ガマニアがスマホ市場に本格参戦する理由を代表取締役社長の浅井清氏に聞いた―ゾンビを題材にした新作ブラウザ「末日少女(邦題未定)」の概要も明らかに

ガマニアデジタルエンターテインメントは、2014年よりスマートフォン市場に本格参入することを表明。その経緯や今後の展開について、代表取締役社長 兼 COOの浅井清氏にインタビューを行った。

今回インタビューに伴い、同社が2014年上半期にリリースを予定しているタイトルについても紹介していただいた。ガマニアデジタルエンターテインメントと言えば、OnlineGamer読者であればご存知の方が多いと思うが、キャラクターの魅力を押し出したタイトルが多いイメージだ。

しかしスマートフォンでは、すでにリリース済みの「もじって!はに神さまっ!」をはじめ、これまでの同社のイメージとは異なるタイトルも用意されている。これらスマートフォンアプリの内容については、姉妹サイトのGamerにてお伝えしているが、インタビューでは2013年の振り返りから今年の展望までを伺ったので、その内容をお伝えしていこう。記事の最後には、台湾でサービスを開始したばかりの新作ブラウザゲーム「末日少女(邦題未定)」」についても紹介しよう。

今後の展開について代表取締役の浅井氏にインタビュー

――2014年からスマートフォン市場に本格参入されるとのことですが、その経緯を教えてください。

浅井清氏
浅井清氏

浅井氏:弊社はこれまでPCオンラインゲームをメインにやっており、「巨商伝」や「ルーセントハート」といったタイトルを長く運営しています。ブラウザゲームでもある程度収益を上げていましたので、準備しているブラウザゲームをしっかりやっていく考えは今も持っていますが、やはりスマートフォンの展開もすべきという話が社内で上がっていました。

これらが2012年の始め頃ですが、その当時というのはGREEやMobageといったプラットフォームの勢いはありましたが、「パズル&ドラゴンズ」のような成功モデルがなく、各社が方向性をどうすべきか迷っている時期だったと思います。

実際に弊社でもGREEで一部コンテンツを提供させていただいたり、社内でテスト的に開発してみたりと試行錯誤していましたが、2012年はガマニアグループ全体として、PCオンラインゲームのグローバル展開に力を入れていました。中国や韓国だけでなく、北米やヨーロッパ、それこそヨーロッパはオランダ、ドイツ、フランス、イギリスでパブリッシングをしようと準備を進めていました。

グループ戦略にしっかりと注力しつつ、スマートフォン市場にも踏み出していこうと考えていましたが、ここ1~2年はマーケットの激変もありました。

正直なところ、こうした変化についていけないところがあったのですが、中国や台湾もスマートフォン市場に大きくシフトしてきており、どの国の市場にもいいタイトルが出揃っていました。我々はPCオンラインゲームに軸足を置いていたので、スマートフォン市場へは出遅れてしまった部分はありますが、だからこそ毛色の違うものを作ったり、ライセンス物を含め、バランスよくタイトルを揃えて準備をしてきました。ようやくその準備が整いましたので、今年から本格的にスマートフォンにも力を入れていきます。

――2013年を振り返ってみての感想や手応えはいかがでしょうか。

浅井氏:PCオンラインゲームは正直厳しかったです。マーケットそのものが縮小傾向というのもありますが、昨年弊社がリリースした「ティアラ コンチェルト」や「エンゲージナイツ~新約英雄大戦~」などは、マーケットが変化する中でずっと寝かせておくわけにもいかず、コンテンツが熟成する前にリリースせざるを得ない状況になってしまいました。ユーザーさんからは「ティアラ コンチェルト」に対し特に大きな期待をいただいていましたが、結果として裏切るような形となってしまい、それが一番残念に思っています。

スマートフォンに関しては徐々にシフトしていくつもりで、2013年から本格的に開始する予定でしたが、タイトルの準備などで遅れてしまい、結果として準備の年という感じでした。

――「あっぱれ!天下御免 乱」や「エンゲージナイツ~新約英雄大戦~」ではスピンオフ作品としてスマートフォンアプリを配信されていましたが、それも準備の一環でしょうか。

浅井氏:そうですね。昨年の段階では何もリリースしたことがなかったため、恥ずかしながらApp Storeで配信するための手順なども分からない状態でした。ですので、マーケティングの面も含め、まずは手軽に遊べるアプリを実験的にリリースしてみようとトライしたものになります。

「あっぱれ!天下御免 快」(左)と「美少女英雄くずし~エンゲージナイツ~」(右)

