スクウェア・エニックスは、PS3/PC用ソフト「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」の新たなアート、およびPS3版のスクリーンショットを公開した。今回、その素材で気になるポイントについて、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏と、リードUIアーティストの皆川裕史氏にインタビューを行った。
「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」(以下、「新生FFXIV」)は、2013年1月以降にPS3版とPC版の同時サービス開始が予定されているMMORPG。現在は、現行版「ファイナルファンタジーXIV」のプレイヤーを対象にPC版のαテスターが募集されており、その後はPS3版と並行してβテストが実施予定となっているなど、いよいよサービス開始に向けて本格的な動きが見えてきたところだ。
そしてついに、初となるPS3版のゲーム画面が公開となった。現行版のサービス開始当初からPS3版も発表されていたが、その画面が見られるということで、これまで以上に期待を寄せている人も多いと思う。今回の情報公開に合わせ、本作の開発を担当するコアメンバーのうち、吉田直樹氏と皆川裕史氏にインタビューを行うことができたので、その内容を新たに公開されたアートやPS3版のスクリーンショットと共にお伝えしていく。
――まずこのアートのキャラクター(右の写真)についてお聞かせください。
吉田氏:これは「ファイナルファンタジーIII」の某所で登場するアモンですね。といっても、プレイしたことがある人には分かってしまうと思いますので(笑)、言ってしまうとクリスタルタワーに登場します。アモンのキャラクターモデルも現在開発しているところですが、「新生FFXIV」ではクリスタルタワーも実装されますので、こういったキャラクターとのバトルも楽しんでいただけるようになっています。
――ほかのアートでは、各属性を司る召喚獣のほかにもオーディンがいますが、どういった形で登場させるかは決めているのでしょうか?
吉田氏:オーディンはこれまでの蛮神戦とは違った形で登場しますので、現行版をプレイしている人には驚いてもらえるんじゃないかなと思います。今回公開している召喚獣のアートは一部公開済みのものもありますが、これらは全て「新生FFXIV」ローンチのタイミング、もしくは直後のアップデートで実装される蛮神(召喚獣)になります。
今「FFXIV」をプレイされていない方は、アップデートなどの細かい情報は追っていない方も多いと思いますし、イフリートやリヴァイアサン、オーディンなどの召喚獣のアートを出すことで、有名な召喚獣が総登場することを知っていただきたかったというのがあります。
――続いてチョコボのアートですが、竜騎士や白魔道士、黒魔道士といったジョブイメージの装備をしていますが、ほかのデザインもあるのでしょうか?
吉田氏:「新生FFXIV」ではチョコボに乗るだけでなく、一緒に戦うことができるのですが、衣装は全てを装備させることができるわけではありません。チョコボはヒーラーやタンクといったように育てていく方針を決められ、例えばヒーラータイプに育てていったら白魔道士のような、魔法で攻撃するタイプなら黒魔道士のような装備が可能になるということです。なので見た目から「おっ、あいつ黒魔道士タイプのチョコボ使ってるな」ということがすぐに分かるようになっています。
――では育てた結果によって、着せかえられるものが変わるのでしょうか?
吉田氏:はい、そうなります。チョコボの装備はかなりこだわって作っていますので、このほかにも汎用タイプのものがありますし、今回お見せしていませんが、タンクタイプのチョコボが装備するものも用意しています。
――都市のようなアートはどういった場所なのでしょうか?
吉田氏:これは「新生FFXIV」で新しく追加されるダンジョンですね。レベル40~45ぐらいのプレイヤーに向けた、わりと高レベル帯のダンジョンです。「新生FFXIV」ではこのようなダンジョンを多数追加しています。
――ここはストーリー的に何か関係があるのでしょうか?
吉田氏:メインストーリーとは直接的に大きなかかわりはありませんが、このダンジョンに関するストーリーは、もちろん用意しています。クエストで「ここを調査してきてくれ」といった依頼を受け、徐々にダンジョンの謎というか、どういう場所なのかを明らかにしていくという感じです。
――ゲーム画面についてお伺いします。今後のテストのフィードバックで調整があると思いますが、今回公開されたスクリーンショットにあるUIがひとまずの完成形なのでしょうか?
