ゲーミングディスプレイは何を基準に選べばいいのか―スペック表の見方から製品選びのポイントまでをベンキュージャパンに聞いてみた

ディスプレイのスペック表を見ると、小難しい用語がたくさん…。何を基準に選んだらいいか分からないという人に向けて、用語の意味から購入時に覚えておきたいポイントなどをベンキュージャパンに伺ったので、インタビュー形式でお届けする。

ベンキュージャパンは、台湾に本社を置くBenQの日本法人であり、プロジェクターやディスプレイの販売を行っている企業だ。ビジネス製品だけでなく、FPSなどのプレイヤーに向けたゲーミングディスプレイなどのラインナップを取り揃えているほか、スポーツやゲーム大会にも積極的に協賛している。

PCオンラインゲームでFPSをプレイする人の中には、120Hz駆動(後述)のディスプレイを探し、ベンキュージャパンの製品をチェックしたという人もいるのではないだろうか。

姉妹サイトのGamerでも、BenQ協賛による大会「Intel Extreme Masters Singapore」を取材したこともあるが、今回、ベンキュージャパンにディスプレイを選ぶ際のポイントや、そもそもスペック表の書かれた項目は何を意味しているのかなどを解説してもらったので、ディスプレイ選びに悩んでいる人はチェックしてみてほしい。

――まずはディスプレイで人気のサイズや好まれている比率などを教えてください。

ベンキュージャパン(以下、ベンキュー):弊社の製品では21.5インチと24インチの機種が多く売れています。他社さんでは23インチの製品を販売されているところが多く、この辺りのサイズが人気ですね。23インチ、24インチではA4サイズを2枚並べられる表示面積がありますし、価格も安いものだと1万円から2万円前後と、お手ごろ感があります。最近の傾向としては、27インチのワイドサイズも売れているようです。

比率に関しては、最近のディスプレイはフルHD(解像度が1920×1080のもの)なので16:9が主流ではありますが、FPSなどをプレイされているゲームユーザーさんや、CRT(ブラウン管)を昔から活用されている方の中には、4:3を好む方も少なくありません。17インチや19インチのようなワイドではない、スクエアサイズと呼ばれるものは、学校、法人や官庁向けに多く販売されているというのが現状です。

ただ、弊社の製品「XL2420T」を例にご説明すると、ディスプレイそのものは16:9でも、4:3はもちろん、いろんな解像度に設定できる機能が付いています。なおかつ120Hz駆動を実現していますので、それぞれ好みの解像度を選んでご活用いただいていることが多いです。

――グレア(光沢)とノングレア(非光沢)がありますが、どちらがオススメといったことはありますか?

ベンキュー:FPSやアクションなど、動きの激しいゲームのために購入するのであれば、ノングレアの方がオススメです。グレアは完全光沢なので、自分の顔などが反射してしまうため、ゲーミング用途としては不向きだと思います。グレアの需要も確かにありますが、絶対数で言うとノングレアの方が多いですね。

逆にテレビでは、グレアやハーフグレアと呼ばれるものが多いと思います。グレアは映像が綺麗に見えるように感じますので、何かの作業などをするにはあまり向きませんが、アクション性の高いゲーム用に購入するのではないのでしたらお好みで選んでしまっても問題ないと思います。

――では映像美求めるならグレア、ゲーム用ならノングレアという感じでしょうか。

ベンキュー:そうですね、FPSでグレアというのはあまり聞きませんが、映像美を追求しているRPGゲームなどには、グレアは好まれる傾向があるかもしれませんね。ただ、グレアはノングレアよりも目が疲れやすいので、長時間ゲームをプレイするとなると気になってしまうかもしれません。さらには、PFSゲームでは、敵の動きを細かく素早く感じ取ることが重要なため、画面の反射によって対象物が妨げられたり、動きを感じとりにくくなってしまっては、せっかくのゲームもディスプレイのせいで楽しめなくなってしまいます。

――VAやTNなど、パネルの種類が複数ありますが、それぞれの特徴を教えてください。

ベンキュー:一般的には「TN」「VA」「IPS」という種類があり、弊社が展開している液晶ディスプレイ業界においては、世の中に一番出回っているのはTNパネルです。VAパネルはコントラストが高く、IPSだと視野角による色の変化が少ない特徴を持っていますので、映画鑑賞などではVAパネル、グラフィックや医療系ではIPSパネルが選ばれる傾向にあります。

TNとVAの機種を実際に見比べていただくと分かりますが、黒の締まり方が違います。TNパネルはバックライト漏れと呼ばれるような、ぼわ~んと光が漏れているように見えてしまいますが、VAパネルは黒が締まり、メリハリのある映像になります。

ですが、TNパネルは応答速度が非常に速いため、FPSなどのゲーム用途ではTNが一番良いと言われています。VAやIPSだと、現状では4msあたりが最速だと思いますが、TNパネルの速いものだと1msや2msのレベルまできています。

――応答速度について教えてください。

ベンキュー:ディスプレイは、液晶分子に電圧をかけて、その傾きを調整しています。電圧をかけたときに、液晶分子が反応し終わるまでの時間を応答速度と言っており、千分の一秒(ms、ミリセカンド)単位で表されています。

