新メインストリーム「DRAMA」は何を目指して作られたのか―初の試みに挑戦した「マビノギ」開発陣&運営チームにインタビュー

ネクソンは、4月23日に「マビノギ」のアップデートを実施し、メインストリーム「DRAMA」を実装した。このDRAMAを導入したきっかけや、今後の展開に関するインタビューを行ったので、その内容をお届けする。

今回のインタビューでは、すでに一部実装済みではあるが、4月14日のオフラインイベントで発表された内容について、「マビノギ」の開発元であるネクソンコリアのマビノギ室 室長 ファン・ソニョン氏、日本マビノギチーム チーム長 シム・ギュヨン氏、そしてネクソンのゲーム運用チーム 糸井詩織氏の3人に話を伺った。

最新コンテンツに関して開発&運営スタッフにインタビュー

――メインストリーム「DRAMA」のストーリー部分での見どころはどこでしょうか?

左からファン・ソニョン氏、シム・ギュヨン氏、糸井詩織氏
左からファン・ソニョン氏、シム・ギュヨン氏、糸井詩織氏

ファン氏:ジェネレーションのアップデートでは、毎回新しい主人公やキャラクターが登場し、異なるストーリーを描いてきました。今回はジェネレーション1~3の頃を思い出し、その時に登場した主人公たちを掘り下げた話として、ジェネレーション3以降は彼らがどういう風に過ごしていたのか、といったストーリーが展開していきます。

これまでは神々の話や世界観に関わることなど、かなりスケールの大きい話になっていました。その過程でキャラクターたちのいざこざがありましたが、あまり詳しく説明されていなかったと思います。そこで、今までのようなスケールの大きい話だけでなく、キャラクターたちがお互いに感じ合う愛や幸福に焦点を当て、ユーザーさんと共感できるような話にしたいと考えました。

――「DRAMA」第一話はプレイヤーが悪霊になるところから始まります。こういう展開を採用したきっかけを教えて下さい。

ファン氏:映画やドラマ、ほかのゲームなどでも同じだと思いますが、何かのコンテンツに触れたとき、そのコンテンツを今後も続けるかどうかは、最初の15分ぐらいで決まると考えています。ドラマも導入部分が面白ければ続けてみる気になりますし、ストーリーに没頭してもらうため、まずは強力なインパクトを与えたかったというのがあります。

もちろん、第一話以降もプレイヤーが悪霊になるという以上に面白いストーリーが展開していきますので、続きも楽しみにしていただきたいですね。

――毎週「DRAMA」を配信するのは大変だと思いますが、こういった形式した理由は何でしょうか?

ファン氏:これまでのジェネレーションアップデートは、3~4ヶ月ほど集中的に開発してアップデートを行うのですが、従来と同じ形式では、長くプレイしていただいているユーザーさんの中には、実装後すぐにストーリーをクリアされる場合があります。ユーザーさんのプレイスタイルによって当然進み具合に差は出てきますが、すぐにプレイし終わってしまうと、ユーザーさん同士でメインストリームに関して話をすることが少なくなってしまいます。

そのため、「次はどうなるんだろう?」「きっとこうなる!」といった感じで盛り上がれるよう、期待や緊迫感などを持ちつつ、次の実装を楽しみにしてほしかったというのがあります。今回のように毎週配信する形式は我々としても初めてで不安もあったのですが、すでに十話まで配信している韓国ではすごく評判が良かったです。日本のユーザーさんにも「DRAMA」というひとつの話題で盛り上がれる、何かに共感できる時間を楽しんでほしいと思います。

――日本では「DRAMA」のイメージソングが制作されます。曲を作ろうと思ったきっかけは何でしょうか?

糸井氏:今回の「DRAMA」のようなアップデート方法を聞き、「ドラマと言えば…」と考えたとき、予告やテーマソングをイメージしました。テレビドラマと同じような形式でのアップデート方式ですので、ドラマであることを訴求するため、イメージソングを作ろうと考えました。

――今回の「DRAMA」を一言で表すとしたら、どんな言葉が思い浮かびますか?

