ガマニアデジタルエンターテインメントと日本一ソフトウェアがタッグを組んでお贈りする「Webファントム・ブレイブ」。その開発裏話などを対談形式で聞くことができたので紹介しよう。
新規キャラクターも公開され、オープンβテストも2012年2月15日に決定となった「Webファントム・ブレイブ」。今回監修を担当した日本一ソフトウェアと開発・運営を担当するガマニアデジタルエンターテインメントの2社対談が実現したのだ。
インタビュールームはスフィアをイメージした色とりどりのバランスボールが置かれ、なぜかプリニーのぬいぐるみとみかんがディスプレイ(この謎はインタビュー後半で判明)。そして、日本一ソフトウェア側はGamaniaキャップ、ガマニア側はプリニーキャップをかぶって(これも実はコラボレーションのネタでした)お話をしていただいたので一部始終を公開しよう。
参加者
株式会社日本一ソフトウェア 企画部「小酒井 省吾」氏
株式会社日本一ソフトウェア 企画部「杉山 智浩」氏
株式会社ガマニアデジタルエンターテインメント「平岡 功臣」氏
株式会社ガマニアデジタルエンターテインメント「芳賀 雄一郎」氏
ガマニア×日本一ソフトウェア対談
――PS2版発売から約8年が経過した今、なぜ「ファントム・ブレイブ」を題材にした経緯を教えて下さい。
ガマニア平岡氏:もともと、ガマニアデジタルエンターテインメント代表取締役社長 COO浅井と、日本一ソフトウェア代表取締役社長の新川氏の間で交流がありまして、「何か楽しいことやりたい」とアイデアを温めていたみたいです。そして、「ファントムブレイブ」を題材にしたものを2010年の東京ゲームショウで発表に至りました。正直、なぜ「ファントム・ブレイブ」を採用したのかは2人の間でのことなので詳細は不明なんです。推測ですが、PSP「ファントム・ブレイブ PORTABLE」やPS2「ファントム・ブレイブ 2周目はじめました。」などの発売の時期も関係していたのかもしれません。
日本一小酒井氏:日本一ソフトウェアは、今までWebブラウザゲームについてのノウハウがほとんどなく、どれが最適なタイトルになるかを判断することが難しかったんです。「ディスガイア」シリーズや「ファントムキングダム」などの中で、「ファントムブレイブ」がストーリーや青い海や空などビジュアルが一番雰囲気に合うのではないかと思い、決定しました。もしかしたら新川と浅井氏の間で「ディスガイア」もノミネートされたかもしれませんね。
――その話を聞かされたときは開発側はどうでしたか?
ガマニア平岡氏:弊社としては日本一ソフトウェアさんの世界観がきちんとしたタイトルを使っていいということだったので「やった!」というのが最初の正直な気持ちです。反面、「ファントム・ブレイブ」自体作りこまれて、ファンの多いタイトルだったので、満足してもらうものを作らなければという重圧もありましたね。
――日本一ソフトウェアタイトルはやり込み要素がハンパではないですからね?
日本一小酒井氏:おかげさまでコアなファンが応援してくださっているので、試行錯誤して「Webファントム・ブレイブ」にもいろいろ入れ込むことができました。
――「Webファントム・ブレイブ」開発の話がきたときの当時の社内の反応はどうでしたか?
ガマニア芳賀氏:実際「どうやって開発していくんだろう?」という反応でした。ゲーム全体のイメージは最初から明かされていたわけではなく、「どのようなゲーム」か大枠が分かったのもαテストの時点だったので、大半の社員には秘密の部分も多かったですね。
――2010年に台湾で開催したガマニアゲームショウで公開されていた「Webファントムブレイブ」動画の現地の反応はどうでしたか?
ガマニア平岡氏:プロモーション動画を会場で見た韓国の開発スタッフは「ぜひ韓国でサービスをしたい!」と、ありがたいオファーをもらっています。
――登場人物や世界観を踏襲していますが、ストーリーの繋がりはあるのでしょうか?
