「晴空物語」から「ミルキー・ラッシュ」へ―タイトル変更の意図と大型アップデートについてベクター運営陣にインタビュー

2013年5月末、ベクターが運営するMMORPG「晴空物語」は大型アップデートの実施に合わせて、「ミルキー・ラッシュ~晴空物語~」にタイトルが変更される。同作について運営チームの楢和隆氏と車田拓也氏にインタビューを行ったので、その内容を紹介しよう。

「晴空物語」から「ミルキー・ラッシュ~晴空物語~」へのタイトル変更にともない、ストーリーの進め方やクエストの内容が一新され、新スキルも多数追加されるなどのさまざまな改変がなされる本作。なぜ、これほど大きなリニューアルを実施することになったのか。今回のタイトル変更の経緯やアップデートの詳細について、ベクターの楢和隆氏と車田拓也氏にお話しをうかがった。

左から本作の運営プロデューサーの楢和隆氏、運営ディレクターの車田拓也氏。

リニューアルの内容を見て自信を持って新タイトルへ

――まず、今回の大型リニューアルを実施することになった経緯を教えて下さい。

楢氏:開発を手がけている台湾のX-Legend Entertainment(以下X-Legend)さんはひとつのタイトルを長く続けていくという方針のもとに開発をしている会社さんでして、われわれベクターも同じ考えのもと、これまで運営をしてきました。その流れの中で、どうすれば今後も長くプレイヤーのみなさんに楽しんでいただけるか考え、ここで一度リニューアルをしようということになりました。

――台湾のほうでもタイトルから変わったんですか?

楢氏:台湾のほうでは変わっていないです。日本でタイトルを変えることになったのは、実際にリニューアルの概要をX-Legendさんから聞いて、かなりボリュームがあると分かったからです。新しいタイトルといっても過言ではないほどのリニューアルであると考えまして、これをどのようにアピールしていくかいろいろ話し合って「これだけ変わるならタイトルを変えるのもアリではないか」となったわけです。

それで、またいろいろと話をしていく中で「ミルキー・ラッシュ」というタイトルが上がってきまして、これなら今までの「晴空物語」のファンの方にも受け入れられると。従来のイメージを壊さずに新しいイメージも付けられるいいタイトルではないかと考えまして、このようにタイトルを変える決意をしました。

――タイトルを変えるというのはサービスが終わって新作になるという勘違いをされる恐れもあると思います。そういった心配はありませんでしたか?

楢氏:リニューアルの内容を見て、自信が持てましたからね。タイトルが変わると、終わってしまうというイメージを持ってしまうというのは、苦しい状況でタイトルを変えてそのまま消えるという例をご覧になっているからだと思うんですが、「晴空物語」は別にサービスの継続が厳しいとかいう状況にはまったくありません。このままでもサービスは継続できる。それぐらいのプレイヤー数はいますし、売り上げも実際上がっています。

ただ、どうしてもゲームって時間が経っていくと、どんどん勢いが落ちていってしまうじゃないですか。だったら、ここでタイトルも変えて、新しいコンテンツとしてアピールすることによって今後さらに2年3年……もっと先も含めて長く継続していくために必要だと考えて、タイトル変更とリニューアルを行うことにしました。

――「ミルキー・ラッシュ」というタイトル名の由来を教えてもらえますか。

楢氏:「天の川」からですね。もともと「晴空物語」は「空」のイメージがあると思うんですけど、今回のリニューアルは星のように無数のコンテンツがあったので、そこと空のイメージをかけて天の川の星々(コンテンツ)がラッシュのように迫ってくるという意味で「ミルキー・ラッシュ」というタイトルにしました。

――「はじまりのものがたり」という副題もついていますよね。

楢氏:ええ。継続して楽しんでくださっている方はもちろんのこと、途中でやめてしまった方とか、まだプレイしたことのない方に新しい気持ちで遊んでもらいたいなというところから、この副題をつけました。