吉田氏:今も開発を進めていて少しだけ仕様が変わっていたりしますし、ここはちょっと複雑すぎるからもう少し簡略化しようとか、そういった調整は続けていくと思いますが、見た目に関しては変わらないですね。
――現状でもゲームパッドでプレイしている人はいると思いますが、PS3版はコントローラを使うことになります。それを想定して気を使ったところはありますか?
皆川氏:まず、ボタンの並びそのものが特徴になっています。ゲームパッドとマウス+キーボードを比較したとき、ゲームパッドは操作のステップが多くて不利になっているため、それを短縮することを突き詰めて、現在のこの形に落ち着いています。
現行版をゲームパッドでプレイすると、バトル時に敵をターゲットした後にホットバー(スキルなどが割り振られたもの)へカーソルが遷移して、そこからコマンドを決定する流れになっています。ですが「新生FFXIV」では、PS3のコントローラでいう○×△□と方向キーの上下左右、計8つのボタンに対してあらかじめコマンドを割り当てることができるようになっており、これを「クロスホットバー」と呼んでいます。
画面下にあるクロスホットバーには、左側にL2、右側にR2と表示されています。実際の操作では、敵をターゲットしてからL2/R2のどちらかを押し込むと、L2なら左の8つが、R2なら右の8つが光り、光っている時に対応する十字キーもしくはボタンを押すと、そこに当てはめたアクションが発動するというのが基本となります。カーソルを目的のコマンドまで移動させなくてもダイレクトに指定できるので、コマンド選択の時間が短縮されます。
吉田氏:僕から皆川にオーダーしたのは、「コンソールゲームのように遊びたい。○×△□を押せば何か技が出るようにしたいという」内容でした。マウスとキーボードって、ウィンドウズ(PC)の操作そのものなんですよ。例えば、フォルダをターゲットして、ダブルクリックすると開くといったように、“選択して実行”するという流れですね。それがゲームパッドだと、ターゲットしてから選択までの時間が完全に不利ですし、なによりダイレクトになっていない。
一般的なRPGの場合、左スティックでキャラを動かし、右スティックで視点を動かしますよね。どの敵をターゲットするかも方向キーを使うのがオーソドックスですし、そこは変わらないと思うんです。なので、あとはシンプルに「□ボタンを押したら□に設定した技がでる」という風にしてほしかったので、今回のようにLR/R2を押してから、もう一度対応したボタンを押すだけで済むという発想になりました。
PC版と差を付けないようにするためには多数のコマンドをショートカットで振り分けができて、ダイレクトに使えるかが影響してくるのですが、今回のスクリーンショットでは、あえて8個ぐらいのアクションしか登録していない状態の画面を公開しています。いきなり16個のアクションが埋まった状態の画面を出すと、PS3版から入ろうと思っている方がビックリしてしまいますので。このクロスホットバーを見たら何となく「そういうことね」と分かってもらえるように、というのも結構こだわった点ですね。
皆川氏:それから、現行版ではバトルのアクションしか設定できませんが、それ以外にもエモートやアイテム、ユーザーさんが組んだマクロをそのままクロスホットバーに登録できるようになっています。なので、いろんな用途に使っていただけるかなと思います。
吉田氏:例えば装備画面を開くには、一般的なRPGの場合はメインコマンドを開いてそこから実行するというのが基本ですが、それをマクロに登録して設定しておけば、ワンキーで装備画面を開くこともできます。もちろん、慣れないうちはメインコマンドを使っていただいても問題ありません。
皆川氏:MMORPGは初めて触るけど、これまで日本のRPGは普通にプレイしてきた方というのは、まずメインコマンドから入っていくと思います。ですがゲームに慣れてきて、自分が良く使うものは手元に置いておきたいという人は、クロスホットバーに登録するという方法さえ覚えてしまえば、その先は自分の好きなようにUIをカスタマイズしてもらえるようになっています。
吉田氏:クロスホットバーの中心に「1」という数字がありますが、パレットは1つのクラスにつき8個まであります。
皆川氏:16枠のパレットが8個、合計で128個の枠に好きなアクションやアイテム、マクロを登録でき、それがクラス別にあるので、クラスチェンジをすればまた別のセットで好きなようにプレイできると思います。ヒーラーやタンクといった戦い方だけでなく、ギャザラーをやっている時は戦闘のアクションよりも、エモートをたくさん設定しておきたいとか、そういった使い方もできますね。
吉田氏:ほかにも、パレットの8番はどのクラスも全部共通にしておき、各種ウィンドウを開く専用のものにしてしまえば、PCのキーボードショートカットのように使うことも可能です。でもUIで目指した根幹はそこではなく、“コンソールのRPGをプレイする人がすんなり遊べるように”というのがポイントです。
――メインコマンドにHUDの項目もありますが、これではどのくらいの表示調整が可能なのでしょうか?
