オンラインゲーム実況アナウンサー・yukishiroさんによる連載コラム「yukishiroの熟れたてFPS」。第2回では、先日3月31日に行われ、yukishiroさんが実況を務めた「クロスファイア」のオフライン大会について、yukishiroさんがプレイヤー目線で振り返ります。
2012年3月31日、「クロスファイア」で、初のチャンピオン制度を導入した大会が行われました。この大会では、「CrossFire CHAMPIONSHIP 2012 Season1」オンライン予選を勝ち上がった4クランが、秋葉原に集結し、勝敗を競い合いました。今回は、この大会を振り返ってみたいと思います。
クラン紹介
まずは、決勝トーナメントに進出した4クランを紹介します。
Aブロック代表 Rampage
オフライン大会初出場。「Rampage」という名前の通り、強気な戦い方や立ち回りを好んだプレイヤーが集まっています。
昨年のCFTL2011 Season2の頃から活動していて、期間は長くないものの、メンバーを固定して活動を続けてきた事もあり、お互いの連携がしっかりと取れるチームとなっています。その実力はオンライン予選にもしっかりと反映されていて、安定した試合運びでオフライン決勝トーナメントまで駆け上がってきました。
Bブロック代表 HollowMellow
昨年のCFTL2011 Season2では4位という結果を収めているチームです。メンバーの入れ替わりはあったものの、「HollowMellow」というクラン自体は一年以上続いており、メンバー同士、よく息が合っていました。
投擲物を多用する戦術が得意で、予選では実力を見せ付けるような試合展開が続き、難なく決勝トーナメントに駒を進めました。特に注目すべきは、昨年、プロチームとして活動した経歴を持つ「Vault」に在籍していた「Ayatsuji」選手が「HollowMellow」に移籍したことです。「Vault」時代もHS(ヘッドショット)を得意とするAIMerで、今大会の注目プレイヤーの一人です。
Cブロック代表 Arufeel
オフライン大会初出場。今回の決勝トーナメントで最も平均年齢が低く、若手揃いのチームです。
そんな彼らでもプレイ時間なら周りに負けないほどで、個人技は他のクランに引けを取りません。時間を使った慎重な作戦から、流れに身を任せた素早い連携まで、広い範囲の作戦を使いけ、その力は予選でも発揮されていました。
オフライン進出を決める予選のブロック決勝戦では、CyAC主催の大会「Cooler Master CrossFire Competition」を始め、ユーザー主催大会でも好成績を残した「SPEC-S」を接戦の上に見事下し、決勝トーナメントに駒を進めました。
Dブロック代表 Vault
「クロスファイア」において、誰もが知ってるであろう日本トップチーム「Vault」。世界大会出場経験のあるプレイヤーが揃い、個人技は勿論、チームプレイもトップクラスです。
今年からメンバーが変わり、昨年「WCG2011」に出場したクラン「Mistral」から、過去「Vault」に在籍していた「kasumi」選手が復帰、「Counter-Strike1.6」で世界大会出場経験のある「barusa」選手が加入しました。
指揮官を「barusa」選手に変えて、これまで個人技重視の「Vault」から、細かい連携を徹底した、作戦重視のプレイスタイルに変更。短期間ながらも、丁寧なチームワークを作り上げ、予選を難なく勝ち上がってきました。
というわけで、以上4クランが秋葉原に集結しました。
今回の大会のルールですが、昨年行われた世界大会「WCG2011」日本予選と同様のルールで、世界大会ルール基準の武器(WCG-M4A1等の専用武器)を使う事が出来ます。
通常の武器と比べ、連射速度や威力が調整されており、扱い易い武器となっています。通常武器よりも敵を倒しやすくなっている為、撃ち合いのみで試合が決まる事が多く見受けられます。
さて、前置きはここまでにして、どのような試合が行われたのか、僕視点で解説していきます。
準決勝第一試合 Rampage vs HollowMellow
MAPはMexico。このMAPは、狭い通路が多い上に、ボムサイトは障害物が多いため、かなりGlobalRisk側が有利です。特に、主戦場となりやすいのがMAP中央に位置するセンターの長い通路で、AもBも近い事により、両者センターを取ることが勝敗を分ける鍵となります。
前半戦は「Rampage」がBlackList、「HollowMellow」がGrobalRiskでスタートしました。
GrobalRisk側が詰めて来る事を警戒しながら体制を整え、フラッシュを起点にセンターを取りに行こうとした瞬間、Aサイトでセンターのカバーが取れる位置に待ち構えていた「Ayatsuji」選手がスモークの中から飛び出し、得意のAIMINGで「Rampage」を一瞬で3人倒す展開に。一度出来た人数差が埋まる事は無く、1ラウンドは「HollowMellow」が取得。
続く2ラウンド、「Rampage」が、水路を詰めようとした「HollowMellow」の「Ayatsuji」選手を倒し、人数差を作った所で一気にAサイトに突入します。C4を設置し、有利な状況を作り、最後まで確実に敵を倒しきって「Rampage」がラウンドを取り返しました。
