オンラインゲーム実況アナウンサー・yukishiroさんによる連載コラム「yukishiroの熟れたてFPS」。第4回では、5月19日に行われた「サドンアタック」の日韓エキシビジョンマッチ日本代表決定戦をyukishiroさんの視点で振リ返ります。
2012年5月19日、「サドンアタック」で、「日韓エキシビジョンマッチ 日本代表決定戦」が行われました。日韓戦は2010年1月に行われました「日韓親善試合」が最後なので、約2年ぶりの開催となります。
日本代表になるため、勝敗を競い合った今回、どのような試合展開になったのでしょうか、今回は「日韓エキシビジョンマッチ 日本代表決定戦」を振り返ってみたいと思います。
クラン紹介
今大会は、2011年から行われている公式大会で、優勝または準優勝したチームに出場権があり、「NabD」「iZoNe」「Kmn-Gaming」の3クランが揃いました。それでは、各クランを紹介します。
「NabD」
スターティングメンバー
NabD[1].Matchaa
NabD[2].Aktime
NabD[3].ziNovif’
NabD[4].Eiss
NabD[5].Vader
サドンアタックで最も有名なクランであり、過去に国内大会4連覇という偉業を成し遂げたクラン。世界大会に出場した経歴を持っています。リーダーの「NabD[1].Matchaa」選手を筆頭に、個人技トップクラスのメンバーが揃い、大会での爆発力は視聴者を常に魅了しています。
メンバーを変えてからはあまり好成績を残せなかったものの、前回の公式大会「SAOMT2012spring」では優勝しており、その勢いで今大会も乗り切るのではないかと期待されています。
「iZoNe」
スターティングメンバー
iZN|DAIKI
de1piero
ApoCalys
iZN|YUKI
iZN|GANBOLD
公式大会において、毎年「NabD」と一位争いの激戦を繰り広げる好敵手的存在。2008年に公式大会「SACTL2008」で優勝した後、メンバーを変えて以来、一度も優勝を成し遂げる事が出来なかった「無冠の帝王」。しかし、その実力は本物で、連携を重視した作戦を要とする戦術を得意とし、チームプレイならばサドンアタック1であることは間違い無いでしょう。
前回の「SAOMT2012spring」では、「SACTL2011winter」で惜しくも敗れてしまった「Kmn-Gaming」と準決勝で戦い、見事リベンジを果たしました。今回の日韓予選でも、丁寧な試合運びは勿論、前大会で「M4A1 Silencer」の新たな可能性を見出した「de1piero」選手に注目が集まります。
「Kmn-Gaming」
スターティングメンバー
[01]..Kaminage
[02]..Kinko
[03]..Slyd1ni
[04]..Sofina
[05]..Noe
公式大会の入賞経験は、他のクランと比べて劣るものの、自由奔放な戦闘スタイルと、意外性のある作戦、投げるタイミングを予測され難いグレネードの使い方を得意とし、対戦相手のチームプレイを崩しながら、試合のペースを握る事を得意とします。
特にグレネードの扱い方において右に出る者は居ません。公式大会「SACTL2011winter」では、「[05]..Noe」選手のグレネード4人抜きという神掛かったシーンが記憶に新しいですね。
日韓予選では、都合により急遽、一人メンバーを変更し、「[04]..Sofina」選手がスナイパーとして加入。メンバーを変えてからの練習時間は約一ヶ月と短く、練習不足は否めませんが、またドラマティックな展開を見せてくれるのでないかという期待があります。
今大会は、3クランによる総当り戦で、決められた1つのMAPを順番に戦い、結果1位と2位が日韓戦の出場権を獲得することが出来ます。勝利数が同数の場合でも、ラウンド得失点差により順位をつけるため、試合に勝つだけではなく、しっかりとラウンド数に差をつけることが重要となります。
今回、試合するMAPですが、抽選により、ホワイトスコールとなりました。ホワイトスコールは地中海沿岸の街をモチーフにしたMAPで、至る所に空爆(グレネードを高く山なりに投げて、障害物や天井を越して、敵を狙うテクニック)を投げ入れる事が出来ます。