皆川氏:画面内にはチャットログやナビゲーションマップ、今受けているクエストのアナウンスなどが表示されているのですが、ここにもカーソルを移動できるようになっています。例えば、クエストのうち「癒しえぬ傷」にカーソルを持っていき、そこで○ボタンを押すと、クエストに関する情報が見られるジャーナルのページに直接ジャンプできるよう、ランチャーの機能になっています。こうした、カーソルの移動が必要な常駐表示のメニューに飛ばすための機能があります。もうひとつは、これらの情報を画面内のどこに表示するか調整するレイアウトモードもありますので、各ウィジェットの位置やサイズを変更することができます。
――ではPS3版でも画面のカスタマイズもPC版と同じようにできるのでしょうか?
吉田氏:フルHDのPC版と比べるとPS3版は解像度が低くなってしまうのと、ブラウン管を使っている場合などには文字がにじんでしまったりすることもありますので、PC版ではウィンドウサイズの設定は「小」がありましたが、PS3版には「大」しか存在しません。なのでカスタマイズは可能ですが、極端に変えてしまうとウィジェットの端が隠れてしまうといった事態は出てきてしまうと思います。
皆川氏:一番サイズ変更要望が多いのがチャットログです。チャットのテキストがもう少し大きくならないかとか、もっと一気にログを読みたいから文字を小さく、といった内容ですね。ここはプレイヤーの方々によってそれぞれニーズが違うので、チャットログに関しては文字フォントのサイズを細かく設定できるようにしています。
――メインコマンドにはソーシャルという項目がありましたけど、SNS系との連携があるのでしょうか?
吉田氏:やっぱり誤解されてしまいますよね。コマンドの名前は僕が最後に調整するからとチームでも言っているのですが、ソーシャルの項目はパーティーリスト、フレンドリスト、ブラックリスト、フリーカンパニーやリンクシェルといったコマンドが入っています。いわば、自分のパーソナルみたいな意味ですね。
――ではこの項目はSNSとの連携ではないんですね。
皆川氏:今の表記は開発チームのスタッフが分かる言葉になっています。当然のことながら、プレイヤーの方にとって分かりやすい言葉がありますので、最後には変えないとね、という話をしているところです。
吉田氏:でも難しいですよね。僕は「ドラゴンクエスト」の出身なので、ソーシャルに「なかま」、マイキャラクターは「じぶん」って書いた方が分かりやすいと思うんですけど(笑)、やっぱり「ファイナルファンタジー」は横文字というイメージもあるし、ローカライズの問題も同様に。メニューの中身はほぼできていますが、こういった表記は調整すると思いますし、ここはギリギリまで悩んでも良い部分かなと考えています。
――ライブの項目では何ができるんでしょうか?
吉田氏:ライブは製作や採集ですね。これも日本の方だとライブ感のライブと取る方もいますが、いわゆる生活という意味の方です。エオルゼアに住むための行為、つまり採集して素材を取る、製作でものを作る、それからハウジングのメニューといったものですね。
――ほかにメインコマンドで特徴的な要素はあったりするんでしょうか?