ファン氏:難しい質問ですね…(笑)。ちょっとネタバレになってしまうかもしれませんし、意外な言葉かもしれませんが、私たちの中で「DRAMA」のキーワードは“犠牲”ですね。

――「DRAMA」では新キャラクターも登場しますが、どのあたりで登場するのでしょうか?

シム氏:かなり早い段階でご覧いただけるようになっています。「DRAMA」に新キャラクターとして登場するのがジャイアントとエルフのキャラクターなのですが、この二種族がストーリーにも絡んで展開していきます。例えばジャイアントに協力を求める場面が出てくるのですが、その際にジャイアントの新キャラクター・ダウラに話しかけることができます。早くに登場しますが、ユーザーさんとは長く付き合うことになります。

ジャイアント(左)とエルフ(右)の新キャラクター。

――二人の新キャラクターは各種族の中での役割はあるのでしょうか?

シム氏:二人とも、それぞれの部隊を率いる指揮官として登場します。イリヤ大陸がチャプター2で初めて登場し、ドラゴンと戦争するといったストーリーが展開していました。今回はその背景として、ジャイアントとエルフの大地に掛けられた呪いが弱まり、またドラゴンが登場したり、土地が変化していくという設定になっています。「DRAMA」の中ではジャイアントとエルフ、ミレシアン(プレイヤー)が一緒に戦う場面があり、その時に一番で活躍するのがこの二人のキャラクターになります。

アクル
アクル

――新キャラクターはこの二人以外にも登場するのでしょうか?

シム氏:オフラインイベントでも紹介した、偉大なシャーマン・アクルというキャラクターが登場します。彼はシャーマンの中でも一番力を持っているのですが、実はよくオヤジギャグっぽいことを言う、コミカルなキャラクターなんです(笑)。外見のイメージとは逆でセリフも面白いものが多く、韓国でも評判だったので、彼がどんなことを言うのか楽しみにしていただきたいですね。

――新マップも追加されますが、これらについても教えてください。

シム氏:実は全く新しい大陸という訳ではなく、元々存在していたイリヤ大陸がベースになっています。イリヤ大陸はとにかく広いのですが、半分は雪原、もう半分は砂漠といったように、ほとんど何もない状態だったんです。これは大陸に呪いが掛けられていた設定のためですが、今回その呪いが弱まっていて、昔の生命力を取り戻していきます。砂漠にはオアシスが、雪原には凍らない池のようなものが現れており、アップデート後はすぐに、誰でもこの地に行くことができるようになっています。

――新フィールドとストーリーが絡んだ展開もあるのでしょうか?

シム氏:そういった部分もありますね。雪原には鉱山があり、ここで新しい鉱物を採掘できるようになるのですが、最初はこの中に入ることができず、ストーリーの展開によって訪れることができるようになります。

――鉱山から手に入るアイテムの一例を教えてください。

シム氏:そうですね…具体的なことをお話ししてしまうと楽しみが減ってしまうかもしれませんので、今までにはなかった全く新しいものが作れるということだけお伝えさせていただきます。

――新しい生活スキルも追加されますが、鉱山で手に入るアイテムで新しいものを作るために新スキルが必要になったりするのでしょうか?

シム氏:その通りです。新しいコンテンツ同士が結びついています。

――コンテンツといえばドラゴンレイドもあります。ドラゴンレイドでは参加する人の役割が戦闘、援護、支援に分かれますが、これらは任意で選ぶことは可能でしょうか?