特にブルーチーム側が、レッドチーム側に対して開幕命中する空爆を投げ入れ易く、ロングレンジが多いためスナイパーを置いて守りやすい事から、一般的にはブルーチーム有利と言われています。
第一試合 NabD vs iZoNe
いきなり勝ち抜け候補である両チームの対戦となりました。前回の公式大会「SAOMT2012spring」では、決勝戦の最終MAPとして選ばれ、激戦の末、ラウンド数引き分け、キル数1kill差で「NabD」が勝利しています。お互いが前回の反省点をどのように生かし、前回とどう変化が現れるか、といった部分に注目が集まります。
前半戦は攻撃側のレッドチームは「iZoNe」、守備側のブルーチームは「NabD」で開始されました。
「NabD」は個人技が高い事で有名ですが、特にスナイパー陣の強さには定評があり、「NabD[4].Eiss」選手、「NabD[4].Vader」選手を前面に押し立てていき、配置を変えながらも個人技重視で3ラウンド取得します。
しかし、ここまでラウンドを取られ続けても一切動じない「iZoNe」。空爆の事故回避を兼ねて、時間を使いながらの情報戦を続けていき、要所要所の守備が手薄な部分を削ってから、設置ポイントを抑えつつ挟み込むように敵を仕留めるという丁寧な作戦を取り、ラウンドを取り返します。
対応力を見せる「iZoNe」が、そのまま2ラウンド取り返しますが、ここは大会慣れしている「NabD」。普段はBサイトを守っている「NabD[1].Matchaa」選手が、得意とする敵の隙を突いた単独行動で、センターを詰めたり、敵が来るであろう場所に寄っていたりと、素早い対応を見せます。
そのまま「iZoNe」の攻めを軽快に交わして行き、「NabD」が連続でラウンドを取得。前半戦は5-2で「NabD」が大きくリードしました。
後半戦では、ラウンド数に貯金のある「NabD」は、配置を探るために、各自が多方面を攻める、自由な作戦を選択。その作戦が功を奏し、早い展開で情報収集が出来た「NabD」は、守備の薄いB設置ポイントを攻め入り、1ラウンド目を取得。
2ラウンド目も、前ラウンドの情報を活かしながら、トーテム(人の上に乗る行為)から飛び降りる事で、スナイパーが素早く飛び出せるという昔ながらのテクニックを駆使しながら、確実に「iZoNe」のスナイパー陣を抑え、連続でラウンドを取得。一気にマッチポイントになりました。
何とか引き分けに持って行きたい「iZoNe」は、「NabD」がA攻めに切り替えた所を、「de1piero」選手が素早くカバーにつきラウンド取得、続く4ラウンド目も、「iZoNe」の「iZN|GANBOLD」選手が1on1という危ないシーンを制し、連続でラウンドを取り返します。
このまま試合の流れを掴みたい「iZoNe」。ここで思い切ってセンターを詰める作戦を取ったものの、油断の無い「NabD」が一方的に敵を倒し続け、人数差を作った所で一気にA設置ポイントに攻め入り、1対4の人数差を作った状況でC4を設置。解除に向かわざるを得ない「iZoNe」をきっちりと抑え、「NabD」がマッチポイントを取得。「NabD」9本、「iZoNe」7本で、「NabD」の勝利となりました。
一進一退の展開でしたが、「NabD」がファーストキルを取るラウンドが多く、特に目立った戦術として「スナイパーでスナイパーを抑える」という行動を徹底した「NabD」が一枚上手でした。
リーダーの「NabD[1].Matchaa」選手も個人での対応力が光り、結果スコアでも常にキル数が上位だった為、正にNabDが望む通りの試合展開になったと言えるでしょう。
対して「iZoNe」も、対応力で取得したラウンドは多かったものの、情報収集に時間が掛かってしまったことで失ったラウンドも多かったと思います。
第二試合 NabD vs Kmn-Gaming
大会で暫く対戦する機会が無かった両チームの試合です。大会経験においては「NabD」が勝るものの、お互いのリーダー同士が普段から交流のある友達同士なので、お互いの癖や作戦の読み合いがメインになることが予想されます。
レッドチーム側が「Kmn-Gaming」、ブルーチーム側が「NabD」で試合が開始されました。まずは1ラウンド目、「Kmn-Gaming」は、開幕からいきなりAラッシュという強気の策に出ますが、A設置ポイントの制圧に時間が掛かってしまい、NabDの「NabD[3].ziNovif’」選手、「NabD[4].Eiss」選手の連続キルで抑えられ、「NabD」が先制。