皆川氏:メインコマンドを制作する際、便利さよりも分かりやすさを大切にしてほしいと言われました。実際、ほかにも項目を表示させることはできますが、そうするといろんなことを同時にやりたい見せ方になってしまうので、ほかの表示を排他して、メインコマンドを開いている時はメニューだけの表示にしてほしいという要望がありました。
吉田氏:やっぱり初めてオンラインゲームをプレイする時に、いつものコンソールの感覚で遊べるようにしたかったんですね。実際に触ってみて「あっ、別に難しくないんだ」という風に。それからゲームに慣れてきて不便だと感じたら、クロスホットバーの存在に気付いてもらったり、あるいは友達から教えてもらって活用していただければと思っています。とにかく便利なメニューを作るのはやめて、分かりやすさで良いというのは、堀井(堀井雄二)さんにすごく教わったところですね。
どうしても開発って先を見越して便利に便利に…って作りたくなってしまうんです。でも、そうすると画面中にソートキーやら昇順・降順やらが出てきてしまうので、初めてプレイする人は、それだけで「うわあ…難しそう」って感じてしまうかもしれない。絶対にそういう状況にはしたくなかったので、やりたいことがひとつずつ確実にできるように設計しました。
――これらのUIはいちから作り直したとのことですが、どのあたりが一番苦労された点でしょうか?
皆川氏:やっぱり情報の整理ですね。繰り返しになってしまいますが、PC版は同時にいろんなものを出しっぱなしにすることも、逆にシンプルなレイアウトにすることもできるようになっています。それをそのままPS3で再現しようとすると、メモリ的にも解像度的にも破綻してしまいますが、全く異なるものを作るのは工数的に非常に厳しいですし、保守も大変になってしまいます。
そのためクロスホットバーとメインコマンドは、PS3というよりゲームパッドに向けても完全に作り直しをして、それ以外のウィジェットなどは基本的に同じものを使うといったように、分けるところと共通化するところの振り分けに一番頭を悩ませました。
吉田氏:あとは単純に物量ですね。現行版もあるので、レベル50の先のコンテンツや、コンテンツ専用ウィジェットまで想定して作っていかなければいけないですし、PC版でマウス+キーボードを使う場合、PCの操作と同じような感じで使えるようにしないといけなかったので、とにかく物量の多さが大変ですね。
この短い期間でマウス+キーボードとゲームパッドを分けて作ることがチャレンジでしたし、大量に並行作業したものを合体させて調整するというのは物量と時間との勝負です。
皆川氏:現場も、通常だったらトライアンドエラーを繰り返しているところを、作ったら次へ、作ったら次へ進めているので、最後に全部くっつけたら「ここは作り直し」みたいなところも当然出てきます。その中で優先度を付けて、どれを重点的に修正していくかを限られた時間の中でまとめるのが大変ですね。
――皆川さんはリードWebコンテンツアーティストも兼任されていますが、こちらはどういった業務を担当されているのでしょうか?
皆川氏:プレイヤーズサイトの「The Lodestone」もリニューアルしますので、そちらのデザイン監修ですね。サイト制作はほぼ専任しているリーダーのスタッフがいますので、全体の雰囲気や導線をどうしていくかといったといった調整をしています。
――プロモーションサイト(公式サイト)はまた別の方が担当されているのでしょうか?
皆川氏:プロモーションサイトは、プレイヤーズサイトを統合して最終的には「The Lodestone」に一本化していく予定です。
吉田氏:プロモーションサイトはあくまで初めて「FFXIV」に興味を持ってくれた人に向けたものになり、「The Lodestone」はプレイしている人のものと分けていますので、「新生FFXIV」を正式にリリースするまではそれぞれやっていきます。ただ「新生FFXIV」がローンチしたら、新生「The Lodestone」側にプロモーション機能を持っていき、一本化するイメージでいます。
――またゲーム画面の話に戻るのですが、画面右下に表示されている、四角に囲まれた小さい4つの数字は何を意味しているのでしょうか?