ファン氏:自由に選ぶことはできず、自分で選択した才能に合わせたクエストを受注する形となります。例えばヒーリングのスキルランクが高いキャラクターであれば、「ほかの人を助けてあげてください」というクエストが、前線で戦うタイプなら「モンスターを倒してください」といった、才能をベースにしたクエストが自動的にくるようになっています。

こういうシステムにした理由は、誰でも気軽にレイドに参加できるようにしたかったというのがあります。通常、レイドに行くためには何人も人を集め、こういう役割の人が必要で…といった準備をしなければいけないと思いますが、そういった複雑なことを必要とせず、自分の選択した才能にあったクエストを受けて、貢献度に見合った報酬がもらえるようにしています。

ドラゴンレイドは特定のエリアに入ると「近くにドラゴンがいますが、戦いに行きますか?」といったクエストが自動的にやってくるので、フィールドをブラブラしていたら偶然参加できたという感じにできたら、ユーザーさんが気軽に参加できるのではないかと考えました。そのため、レベルの高いユーザーさんしか参加できないようなこともありませんし、みんなが気軽に楽しめるコンテンツになっていると思います。

――同時に参加できる人数に制限はあるのでしょうか?

ファン氏:いえ、特にないですね。ドラゴンが出現するところは周囲が開けているところですし、ドラゴンを見つけたら友達に「ドラゴン来たよ!」と連絡して、みんなで倒しに行くといったことも可能です。

――ドラゴンレイドで戦えるドラゴンは何種類ぐらいいるのでしょうか?

シム氏:基本的にはブラックドラゴンとホワイトドラゴンの2種類ですが、ドラゴンレイドでは、ブラックドラゴンが率いる部下という形で登場する新しいモンスターを見ることもできます。

ブラックドラゴン ホワイトドラゴン

――ドラゴンから手に入るアイテムで目玉となるものは何でしょうか?

ファン氏:「ドラゴンの心臓」といったドラゴンのパーツが獲得でき、そのアイテムをもとに新しい武器などを製作することができます。ドラゴンの素材で作った装備になりますので、かなり強い装備になりますよ。

――ドラゴンのほかに特徴的な攻撃をしてきたり注意した方がいいモンスターがいれば教えてください。

ファン氏:ドラゴンの部下として登場するモンスターたちも、今回新たに登場したモンスターになります。今までのモンスターがしてこなかったような、空からダイブして攻撃してくることもありますので、周囲のモンスターたちにも注意する必要が出てくると思います。

また、イリヤ大陸にはドラゴンのほかにもフィールドボスが存在しますが、そのフィールドボスたちも若干リニューアルしています。動きが変わるといった大きな変更ではないのですが、ドラゴンレイドと同じように、特定のエリアに入るとクエストが発生するようになっていますので、今までとは違った形で楽しんでいただけると思います。

――オフラインイベントでシューターの発表もありましたが、シューターの見所はどこでしょうか?

ファン氏:以前からユーザーさんの間で銃のような武器が欲しいというお話はありましたが、どういう形で導入するかが一番の問題で、開発でもずっと考えていました。「マビノギ」の戦闘はそこまでテンポが速いわけではありませんので、銃を追加するならダイナミックでスタイリッシュなものにしようと方向性を決めました。

オフラインイベントで動画をご覧いただいた方は分かると思いますが、シューターが銃を撃つとき、その場に立ったままではなく、走ったり飛び跳ねながら攻撃するようになっています。こうしたモーションは、いかにスタイリッシュに見えるかに焦点を当て、全て新しく作っています。そのため、今までの戦闘とは違う、見るだけでも楽しいスキルになっていると思います。

――新しくモーションを作ったとのことですが、開発時に苦労したところはどこでしょうか?

ファン氏:キャラクターのモーションは、参考資料を見ながら作ることも、モーションキャプチャーで直接人が演じたものをデータにして開発することもあります。弊社の場合、モーションキャプチャーはモーション開発のスタッフが直接演じることが多いのですが、さすがに今回のシューターのようなスタイリッシュな動きは実演できないなとなりまして(笑)。そのため、この動きをした場合のキャラクターの姿を想像しながら開発をしなければいけなかったので、その点は苦労しました。

――すでに韓国では実装されていますが、評判はいかがでしょうか?