応答速度の測定には「黒→白→黒」と変化するまでの時間と、「グレーから(別の階調の)グレー」に変化するまでの時間を計る2種類があるのですが、現在は後者、Gray to Gray(グレートゥグレー))がひとつの判断基準となっていると言ってよいと思います。また、ユーザの声を聞いている限り、FPSなどのゲーム用途では2ms以下であることがひとつの基準になると思います。

また、今のディスプレイの多くにはオーバードライブと呼ばれる、通常よりも多く電圧をかけ、液晶分子をさらに早く動かしてコントロールする技術が搭載されていますが、オーバーシュートによる画質低下も考えられますので、単に1ms, 2msというだけで購入を決めるわけにはいかないと思います。実際に店舗まで足を運ぶなりして、総合的に判断していくのが良いと思います。

――1000:1などのコントラスト比は何を意味しているのでしょうか?

ベンキュー:コントラストは明るさの比率を表しており、1000:1であれば、白の画面は黒の画面の1000倍明るいという意味になります。コントラスト比が高いほどメリハリのある画面になりますので、暗いシーンの映像などをメリハリのある画質で見たいということであれば、先ほどご説明したVAパネルを使用した液晶を選んでいただくのが一番だと思います。

――スペック表には拡張コントラストと書かれているものもありますが、これは何でしょうか?

ベンキュー:これは応答速度と少し似ていますが、バックライトやコントロールボードで調整したものの数値になります。実際に画面を表示させる際、紙の資料など白が多いものを入れるとメリハリのある映像になり、逆に暗い映像のものを映したりするとバックライトを落とすような仕組みが搭載されているものがあり、それによって計測したものが拡張コントラスト比になります。いずれにせよ、ネイティブのコントラスト比を基準に店舗で展示されているディスプレイをご覧いただくのが良いとは思います。

――輝度の数値はどれくらいがいいといった基準みたいなものはありますか?

ベンキュー:この点はグレアとノングレアの好みによる違いと同じなのですが、カンデラ(輝度の単位)が高ければ高いほど良い液晶だと勘違いされている方が多いように感じます。一般家庭の居間の明るさ、家電量販店などの店舗の明るさ、コンビニなどの明るさは大きく異なっていることにお気づきいただけるかと思います。

例えば店舗で最大輝度のディスプレイを見ても、家ではその明るさが異なるため、実際に購入して同様の輝度で表示したとしても、画面が明るすぎて目が疲れてしまうといったケースがあります。詳しい方ですと、最低ラインの輝度はいくつか?といった質問をされるかたもいらっしゃいますね。

液晶ディスプレイのモード設定においては、sRGB規格の画面モードやエコモードといった機能を搭載しておりますので、明るすぎる場合はそちらで簡単に調整していただくことができるようになっています。その際の輝度は、大体100カンデラ以内で調整しています。カンデラ値を見る際は、単純に数値が高いほど良いという勘違いをしないようにすれば大丈夫だと思います。

もちろんサイネージのように外で使う場合は明るい方がいいため、用途によって変わってきます。ただ、自宅やオフィスなどで使うのであれば、300や500といった高い数値は特に必要ないと思います。店舗で見ても分かりづらいと思いますので、その場合は販売員さんに意見を求めたり、Webでいろいろ調べてみるのが良いかもしれません。

――視野角についても基準値みたいなものはありますか?

ベンキュー:視野角は、ディスプレイを斜めから見たとき、どの角度まで正常に画面が見えるかを表しています。通常の液晶ディスプレイは170度で、弊社の製品でも170/160(左右/上下)度になっています。VAやIPSのパネルだと178度というものもあります。ただ、この視野角はコントラスト比が10:1以上を確保できる範囲としている場合もありますので、170度と書かれていても、綺麗に見えるかは実際に店舗などでご覧いただかないと判断が付かないところがあります。

TNと、VAやIPSを比べると違いがはっきり分かり、TNだと、ある位置からは見えない現象もあったりします。ただ、複数名でディスプレイを見てゲームをすることは多くないと思いますし、先ほどお話しした応答速度の問題もあって、ゲーム用途ではTNを選んで問題ないと思います。

――見え方を比べる時、画面を明るくした方がいいといったことはありますか?

