「リネージュ2」「タワー オブ アイオン」で導入される新課金モデル「ゲージ」とは―エヌ・シー・ジャパンへのインタビューと合わせて詳細をお届け

エヌ・シー・ジャパンが11月20日より「リネージュ2」と「タワー オブ アイオン」で導入する無料体験区間と新課金モデル「ゲージ」。先だってその概要についてお伝えしたが、「ゲージ」モデルの詳細や導入の経緯などについて、同社の担当者へのインタビューと合わせてお届けする。

新課金モデルの詳細説明が行われたプレスカンファレンス第二部

シン ミンス氏
シン ミンス氏

先日お伝えしたプレスカンファレンスの後半では、エヌシージャパン Game Unit/Game Business Departmentヘッドマネージャーのシン ミンス氏が登壇し、ゲージモデルについての説明を行った。

ゲージモデルにはプレイ可能日数30日に相当する30ゲージカートリッジと90日に相当する90ゲージカートリッジが存在するが、どちらも空いているゲージカートリッジを購入する形となる。1ゲージが1日分を表しており、購入後は1日1ゲージ貯まっていき、ゲージが満タンになるまでプレイできるので、30ゲージカートリッジであれば30ゲージ分(30日分)ゲームを楽しめるということになる。

また、課金アイテムを購入するにはカイモと呼ばれる通貨をチャージして消費するという手段を取る必要があったが、カイモの代わりにゲージを使ってアイテムを購入することも可能だ。これまで通りカイモでの購入もできるのだが、商品ページは通貨ごとに専用のページが用意されており、ゲージで購入する場合には「1ゲージ」「3ゲージ」など、各アイテムに価値が設定されている。

ゲージでアイテムを購入するとその分プレイできる日数は減ってしまうが、カイモを追加チャージする手間を省けるのが特徴となっている。ゲージモデルでは、15ゲージと30ゲージ貯まるごとにアイテムなどがもらえる特典も用意されている。

1日1ゲージ貯まっていくと説明したが、これはゲームをプレイしたかしていないかに関わらず、1日1ゲージ貯まる仕組みとなっている。そのため、例えば出張などでプレイできない期間があると事前に分かっていれば、その分はアイテムを購入してゲージを貯めきってしまい、帰ってきてから新しくゲージを買ってまたプレイする…というように、これまでと比べると自由度と利便性が増しているという。

システム上はゲージが貯まるというものだが、認識的には「30日コースであれば30日分のゲージがあり、1日1ゲージ消費していく。ゲージを消費して課金アイテムを購入するとプレイ可能日数は減るが、カイモのチャージが不要。ゲージを使い切ると特典がもらえる」と考えると分かりやすいだろうか。

なお、ゲージモデルが導入されるのは「リネージュ2」と「タワー オブ アイオン」の2タイトルだが、ゲージカートリッジはタイトルごとに購入することとなる。特典もタイトルごとに用意されており、公式サイトにログインすると画面左側にゲージの状況が表示され、ゲージの各ポイントにマウスのアイコンを乗せると(マウスオーバーで)特典の内容を確認できるようになるとのこと。

今後のプロモーション展開についても明らかに

須藤 清智氏
須藤 清智氏

ゲージモデルの説明後には、Game Unit/Game Business Department/Marketing Creative Teamマネージャーの須藤 清智氏からプロモーション展開に関する説明が行われた。今回のゲージモデル導入にあたり、何を伝えていくべきかを社内で協議した結果、MMORPGが持つ本来の面白さや、MMORPGだからこそ体験できる絆や人間味のあるドラマを伝えていく方向性に決まったという。

その中の展開として、ナレーションに声優の田村ゆかりさん、楽曲にはMMORPGを知っている人が懐かしく思える曲としてEvery Little Thingの「Time goes by」を採用したTVCMを放送するとのこと。ほかにもスペシャルサイトの立ち上げや、ネットカフェとの連動キャンペーン、パッケージ展開、秋葉原では駅貼り広告や11月23日~25日にイベントの実施を展開することが明かされた。

パク氏とシン氏にゲージモデルの詳細についてインタビュー

――無料体験区間とゲージモデルの導入に至った経緯を教えてください。

パク ジェフン氏
パク ジェフン氏

パク氏:現在は基本料無料のアイテム課金制が主流になってきており、世の中に無料で遊べるものが溢れています。そうすると、新規ユーザーさんや今はプレイを止めているユーザーさんが、弊社の月額制である「リネージュ2」や「タワー オブ アイオン」をプレイするハードルが高くなってしまいます。

特に新規ユーザーの方は、ほかに安いものや無料のタイトルがあればそちらをプレイすると思いますし、これまで自社タイトルのいいところをうまく伝達できていなかったもどかしさもありました。もちろん弊社のタイトルはいいゲームだと自信を持って運営してきましたが、どうしたらもっと魅力を伝えられるのかと考えてきた中で、今回のゲージモデルのアイデアが出てきました。

――まずゲームに触れてもらうことが重要だと考えたんですね。「リネージュ」ではすでに無料化されていますが、その成功もあってゲージモデルの導入に至ったのでしょうか?