――「あっぱれ!天下御免 乱」をYahoo! Mobageで、GREEでは「ナイトカーニバル! EXA」「恋姫†夢想 EXA」をリリースしました。自社で決済サービス「GASH」をお持ちですが、その中で他社プラットフォームを使った理由を教えてください。

浅井氏:もちろん基本的には自社プラットフォームを優先する方針ですので、まずはGASHにてリリースしますが、今の時代は新規のユーザーさんに知っていただく、遊んでいただくことが難しくなっています。そのため、同じリソースを使ってほかのプラットフォームのユーザーさんに遊んでいただけるのであれば、タイミングなどを考えつつ展開していくつもりです。

以前からハンゲームでは「巨商伝」、Yahoo! Mobageでは「Web パワードール」、ニコニコアプリでは「Web 恋姫†夢想」をそれぞれサービスさせていただいていますので、今後もユーザーさんの相性などを見て、コンテンツを提供させていただくことはあると思います。

――「エンゲージナイツ~新約英雄大戦~」はブラウザゲーム本編のサービスが終了を迎えてしまいますが、スピンオフ作品を続けたりといった考えはあるのでしょうか。

浅井氏:ブラウザゲームの方は残念ながら開発の問題などもあり、継続し続けるよりはどこかでリセットしてしまうしかない、という判断になりました。スピンオフ作品としてリリースしたアプリも配信は止めてしまいますが、これはいわゆるオマケ要素のようなものなので、「エンゲージナイツ~新約英雄大戦~」というIPを活かしつつ、新たにしっかりと遊べるコンテンツを作るというのはアリかなと考えています。

――スマートフォンアプリはブラウザゲームと合わせた展開だけでなく、オリジナルタイトルの「もじって!はに神さまっ!」も配信されました。

浅井氏:「もじって!はに神さまっ!」はAndroid版を含めると約10万ダウンロードを記録しており、思った以上にユーザーさんの反応が良かったです。社内での評判もいいですし、細々と開発を続けてランキング機能を追加したところ、すごくやり込んでいるユーザーさんがたくさんいらっしゃったのに驚きまして(笑)、手応えも感じています。

ただ、長く遊ぶ設計ではなかったり、ほかのプレイヤーと競い合う要素をあまり入れていませんでした。さらに言えばマネタイズの部分も整っておらず、ユーザーさんの評判は良かった一方で、正直なところ売上にはあまり繋がっていません。そうした部分を改善していくため、ゲーム部分を踏襲した次回作の準備を進めているところです。

――それはガラッとキャラクターを変えたもの、という感じでしょうか。

浅井氏:キャラクターを変える案もありますが、はにわのキャラクターに対する反応は良かったですし、私自身も気に入っています(笑)。「はに神さまっ!2」ではないかもしれませんが、良かった部分を活かしながら長く遊べる仕組みを取り入れていこうと思っています。

――市場を見ると桁違いの数字を誇るタイトルもありますが、「はに神さまっ」は10万ダウンロードと、スマッシュヒットと言えるぐらいのものになりました。その要因はどこにあったと見ていますか。

浅井氏:やはり遊び方の部分でしょうか。ソーシャルゲームが流行ってからカードRPGが増えましたが、市場に多く出回っているタイトルと同じようなものではなく、違う切り口の遊び方を提供できたことがユーザーさんの評価に結び付いていると思います。

――スマートフォン市場では後発となってしまいますが、その分、ほかにはないタイトルを、というお話がありました。今回タイトルを紹介いただきましたが、今後の方向性としては例えばネイティブでリッチなものをとか、ブラウザベースで手軽なものをなど、どのように考えているのでしょうか。

浅井氏:ボリューミーでガッツリと長く遊べるタイトルというのは、日本でも大手メーカーさんがすごく力を入れて開発していますので、そこはもう任せてしまった方がいいのかなと(笑)。例えばPCオンラインゲームでもそうですが、MMORPGが出てからはMMO中心になった時期もありますが、そういった中で弊社は「O2Jam」という音楽ゲームを提供していました。違うジャンルのゲームが出ることで、ユーザーさんの裾野が広がるフェーズが存在すると思います。

今のスマートフォン市場を見ると、どうしてもヒットしたタイトルと似たようなものが後追いで出てくる傾向にある気がします。社内でよく話をするのですが、流行に乗って売れそうなタイトルをやるよりは、自分たちでやりたいと思えるもの、楽しんで開発できるものを作ろうと心掛けています。いったん「稼ぐため」という考えを捨てて初心に戻ると言いますか、今のマーケットにあるタイトルとはちょっと違った遊び方ができるものを出していきたいと考えています。

