アメリカ・ロサンゼルスのLAコンベンションセンターにて2012年6月5日~7日(現地時間)まで開催された「E3 2012」。スクウェア・エニックスブースでは、2012年度第3四半期に無料サービス期間の運用開始を予定している新生「FFXIV」について、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを行うことができた。
「ファイナルファンタジーXIV」(以下「FFXIV」)は、2010年9月にPC用オンラインゲームとしてパッケージが発売され、同日よりサービスが開始されたMMORPG。サービス当初はサーバーラグやゲームバランスの問題により、「ファイナルファンタジー(以下「FF」)」として期待されている水準に届いていないとして、無料期間の延長や開発の新体制移行といった対処が行われ、これまでに幾度もアップデートが行われてきた。
現在は、すでに頻繁なアップデートを含む正式サービスが行われているが、新体制の開発および運営チームから「FFXIV」をより理想的なゲームとするため、「新生FFXIV」の同時開発が発表されている。この新生「FFXIV」は、PC版だけでなく、PS3版と共に2012年度第3四半期に現行バージョンと合流して、再度無料サービス期間の運用開始を予定しているものだ。
すでにPC版をプレイしているプレイヤーは、キャラクターデータを引き継いでプレイすることが可能だが、新たにPS3版も始動するということもあり、期待が寄せられている。今回、E3の会場にて「FFXIV」のプロデューサーとディレクターを務める吉田直樹氏に新生「FFXIV」について様々なことを伺ってきたので、その内容をお届けする。
――まずは「新生FFXIV」がどういったものか、その概要について教えてください。
吉田氏:これまで25年にわたって作り続けてきた「ファイナルファンタジー」シリーズのナンバリングタイトル最新作という位置づけを強く念頭に置き、PS3とPCを同時に発売することで開発を進めているタイトルです。「Ver1.0」という呼び方をするのもどうかとは思いますが、2010年9月末にローンチした「FFXIV」から完全一新し、もう一度すべてを作り直すという覚悟でやっている、まごうことなき最新作です。このVer2.0となる新生「FFXIV」を作るにあたって、3つの柱を掲げています。
まず1つ目の柱が“最高のゲームプレイ”をプレイヤーの皆さんにお届けすることです。この最高のゲームプレイというのはものすごく抽象的な言葉に聞こえるかもしれませんが、MMORPGというジャンルは、バトルシステムに始まり、クエストやコンテンツ、バトルコンテンツ、クラフトといったいろんな要素があると思います。
僕らはそのひとつひとつのシステムを新生「FFXIV」に搭載するにあたって、「とにかく全部最高のものにしないとダメ。何一つ手を抜くんじゃない」と、とにかく最高だって思ってもらえるゲーム体験を皆さんに提供するという考えで物を作ろうね、という話をしています。これが1本目の柱になります。
2つ目の柱が、MMORPGである前にRPGであり「FF」なので、「FF」らしさを感じられる“最高のストーリー”を提供することです。そして3つ目の柱が、“最高のグラフィックス”です。今回のE3に合わせてスクリーンショットを公開させていただきましたが、オンラインゲームとして運営が何年にもわたって続きますので、長く、しかも常に美しくいられる、没入感のあるグラフィックスをお届けしたいと思っています。
ただ「FFXIV」はMMORPGですので、この3つの柱が強力に立っているうえに、プレイヤーのみなさんが形成するコミュニティがしっかり作られて初めて「FFXIV」が完成すると位置付けています。現行版も特にコミュニティのみなさんを非常に大切だと認識し、MMORPGはサービス業であると掲げてこれまで運営・開発を進めてきました。これは新生「FFXIV」でも全く変わらず、やっぱり僕らがお客様に提供するものだけではなく、コミュニティの力というものが上に乗ってゲームが完成すると思っているので、とにかくそこを大切にしていきたいなと。簡単な説明ではありますが、これが新生「FFXIV」の根幹になっています。