皆川氏:今回の画面を見た方に必ず聞かれる質問ですね(笑)。これは、インベントリ(バッグ)の中身を示しています。もともとPC版では5マス×5マスで25個の装備品やアイテムが入るページが4つあり、合計100個のドット表示があるという作りですが、PS3で同じことをやろうとすると負荷と表示範囲の問題があり、なるべくミニマムな情報にする必要がありました。
ここに表示されている数字は、今そのバッグに入っているアイテムの数を表していて、バッグ1つに最大で25個入りますので、例えば「10」と表示されていたらバッグの空きは15個ということが分かるようになっています。先ほどお話ししたメインコマンドからバッグを開くという部分は操作のストロークを短くしていますので、中身を確認したいときはそこからウィンドウを表示してもらう形になります。PCでマウスを使う場合、右下の表示を直接クリックすればバッグを表示させるボタンとして機能していたのですが、ゲームパッドなので直接クリックすることができないことから、単なる表示機能だけにとどめてシンプルにしました。
吉田氏:この点は、ゲーム的な有利不利はないだろうと判断したところが大きいですね。PC版ではバッグを使い分けられるようなドット表示もされていますが、インフォメーションの問題なので、PS3版はできるだけ負荷をかけないようにしています。大事なのはバッグの中身があとどれくらい空いているのかだと思うので、その数字をダイレクトに出そうと話をしました。
――画面右側には受注しているクエスト情報が表示されるようになっていますが、クエストもリーヴのように一度に受注できる数に制限はあるのでしょうか?
皆川氏:クエストは一度に30個まで受注可能です。僕が社内でαテストをやっている範囲では、上限に達したことはないですね。表示がはみ出るぐらい受けられますし、ジャーナルは別のウィジェットがあり、受けているクエストから右側に表示させるものを選択することも可能です。基本的には、新しく受けたものがどんどん挿入されていく形になります。
――ちょうどハーストミルの名前も出ていますが、ハムレットに関する追加要素はあるのでしょうか?
吉田氏:ハムレットにちゃんと生活感が出ていますよ、というのも追加要素と言えば追加要素ですが(笑)、ハムレット防衛でしたらまったくイメージの違うコンテンツになります。
――コンテンツ的に新しいものが加わるのでしょうか?
吉田氏:システムが大きく変わるので、ハムレット防衛という単体のコンテンツじゃなくなると言いますか…説明するにはズバッと言わないといけないので、まだちょっと言えないです(笑)。ハムレットに敵が襲ってきて、みんなで防衛しようという遊びは残ります。ただ、現行にあるような遊び方とは全然違い、参加の仕方や閉塞感のようなものをなくし、防衛が発生していたら気楽に参加できるようなものを作っています。
皆川氏:旧バージョンのサーバーではできなかったことができるようになっています。
吉田氏:本来やりたかったことができなかったので、結果として今の形になっているところがありますので、それを本来想定していた形に戻そうかなと思っています。あとはチョコボ護衛も同じシステムに包括されてきます。このあたりはもう少し発売が近くなったタイミングで、動画を交えて公開していきたいと思っています。分かってしまえばシンプルなのですが、動画がないとイマイチ伝わりにくいところもありますので。
――ワールドを超えてインスタンスダンジョンをプレイするためのマッチングシステムが搭載されたりと、ほかにもサーバー構成が変わったことで実現したことはありますか?
吉田氏:レスポンスの大幅な改善もそうですし、これまでのゾーンを跨いだ情報が取れないという状態は、ことごとく解消しました。
皆川氏:レスポンスはもう別次元ですね。
吉田氏:普通と言われれば普通なんですけどね。あと、ローディング速度もかなり改善されていて、サーバからの応答も速いし、グラフィックスのロードも速い、結果的に現行版とは比較にならない速度になっています。ロード時間中に表示させる画面を作っていたので、いざ入れようと思ったらゾーン間の移動が速くて、ローディング画面どうしようかね(苦笑)なんて状況もありました。
皆川氏:暗転の時間に、次のマップのタイトルがじんわりと表示されるという演出を用意していたのですが、暗転してそれが出る前に次の画面が出てしまって、「ロゴがフェードインするほうが遅いじゃん!」みたいなことになり(笑)、演出を調整しています。
吉田氏:ここはサーバーだけでなく、クライアント側でもロードを短くするため、隣のゾーンが近づくと先にマップリソースを読み込むということをやっていて、総力を結集しているのでかなり快適になっています。
皆川氏:テレポのようにパーツリソースを丸ごと変える移動をする場合はそれなりに時間が掛かることもありますが、順路に沿って歩いていくと、ほぼ時間を感じないぐらいサクサクです。
――以前に公開されたアートの話になってしまいますが、男性ミコッテや女性ルガディンが描かれていましたが、実装予定はあるのでしょうか?