ベンキュー:それは特にないですね。とはいえ、片方は動画を流して輝度を上げ、もう一方はエコモードで暗くしているといった状況での比較はできませんので、同じコンテンツ、同じ設定に合わせておけばすぐに分かる範囲だと思います。

――画素ピッチ(ドットピッチ)について教えてください。

ベンキュー:画素と画素の距離のことで、狭ければ狭いほど密度が高くなり、精細な画像になりますが、画面の文字やアイコンは小さく表示されます。逆に距離が広ければ広いほど大きく表示されます。PC側の設定で解像度を調整したりできますが、そういった違いだと考えていただければ大丈夫だと思います。どのような見え方かというのは、こちらも実際に店舗に行ってご覧いただくのが一番ですね。

――LEDバックライトにもいくつか種類がありますが、それぞれの特徴を教えてください。

ベンキュー:LEDにはエッジ式やRGB方式などがあるのですが、一般的に現在出回っているのはエッジ式のLEDになります。よくPWM(Pulse Width Modulation、パルス ウィズ モジュレーション)というのですが、要するに映像を流す際、バックライトを点滅させて表現しています。電車の行き先表示なども、実は人間が見ても知覚できないほど早い間隔で点滅させて表示させているんです。

ただ、バックライトのオンオフを常に行っているため、フリッカーと呼ばれる、ちらつきが発生することもあります。それをうまく制御しているメーカーさんもあるのですが、基本的には、現在市場に多いのは、エッジ式のバックライトではないでしょうか。長時間使用による目の疲れといった問題もありますので、弊社としては今後そういったところに付加価値を付けて提供していければと考えています。

――ゲーム用に選ぶなら付いていた方がいい端子というのはありますか?

ベンキュー:今120Hzの信号を送れるケーブルは、DVIデュアルリンクとDisplayPort(ディスプレイポート)しかないんです。弊社の製品をお使いいただいている方のほとんどは、DVIデュアルリンクケーブルを活用していただいていますし、主流もこの2つになっていると考えていただいて問題ないと思います。

ゲームのためにPCをご購入される方だとグラフィックボードも用意されると思いますし、そうするとDVIデュアルやDisplayPortの端子も付いてくることが多いです。コンソールだと、フルHDの映像を音声と一緒に送れるためHDMIが使われることが多いです。ただ、FPSに限って言うと120Hzであることが前提として考えられている部分がありますので、DVIデュアルかDisplayPortを選択するのがいいと思いますね。

もちろんゲーム用途以外にも活用できますので、ある部分はゲーム用途で、別の部分は映画などを見るために使っていただくような形にするのがいいと思います。

――リフレッシュレートというのは何でしょうか?

ベンキュー:フルHDの解像度を持つディスプレイの場合、横に1920個、縦に1080個の光が並んでおり、左上の位置からまずは右に光っていき、一段終わるとその下の段を、また左から右に光らせることで映像を映しています。バックライトと同じく超高速で点滅させているので、人間から見ると点滅していることが知覚できないという原理ですね。

このうち横の線(フルHDの場合、1920個の光一列)が走査線と呼ばれており、1秒間に何本の線を描けるのか、というのが水平走査周波数というものになります。単位はKHz(キロヘルツ)で、135KHzであれば1秒間に135000本の線を描くことができます。

これを縦の個数で割り算したものがリフレッシュレートとなり、フルHDだと1080で割りますので、135KHzの場合は約120Hzになります。要するに画面の移り変わりのことを表していますので、120Hzだと1秒間に120回分、その画面を描けるという意味になります。

FPSをやられている方の中では、「120Hz=ヌルヌル動く」という認識だと思いますが、120Hz駆動のディスプレイにおいては、弊社の製品をご使用いただいている方が非常に多いと認識しております。あとはグラフィックボードでも120Hzが出るかどうか、キチンと選んでいただくことは重要ですね。

Youtubeなどには120Hz駆動のデモ動画をアップロードされている方もいますので、そちらをご覧いただければある程度60Hzと120Hzの違いは分かると思います。ただ、動画でチェックしても、結局は120Hzのものを60Hzで見ていることになりますので、マウスの動きといった細かいところまで見るのであれば、実際に店舗さんで試していただくのが一番です。

――御社製品でゲーム用にディスプレイを購入するならどれがオススメでしょうか?

ベンキュー:FPS系のゲームをプレイされるのであれば、「XL2420T」がオススメです。120Hz駆動はもちろん、画面比率を4:3にした状態でも120Hzを実現していますし、暗いところがキチンと見える、「Black eQualizer(ブラックイコライザー)」といった、さまざまな機能を搭載しています。

ユーザーさんによっては、プレイするゲームや、同じゲーム内でもモードによって輝度や色合いの設定を変えたりする人もいますが、事前に設定したものをワンタッチで選べる(S.Switch)といったところも好評をいただいています。

――ディスプレイ選びに迷っている方にアドバイスをお願いします。

ベンキュー:やはりディスプレイを選択する際には、店舗などに行って、実際にご覧いただかない限りは判別がつきにくいのが現状だと思います。ネットなどで調べれば情報が出てきますので、判断材料はあると思いますが、ディスプレイ選びは個人のニーズに合わせて行うものです。スペック表などを見ると多くの情報があり、分かりにくい部分もありますが、PCやグラフィックボードなどを販売されている店舗さんで希望のものを聞き、そこでオススメしてもらうものが、ひとつポイントの製品になるかなと思います。

――ありがとうございました。

「XL2420T」製品概要

FPSモード、Black eQualizer(ブラックイコライザ)など機能を充実させ、よりゲーマー向けにデザインを一新して登場した、24型フルHDゲーミングディスプレイ。

「XL2420T」製品ページ
http://www.benq.co.jp/product/monitor/xl2420t

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