ファン氏:好意的な意見が多かったのですが、シューターの実装に不安を感じる方もいらっしゃいました。その理由のひとつとして、今まで長距離の武器が弓だけだったというのがあります。ずっと弓を使っていたユーザーさんは、自分たちのポジションが危うくなってしまうのではと懸念されていました。ただ、弓とは使い方が違いますので、実際に遊んでみると、銃は銃で弓とは違う道があるなと感じていただけています。

それから、「マビノギ」は中世ファンタジーの世界観なのに、なぜ銃を入れるのかといったご意見もありました。ですので、なるべく世界観にマッチした銃を導入していますし、こちらも実際に使っていただくと、マビノギ式のスタイリッシュなアクションが楽しめるということもあって、銃での戦闘は面白いねとご好評いただいています。

――銃は銃でも、二丁銃にしたのは何か理由があるのでしょうか?

ファン氏:銃は本当にたくさんの種類がありますよね。開発側でもどのような銃を持たせるか検討したのですが、シューターはダイナミックでスタイリッシュという基本コンセプトがありました。我々が考える「マビノギ」での銃使いは、「トゥームレイダー」のララ・クロフトをイメージしており、そのイメージに近づけるため二丁銃を選択しました。

――開発段階では、ほかにどんな銃の候補があったのでしょうか?

ファン氏:二丁銃のほかには2つほど案があり、最初はガトリングのような重いものを考えました。ただ、ガトリングを撃つにはキャラクターも筋肉質でなければ似合いませんし、「マビノギ」にはジャイアント以外、あまり体格のいいキャラクターがいなかったのでほかの案に、ということになりました。

もうひとつ考えていたのがマシンガンですね。ガトリングよりは軽い銃ですが、我々の中では田舎のおじさんが撃つようなイメージが浮かんできたので、別のものがいいと思い、最終的には二丁銃に決まりました。

――ファンさんが個人的に入れたかった銃はありますか?

ファン氏:まさにシューターの二丁銃で、希望が叶った感じです。先ほどララをイメージしているとお話ししましたが、ララが持っているのはベレッタやグロックのように近代的なモデルですので、「マビノギ」に合うよう少し古びた感じのあるものに仕上げています。

――韓国で実装されている銃の種類はいくつあるのでしょうか?

ファン氏:今あるのは2種類で、今後も新しいものを追加しようと考えています。ひとつはリボルバーのような形で、扱いやすい分、威力も低いものになっています。もう一方の銃はショットガンよりも銃身が少し短いような形状で、扱いにくい反面、使いこなせば大きなダメージが期待できるものになっています。

――過去の大型アップデートでは、毎回のように新しいペットが入っていましたが、今回「DRAMA」の実装に合わせて追加されるペットはいるのでしょうか?

シム氏:新しいペットも登場しますよ。詳しいことは言えないのですが、皆さんが満足できるようなものを用意しています。実装も遠くない時期で、「DRAMA」を遊んでいただき、面白いなと思ってプレイしていたらペットも追加されていた、みたいな感じで進められればと思っています。

――8周年イベントの内容についてを教えてください。

糸井氏:第一弾では、条件を満たしたキャラクターが、何も能力が付いていないタイトルを受け取ることができます。そのタイトルを持っていると、さまざまなミッションが受けられ、ミッションをこなすことでスタンプが集まっていきます。スタンプを集めた数によってタイトルを強化できたり、ゲーム内アイテムと交換することができるようになっています。強化したタイトルを装備していると、同じパーティーを組んでいるメンバーも恩恵が受けられるような内容も考えていますので、皆さんでダンジョンに挑戦してもらうことに活かせるのではと思います。

――最後に、8周年を迎えての感想と今後の意気込みをお聞かせください。

ファン氏:8年間も続けられたのは、やはり多くのユーザーさんから支持をいただけたおかげだと思っています。すごく光栄ですし、感謝しております。先日開催されたオフラインイベントでは、「マビノギ」を愛してくれている方がたくさんいるんだ、ということを実感できました。

「マビノギ」は韓国を含めて世界でサービスを展開していますが、日本は大事な国のひとつですし、これからもしっかりとサポートしていきます。また、日本のユーザーさんが望むものも実装していきたいですし、日本先行で実装するコンテンツも作っていきたいなと考えていますので、今後もよろしくお願いいたします。

――ありがとうございました。

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