吉田氏:「新生FFXIV」の正式サービス時に実装します。2年運営を続けてきたのでキャラクターの装備が莫大にあり、実はこの種族に全部適応させるのは凄まじくコストがかかるんです。いわゆる種族装備をしたデフォルトの姿は全部そろっているのですが、僕らはキャラクターに尋常なくこだわっているので、同じ装備パーツでもミコッテ男とヒューラン男では形状も違いますし、その調整をすべて行っています。尻尾用の穴が開いているかの差もありますし、今も全ての装備を調整する作業をしています。αテストでは使えませんが、βテスト辺りから使えるようにできるかなという予定でいます。
――既存プレイヤーが新種族になるための要素は考えているのでしょうか?
吉田氏:「新生FFXIV」の正式サービススタート時に、一度だけキャラメイクのやり直しができるようにしようと思っています。一定期間だけの予定ですし、いつまでもキャラメイクのやり直しができる状態にはしたくないというのがあるので、半年後に使いたいといったことはなしにしようと思っています。それから、キャラメイクをし直すと二度と戻せませんので、そこはご了承いただきたいと思います。
――αテストへの応募状況はいかがですか?
吉田氏:設問数も多い状態なのにキッチリ入力していただいて、数万人単位で応募いただいていますね。内々で実施時期は決めていますが、ここまで並行して進めてきたタスクをαテストに向けて合体させた状態なので、今はその均しや調整をしているところです。
テキストひとつとっても書き手が違うとブレてしまっていますし、特に初期の導線部分ではプレイヤーの方に理解してもらうテキストと、物語として書くテキストのブレが目立つ状態だったので、その調整を行っています。
プレイヤーの方が通る部分を今ここでしっかりと作っておけば今後の運営の手本にもなりますし、この先何十年とやっていくならこだわらなきゃいけないと思っていますので、今一番じっくりやっているところですね。お客様からは時間かけすぎだよと思われてしまうかもしれませんが、初期の「FFXIV」はそれをやらなかったのが最大の問題だと思っていますので、手を抜かずにやっています。
――現状開発内でプレイしていて、現行との違いを感じられると思う部分と課題だと思う部分はどこでしょうか?
吉田氏:あくまでαテストはサーバー負荷試験なので、テスターの方の期待値が上がりすぎなんじゃないかなと思っているところもあるのですが(笑)、意外と予想がつかないですね。サーバーレスポンスであったり、マップの代わり映え、オプション性の高さ、バトルのテンポは結構驚愕の連続なんじゃないかなと思っています。
皆川氏:既存プレイヤーの方だからこそ、グリダニアはいわくつきのところなので、「全然違うじゃん!」と良い方に驚いていただけるんじゃないかなと思っています。それから、「森をここまで変えたなら街ももっと変えてよ」といった意見も出てくるのかなというのがありますね。
――拠点となる街にあまり変更はないんですか?
吉田氏:ないと思っていたんですけど、実は結構大胆に手を入れちゃったんですよね……(苦笑)。
皆川氏:土壇場に「えっ、本当にこの残り日程で改修やるんですか?」という話をしていて、今その合体作業をするところなので、白日の下にさらされるのはもうすぐです(笑)。
――3大都市という存在そのものは変わりない感じでしょうか?
吉田氏:致命的に良くない導線は全てなくしましたが、存在という意味では変わりありません。現行版でウルダハに人が集中することがあり、ウルダハはやっぱり良くできていましたね。新しくゲームをデザインして初期導線の設計をしたときも、ウルダハのレベルデザインは、導線設計さえしっかりすれば、実用に耐えられるなあと改めて認識しました。
――初期選択の都市によって有利不利はほとんどないんでしょうか?