パク氏:「リネージュ」はゲージモデルとは違い、完全な基本料無料のアイテム課金制になっていますが、そちらも安定しています。弊社は既に克服済みですが、ただ単に無料化しても、月額制だったときの面白さや安心感が足りなくなることも考えられるため、そういう意味では無料化タイトルのデメリットも把握できたつもりです。

弊社のタイトルは月額制を採用してサービスが始まったものが多いため、コンテンツが整っていない中でいきなりアイテム課金制に切り替えても、ユーザーさんの不安を煽るだけになってしまいます。そこで今回は、新しい形としてそのデメリットをできるだけなくせるような形にしたいと思い、ゲージモデルを採用しました。

――無料化すると当然新規ユーザーの流入が見込めますが、不正行為の可能性も高くなると思います。ユーザー数増加に伴う不正対策の取り組みや体制の変更はあるのでしょうか?

パク氏:基本的に今の体制と大きな変更はないと思います。今も常に社内でモニタリングを続けており、いわゆるbotやRMT業者を定期的に取り締まっていますし、そのためのシステムも完備しています。今後もそれらをうまく活用すれば快適な環境を提供できると思いますし、無料化に伴ってユーザーさんが増えても十分に対応できると考えています。

――今回の2タイトルもそうですが、「リネージュ」は完全に基本料無料のモデルになっています。今後もその方向にシフトしていくのでしょうか?

パク氏:多様なニーズを持ったユーザーさんがいらっしゃいますし、弊社でもゲームタイトルを多様化していかなければいけないと思っています。ただ、単純に「無料だから」「有料だから」といってタイトルを増やしていくのではなく、できる限りいろんなタイトルを取り入れ、弊社タイトルのお客様が面倒な手続きなしでゲームをプレイできるようにしていきたいという考えがあります。

――タイトルによってゲージが分かれるとのことですが、今後共通化したり、ほかのタイトルでゲージを導入する予定はあるのでしょうか?

シン ミンス氏
シン ミンス氏

シン氏:今後はひとつのゲージでさまざまなタイトルをプレイしてほしいという考えがありますので、長期的な計画としてゲージの共通化をするための追加開発は検討しています。

ただ、今回「リネージュ2」と「タワー オブ アイオン」でゲージモデルを採用したのは、タイトルの状況や新規で始めるお客様の流入ハードルをなくそうなど、コンテンツの特徴を考えて企画されたものですので、今後新しいゲームを運営するとなった場合に、ゲージモデルをそのまま使ってもいい結果が出るとは限りません。そのため、タイトルの特徴や状況によってどのモデルを採用するかは変わっていく可能性があります。

――ポータルサイトの通貨であるカイモとの住み分けはどうなっているのでしょうか?

パク氏:プリペイドカードやクレジットカードでカイモをチャージしていただき、そのカイモでゲージのカートリッジ(30日相当、90日相当)を購入していただく形式となります。

ゲージでアイテムを買わず、30ゲージカートリッジでキッチリ30日遊びたいという人のために、これまで通りカイモを使ってアイテムを購入できるようにもしています。ただ、カイモで100円相当の商品をゲージで買おうとすると1ゲージ分の設定になると思いますし、ゲージモデルは30ゲージカートリッジで2000円ですので、1ゲージ約66円相当になるため、ゲージで購入したほうが安くなるというメリットがあります。

――ゲージでしか買えないアイテムも用意するのでしょうか?

シン氏:基本的に全体のアイテムリストは共通ですが、ゲージを溜めた特典などのアイテムやゲージ決済専用のアイテムは月に一回しか購入できないといった制限を設けつつ、専用のアイテムを用意することはあります。

――韓国ではゲージモデルを採用しているのでしょうか?

パク氏:現状では検討しておらず、まず日本国内で実施してみて、その結果次第だと思っています。ただ、課金モデルは現地の状況に合わせてかなり違うと思いますので、同じゲージモデルをそのまま韓国でも採用するかは不確定ですね。

――ゲージモデルを日本で導入しようと思った理由は何でしょうか?

パク氏:一番の理由は、新規のコミュニティをもっと活性化させるためです。月額制だとまずお金を払わなければいけないというハードルがありますので、新規ユーザーの方は特にためらいがあると思います。今回ゲージモデルを導入することで新しいユーザーさんに入っていただき、ゲームが賑やかになってコミュニティも活性化し、ゲームがさらに面白くなると考えています。新規ユーザーさんは気軽にゲームを楽しめますし、ゲーム内が活性化すれば既存ユーザーさんにとってもメリットがありますので、両方から見てメリットを作っていきたいというのがありました。

――ゲージモデルの導入で新規ユーザーを呼び込むのに合わせ、新サーバーを用意する予定はあるのでしょうか?

シン氏:新規のお客様と既存のお客様が、今あるサーバーで一緒になってコミュニティを築いてもらうことを第一の目的として考えています。ただ、新サーバーを作ることでよりゲーム内が活性化するのであれば、新サーバーも用意したいと思っています。全てのお客様が楽しめる状況を作ることが目的ですので、ゲージモデル導入後の結果次第になると思います。

――ひとまずは既存のサーバーだけということですが、新規ユーザーへの支援キャンペーンなどは予定されているのでしょうか?