3ラウンド目以降も「Rampage」は、フラッシュを起点とした作戦を駆使しますが、「HollowMellow」は「Ayatsuji」選手を中心に、ラッシュ止めを徹底。
「Rampage」は、センターを取ることを重点的に抑えて連携を取っていますが、対する「HollowMellow」は、センターラッシュを抑える配置を基本としていた為、「Rampage」は思うようにラウンドを取ることが出来ず、続くラウンド全て「HollowMellow」が取得。前半戦、1-5というラウンド取得数で「HollowMellow」が優勢となりました。
後半戦は、攻守を交代し、「HollowMellow」のBlackListでスタート。開幕後の様子見から「HollowMellow」は、水路の守備が少ないと察知し、まとまって水路からBサイトに攻め入りました。しかしながら、コンテナの隙間を上手く使った守り方で、「HollowMellow」が後半戦1ラウンドを取得しました。
2ラウンド、もう後が無い「Rampage」は、足音を消しつつ、「HollowMellow」が攻め入る前にセンターに奇襲をかけようとしますが、ここに立ち塞がった「HollowMellow」の「Ayatsuji」選手。「Rampage」が攻め込んで来る直前に素早く飛び出し、ここでも2人抜き。人数状況が有利になった「HollowMellow」。タイミングを逃さず、一気にAサイトに侵入し、C4を設置。有利な状況をキープしたままラウンドを取得し、「HollowMellow」が勝利。決勝に駒を進めました。
前半戦、「HollowMellow」の「Ayatsuji」選手が毎ラウンド敵を1人以上確実に倒すという活躍を見せていましが、実はこのゲーム、待ち構える側よりも後から飛び出した側のほうが0.2秒ほど敵を早く視認することが出来るのです。「Rampage」側はフラッシュを合図に攻めたつもりでしたが、逆に攻める合図を教えてしまうこととなり、そこにタイミング良く飛び出すた「Ayatsuji」選手の徹底した戦い方が光る結果となりました。
準決勝第二試合 Arufeel vs Vault
MAPはMexico。「Arufeel」側は初のオフライン出場にも関わらず、いきなり「Vault」を相手にすることに。試合前は両チームとも円陣を組んで気合を入れましたが、お互いに緊張の色は見えません。前半戦は「Arufeel」がBlackList側でスタートしました。
まず最初のラウンド。勢いをつけるためか、「Arufeel」はセンター側に2人、残りの3人は普段は不利で攻め辛いとされる水路を攻めていきました。上手く虚を突いたか、撃ち合いではイーブンだったものの、「Arufeel」が水路を上がった先の広場にC4を落としてしまい、一転、「Arufeel」に不利な状況に。人数状況2vs1まで持っていくものの、「Vault」の「kasumi」選手がC4の位置を考慮して待ち構えており、「Vault」が逆転しました。
2ラウンドも、「Arufeel」はセンターラッシュを仕掛けていくが、「Vault」の配置はセンターを十字の形でお互いカバーが取れる配置をしており、続けて「Vault」がラウンドを取得。続く3ラウンド目でも、開幕から「Arufeel」が水路ラッシュを仕掛けるものの、「Vault」のラッシュ対策の投擲物がヒットし、ラッシュを許さず「Vault」がラウンドを取得した。
流石の「Arufeel」も4ラウンドでは、ラッシュを選択できませんでした。その隙を逃さなかった「Vault」が、空いた部分からAIM勝負で強引に詰める作戦を取り、「Vault」がラウンド取得。5ラウンドでは「Arufeel」はセンター2人、水路3人と、1stラウンドの配置を取りましたが、「Vault」の詰め作戦に対応出来ず、前半戦0-5で「Vault」が優位に立ちました。
後半戦、「Vault」はAサイト脇の細道に4人、センターに「DahLIA」選手一人を残し、Aサイトに素早く侵入する作戦を取りました。この作戦に対して「Arufeel」は、最もスタンダードなA2、センター1、B2という配置を取りますが、ラッシュを許してしまいます。素早く後半戦の1stラウンドを取得した「Vault」が勝利し、決勝に駒を進めました。
前半戦の「Vault」は特別、相手の行動を制限するような配置は取らず、あくまでスタンダードに強い守備を終始徹底していた為、守備を丁寧に崩す作戦を用意出来なかった「Arufeel」は、ラウンドを取ることができませんでした。投擲物の使い方に関しても、「Vault」はセンターを防ぎ易くする為のスモークや、開幕のラッシュ対策のフラッシュ等、虚を突かれないように徹底して、可能な限り不利になる状況を避けていた事が前半戦の結果に繋がりました。最終的には、Mexicoの研究量で差がついてしまったのではないでしょうか。
決勝戦 HollowMellow vs Vault
MAPはBlackWidow。このMAPはMexicoと比べるとMAP全体が広く、構造上BlackList側が攻めやすいとされています。ボムサイトへの進入経路も多いため、5人で守り切る事が難しい上、逆側のボムサイトへ寄るにも時間が掛かってしまうからです。また、中距離から遠距離の撃ち合いが多くなるため、勝敗にAIMが影響しやすく、そのチームの地力が最も出やすいMAPといえるでしょう。
