ネクソンとCCP Gamesが2011年内に日本向けサービスを開始する予定のSFMMO「EVE Online」について、開発スタッフインタビューを実施した。
「EVE Online」とは?
遥か未来の7,000以上の星系で構成された大宇宙を舞台にしたSFMMOで、プレイヤーは宇宙船を操って飛び回り、コーポレーションやその連合体であるアライアンスに参加して経済・政治活動を行い、そして近隣星系の領有権を巡る戦争に参加することもある。
ゲーム内の経済については経済学者も観察しており、「The Wall Street Journal」「The New York Times」「Financial Times」といった有数のメディアからも評価を得ている。
「EVE Online」は現在、英語・ドイツ語・ロシア語でサービスされており、世界中からのプレイヤーがTranquilityサーバーでプレイしている。年内には、ネクソンのパブリッシングにより、日本での課金と日本語でのプレイが予定されている。
インタビュー
先日プレスカンファレンスを実施したばかりの「EVE Online」。現在英語・ドイツ語・ロシア語でサービスを開始しており、今後日本でのサービスが期待されている。今回アイスランドの開発会社CCP Games CCP Creative Director「Torfi」氏とネクソン 運用部 運用1チーム「左留間 正之」氏にお話を聞く機会を頂いたのでお伝えしていこう。
――先日のユーザーカンファレンスはいかがでしたか?
Torfi氏:非常に楽しかったですし、また感謝しております。アバターという形を通してゲームの中で日本のプレイヤーと出会って話をしたり、フィードバックを聞いたりできたことが嬉しかったです。
左留間氏:直前のイベント案内になってしまったにも関わらず、たくさんのプレイヤー様が来てくださって嬉しかったです。また、ネクソンでは今までテーブルディスカッションのようなイベントを実施したことがなかったので、盛り上がるか心配だったんですが、プレイヤーの方がボランティアで司会をしてくれたので助かりました。
――カンファレンスで上映されたムービー中のアバターの画像は全世界のプレイヤーですか?
Torfi氏:日本人で参加された人のアバターです。かなり盛り上がっていましたね。
――世界中のEVE Onlineプレイヤー層(年齢・性別・ライトorハード)を教えて下さい。
Torfi氏:グローバルで考えると、男性が95%ほどプレイしていますが、その中で使用している男性キャラクターは60%を占めます。また、平均年齢は30歳以上です。実際のプレイヤーの数がもっとも多いのはアメリカ、イギリス、ロシア、ドイツです。現在200以上の国と地域の人がプレイしています。
――日本のプレイヤーの全体の割合を教えて下さい。
Torfi氏:正式なデータではないですが、200国・地域中15位前後にあると思います。
――日本のユーザーとグローバルなユーザーのプレイスタイルについて把握していることはありますか?
Torfi氏:現状、正確な統計はないのですが、日本のプレイヤーは生産やPvP、PvEのミッションをメインに楽しんでいる人などさまざまのようです。また、Pirates(海賊のように他のプレイヤーを攻撃する一種のPvP)をメインプレイとするコーポレーションがかなり目立っています。今後ローカライズ、正式サービスを開始すると細かい統計が手に入ると思います。
――今後日本語化すればコミュニティが形成されて変化があると?
Torfi氏:コミュニティが成長すればコーポレーションの成長にもつながると思います。また、ゲームプレイも多様化していくと思われます。
――改めて、ネクソン社、CCP社の担当について教えて下さい。
Torfi氏:ローカライズ・開発・ゲームプレイ関係のプレイヤーサポートはCCP社、パブリッシング事業(広告やPR)や課金・課金サポートはネクソン社です。
左留間氏:実際の課金のイベントについては、ネクソンでも実施する予定はありますが、ゲーム内イベントに関してはCCP社で担当します。もちろんCCP社とネクソンで密に情報交換しているので、今後も協力しながら展開していきます。
Torfi氏:現在公式フォーラムは英語だけに対応しています。他の言語に対応したいとは考えていますが、現在検討中です。その部分はCCP社が担当し、日本のプレイヤーに迅速に伝えたい事項がある場合はネクソンが担当します。
――ネクソンとの提携により、どの程度のユーザー増を期待していますか?
Torfi氏:詳しい数字を明かすことはできませんが、CCP社の今までの経験からしますと、クライアント自体をローカライズしてリリースするとユーザーは確実に増えます。少なくともロシアやドイツと同じくらい成長することを期待しています。
――カンファレンスでお互いに吸収し合ったことは何ですか?
Torfi氏:サービス開始後も、よりお互い学ぶことは多いと思いますが、やはりネクソンが日本でサービスを展開するノウハウは素晴らしいと思います。今回提携した上で日本の文化や人柄を含め、学ぶことが多いですね。
――今後、中国語や韓国語など2バイト文字圏への進出を検討していますか?
Torfi氏:やはりアーキテクトの根本的な部分から、英語だけをサポートするという考え方ではなく、多言語に対応する製品を作りたいと思っています。
――現在、新規プレイヤーは増えていますか?