日本一杉山氏:「Webファントム・ブレイブ」の設定は300年後の物語となっているんですが、コンシューマタイトルとの関係性を持たせるために、未回収のエピソードを弊社の新川が直々にシナリオを起こしています。コアなファンも楽しめるように工夫しています。また、アップデートで新しいエピソードなども追加していきたいですね。
――システム面ではコンシューマ版から踏襲した部分はありますか?また、「Webファントム・ブレイブ」ならではの特徴を教えて下さい。
ガマニア平岡氏:このお話を頂いたときに、「世界観を広げる」「やりたい放題」といった要素をしっかり再現したいと思いました。世界観を広げつつも「コンファイン(憑依)」などの特徴的なシステムも組み込みました。また、「ファントム・ブレイブ」を知らないプレイヤーでも遊べるようにボタン1つで操作できるところも実装しています。また、合成についても「ファントム×ファントム」や「ファントム×アイテム」など、非常に激しく楽しめるような要素も入れています。
――開発時に苦労した点を教えて下さい。
ガマニア芳賀氏:やはりバランスですね。開発のある程度の段階ごとに日本一ソフトウェアさんにチェックを入れていただいたことと、αテストの段階からガマニアのテストサーバーに入っていただいて、定期的に気になったところをレポートでもらっていました。それでも敵のバランシングについてなどは最後まで調整していました。
――実際に「Webファントム・ブレイブ」をプレイしてどうでした?
日本一小酒井氏:弊社の社内では、ブラウザゲームを遊んでいる人間はあまり多くなかったのですが、あくまで1プレイヤーとして楽しみました。また、日本一ソフトウェアのタイトルはドット絵の緻密な書き込みや動きが特徴なので、そこがしっかり再現されていたことに手応えを感じました。
ガマニア芳賀氏:αテストの段階で残っていた「オンラインゲームだったら当たり前」のような導線なども日本一ソフトウェアさんからのフィードバックで改善することができました。
――日本一ソフトウェアからの意見や要望はありましたか?
ガマニア平岡氏:「負けた時にアドバイスが欲しい」という要望を初期にいただいたんですが、現バージョンでは実装しています。また、チュートリアルについて、初期はかなり細かく作り込んでいたんですが、どうしても長いという意見をもらいましたので、ブラッシュアップして改善しています。
――デバッグテストプレイヤーの意見はどんなものが上がりましたか?
ガマニア芳賀氏:2回目のデバッグテストでは、1回目にアンケートで上げた要望が実装されていることを喜んで頂きましたね。アンケートは開発側でしっかりと調整してゲームに取り込みました。もちろん、マローネやアッシュを使いたい!というような意見については日本一ソフトウェアさんに相談しました。
――ブラウザゲームにノウハウが少ない日本一ソフトウェアが開発に携わったときの不安などはありましたか?
日本一杉山氏:不安というより「どんなゲームに仕上がるのか?」と疑問に思っていたので、テスト版を見て「こういうゲームになるんだ」という驚きが大きかったですね。
――逆に大型タイトルをブラウザゲームにするという不安などはありましたか?
ガマニア平岡氏:もちろんメチャメチャ不安はありました(笑)。ターゲット層が明らかに違いますし、「ファントム・ブレイブ」のファンが想像するのは、「Webファントム・ブレイブ」のタイプではなく、おそらくマローネやアッシュを実際にコントロールして、ファントムを召喚して…ちょっとだけオンライン対応、というゲームだと思いますが、それはガマニアが作らなくてもいいのではないかと。ただし、村ゲーではない、「ファントム・ブレイブ」の良さを生かした非同期のゲームを作りたいというコンセプトになりました。
――他の日本一ソフトウェアタイトルからのゲストキャラクターは登場しますか?
日本一小酒井氏:今後新タイトルも発売しますので、ユーザーさんなどさまざまなところから要望や意見を聞きながら、ぜひ面白いことをしていきたいですね。
ガマニア芳賀氏:本作でタッグを組むときに、新川氏からも世界観を300年後に設定したことも含め、ガマニア側からどんどん提案をしてくれと言われています。現在もいろいろ企画を考えています。
――コンシューマとオンラインの開発についてなにか感じたことはありますか?