――では3つの柱について、具体的な内容をお聞かせください。
吉田氏:まず先ほどお話させていただいたように、最高のゲームプレイってとにかく幅が広いので、少しずつ例を挙げさせていただきます。まず「FF」シリーズである以上、バトルシステムがとにかく重要だと考えています。特に今回はPS3版を楽しみにされているお客様もいらっしゃるので、「FFXIV」で初めてMMORPGに触れることになる方もたくさんいらっしゃると思うんですね。
なので、より「FF」らしくするため、MMORPGだからって無茶苦茶な要望が出てきたりとか、すごく難しいアクションを要求されたりとか、タイミングがシビアだったりすることは、あまり感じさせないようにしようと考えています。そしてオーソドックスにレベルが上がっていき、新しい技を覚え、派手なエフェクトが出るという従来の「FF」の路線をキッチリ継承していきます。
その上で、僕は「FF」って絆のゲームだと思っていますし、今回はMMORPGなので、プレイヤー同士の絆を大切にしたいと思っています。もちろん自分一人でいろんなスキルを組み合わせてコンボを繰り出せるシステムも入っていますが、新生「FFXIV」からは“バトルレジメン”と呼んでいる、パーティ全員で強大な必殺技を出すシステムを搭載していますので、MMORPGでありながらスタンドアローンの「FF」と変わらないグラフィックスクオリティ、エフェクトの質感、演出で楽しんでいただけるように作っています。ここも、僕らが考える最高のゲームプレイの一環だったりします。
ほかには例えばですが、公開したスクリーンショットの中でモーグリが宅配をやってくれている場面があります。やっぱりモーグリって「FF」を代表するキャッチーなキャラクターなので、彼らがシステムとして友達に手紙やアイテムを届けてくれるように、便利なシステムだけどちゃんとキャラクターと一体化されているようにしたかったんです。システマチックにウィンドウを作ったり単純に機能を搭載するだけじゃなくて、「FF」を感じられるように、「世界ってすげえよく作り込まれてる!」と思っていただけるように、最高のゲームプレイを実現するためにこだわっています。
それからこの画像では、NPCのメッセージウィンドウが、通常のチャットウィンドウとは違うことが分かると思います。「FF」はコンソールで育ってきたフランチャイズなので、チャットウィンドウやチャットログと呼ばれるMMORPGによくあるウィンドウではなく、NPCとの会話でもコンソールRPGの雰囲気が感じられるよう、ウィンドウを分けてキャラクター性がちゃんと立つようにしています。こういったこだわりも上げたらキリがないんですが、とにかくプレイヤーのみなさんに楽しんでもらいたいために導入しています。
あとは、召喚獣が最近の「FF」では扱いが小さくなってきていないかと僕は思っているんですよ。昔はとにかく倒すのに一苦労で、でも倒せたら半端じゃない攻撃力で敵をなぎ倒してくれる。もう一度それぐらい召喚獣をフィーチャーしたいなと思っていて、今回は世界を崩壊させる引き金を引くぐらい強力な存在になっていますし、彼らを倒さなければ世界は滅ぶといったエピソードも用意しています。
みんなで力を合わせて強大な召喚獣、例えばイフリートを倒した後は、みんながイフリートを呼べるんじゃなくて、みんなの力を合わせてイフリートを召喚獣として使うというように、「『FF』がMMOになったらこんな想像するよね」というところをこだわって作っています。どうしても最近のMMORPGって小さいコミュニティがインスタンスで遊ぶ、MOとMMOをミックスしたものになってきているんですけど、そういったパブリックの遊びですね。誰かがイフリートを召喚すると世界中の天候が一定時間イフリート用の天候に変わり、召喚場所から遠く離れていても「ああ、今誰かがイフリートを呼んだんだな」と分かるようにとか、パブリックな要素にも「FF」を感じて頂きたいなと。
――イフリートを召喚するために必要なコミュニティの大きさというのはもう考えているのでしょうか?