――PCオンラインゲームでは海外タイトルのライセンスを受けて日本で提供ということが多いですが、御社では国内での開発も、グループ内での開発もあります。その時の経験がスマートフォンアプリの開発でも生きたと感じる部分はありますか。

浅井氏:「あっぱれ!天下御免 快」「美少女英雄くずし~ エンゲージナイツ~」もスピンオフ作品で、ゲームとしてはオマケ的な意味合いが強いのですが、そうして開発してきたことは間違いなく今に繋がっています。元々ブラウザタイプのオンラインゲームは日本国内でも開発していましたので、サーバー周りではそのノウハウが十分に生かせていると思います。

単に数を揃えようというわけではないのですが、現状はそうした自社開発をはじめ、グループ内開発、グループ外開発によるライセンスをバランスよく組み合わせながら、ユーザーさんのさまざまなニーズに合わせられるように展開していくつもりです。

――例えば「もじって!はに神さまっ!」のようなオリジナルタイトル、「Web恋姫†夢想」のようなIPタイトルなど、いくつか柱を立てていくといった感じでしょうか。

浅井氏:そうですね。正直なところまだ手探りではありますが、ある程度タイトル数やバリエーションを揃えながら、マーケットのニーズも探っていきたいと考えています。

スマホでは「スプラッシュガールズ!」(左)や「てのひらワンコ」(右)などジャンルの異なるラインナップがある。

――2012年はPCオンラインゲームのグローバル展開に力を入れていたとのことですが、その際に海外市場もスマートフォンに移行してきていると感じることはあったのでしょうか。

浅井氏:はい。中国や台湾、香港などはむしろ日本以上にスマートフォンの普及が早いなと感じます。日本の場合はフィーチャーフォン、俗にガラケーと呼ばれるケータイにも、「iモード」といったサービスが充実していましたので、乗り換えがそれほど早くなく、アジアの中ではスマートフォンの普及率がまだ低い方だと思います。海外はスマートフォンの普及速度などを踏まえると、マーケットの変化は日本よりも早い印象ですね。

――最近日本ではスマートフォンアプリ単体だけでなく、そこに登場するキャラクターを活かしたグッズなどのメディアミックス展開など、自社のIPとして育てていこうという傾向が見られます。気の早い話ですが、そういった展開も考えているのでしょうか。

浅井氏:ヒットすればですね(笑)。メディアミックス展開だけでなく、例えば制作委員会のようなものに加入して、アニメと一緒にアプリの展開をするといったことも可能性としては十分に考えられます。ただ、単純に日本だけでなく、海外を含めて考えていきたい気持ちもあります。アジアでそうしたIP展開の話が出ると、真っ先に超有名タイトルが出てくるのですが…(笑)、少し古い作品でも「聖闘士星矢」などはアジアだけでなく、ブラジルでも人気があります。そうした日本でも知られており、海外でも人気のあるものと関われたらと思っています。

――実際一昨年にはコミックマーケットに出展されていましたが、その手応えや今後についてはいかがでしょうか。

2012年のコミックマーケット83に出展していた
2012年のコミックマーケット83に出展していた

浅井氏:コアなユーザーさんとのコミュニケーションの場にもなりますし、オンラインゲームはバーチャルなのでなかなか手に取れるものがありません。グッズ展開を行うことで、ユーザーさんの満足度を高めたり愛着を持っていただくことに繋がればと考えていました。ただ、それはあくまでPCオンラインゲームなどコアなユーザーさんをターゲットにしていましたので、スマートフォンではもう少しライト層の方を対象にしたものを展開していくと思います。

――スマートフォンの本格展開はこれからですが、現状でPCオンラインゲームとスマートフォンでユーザー層の違いを感じたりした部分はありますか?