日本一杉山氏:ガマニアさんの開発を見させて頂くと、オンラインならではのプレイヤーからの意見・要望を取り入れた調整など、コンシューマ開発現場ではありえないスピード感に驚きました。
――ターゲットはシリーズのファンと新規のユーザー、どちらを中心に考えていますか?
ガマニア平岡氏:ゲームの設計としては「かわいいキャラクター」を気に入って遊んでくれるライトユーザーが、サービス開始後、今後多く入ってくると思います。その層について、クリック1つで簡単にゲームを楽しむことができるように調整しています。また、「ファントム・ブレイブ」が大好きなコアユーザーに向けても、やり込み要素となる内部パラメータを解析して楽しむような作りになっています。ライトユーザーがちょっとしたことで他のプレイヤーと関わりを持ち、そこから世界が広がるような作りを心がけました。
――新規のユーザーへのセールスポイントなどを教えて下さい。
ガマニア芳賀氏:ゲームを始めるとチュートリアルで「ランダムボトルメール」を楽しむことができます。これは原作でのボトルメールの設定を取り入れました。クエストなどで「他のプレイヤーにメールを出そう」という課題があるんですが、それって初心者にとってはちょっと怖い行為ですよね。それをランダムにすることで緩和できるようにしました。
――日本一ソフトウェアは開発に携わったのか、どういった点を担当したのか教えて下さい。
日本一小酒井氏:弊社では素材を提供したり、αテストなどで実際のゲームを触ってフィードバックするといったことがメインですね。社内ではコンシューマタイトルを主にプレイしている社員からの意見を提出しました。
――日本一ソフトウェア社内でオンラインゲームをやっている人はいますか?
日本一杉山氏:特にブラウザゲームをやっている人は少ないですね。
――今流行しているソーシャルゲームなども?
日本一小酒井氏:ほとんどいないと思いますね。
日本一杉山氏:コンシューマタイトルを開発している弊社にとっては、「商売がたき」に近い存在でもありますからね。だからこそ、より面白い化学変化を期待できると思います。
――今後タブレットやスマートフォンに対応する開発をする予定はありますか?
ガマニア平岡氏:「Webファントム・ブレイブ」はFlash開発ではないのでもちろんスペックによりますが、ブラウザで動作します。
――「Webファントム・ブレイブ」からの新キャラクターはいますか?
ガマニア芳賀氏:2月8日にティザーサイトにてシルエットから公開した「ティール」「レーニ」そして「プリニア」になります。監修はもちろん日本一ソフトウェアさんにお願いしました。
――新キャラクター作成の経緯を教えて下さい。
ガマニア芳賀氏:提案はガマニアからです。世界観の設定が300年後となっており、プレイヤーがどのように思い入れをできるか、というコンセプトで作りました。
――正式サービス時には新キャラクターは実装されますか?
ガマニア平岡氏:この新キャラクターはコンシューマタイトルのパッケージのような役割を持っています。このキャラクターを見てゲーム内をイメージしてもらうことが目的なので、ゲーム内でユニットとしては登場しません。もちろん意見・要望が大きければユニット採用するかもしれませんね。αテストでのアンケートではマローネやアッシュを実装して欲しいといった声は多かったです。
――新キャラクターについて教えて下さい。
ガマニア芳賀氏:こちらは新規で作り起こしたデザインを日本一ソフトウェアさんに監修して頂きましたが、かなりメスが入りました(笑)。
日本一杉山氏:正直言いますと「ちょっと(特徴が)弱い」という意見がありました。弊社の新川の頭の中には「ファントムブレイブ」において確固たる「カタチ」がありまして、それをさらに発展させていきたいという思いがあります。それをガマニアさんにブラッシュアップしてもらって、このような魅力的なキャラクターになりました。
――課金アイテムはどういったものが用意される予定ですか?
ガマニア芳賀氏:基本的に冒険が便利なものがラインナップされます。ファントムや武器が入手できる「ガチャ」も用意しています。もちろん使わなければ進行できないといったことにはなりません。
――DLC配信などの課金モデルについてどう思っていますか?