吉田氏:イフリートを倒せる人数がいればそれが最小のコミュニティサイズになりますが、「じゃあコミュニティに入らないと『FFXIV』を楽しめないの?」というのは僕はNGだと思っているんです。今回の新生「FFXIV」から、ほかのMMORPGでいうギルドに相当する“フリーカンパニー”という要素が入りますが、このフリーカンパニーにも傭兵やゲストといった仕組みを取り入れています。
例えば、仲の良いメンバー同士で構成された6人のフリーカンパニーがあったとして、人数が2人ぐらい足りないというときに、ほかのフリーカンパニーに所属している人を傭兵という形で誘うことができるんです。フリーカンパニーを成長させるためのポイントがあるんですが「そのポイントを持って行っていいからちょっと手伝ってよ」といった感じですね。それから、どこにも所属していないけどちょっと参加させてほしいという場合はゲストで参加できますので、極端に大きなコミュニティを形成しなくても、普段からソロプレイしている人でも楽しめる設計になっています。
召喚獣は倒せば基本的に召喚権利を得られるんですが、今回はストーリー上に登場する“蛮神”と呼んでいる召喚獣と、召喚権利を争うバトルは分けて考えています。召喚獣はいつどこに出現するかわからず、出くわしたときに倒さないと召喚の権利が得られないんです。しかも倒して召喚の権利が与えられるのは、約2週間で考えています。期間は調整中ですが、その間に召喚するためのゲージをみんなで溜めなければいけないですが、このゲージはいろんなコンテンツをプレイしていただくことで溜まるようになっています。
そしてゲージがマックスになってコミュニティのリーダーがボタンをポチッと押せば、すさまじい攻撃力で敵をなぎ倒してくれます。普段自分たちのカンパニーでは倒せないようなボスも、召喚獣が来てくれれば一発!っていうぐらいダイナミックに作ってもいいんじゃないかなと、召喚獣って元々そういうものだよねと思っています。
――現行版でも出ている蛮神イフリートが、新生「FFXIV」では召喚獣として呼ぶための存在としても出てくるということでしょうか?
吉田氏:はい、別のバトルとして出てきますね。ストーリー上、一度戦うシチュエーションがあり、それによって召喚獣としての力が抑えられた状態になります。ただ、当然神なので死なず幻術界に戻っただけで、時々地上に現れるところを倒せると、じゃあ一回だけ召喚の権利を…という感じです。
――召喚獣でないと倒せないボスというのは存在するんでしょうか?
吉田氏:それは作るつもりはないですね。
――ではみんなの力を合わせれば倒せるものを、より少人数でも倒すことが可能になると。
吉田氏:エンドコンテンツと呼ばれる高難易度のコンテンツとなってくると、どうしても「俺たちじゃ倒しきれないよね」という状況も出てくると思います。そういう時は、もう「召喚獣様お願いします」でいいんじゃない?と僕は思っています。毎回お願いできるわけじゃないですし(笑)。
――実装される召喚獣が増えてきたとき、複数のコミュニティがそれぞれ召喚獣を召喚できる権利を持った状態もありうるのでしょうか?
吉田氏:ありうると思いますが、さすがに世界が壊れてしまうので、ボタンを押したレスポンスが先にサーバーに届いた方が勝ちですよ(笑)。「召喚獣を4匹集めて全員同時に押そうぜ!」といったことはプレイヤーの皆さんでやると思うんですが、そのゾーンで一回召喚獣が呼ばれたら、15分ぐらいはほかの召喚獣が呼べないなどの制限は入れると思います。
――MMORPGというとユーザーが自分たちで世界観を作っていくこともありますが、そこに「FF」らしさのストーリーを盛り込んでいくと思います。そこで工夫された点や、プレイヤーのコミュニティとストーリーを共存させていくために考えたことがあれば教えてください。
吉田氏:MMORPGのストーリーラインを構成するときに難しいのが、従来のスタンドアローンのゲームよりレベルアップやキャラクターの成長スピードが遅くなるところです。僕らもビジネスなのでいろんなことを体験してゆっくり世界を進んでもらいたいと思っていますが、ひとつ大きなエピソードがあって、次のエピソードまでに2週間かかってしまうと、没入感が薄れてしまいますよね。そこで今回、大きなエピソードの間にかなりの数のサイドエピソードのクエストを用意しています。
今回冒険者たちはエオルゼアという世界に生まれますが、そのエオルゼアを侵略しようとしているガレマール帝国との戦いも、キッチリ決着がつくところまで新生「FFXIV」で描こうと思っています。召喚獣もその中で非常に重要な役割を果たしており、現れると世界を滅ぼす火種となる召喚獣がいる中で、エオルゼアを侵略するガレマール帝国をどうやって止めるか、でも召喚獣を放置しておくと…というところが複雑に絡み合っていきます。