Torfi氏:クリスタルのように少しずつ成長していくというゲームなので、じわじわと増えている状況です。またクリスタルは長い時間をかけて成長して行く際に、より強固になっていきます。EVEのコミュニティも同じで、サービスを開始して8年経ち年々強くなっています。
――CCP社内でローカライズチームが編成されているんですか?
Torfi氏:クライアント以外のウェブサイトなどのローカライズなどもあるので、クライアントの翻訳はアウトソーシング会社、それ以外の作業の準備や企画などはほとんどCCP社で実施しています。アウトソーシング会社には日本人のスタッフもおります。
――英語版で遊んでいる既存プレイヤーは引続きCCP IDのみでもプレイできるのでしょうか?
Torfi氏:はい、引き続き使えますが、課金するためにはネクソンIDが必要となります。既存のプレイヤーが課金をして楽しむためには2つのIDが必要になるということです。
――最初の2週間の無料期間はCCP IDのみで遊べるということですか?
左留間氏:はい、そうです。
――これから始めるプレイヤーにとって、日本語のゲーム情報が不足していると感じます。今後、公式Wikiなど日本語コンテンツを充実していく予定はありますか?
左留間氏:特に重点的に導入部分のガイドやFAQなどを、サービス開始後に公開する予定です。
Torfi氏:決定事項ではないのですが、「EVElopedia」というEVE Onlineの英語版Wikiがあり、かなり詳しい項目が載っています。それをいつか日本語化したいと思っています。そこにはCCPやネクソンからの記事なども掲載したいですね。
――日本のブラウザゲームでは、ゲーム開始当初から標準で加入されている初心者ギルドがあり、初心者同士の交流を促しています。EVE Onlineではそのような取り組みは行われないのでしょうか?
Torfi氏:EVE Onlineを最初にプレイすると、NPCが運営しているコーポレーションに加入することになります。他のプレイヤーももちろん存在します。そこから個人のプレイスタイルに合わせて、自立したり、最初のコーポレーションにとどまったりと、選択することができます。
――日本語でチャットをするとどのように表示されますか?
Torfi氏:日本語でタイプした場合、そのまま日本語で表示されます。ゲーム内の日本語ヘルプチャンネルもあります。
――日本からの要望なども受け付けていますか?
Torfi氏:私達は常にプレイヤーから要望を受け付けています。日本人コミュニティからも色々な形で要望を言って頂ければと思います。またプレイヤーカンファレンスがフィードバックを頂ける一つの良い方法だと私達は考えています。
――デザインコンテストなどで応募は可能なんですね?
Torfi氏:今回行ったコンテストによってプレイヤーが投稿したアイデアを実装する予定なので、将来的には可能性はあると思います。また実装した艦船などが人気となればまたコンテストも実施したいですね。ただ強調しなければいけないのは、それが本当に理にかなっているときに実施するということです。
――EVE Onlineと同様、Dust 514についても日本語化の予定はあるのでしょうか?
Torfi氏:EVE OnlineとDust 514の連結は重要だと思います。なるべく英語だけではなく、他の言語も含め、同じ言語で提供したいと考えています。しかし、EVE Onlineで提供している言語だからDust514でもローカライズし提供するとは限りません。EVE Onlineはすべての言語で同じタイミングでエクスパンションを実施しています。
――日本独自の課金アイテムなどは実装されますか?
Torfi氏:今すぐに、というわけにはではないのですが、サーバーが1つであり、複数の国でサービスしているので、特定のプレイヤーに向けてアイテムを売るというのが少し難しいと思います。
――方針として世界共通のアイテムを販売するということですか?
Torfi氏:日本でしか買えない、といったアイテムは売ることはできません。ただ、要望をお受けして日本人プレイヤーを念頭に実装となったアイテムの場合でも、世界の人々が買うことのできるアイテムとなります。
――今後のオフラインイベントの予定はありますか?
Torfi氏:今の時点では、日本に関して具体的な予定はありません今回のカンファレンスではCCPとネクソンのアイデアをミックスさせて開催しました。
――ファンフェスタではどのような形で開催しているのですか?