いきなり出鼻をくじかれた「Kmn-Gaming」、しかし、その勢いは衰えることは無く、2ラウンド目には即座にBラッシュを仕掛けました。ラッシュを抑えようとする「NabD」はグレネードを駆使しますが、「Kmn-Gaming」は、まるで投げ方を知っているかのように全員が綺麗に避けていき、「Kmn-Gaming」がラウンドを取り返します。
3ラウンド目も、前ラウンド同様にBラッシュを行い、連続で「Kmn-Gaming」がラウンドを取得します。続く4ラウンド目、再びBラッシュを選択。流れに身を任せて、短期決戦を挑む「Kmn-Gaming」でしたが、「NabD」も配置を切り替えて素早くラッシュを対応。「NabD」がラウンドを取り返します。
その後も連続でラウンドを取得し、3-2で「NabD」が一本リード。ラッシュを止めて様子見に入る「Kmn-Gaming」。「NabD」の「NabD[1].Matchaa」選手の単独行動による裏取りを制限するなど、「NabD」対策をきっちりと行い、人数差有利を作るものの、「NabD」の強力なスナイパー陣が試合を押し切り、前半戦は5-3で「NabD」がリードとなりました。
後半戦、まずは時間を使いながら配置を探る「NabD」。多方面を攻めていきますが、その分のカバー不足が目立ち、「Kmn-Gaming」が撃ち合いで圧倒。確実にラウンドを取得します。
2ラウンド、3ラウンド目と、センターが空いていた事から、「iZoNe」戦でも見せたB攻めを駆使。「Kmn-Gaming」の的確なグレネードで、取り返されそうになるものの、「NabD」の「NabD[3].ziNovif’」選手の活躍もありラウンドを連続で取得。7-4となり、流れは完全に「NabD」にあります。
誰もが「NabD」で決まりかと思われた展開でしたが、ここから「Kmn-Gaming」が怒涛の追い上げを見せました。撃ち合いの強さは勿論、単独行動でセンターを攻める「NabD」の「NabD[1].Matchaa」選手を徹底して抑え続け、「Kmn-Gaming」が「NabD」の行動を制限していきます。追い討ちをかけるように、空爆で一気に人数差を作る「Kmn-Gaming」が「NabD」を終始圧倒し、7-8で「Kmn-Gaming」が勝利しました。
まず「Kmn-Gaming」は、グレネードが使い方が非常に上手かった事が印象的です。ファーストキル率の高さと、前半のBラッシュのグレネード回避技術は、「NabD」を「ラッシュ対策をせざるを得ない」状況に持っていかせたという事で、後半の追い上げに関しても、「NabD[1].Matchaa」選手を封じる事で、「NabD」の立ち回りを常に後手に回らせた事が勝因となりました。
しかし、ラウンド得失点差により、「NabD」の二位以上が確定したため、日韓戦出場権、残り一つの椅子は次の試合で決まる事となりました。
第三試合 iZoNe vs Kmn-Gaming
出場権残り一つの椅子を勝ち取るための決定戦となりました。前回大会「SAOMT2012spring」では、「iZoNe」が勝利しています。
前半戦、レッドチーム側が「Kmn-Gaming」、ブルーチーム側が「iZoNe」となりました。まず1ラウンド目、「NabD」戦同様、Aラッシュを仕掛ける「Kmn-Gaming」でしたが、ラッシュ止めの空爆と、Aロングを開幕2人で対策していた「iZoNe」がラウンド取得。
更に2ラウンド目も、前試合同様のBラッシュで勢いに身を任せたラッシュを仕掛けます。「NabD」とは違い、「iZoNe」はスナイパーの「iZN|DAIKI」選手を前面に押し立ててのラッシュ対策を取ります。ファーストキルは「iZoNe」が取るものの、設置よりも敵を倒すことを優先して進み続けた「Kmn-Gaming」が撃ち合いで勝り、ラウンドを取り返します。
しかし、細かい連携よりも勢いを重視する「Kmn-Gaming」に対して、「iZoNe」は堅実的な立ち回りを取っているため、チームプレイでは常に「iZoNe」が優勢。「iZoNe」が連続でラウンドを取っていきます。