あとは今現行版でやっている“第七霊災”と呼んでいる世界が滅亡するというシナリオ、その後に新生「FFXIV」の世界があるんですが、第七霊災の真相とはなんだったのかという内容がサイドエピソードで横軸に語られていきます。そういったキーワードをちりばめ、プレイのモチベーションを切らさないことがやっぱり一番の工夫だと思っています。そしてMMOだからって妥協しないことですね。例えばカットシーンも「MMOだからこの程度でいいや」ではなく、むしろMMOだからこそ、印象的なシーンはちゃんとコストをかけて作るべきだと思っているので、そういう意味でも最高のストーリーを作ることを今回のテーマにしています。
――MMORPGだと戦闘が作業的になってしまうこともありますが、ストーリーにのめり込んでいくと自然と次のレベルに上がっていくようなバランスになっているんでしょうか。
吉田氏:基本的にはクエストをかなりの数搭載しますので、特にゲームの序盤はクエストをこなしているだけでレベルが上がっていきます。MMORPGのもっとも難しいところはパーティを組むところだと思っていて、それを超えられればすごくハマれるゲームジャンルなんですが、パーティプレイって大変なので、レベル20ぐらいまでは一人で遊んでいてもいいと思うんですよ。で、徐々にレベル20ぐらいになってダンジョンを探索してほしいなんてクエストが出てきたときのために、“コンテンツファインダー”というプレイヤーマッチングシステムを搭載しています。
これは仮にAというダンジョンに行きたいとき、システムウィンドウを開いて自分の情報を「剣術士です」「レベル20です」「レベル上げたいです」といった風にファインダーで登録すると、自分のワールドだけじゃなくて複数のサーバーから、同じAのダンジョンでレベリングしたい人で、かつレベル20ぐらいのメンバーを自動的にマッチングしてパーティを作ってくれるというものです。「パーティを作ってダンジョンまでテレポしましたので、さあどうぞ。クリアしたら解散して元の位置に戻ります」というぐらいパーティプレイをカジュアルにしようとしています。なのでレベル20ぐらいまではクエストをこなしつつ世界を見て回り、大体世界を一周したらそろそろパーティプレイをやってみようか、という流れを作っています。
――ストーリーの内容は現行版あっての新生版という感じなのでしょうか、それとも新生でまた新しくなるのでしょうか?
吉田氏:もちろん現行版のときにあったメインシナリオが何も完結していないので、僕はちゃんとこれを完結させることも大事で、新生版の大きな仕事のひとつだと思っています。なので、改めてガレマール帝国との決着をつけるところが新生のメインシナリオになります。ここは結構変わっている部分もありますので、既存プレイヤーの方も、最初からプレイするとかなり新鮮に感じてもらえるんじゃないかなと考えています。
僕は今のメインシナリオの更新を途中で止めてしまいましたけど、とにかく分かりづらいんですね。何のために戦っているのか、誰が敵で誰が味方なのか、モチベーションがはっきりしていません。ここは全部僕が直接手を入れている部分でもあるので、とにかく分かりやすく、とにかく燃えられるようにしていきます。その上で、第七霊災っていう大事件が勃発した後の世界で、新しいシナリオが進んでいきます。既存プレイヤーと新規プレイヤーの違いは、その大事件の歴史の当事者だったか、そのあとに生まれたかという違いですね。
もちろん現行版の流れを知っていれば「あの時のはこれだったのか!」といった驚きはありますが、新生から始めたプレイヤーに対しても同じように答えは用意しています。新生版を作ること自体がトリッキーではありますが、そこも「FFXIV」らしさというか、誰もやったことのないことを味わえるチャンスかなと思っています。あとはプレイヤー同士で、「あの時こんな事件があって、実はこれに繋がってるんだよ」という風に、コミュニティが補完してくれると嬉しいなと思っています。
――では新生版が始まったら現行版のストーリーはプレイできなくなると。
吉田氏:第七霊災と呼ばれるものに関しては、リアルタイムに進行するストーリーなので、もちろん新生版が始まった時には一切残っていないですね。
――その代わり新生版から入っても違和感なくプレイできると。
吉田氏:はい。なので、仮に今の「FFXIV」の知識がまったくない状態でゲームをプレイしたときに、そこかしこで「あの時は本当に悲惨だった」といった話がされていても、RPGでよくある“大きな戦いが終わった後の世界”みたいな感覚だと思っていただければ大丈夫です。その大戦を知っているプレイヤーがいるかいないかの差という感じですね。
――先ほどコミュニティや絆が大切と仰っていましたが、プレイヤーズサイト「The Lodestone」のリニューアルや機能拡張の予定はあるのでしょうか?