日本一小酒井氏:「ディスガイア4」などで追加配信などをしていますが、さまざまなご意見をいただいています。まずはパッケージを購入するだけで満足できるようなゲームを作っていきたいですね。そしてさらに楽しみたい人はDLCを購入して遊んで欲しいですね。
――装備・スキルは正式サービス時にどれくらいの数が実装されますか?
ガマニア平岡氏:「Webファントム・ブレイブ」は、日本一ソフトウェアさんから頂いたデータベースを使用しているので、使える・使えないに関わらずスキルは450種くらい、武器は160種くらいあります。
――今後のアップデートではどのようなコンテンツを実装しますか?
ガマニア平岡氏:スキルや武器を集めていくだけでもかなりの時間がかかると思います。ファントムや称号や図鑑のコンプリートなど、すべてを一気に追加はしないですね。初期の段階でかなりやり込めると思います。
――オンラインならではの遊び方を教えて下さい。
ガマニア芳賀氏:「ランダムボトルメール」を出して他のプレイヤーと「島トモ」になると、ファントムを借りて依頼に出かけることができます。国がレンタルしている価格より安く召喚できるのでお得です。また、最初はコミュニケーションもなるべく最低限で楽しめるように作っています。
――コアプレイヤーの遊び方はどう変わりますか?
ガマニア平岡氏:戦闘ログから「どういう風に戦い、なんで負けたのか」などを分析したり、ファントムごとに特性があるので、それを生かして育てたり、スキルを覚えさせたり、などの要素を楽しんでもらえれば嬉しいです。アイテム生成に関しても、素材の組み合わせで数千通りくらい存在します。まさに終わりがないと思います。
――日本一ソフトウェア社内でもやり込みプレイヤーはいますか?
日本一杉山氏:テスト段階でやり込んでいる人がどれくらいいるかわかりませんが、実は2回目のデバッグテストの際に、社内でガマニアさんからもらったアカウントが足らなくなり、最終的には自分のアカウントを貸してあげました。ブラッシュアップするたびに面白くなっていくのを実感しました。
――正式サービスなど、今後の予定を教えて下さい。
ガマニア芳賀氏:現在公開中のティザーサイトで新キャラクターが公開になりました。オープンβテストは2月15日(水)15時から開始します。その後、2月中には正式サービスをスタートしたいと思っています。
――2社でタッグを組んでオフラインイベントなどは予定していますか?
ガマニア芳賀氏:ガマニアは「ルーセントハート」、日本一ソフトウェアさんは秋葉原などでイベントを実施しているので、協力してなにか大きなことができたら良いな、とは思います
――開発を続けてきて気付いたことを教えて下さい。
ガマニア平岡氏:アンケートを取ったときに、「自分でキャラクターを動かすタクティクスシミュレーションゲーム」を想像していたといった意見が多いと思っていたんですが、意外とブラウザ型の「ながらゲーム」を受け入れていただいて、世界観を大事に開発するとファンはついてきてくれると実感しました。もちろん「イヴォワールタイムズ」など、ファンがニヤリとする要素もふんだんに仕込んであります。
――ボイスやBGMは実装されますか?
ガマニア平岡氏:本作を開発するときに、BGMを流すということはガマニアから提案していまして、しっかりと盛り込んでいます。この先ストーリー展開に合わせて曲調が変わるかもしれませんね。ボイスに関しては今のところ実装する予定はありません。
――企画段階のアイデアなどはありますか?
ガマニア芳賀氏:友達と協力して依頼に一緒に挑むバトルや、サプライズイベントを企画しています。また、オリジナルのファントム「プリニア」を開発しました。この「プリニア」は日本一ソフトウェアの人気キャラクター「プリニー」とガマニアのロゴにもある「オレンジ」をバッグにデザインしたものです。入手の仕方はまだ秘密です!
――カバンはまさか武器ですか?
ガマニア芳賀氏:カバンです(笑)。
――このインタビュールームにあるプリニーとオレンジはそういう…。
ガマニア芳賀氏:そうです!仕掛けがあったんですよ(笑)。
――日本一ソフトウェアさんの新作のアピールをどうぞ!
日本一小酒井氏:いいんですか!?2012年3月15日にPS3「迷宮塔路レガシスタ」が発売となります。宜しくお願い致します!
――ありがとうございました。
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