前半戦はBlackList側が「HollowMellow」、GrobalRisk側が「Vault」で行われました。
1ラウンド、準決勝で強力なAIMを魅せ付けた「HollowMellow」の作戦は、「Ayatsuji」選手をAサイト側で自由に動かせて、残りのメンバーを本隊としてBを攻める作戦を取りましたが、Aロングを「Vault」の「DahLIA」選手がタイミングを見て確認し、「Ayatsuji」選手を仕留めます。と、ここで本隊が居ない事が発覚。その後の報告により本隊を壊滅させ、「Vault」がラウンドを先取しました。
2ラウンド、「HollowMellow」は、「Ayatsuji」選手を陽動役として自由に動き周らせ、本隊は4人でボムサイトを攻めるという作戦を取り続ける。「Vault」の配置の弱点を的確に攻め続ける「Ayatsuji」選手の陽動に、「Vault」の守備が崩れていく展開が続き、「HollowMellow」が連続でラウンドを取得します。
続く3ラウンド、4ラウンドも、陽動作戦が続き、「HollowMellow」が1-3とリードを広げていき、5ラウンドも同様の作戦を続けていく「HollowMellow」ですが、ここでようやく「Vault」が対策を取ります。「HollowMellow」の「Ayatsuji」選手を倒してからボムサイトを取り返す動きを徹底し、ようやくラウンドを取り返しました。
「Vault」の陽動対策に対して、「HollowMellow」も布陣を変えながら対応していくシーソーゲームの展開が続き、前半戦は4-5と「HollowMellow」が1本リードで後半戦に折り返します。
後半戦の1ラウンド、「Vault」は、スナイパー「delave」選手を偵察役として置きつつ、残りの4人でBサイトを攻め入る作戦を実行しましたが、対する「HollowMellow」の「Qwake」選手が一人で素早く「Vault」の裏を取り、状況有利を作りますが、「Vault」の「kasumi」選手が瀕死の状態からの正確なヘッドショットで一気に人数差を引っくり返し逆転。1ラウンドは「Vault」が先取しました。
その後も、Bサイト攻めを中心として動き周る「Vault」に対して、個人技を中心に素早くMAPを動き周る「HollowMellow」。お互いギリギリの試合展開が進み、4ラウンド終了時のラウンド取得数は、7-8でHollowMellow」が一本リード。シーソーゲームの展開が続きます。
ここで試合展開が大きく変わりました。5ラウンド、「Vault」は今まで攻めなかったAロングにラッシュを仕掛け、「YamatoN」選手が3人抜きを見せました。勢いを重視した攻め方を展開し、流れを作ろうとした「Vault」が、4対1という圧倒的有利な状況を作りました。誰もが「Vault」がラウンドを取得したと確信したであろう瞬間、何とここで「HollowMellow」の「Qwake」選手、的確なAIMINGで「Vault」を一人ずつ倒していき、見事4人抜きで逆転!会場を沸かす見事なプレーで、「HollowMellow」がマッチポイントを迎えました。
6ラウンドとなり、追い詰められた「Vault」に対し、前ラウンドで勢いのついた「HollowMellow」は単独で詰め配置を取り、勝負を仕掛けます。倒し、倒し返されの展開が続き、人数状況2対2となった所で、「Vault」は足音を消してBサイトに攻め入りましたが、またもや「Qwake」選手。タイミングを見計らい、油断を逃さないAIMINGで「Vault」を殲滅。7-10で「HollowMellow」が見事勝利しました。
さて、今回の決勝戦、「Vault」と「HollowMellow」ですが、撃ち合いの実力差は拮抗していたものの、戦術面において全く異なっていました。
「Vault」の戦い方は、投擲物は勿論、必ずカバーをつけて動く事や、ボムサイト侵入後の配置等が徹底されていました。対して「HollowMellow」は、投擲物の連携よりも、AIMを前面に押し立てて相手の隙を突くといったスピーディな戦い方を取っていました。更に、カバーをつけずに1人で動き周るプレイヤーが多かったため、今回の「Vault」の連携を崩すキッカケとなっていました。
本来ならば、1人で動き周る事は、倒されてしまえば無駄死となり、ハイリスクな行為になるのですが、前述の飛び出し有利があるため、「Vault」に対しては相性の良い戦い方であったと言えるでしょう。ハイリスクな行為を何度も通し続けた「HollowMellow」。いつの間にか、それが「Vault」の戦い方を変えてしまうプレッシャーとなっていたのかもしれません。
こうして、CrossFire CHAMPIONSHIP 2012 season1は、「HollowMellow」がチャンピオンとなり、幕を閉じました。現在は既にseason2が進行中で、今後も定期的に大会が行われるとの事です。プレイヤーのみなさんは、腕を磨き、次回大会を勝ち上がって、是非チャンピオンを目指してほしいと思います。
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