シン氏:今でもパワーマップというレベル上げをサポートするシステムを取り入れていますが、今後新規のお客様が入ってきたら、パワーマップをより強化して、早く既存のお客様と一緒に遊べるレベルになれるよう支援していく予定です。

――ゲージをほかのユーザーや別のアカウントに送ることはできるのでしょうか?

シン氏:ゲージで購入できるアイテムをプレゼントすることはできますが、今のところゲージをそのまま送ることはできません。ゲージを送れるようになるのも面白いかなと思いますので、そこは検討していきたいと思います。

――ゲージが貯まった各段階でもらえるアイテムは一種類だけなのでしょうか?

シン氏:そこも月によって異なりますが、12月も今申し上げた内容に加えて何か複数アイテムから選択可能にできないかと考えているところです。当然クラスごとに必要なものは違いますし、人によってプレイのリズムも違いますので、複数アイテムから選択できるようにすることも重要だと思っています。

――ゲージ特典で季節限定アイテムがもらえる可能性もあるのでしょうか?

シン氏:それも予定していますね。もちろんイベントショップでも販売しますので、ゲージを溜めた特典だけでなく、ゲージやカイモで購入できるようにもする予定です。

――ネットカフェを利用してプレイする人にとっての環境に変化はあるのでしょうか?

シン氏:ネットカフェであれば無料でプレイできるというのはこれまでと同じように続けていきます。ネットカフェでプレイしている人も、ゲージ商品やゲージ特典が欲しい場合は30ゲージ、90ゲージの各コースを購入することもできます。今まで実施してきたネットカフェ向けのキャンペーンもそのまま維持しますので、大きく環境が変わることはありません。

――ゲージを貯めるためのアイテムの具体例を教えてください。

シン氏:基本的にカイモを使って購入できる今のショップと同じ商品が用意されています。中には目玉商品みたいなものを月替わりで用意することも考えていますが、ゲームの格差に影響するようなもの、例えばものすごく強い装備を販売するといったことはせず、これまでのポリシーを維持していきたいと思っています。

――ゲージを貯めきったら新たに購入することになりますが、15ゲージ刻みの特典だけでなく、累積での特典は考えているのでしょうか?

シン氏:詳しくは言えませんが、現在企画をしているところです。

――予約決済をした分はゲージ交換ポイントになるということですが、このポイントについて教えてください。

シン氏:予約決済をしていると、11月20日の定期メンテナンスに合わせて、決済額が1カイモあたり1ポイントとして「ゲージ交換ポイント」に換算されます。ゲージ交換ポイントでは15、30、90の各ゲージカートリッジを購入することができ、価格はそれぞれ1000、2000、6000ポイントとなっています。100ポイントで「1DAY-FREE」を購入することもできますよ。ゲージ交換ポイントに換算されるのは予約決済分だけでなく、無料クーポンも対象になっていまして、クーポンの場合は1日につき100ポイントに換算されます。

有料でプレイされている方の場合、ご利用の決済分については自動的にゲージカートリッジに変換されます。変換されるカートリッジの大きさは15/30/45/60/75/90の15ゲージ刻みになっており、残りプレイ日数1日あたり1ゲージとして、15ゲージ単位で繰り上げを行います。例えばプレイ日数が63日残っていた場合、60日がそのまま60ゲージに、残り3日分は15ゲージに繰り上げされ、計75ゲージに変換されることになります。

ゲージモデル導入後、無料区間にいる既存ユーザーの方も決済分などはポイントに換算されますので、無料区間を超えた後にポイントでゲージカートリッジを購入していただくことが可能です。無料区間にいる方でもゲージを購入することはできますが、その場合も日が経つにつれてゲージが貯まっていきます。

――ではポイントはすでに決済をしている人は新しいゲージモデルに移行するための一時的な通貨のような認識なんですね。このポイントでアイテムを買うことはできるのでしょうか?

シン氏:ポイントで直接アイテムを購入することはできませんので、いったんゲージカートリッジを買っていただき、その空きゲージからアイテムを購入していただく流れになります。

――ゲージモデルの導入で、長年遊んでいるユーザーへの特典は考えているのでしょうか?

パク氏:予約決済をされている方はかなり多く、そういった方々がゲージモデルに切り替わることで損をするようなことはありません。長く遊んでいただいており、予約決済されている方にこそメリットがあるようなシステムも考えているところです。

――ポータルサイトではログインするとゲージ特典などを確認できるようになっていますが、ゲージシステムはかなり前から考案されていたのでしょうか?

パク氏:ポータルサイトのリニューアルとゲージシステムの導入は連動していたわけではなく、偶然2つが重なった状況です。ポータルサイトは1年ほど前から、ゲージシステムは今年に入ってから企画されており、この2つを一緒のタイミングで実施するという話ではありませんでした。ただ、今のポータルサイトの構成上、ゲージを横にするより縦にした方がいいだろうといったように、一部をリニューアルと合わせたという経緯はあります。

――ありがとうございました。

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