勝てるゲームにして出したい―「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」ニコ生への出演を終えた吉田直樹氏にβテストへの意気込みを聞いた

スクウェア・エニックスは12月26日、ニコニコ生放送にて「新情報初公開!吉田プロデューサーと生実況!ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼアα版」を放送した。番組終了後、吉田直樹氏にインタビューを行う機会が得られたので、その内容をお届けする。

本番組は、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア(以下、「新生FFXIV」)」のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏がゲスト出演し、本作の新情報発表や生実況を行うというもの。総来場者数は60,000人以上、コメント数も47,000以上におよぶなど、注目度の高い番組となった。

番組の模様については別途お伝えするが、放送終了後には、吉田氏が番組内で発表した内容や、27日に公開となったβテストのロードマップについて話を伺うことができたので、その内容をお届けする。

――まずはニコニコ生放送に出演しての感想をお聞かせください。

吉田直樹氏
吉田直樹氏

吉田氏:普段放送しているプロデューサーレターLIVEはスタッフが身内で固まっていて、内容も「FFXIV」プレイヤーのみなさんに向けたものが多かったですが、今回はある意味公式放送になるので、少し緊張していました。

なかには「新生FFXIV」にあまり興味がなくても「どれどれ見てみるか」という感じで視聴される方もいらっしゃると思うので、心配事もいくつかありましたが、非常に盛り上げていただいて楽しかったです。

――放送中で一番大変だった瞬間はどこでしょうか?

吉田氏:「やばい、これは絶対サーバーが落ちてる!」と自分でも気づく瞬間があり、あの時はヒヤっとしました。ですが、司会者の方やひろゆきさんに素早くフォローしていただいたので助かりました。

――放送でひろゆき氏と共演してみていかがでしたか?

吉田氏:すごい楽しかったですよ。正直「このまま飲みに行きましょう」と言いたいぐらいです(笑)。これまで直接お話しできる機会もなかったですし、何を聞くかといったことも実際に放送が始まらないと質問が出てこない方だと思っていたので、どんな質問をされるかドキドキしながらもすごく楽しみにしていました。

特に、前回のWindows 8の番組で「新生FFXIV」に対して的確なコメントをされていたのがすごく印象的だったので、面白い話をさせていただけそうだなと思っていました。

――放送ではスペックが異なる3つのPCを使用されていましたが、今後PCの要求スペックが変わる可能性はあるのでしょうか?

吉田氏:αテストではサーバー負荷試験が第一目標だったので、最初は応募していただいた方の中からハイスペックPCを持っている方を当選させていただき、徐々に安定性を見て当選者を増やしていきました。我々としては、品質を落とさずゲームが動作することを保証したうえでどんどん解放していきたいと思っているので、要求スペックが変わる可能性はあります。

――では要求スペックについては正式サービスに入る段階で確定という感じでしょうか?

吉田氏:そうですね、そこで確定だと思っていただければ。ただ、現状から極端には変わらないので、αテスト時のスペックを大体の目安にしていただいて問題ありません。実際にCPUがCore 2 Duoより下でも動くのですが、保証し続けると際限がなくなってしまうので今のラインに設定しているという状況です。

――あとはグラフィックボードがある程度のものであれば、でしょうか。

吉田氏:放送で使ったLOWのPCは「GeForce8800GT」なので、これより低くても遊べるとは思います。ものによってはオンボードでもいきますね。ただ、あくまで動くだろうということだけで、動作保証範囲外ではありますので、その点はご理解ください。

――巨大モンスターとの戦闘では、敵が現れたり消えたりしていましたが、最終的にキャラクターやモンスターの描画はどのような仕様になるのでしょうか?

吉田氏:実はαテスト版は、表示させるキャラクターやモンスターの優先順位を決める処理が入っていません。100体までは全部生で表示するという処理なので、優先順位を付ける必要がなかったのですが、今回のようなイベントの場合、キャンプ・トランキル周辺に1000人集まっていまして(笑)。さすがにその状況になると優先順位を設定していなくては上手く表示されないのですが、βテストでは実装します。