吉田氏:「The Lodestone」も新生「FFXIV」の正式サービス開始時点で全面リニューアルさせていただきます。フリーカンパニー機能が入ってきますので、コミュニティ機能をもっともっと強化しなければいけないですし、PV数を上げるための施策も全然足りていないと思っています。特にソーシャルネットワーク系との連動がまだまだ弱いので、そこもキッチリ果たしたうえですべて作り直しをしています。プロモーションサイトも作り直していますし、とにかく今のものはほとんど残らないですね。
――私はサービス初期の頃によくプレイしていたのですが、途中でやめてしまったプレイヤーが新生で始めるとき、既存キャラでリスタートするのと、一からキャラを作り直すのはどちらがオススメですか?
吉田氏:どの程度レベルを上げていたかによると思いますが、仮に1クラスのレベルが20前後ぐらいでしたら、僕は最初からプレイしていただいた方がより楽しめると思います。初期の「FFXIV」はとにかく初動の導線のデキが悪かったため、今回はPS3版のお客様も入ってきますので、かなり手厚く、ゲームをプレイしていればMMORPGがちょっとずつ理解できるように導線設計をしています。そのぐらいのレベル帯でやめてしまった方というのは、武器が手に入らなかったり、どうしていいか分からなくなってしまった方々だと思うんです。なので、これまでの印象をガラッと変えていいただくためにも、最初からプレイしていただいた方が楽しんでもらえるじゃないかと思います。
――ほかにも既存プレイヤーを復帰させるような施策を考えていらっしゃいますか?
吉田氏:僕は初期の「FFXIV」が不評をいただいた背景には、ゲーム体験そのものが壊れていたことが原因にあると思っています。このイメージはいくらPR活動をして、いくらプレイしてくださいとお話ししても、なかなか払拭できるものではないんですよね。お客様の信頼を裏切ったものがそんなに簡単に回復するとは思っていないので、やっぱりαテストやβテストを通じて、ゲームに触れてもらえる機会をとにかくたくさん、それも早く作ることで「面白い!」って声をたくさんのプレイヤーの皆さんに届けてもらうことで、「じゃあちょっとやってみるか!」という気持ちになってもらうのが、一番強い動機だと思っています。
じゃあそれを生み出す基は何になるかというと、ゲームプレイそのものが面白いかどうかだと思うんです。「大丈夫、面白いって」という声が出てくれば、何よりもゲームをやる動機になると思うので、そのためにはまずゲームプレイを面白くして、次にそれを分かりやすく使えるPRが必要になってくるかなと考えています。僕はプロデューサーですがディレクターでもあるので、「とにかく真剣にゲームで勝負するのが一番の近道だよ」という話を開発チームにしています。
――なるほど、まず触ってもらえれば分かると。
吉田氏:そうですね。さらに言うなら、僕はそれが既にプレイを止めてしまった皆さんに伝わるのが、新生「FFXIV」がスタートしてすぐじゃなくてもいいと思っているんです。例えば新生がスタートして半年後でも。現行版のディスクをお買い上げいただいている方には、新生版のクライアントをすべて無料でお渡ししますので、半年経って「なんかすげー評判いいじゃん。そういえば俺クライアント持ってて新生の無料でもらえるんだっけ。じゃあちょっとやってみようかな」でよいかと思っています。
※ここで吉田氏が新生「FFXIV」が実機で動いているところを披露してくれた。ここからは実機を見たうえでの内容もお届けしていく。
――このグラフィックスの完成度はどれくらいでしょうか。
吉田氏:グラフィックスの完成度は85%ぐらいで、まだ15%ぐらいはクオリティが上がると思います。最適に関しては逆に15%ぐらい行われていない状態です。現行版もグラフィックスは綺麗と言っていただけていますが、ハイスペックなPCが必要になってきます。ただ今回は、ノートPCで、なおかつ最適化も15%程度しか進んでいなくても、これだけリアルタイムライティング、リアルタイムシャドウをやったうえで動くようになっています。やっぱりこのクオリティでMMORPGが遊べるのは「FFXIV」だけだと思います。実は今までライティング固定の作り込みになっていたんですが、生きている世界をしっかり作るために、「FF」ナンバリングシリーズでも初のリアルタイムライティング、リアルタイムシャドウにしています。
――複数のユーザーが集まった時にでも、あまり重くならないのでしょうか?