吉田氏:基本は差がないように作っていますね。ただ今回は、初期のバトルクラスと都市が紐付いています。現行の「FFXIV」でも納得いかない部分だったのですが、剣術士でグリダニアを選んだりすると、剣術士ギルドが初期の街にないんですよね。誰も剣術のことを教えてくれなければ、剣術士ギルドがあるウルダハの存在も分からないから、どこに行ったら良いか分からないんです。
どこで始めても良いというのは、どういう想定で遊んでいただきたいかも決められなくなってしまうんです。なので「新生FFXIV」では、例えば槍術士で始めたい場合はグリダニアからのスタートに固定されますが、その代わりギルドとの関係性やクエストとの連携はキッチリ作っています。自由をなくすからこそできることもたくさんあるので、便利さよりも分かりやすさを取っている部分があります。
――ゲームショウではトレーラー公開のみでしたが、プレイアブル出展しなかったのには理由があるのでしょうか?
吉田氏:MMORPGを30分触っても面白さが分からないと思っているからですね。スタンドアローンの「ファイナルファンタジー」を担当しているなら、派手なボスバトルを作り「15分以内に倒せたらグッズを差し上げます!」とかでもアリなのですが、オンラインゲームの場合、そもそもソロで巨大なボスと戦うシチュエーションがほとんどないじゃないですか。
仮に、集まった5人でこのボスを倒してくださいという形にしても、初めてプレイされる方だと「白魔道士ってホーリー使えるんだよな」といって最前線に出て倒されてしまうという事態も当然考えられます。ガイドがついて徹底的にサポートしても、それだとゲームに触ってもらえる人数が決まってきてしまいますので、下手にプレイアブルで出展して「小難しいゲームだな」と思われてしまうより、「ファイナルファンタジー」のスタンダードなPRを取りたいと思ったんです。
「『ファイナルファンタジー』の新作が出る!」「今回のグラフィックスも綺麗だ!」「チョコボもいて乗れるんだ!」「召喚獣がいて派手なバトルもある!」そういったところを真っ直ぐ押し出していきたいので、TGSのトレーラーに関しては、日本のお客様でPS3版を待っている方向けに作りました。なので現行版をプレイしている方が「新情報がない」と感じてしまうことはある程度予測していたんです。
それでも、PS3版が出たら買おうかなって思っている方はそもそもエオルゼアが何か分からないと思いますので、エオルゼアという世界にこんな冒険者がいて、出会いや別れがあり、パーティを組んで派手なバトルがあり、チョコボに乗って駆け出そうというトレーラーになっています。Twitterでの反応なども見ていたのですが、今まで「FFXIV」の話題をしていなかった人が「これ面白そうじゃない?」とツイートしているのが増えたので、よかったなと思っています。
――それでは最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。
皆川氏:ゲームパッドでのプレイはどうしてもマウス+キーボードに比べて不利なイメージがありますが、パッドの気軽さに高速な入力を両立した、ゲームパッドでMMOをプレイするスタイルのスタンダードになれるよう、頑張ってチューニングしています。PS3版に限らず、PC版もゲームパッドで遊べるように作っていますので、両方試してもらえたら嬉しいです。
吉田氏:ようやくPS3版の情報公開ができるようになりました。まずはスクリーンショットを公開しましたが、一回信頼を失ったプロジェクトですので、一個一個確証を取りながら、今後は動いている様子を出して、実際に動かしているところをライブで流してといった段取りを取っていきたいと思います。
いろんな場所で繰り返し言っていますが、僕がプレイヤーとして面白いと思うまで、しっかり作りこみたいなと。もちろんスケジュールがありますし、僕らもプロなので必死にやっていますが、本当にありえない速度でここまできたからこそ、しっかりしたものをプレイヤーの皆さんにお届けしたい。特にこの2年間応援してくださった方のために、最高のものをお届けしたいと思っています。できる限り急いで開発していきますが、キッチリしたものをお届けしたいので、ぜひ情報公開を見つつお待ちいただければと思います。
(C) 2010 - 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. LOGO ILLUSTRATION: (C) 2010, 2014, 2016, 2018, 2021 YOSHITAKA AMANO