩れることを恐れたりする部分で避けるお客様がいらっしゃいます。その辺は「ゲームなんだから割り切って楽しみましょう」という流れができれば良いのですが。
――では今日やったPvPのイベントなどはこれからも…。
―五條氏:やります。まだ決定には至っていないのですが、社内からの小規模な生放送を通じて、PvPイベントを実施したいと思っています。ゲームの中にもコロシアムなどPvPイベントに向いたエリアがたくさんありますので、生放送を通じて「リネージュII」に触れたことの無い方々に、熱いゲームだということを伝えていきたいです。
イベント会場に来て、イベント用に準備されたキャラクターだったら遠慮なくPvPできていますよね。PvPをすること自体には抵抗はなくても、自分のキャラクターでは抵抗があるというお客様もいらっしゃると思うんですよね。
――そういったホントはやりたいと思っている人を引き込みたいと。
五條氏:そうですね。「みんながやるなら、自分もやろうかな」という感じで、自然に参加していけるように誘導したいと考えています。
――やっぱりライブサーバーを絡めた盛り上がりはちょっと違いますよね。ライブ感といいますか、会場と放送とすべて繋がっているという。
五條氏:予測がつかない部分がたくさんありますから、見ていても面白いと思います。ステージ裏には映像や音響、放送に関わる外部の運営スタッフも大勢いたのですが、今回のPvPアトラクションでは、そういったスタッフの方々も思わず見いっていたのが印象的でしたね。
――あと、ニコ生のコメントが減りますよね。みんな見入っちゃって。
五條氏:そうですね。ああいうシーンをもっと見てもらいたいし、体験してもらいたいですね。
――それでは2012年に向けての展望をお聞かせ下さい。
五條氏:お客様が不満に感じているものを、どれだけ解消していけるか。また、僕たちが今までにやってきたことが本当に正しかったのか、と振り返る必要があると思っています。例えばGoDアップデートの際に血盟戦に関する緩和措置を入れはしましたが、本当にそれは正しかったのか、とかですね。
――五條さんというと持ちキャラのウザンカでも有名ですが、こちらは2012年どんな展開を考えておられますか。
五條氏:ネタバレになるからあまり言いたくないんですけど。やっぱりモンスターですからね、もっと冒険者と戦う場面があってもいいと思っていますので、強くなりたいです。レアなアイテムもドロップしたいですし。
――間違った方向に強くなりそうですが(笑)
五條氏:そうですね。ウザンカらしいオチまで企画して開発を依頼しています。ただ、どうしてもね、後回しにされるんですよ。ですから実現時期は怪しいところがありますが、ウザンカは2012年も活躍しますので注目して下さい。
――ファンサポート(FS)の方向性とかはどうお考えですか?
五條氏:「アイオン」のMCタナベは舞台慣れしていますが、私を含めて「リネージュII」のFSはまだまだ経験不足なところがありますので、舞台や放送を意識したトークができるように力をつけたいと考えています。ゲーム内では引き続き、お客様に親しまれるFSであるよう活動していきたいです。
――オフのイベントで、今後何かやっていきたいというのはありますか。
五條氏:今回のカンファレンスで発表させて頂いた「光の城」、「闇の城」が実装されたら、攻城戦イベントをやりたいです。会場でチームを分けるだけでなく、ライブサーバーのチームと対戦するとか、日本全国を東西に分けての対戦というのも面白いと思います。
――東西戦は面白そうですね。
五條氏:面白いと思いますよ。地域ごとの連帯感や対抗心も生まれるでしょうし。
――会場に足を運べないユーザーさんが参加できるっていうのもいいですね。
五條氏:ひとりでも多くの人に楽しんでいただけるよう、企画していきたいです。
――それでは最後にファンの方へメッセージをお願いします
五條氏:12月12日を「L2day」と呼んでいるのですが、2012年は「L2year」としてこれまで以上にお客様の声を開発に届けてまいります。一緒に8周年を迎えましょう。
――そのためにもお客様には、どんどん意見を投げてきて欲しいと
五條氏:もちろんです。
――ありがとうございました。
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