処理のアルゴリズムとしては、まずパーティメンバーの表示が優先されます。その次にパーティメンバーに対してヘイト(敵愾心)を持っているモンスター、そのモンスターとリンクしているモンスター、次にフリーカンパニーのメンバーといった仕様になっています。なのでβテストでは優先順位判断により、距離や自分との関連性で表示処理が行われます。自分が戦っている場合、戦っている敵が現れたり消えたりといった現象はなくなり、上限に達した際には、表示できるプレイヤーの数が減ることになります。

αテストで100体表示に制限しているのは、メモリを心配してのことなので、ハイスペックPCであれば無制限にしても大丈夫だと思っています。フレームレートが落ちてもカクつかないのは100体表示に制限しているからで、300体や500体といったように要求のままにやりだすと、ゆるやかにではありますが、もっとフレームレートは落ちていきます。

――コンフィグ設定にキャラクター表示数を加えるといったことは考えているのでしょうか?

吉田氏:みなさんスクリーンショットを撮られると思いますが、あまりキャラクター表示数が少ないスクリーンショットを撮ってほしくないというのがあります。キャラクターなどに寄ったアップの写真は別ですが、実際にもっと表示できるにも関わらず「このゲームはこんなに表示人数が少ないのか」といった印象を持たれたくないので、100人か無制限かのように、下にあまり制限を付けず、上限の設定をフレキシブルにする可能性はあります。

今回のαテストでは安定性を取って制限を付けましたが、テスト結果とプレイヤーのみなさんからいただいたPCスペックのデータを見る限り、制限を外しても問題ない状況ですね。PCスペックの差は、100体で消えてしまうか500体表示されるかといった、キャラクター表示数の差に最も影響があると思います。

――タッチパネル搭載PCで操作している場面がありましたが、バトルやチャットも遊べるのでしょうか?

吉田氏:放送中に使用したマシンはキーボードが付いているので、チャットはどうしてもキーボードになってしまいます。完全にタブレットオンリーにしようと考えた場合、ソフトウェアキーボードを用意しなくてはいけませんので、まだ製品にするにはひと山ふた山越えなければいけないと思っています。

ただ、Windows 8もそうですが、各OSがかなり優秀にインターフェースを組まれているので、意外と放送でお見せしたぐらいまではすんなりと進んでいます。今回、描画エンジンを相当フレキシブルに作ったこともあって、特別にあのマシンに向けてフルチューンナップをしなくてもアッサリ動いたというのが正直なところです。

僕も放送前日の夜中まで、あれだけ動くのを認識していなくて、開発ブースをウロウロしているときにスタッフがいじっているのを偶然見つけたんです。「あれ、これ全然いけるじゃん」と言ったら、「もうちょっと精度上げてから報告しようと思っていました」と言われたのですが、「じゃあ明日持っていくから。いいよね」という感じで持ってきました(笑)。

――これはMicrosoftさんから話があったのでしょうか?

吉田氏:いえ、Microsftさんだけでなく、各メーカーさんと協業させていただいたお話を進行していて、その一環としてやっていることです。本格的に公表させていただくのはもう少し先になると思いますが、「新生FFXIV」のローンチに向かって進めている最中です。これまで「新生FFXIV」は地味なPRが多い印象だったかもしれませんが、単純にパッケージを発売するだけでなく、これから発売に向けて最後の盛り上がりを作っていこうと思っています。

――では正式サービス時にタッチパネルで遊ぶことは可能なのでしょうか?

吉田氏:正式サービスの段階ではまだ遊べないですね。ただ、プロモーションの一環として、店頭でタッチだけを使ってキャラメイクを体験する、といったことは今後色んなメーカーさんとお話をしていく中で実現する可能性はあります。なので、いきなりゲームの要素すべてが遊べるという訳ではなく、端末のスペックが追いついてきたりシェアが拡大した段階で初めてフル対応し、最終的に家ではハイスペックPC、出張先ではノートPC、移動中はタブレットといったことができるようにしたいなという考えは持っています。

――アニマ廃止のお話がありましたが、船や飛空艇といった乗り物の扱いはどうなるのでしょうか?