浅井氏:やはりPCオンラインゲームの方がコミュニティの要素が強かったり、ロイヤリティの高いユーザーさんが多いと感じています。特にMMORPGは長い時間遊んでいただくものですし、その中で作られるユーザーさんの繋がりは非常に強いものがあります。それと比較すると、スマートフォンではゆるい繋がりが求められているのかなと。

PCやスマートフォンに限ってではなく、ネット上でのコミュニティもTwitterやLINEなど、より簡便に済ませられるものに変わってきている気がします。ひとつの時代の流れなのかなと思いますが、スマートフォンに関してはそうしたライトな繋がりができるようにしていくつもりです。

――スマートフォンはまだ手探りとありますが、2014年にヒットしそうなジャンルなど、何か予想みたいなものがあればお聞かせください。

浅井氏:ヒットしたタイトルの後追いで似たようなタイトルが続く傾向がありますが、ゲームプラットフォームでは昔から同じですよね。なので、これまであまりなかったものがスマッシュヒットしたりと、ジャンル自体が多様化していくのではないかなと考えています。スマートフォンではそれが特に顕著になり、グローバル化が進む一方で、日本に特化したタイトルも増えてくると思います。

――PCオンラインゲームとスマートフォン、細かく言えばPCの中にもクライアント型やブラウザゲームなどありますが、今後それぞれ力の入れ具合はどのようになるのでしょうか。

浅井氏:PCオンラインゲームについては従来通り、引き続きしっかりと運営を行いながら、新しいコンテンツも出していきます。グループ全体としてスマートフォンに移行していく流れですので、スマートフォンについてはお試しというよりも、手探りながら色んなチャレンジをしていきたいと考えています。

――PCオンラインゲームのスマートフォン展開などはいかがでしょうか。

浅井氏:考えてはいますが、単純にヒットしているPCオンラインゲームをスマートフォンに持ってきても、ユーザー層の違いなどにより、同じようにヒットするとは限りません。無理にユーザーさんを誘導したり遊んでいただくよりは、素材としていいものがあればスマートフォンでも活かしていく、そういった方向性でいます。

――マルチデバイス対応など、遊びの幅を広げるような展開はいかがでしょうか。

浅井氏:それもアリだと思いますが、プラットフォームを横断的にやるのは正直ハードルが高いです。それに加え、最近は「外出先ではスマートフォン、家に帰ってPC」という傾向ではなく、「家に帰ってもスマートフォン」になってきています。可能性としては模索していますが、今のところ基本的にPCはPC、スマートフォンはスマートフォンで考えています。

――スマートフォンに本格参入ということで、2014年は何本ぐらいリリースされる予定でしょうか。

浅井氏:上半期のタイトルはご紹介させていただいたタイトルを中心に6~7本、年間では8~10本程リリース予定です。PCオンラインゲームもブラウザタイプのものを上半期内に1本リリース予定があります。

――最後に2014年の抱負をお聞かせください。

浅井氏:今はPCオンラインゲーム市場の元気がなくなっている部分もありますが、我々としてはコアなユーザーさんに向けて、引き続きしっかりと遊べるものを提供していきたいと考えています。新しく展開していくスマートフォンについては、一味違ったものを提供していきたいと思っていますので、「ガマニアはこんなことをやるのか!」と、ほかとは違うタイトルが出てくることにご期待ください。

――ありがとうございました。

ゾンビものブラウザゲーム「末日少女(邦題未定)」」の概要&キャラクターイラストが公開に

今回のインタビューに合わせ、新作ブラウザゲーム「末日少女(邦題未定)」も2014年上半期にリリース予定であることが発表となった。本作の物語は、住人たちがゾンビ化してしまった街で主人公の女の子が目覚め、友達を探して助けつつ街からの脱出を目指すというもの。

ゲームシステムは、ステージを選ぶと事前に組んだパーティメンバーで戦闘を行い、勝利すると報酬の獲得に加えて次へ進むことができる、ソーシャルゲームではオーソドックスな内容となっている。とはいえ、カードバトルタイプのようにキャラ同士を合成させるのではなく、基本的にはストーリーを進めつつパーティーメンバーを増やしたり、武器やスキルを強化して戦力アップする形だ。

戦闘時にスキルを使用すると、カットインと派手な演出が用意されている。

戦闘には複数のキャラクターを配置でき、仲間になる女の子たちは、銃や剣など武器によって近距離・遠距離のタイプが存在する。編成時には3×3のマスに自由にキャラクターを配置できるので、それぞれの特性を活かすことが重要となってくる。

戦闘で負けると衣服が破れてしまう。服の破け方には段階があるようで、この上も…?強いゾンビ、求む!

ブラウザでゾンビもの、しかも可愛い系という、いわゆる“ありそうでなかった”ところを突いてくるタイトルだ。敵となるゾンビには、男性のちょっとグロいものから、倒してしまうのを躊躇いそうになる女の子のゾンビまでいるので、敵キャラクターも注目ポイントとなりそうだ。本作はガマニアグループで開発されており、オリジナルIPである点を活かしてさまざまな展開も検討しているというので、ゲームの続報と合わせ、そういった点でも今後の動向に注目したい。

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