吉田氏:数によりますね。キャラクターが集まりすぎるとポリゴン数がとんでもないことになりますので、当然フレームレートは落ちていきます。ただ、現行版のように40体以上のキャラクターが表示されないといった設定ではなく、フレームレートが徐々に落ちていってもいいから、とにかくたくさんキャラクターが表示されるようにしています。
あと今回の新生版で新しく搭載したエンジンはかなりスケーラブルなものになっています。例えばシャドウマップ4枚使ってLOD(Level of Detail)がオフの状態で、すべてハイポリゴンでも現行に比べるとかなり動作が軽いですが、LODをオンにすればもっとスペックの低いPCでもサクサク動きます。すごく性能のいいPCで設定をHIGHにすればとにかくハイクオリティで見れて、オプションを切っていけば低いスペックでも動くし、オプション切った状態でも、カメラに近づけばものすごく綺麗というスケーラブルな仕様になっています。
PS3に関してはメモリの制限があるのでテクスチャ解像度とミップマップのサイズは少し落ちますが、自分の周囲はハイモデルという思想は変わらないので、近くによってスクリーンショットを撮ればたぶん区別がつかないぐらいにはなっています。
――動くための最低ラインは下がっているんでしょうか?
吉田氏:はい、かなり下がっています。特に現行で「FFXIV」の推奨マシンを持っている方は買い替えるはまったく必要ないですね。
――高性能PCであれば現行版よりもグラフィックスの質は上がっているのでしょうか?
吉田氏:綺麗の観点が人によって違ってきますが、ただキャラクターはこのクオリティのまま相当数表示できると思いますね。MMORPGはやっぱりキャラクターがたくさん映せてなんぼだと思っているので、ハイスペックになればなるほど、高いクオリティで40人50人のキャラクターが画面の中に入ってきても快適に動くようになっています。マップもすべて作り変えていますよ。
――全体マップの広さは現行版と比べてどれくらいになっているんでしょうか?
吉田氏:現行版のマップがシームレスなので比べにくいと思うんですが、そんなに狭くなっている印象はないと思います。今回はゾーンをしっかり割って、ローディングが入るようになっていますが、その代りひとつのマップの中をちゃんとレベルデザインして、ユニークなものを置いて、ついそっちへ行きたくなるような設計にしています。必要のないところは狭くしましたし、逆にシナリオやクエスト、ダンジョンがあるところは拡張していますね。
――ゾーンをまたぐ回数は多かったりするんでしょうか?
吉田氏:1ゾーンあたりが2キロ×2キロの最大サイズで作っていますので、そうそうないですね。
――UIもまたガラッと変わっていますね。
吉田氏:UIはゼロから作り直しました。あとはPCとPS3版のUIを完全に分けて作っていますので、マウス・キーボードとゲームパッドモードを全く違うUIで搭載します。
――PC版ではどちらかを選べるように?
吉田氏:はい、選べますね。
――新生版でもαやβなどのテストを実施されると思いますが、ユーザーが参加できるのはどのあたりからになる予定でしょうか?