吉田氏:メインストーリーの中で、世界に向かって旅立つ部分を入れていますので、その中で船に乗ったり飛空艇に乗ったりすることになります。そして世界を冒険してちゃんとエーテライトを確保した後は、テレポを使って気軽に移動できるようにしていいのではと思っています。例えばグリダニアにいる人が、ウルダハの友達から「今ここでFull Active Time Event(FATE)が起きてるからすぐに来て!」という連絡を受けたときに、「アニマがないから行けない」となると、ちょっと切ないじゃないですか。

では「船や飛空艇に乗る意味は?」となったとき、雰囲気として世界を旅するための乗り物としての役目があって、その後にバトルコンテンツなどと絡めた遊びが存在しないとダメだと考えています。飛空艇であれば空賊に襲われてそれを撃退するとか、船であればクラーケンに襲われるなど、そういったコンテンツが実装されて初めて船は船、飛空艇は飛空艇の意味を持つと思っています。これらはメインストーリーの次の段階になりますが、船や飛空艇がバトルコンテンツと絡んで統括されるタイミングは必ず作ります。

――放送中も街中にモンスターを出現させていましたが、現状でも船や飛空艇で戦わせることは技術的に可能なのでしょうか?

吉田氏:ゾーンさえ用意すれば可能ですね。オープンカンファレンスでもお話をさせていただきましたが、「新生FFXIV」はパスという概念ではなく、ナビゲーションメッシュからすべて移動ルートを生成するという方式にしていますので、戦わせたいと思えばどこでも戦える状態になっています。こういったところはテクニカルな面でサポートしてもらっていますので、コンテンツを作る上で非常に助かっています。

――27日になったタイミングでβテストのロードマップが公開されますが、βテストではどれくらいの人数がプレイできるようになる予定なのでしょうか?

吉田氏:βテストはフェーズ4(※フェーズ4がオープンβテスト相当)まで予定しており、フェーズ3のタイミングからほぼ全員に近いイメージになると思います。グローバルでの人数になりますが、数万人どころではなく、数十万人単位で考えています。

βテストでは、僕らが想定していないフィードバックをいただいたとき、それにキッチリ対応するだけの時間として、各フェーズの間には必ず修正期間を入れさせていただきます。そのため、ロードマップをご覧になったプレイヤーのみなさんは、まだサービスまで時間がかかる印象をお持ちになるかもしれませんが、我々はまだスタート地点だと思っています。プレイヤーの方が満足するだけでなく、ほかのMMORPGと比較されてもいいように、ここから仕上げていきます。

βテストのスケジュール。公式サイトではより詳細なβテストのロードマップが公開されている。

――そのロードマップですが、どういう風に受け止めてもらいたいと考えているのでしょうか?

吉田氏:まずβテストが始まれば、たくさんの方に触れていただこうと考えています。フェーズ3からはフリーカンパニーという形でコミュニティを作っていけるようにはなります。そういう意味では、コミュニティが分断された期間は、できるだけ短くさせて頂くつもりです。もちろん早くローンチするに越したことはないのは分かっていますが、プレイできない期間があるというのではなく、逆にどんどん作り込みながら完成してく様子を我々開発と一緒にプレイしながら味わえる、という風に思っていただけると嬉しいです。

放送でこんな大規模なαテストもほかには生涯ないだろうとお話しさせていただきましたが、「新生FFXIV」はβテストの途中から「旧FFXIV」のキャラクターデータが使えるようになるので、今までの価値観とはかけ離れたβテストが行われていきます。それをプレイできない期間と捉えるのではなく、僕らと一緒に楽しんでもらいつつ、時には厳しい意見をいただき、一緒にローンチを迎えられたらなと思ってのロードマップになっています。

放送前日に、ゲーム内でプレイヤーの方からTellで「プレイできない期間があることで、現在のコミュニティが離れていくことに関してどう思っていますか?」と聞かれました。できればTellではなくSayで言ってほしい内容でしたが、そのときは「それは痛いほど分かっています。ただ、プレイヤーのみなさんが想像している何十倍ものお客様に遊んでもらい、『新生FFXIV』が世界で戦えるMMORPGになり、自分たちがここまで支えてきたというプライドを持っていただけることが、僕は最大の恩返しだと考えています。それがあれば、一時的に『新生FFXIV』への興味が薄くなったとしても必ず帰ってきていただけると思っています。それだけ真剣に『新生FFXIV』のことを考えてくれて本当にありがとうございます」とお話ししました。

僕らとしても、そういった言葉が痛いときもあります。早く発売してしまおうかと思うこともあります。ただ、やっぱりほかのMMORPGタイトルに負けたくないので、勝てるゲーム、戦えるゲームにして出したい、それが全てです。

――ありがとうございました。

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