続く5ラウンド目も、「Kmn-Gaming」はファーストキルで人数差を作り、B設置ポイントにC4を設置するものの、「iZoNe」の丁寧な取り返しで一気に1on3に。しかしここで、調子が上がってきた「[05]..Noe」選手が爆発!ほぼ最速であろうスナイパーライフルのクイックショットを決め、3人抜きを魅せました。
個人技で対応した「Kmn-Gaming」が流れに乗ったかと思った6ラウンド目。Aロング側を攻める「Kmn-Gaming」に対し、「iZoNe」の「de1piero」選手が素早くカバーに周り、敵を圧倒。ここでも対応力を見せつけます。
何とかラウンド差をつけて後半戦に持ち込みたい「iZoNe」に対して、「Kmn-Gaming」もスナイパー陣が何とか繋げていきます。個人技で強引に押し込む展開で、A設置ポイントにC4設置。「[05]..Noe」選手が再び3人抜きを見せつけて、ラウンドを取り返していきます。
8ラウンド目になり、3-4で「iZoNe」優勢。せめて1ラウンド差に持ち込みたい「Kmn-Gaming」は、再びBラッシュを仕掛けますが、「iZN|DAIKI」選手がスナイパーライフルできっちりと抑えこみ、「Kmn-Gaming」を殲滅。前半戦は3-5で「iZoNe」が2本リードとなりました。
そして後半戦、開幕から「Kmn-Gaming」が空爆によるファーストキルで人数差を作り、ブルーチームの強さを生かすように有利ポジションで待ち構えて、1ラウンド目は「Kmn-Gaming」が取得します。
続く2ラウンド目は、慎重な試合運びから、最終的に挟む形をとり、立ち回りで「iZoNe」が「Kmn-Gaming」を圧倒し、ラウンドを取り返します。3ラウンド目も、「iZoNe」は2ラウンド目同様、時間を使いながら索敵。A設置ポイントに攻め入りますが、ここでは「Kmn-Gaming」の「[02]..Kinko」選手が一気に3人抜きを見せて、ラウンドを連続で取得。
スーパープレイが目立つ第三試合、「iZoNe」も敵を崩すような慎重な立ち回りで4ラウンド目を取得するも、「Kmn-Gaming」はラウンドが進むにつれ、アグレッシブな立ち回りが目立つようになります。要所要所を詰めたと思いきや、すぐに別の場所に移動したりと、「iZoNe」を追い込むように立ち回り続け、5ラウンド、6ラウンドと連続で取得。「Kmn-Gaming」がマッチポイントとなりなした。
そして勝負ラウンドとなった7ラウンド目、ついに「iZoNe」が勝負に出ました!センターを一切使わず、B下からの速攻Bラッシュを仕掛けましたが、設置ポイントで挟むように待ち構えた「Kmn-Gaming」がグレネードを一切使わず、隙を生じぬ撃ち合いのみで応じ、見事ラッシュを封殺。7-8で「Kmn-Gaming」が勝利となりました。
ファーストキルの取り合いにおいては、「Kmn-Gaming」が終始優位に立っていたものの、人数差が不利の状況での「iZoNe」の立ち回りは隙が無く、何度も取り返すシーンがありました。
しかし、その「iZoNe」に対しても、「Kmn-Gaming」はリスクよりリターンを優先した立ち回りを取り続け、「NabD」戦同様、「iZoNe」の立ち回りを後手に回らせる展開にさせたことが、最後のラウンドの「iZoNe」のラッシュに繋がったのではないかと思います。そして、それが勝因になったと思います。
日韓戦に向けて
1位「Kmn-Gaming」、2位「NabD」、3位「iZoNe」という結果になり、日本代表は「Kmn-Gaming」と「NabD」に決まりました。日韓戦は9月に開催予定の「東京ゲームショウ2012」で行われる予定で、練習期間は4ヶ月と十分に有るので、これからはお互いに協力し、勝利に向けて頑張って欲しいと思います。
韓国でもサドンアタックは非常に人気で、強豪クランが来日する予定なので、今の日本が何処まで戦えるのか、待ち遠しいですね。サドンアタックを遊んでいる皆さんも是非、日本代表と練習試合をしていただき、本番では一緒に応援しましょう!
それでは今回はこのあたりで。頑張れ日本!
yukishiro
オンラインゲーム実況アナウンサー。様々なFPSタイトルの大会を実況している傍ら、プレイヤーとしても世界大会に出場した経歴を持つ。
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