吉田氏:まずは8月のタイミングでPRの大きな立ち上げを予定しています。そこからさらに情報公開が進んでいき、9月末からサーバー負荷を目的にしたαテストを実施予定です。このαテストが、かなりクローズドではありますが一般の方にもご協力いただくテストになりますので、早い方だとそこから触れられる方がいらっしゃいますね。βテストからは多くの方に参加いただけるようにしようと思っていますし、βテストを始めてからある程度大きなバグが修正でき、参加者からフィードバックいただいたものの調整が進んだ段階でPS3版のβテストがスタートし、最後は一緒に着地するという風に考えています。今年の冬頃には皆さんに触っていただける機会が訪れると思います。
――MMORPGなのでパーセンテージで言うのは難しいと思いますが、全体の開発状況はいかがですか?
吉田氏:そうなんですよね、MMORPGってとても難しいです。マスターアップしてもなお開発していて、初日にパッチが当たるなんてことも多いので(笑)。ただそうですね…全体で言うとゲームシステムのかなりベーシックになるシステムはほぼ9割できていて、今コンテンツを盛って盛ってと作業しているところなので、どこまで盛りつくせるかですね。システムも含めていったら65%ぐらいでしょうか。最後の35%は何と聞かれたら、コンテンツという答えになると思いますね。ダンジョンをひとつでも多く、クエストをひとつでも多く、ユーザインターフェースを少しでも快適にという感じです。
――αテストからβテストになるタイミングでもどんどんコンテンツが追加されていくようなイメージでしょうか?
吉田氏:はい、もうずっとです。β期間中もプレイヤーの皆さんに公開しないものを裏でずっと作っていると思います。現行クライアントですでにカンストされている方がたくさんいるので、ゲーム序盤だけ盛り込めばいいわけではなく、ハイレベルなコンテンツも同時に用意しておかないと、プレイヤーの皆さんが「せっかく新生版になったのに遊ぶものがないよ」という状況になってしまうので、そこが最後の最後、時間との戦いになるかなと思います。
――クエストはもちろんだと思いますが、現行にはなかったコンテンツで代表的なものをいくつか教えてください。
吉田氏:そうですね、チョコボが育成できるようになります。それも足が速くなるといった育成ではなく、強くなっていきます。今回チョコボは乗るだけじゃなく、降りて一緒に戦えるようになることを予定していて、例えばタンクとして育てるとか、ほかにもアタッカー、キャスター、ヒーラーとして育てるという、大きく分けて4つの育て方がありますので、チョコボのレベルを上げながらどういう風に育てていこうかも楽しめるようになっています。
あとはクリスタルタワーというコンテンツも入ります。これは「ファイナルファンタジーIII」のラストダンジョンが「FFXIV」のクオリティで表現されていると思っていただければ一番わかりやすいかなと。
――あのものすごく長いダンジョンですね(笑)。
吉田氏:サーバーゲームなのでさすがにセーブできないなんてことはないですが(笑)。ただ、ちゃんとクリスタルタワーらしさを企画的に詰めていますし、あのモンスターやこのモンスターが「FFXIV」クオリティで登場します。僕は「FFXIV」はファンサービスタイトルでもあると思っているので、過去の「FF」のエッセンスも取り入れています。例えば「ファイナルファンタジーVI」の魔導アーマーがあのデザインで「FFXIV」に登場し、いずれプレイヤーも魔導アーマーに乗れるようになりますし。シリーズ25周年通じてやってきて、プレイヤーの皆さんそれぞれの世代で思い出になっていることをどんどん「FFXIV」の中に取り込んでいって、いろんな世代のプレイヤーが「FF」の話をして盛り上がれるのは何より楽しいことじゃないかなと思っています。
――最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。
吉田氏:一番初めにお話しさせていただいたことの繰り返しになってしまいますが、僕らはまごうことなき「FF」シリーズの最新作として、最高のゲームプレイと、最高のストーリーと、最高のグラフィックスをもって皆さんをお待ちしております。ぜひ「FFXIV」の虜になっていただき、強力なコミュニティを築いていただけると嬉しいです。僕らはその柱三本をこれからも立続けていきますので、プレイできる日を楽しみにしていただきたいなと思います。
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