Torfi氏:大きな発表やテーブルディスカッションなどさまざまです。ファンフェスタ以外にも、私たちはそれぞれの国のプレイヤーが望むイベントを開催したいと思っています。日本で出張イベントもしたいですね。プレイヤーがイベントを開催して、CCPを呼んでもらう、などいろいろな形で開催したいです。
――最後に既存の日本人プレイヤーとこれから始めるプレイヤーにメッセージをお願いします。
Torfi氏:ベテランプレイヤーに対しては、日本人が参入するチャンスを生かしてコーポレーションを大きくしたり、これまでEVE Onlineで学んだ知識を継承しつつ、プレイを楽しんで欲しいと思います。日本人のプレイヤーに関しては本当に感謝しています。英語版でのリリースのみのEVE Onlineを愛していただいて嬉しい限りです。また、日本語版からの新規プレイヤーの参加によって、かなりゲーム内での変化があると思います。そのあたりも楽しんで、自分達の歴史を築いていって欲しいと思います。
左留間氏:日本語サービスが始まれば、サポートも日本語で対応できるようになります。これまで英語でなかなか伝わらなかったことも解決できるようになり、プロモーションも集中的に展開しますので、その機会に新しいプレイヤーと仲良くなっていただけると嬉しいです。新規プレイヤーに対しても、気軽にゲームを楽しめるように、少しでもウェブなどでサポートしながら長く遊べる施策も考えています。
――ありがとうございました。
CCP社・ネクソン社共同配信メールより
以下の文章は、メールとしてCCP社より既存ユーザーに向け、アイスランド時間で10月25日(火)の夜、日本時間の10月26日(水)の午前4時あたりに配信されたものとなっており、今回のCCP社とネクソン社の共同配信についての詳細を発表している。インタビューと合わせて参考にしていただきたい。
2011年7月7日、CCP Gamesと株式会社ネクソンは、日本地域におけるEVE Onlineの日本語版、および日本語での各種サービスの提供を目的とする共同配信(パートナーシップ)契約の締結を発表いたしました。
本パートナーシップ契約においては、CCPがEVE Onlineのゲーム開発、サーバー運営、およびゲームプレイに関するカスタマーサポートを担当し、ネクソンがゲームの課金、課金に関するカスタマサポート、および日本地域におけるEVE Onlineのマーケティング、プロモーションを担当することとなっております。EVE Online の日本語版については、これまで、本プロジェクトにご興味をお持ちのみなさんから多数のお問い合わせをいただいております。これらのうち、最も頻繁にお問い合わせいただいている内容について、以下ご回答申し上げます。
課金、アカウントとユーザーIDについて
CCP、およびネクソンの両社が持つ長所を最大限に活かし、日本のプレイヤーのみなさんに最良のサービスを提供するために、2012年4月1日以降、ネクソンが、日本地域のすべてのプレイヤーに対するEVE関連サービスの課金・決済を担当することになります。
わたしたちは、現在EVEをプレイしていただいているみなさんにおかけするご不便を最小限にとどめるため、ここに、現在の日本地域のプレイヤーのEVE Online アカウント、およびキャラクターが、2012年4月1日以降もそのまま維持されることをお約束し、また、ゲームクライアントへのログインや、その他のEVE関連サービス(EVE Gateやアカウント管理サイトなど)へのアクセスも、従来どおりEVE ユーザーIDを用いて行えるようになることを保証いたします。
ただし、ネクソンの課金・決済、および課金に関するカスタマサポートを受けていただくために、日本地域の全てのプレイヤーは、2012年4月1日以降、追加で決済手続きを行う際にNEXON IDをご登録いただく必要がありますのでご了承ください。日本地域にお住まいの既存のEVEプレイヤーのみなさんにとっての変更点は、2012年4月1日以降、決済手続きを行う際に、ネクソンが提供する便利で安全な決済システムにログインして決済を行う手順が加わるということのみになります。この変更は、国籍を問わず日本に居住するすべてのプレイヤーに適用されます。
言語オプションとサーバーについて
CCPは、日本地域のプレイヤーが、日本語以外にも、英語、その他CCPが公式にサポートしている全ての言語でゲームをプレイするオプションを今後も持ち続けることをお約束いたします。EVE Online日本語化の文脈では、”日本語版・日本語クライアント”という言い方がよく登場します。これは日本語専用のサーバーをご用意するということではなく、日本のプレイヤーもEVE Onlineの国際的なコミュニティの一員としてTranquilityサーバーで引き続き遊んでいただけるようになるということもあわせてお伝えします。
既存の英語、ロシア語、ドイツ語をサポートするゲームクライアントの言語オプションに、新たに日本語が追加され、日本地域のプレイヤーは日本語版の正式リリース後にこれらの全ての言語オプションをご自由に利用できるようになります。
日本語化の現状と今後について
日本のプレイヤーのみなさんには、今年末までに日本語版をプレビューしていただける機会をご提供する予定です。現在わたしたちは、新開発のローカライズプラットフォームCerberus(ケルベロス)上で日本語版のテストを行いながらリリースに向けての準備を優先で行っております。
今回のネクソンとのパートナーシップ契約により、既存のEVEプレイヤーのみなさんに、より多くのEVE関連の情報や、サポート、そしてイベントを提供することができるようになります。今後、数週間、数ヶ月間にわたり、日本語版プロジェクトの進捗状況や今後の展望について順次ご案内を行って参りますのでどうぞご期待ください。
またこの度、日本語版プロジェクトに関してみなさまにご案内させていただきますことを記念しまして、現在EVEをプレイしていただいている日本のプレイヤーのみなさんに特別割引キャンペーンをご提供させていただきます。
いつもEVE をプレイしていただきありがとうございます。常に進化し続けるEVE Onlineにどうぞご期待ください!
よい宇宙の旅を!
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