――よく分かりました。では、今回のリニューアルの看板といいますか、もっとも大きな変化はどこか教えてください。

車田氏:一番大きいのは、NPCとの会話とかストーリーの進め方とかの部分ですね。NPCと会話したとき、これまでのようなウィンドウのテキストを読むだけというのではなく、映画と言ったら言い過ぎですけど、キャラクター同士がちゃんと話をしているように見えるようになっています。

キャラクター同士の会話が追加されたことで、よりストーリーを楽しめるようになった。

楢氏:台湾では「劇場型UI」という言い方をしていますね。

車田氏:見て楽しいといいますか、自分のキャラクターが動いたりして本当にゲーム世界のNPCと話しているようなUIになっています。また、テキストも分かりやすいよう短めにしています。

――キャラクターの表情も変わったりするんですね。

車田氏:はい。ですから「おお、動いた!」とか、これまでとはぜんぜん違う見方ができるのではないかと。本当にストーリーを楽しんでもらえると思います。テキストだけ並んでいるより、絵や動きがあったほうが絶対伝わりやすいですからね。

クエスト自体もこれまではいわゆるお使いといいますか、単純に行って帰ってくるだけというものがほとんどだったんですが、今度はキャラクターが途中で変身するとか、内容の部分でも楽しませるアップデートになっています。

会話シーンではキャラクターたちが喜んだり怒ったりと、さまざまな感情を見せてくれるのだ。

――ということは旧来のクエストの内容もかなり変わっているんですか?

車田氏:はい。200種類以上のクエストを改修しました。特にスタートしてから中盤くらいまでは大きく変わっていますので、既存のユーザーの方々も新しいキャラクターを作って遊ぶときに違うゲームとして新鮮な気分で楽しめるんじゃないかと思います。今後も職業が増えていきますので、新しい職業でやってみたいというタイミングで序盤のクエストをプレイし直してもらえるといいですね。

――それだけ改変したとなると、かなりの手間だったでしょうね。

車田氏:翻訳量はゲーム1本分くらいになりました。会話形式になった分、テキスト量は増えているんですよね。

楢氏:手間がかかっているので見てくださいとは言いにくいんですけどね。でも、やっぱり見て欲しいというのが本音です。

キャラクター同士の会話だけではなく、このような演出も随所に導入される。

――新しいスキルも追加されるんですよね。

車田氏:はい。どの職業も今までよりもさらに派手なスキルが増えています。各レベル帯別でいろいろ新しいスキルが追加されていますので、新規の人と既存の人の両方に楽しんでもらえると思います。また、スキルに関しては、リニューアルにあたってちょっとしたサービスも考えています。

――何でしょう、気になりますが。

車田氏:楽しみにしていてください(笑)。そのほかにも既存のスキルを調整してバランスを取ったりとか細々としたことを行っていまして、より遊びやすい環境になっていると思います。

――従来のスキルも威力が変わっていたりするわけですか。

車田氏:ええ。実はスキルに関しては、ここ2,3カ月くらいの間にいろいろと調整を入れてきたんですよ。

楢氏:そういった調整の集大成が今回のアップデートのタイミングで行われると考えていただければと思います。

55種類もの新スキルが新たに登場。中には驚くほど強力なスキルも!

――背景の描写もかなりキレイになっているようですね。

車田氏:見た目はプレイ環境による部分もあるのですが、マップをキレイに描画するために草木のオブジェクトを増やしたりしています。細かいところが多くて間違い探しみたいになっちゃうんですけど、分かる人には分かってもらえるんじゃないかなと。

楢氏:環境設定を「精密」にしてもらえると、多少は違いを感じてもらえるんじゃないでしょうか。

――映像がスペックに左右されるのはクライアントゲームの宿命ですからね。

車田氏:ただ、大型アップデート後も推奨スペックは現在と同じままです。変更にならないように、うまく作ってくれたX-Legendさんに感謝ですね。

楢氏:現在、環境設定を落としてプレイをされている方はちょっと画像の変化を感じにくいかもしれませんが、そのまま問題なくプレイできるので安心してもらえたらと思います。

より美しくなったフィールドの映像にも注目だ。

――海の国の新マップがどのようなものになるか教えてもらえますか。

車田氏:今までも海底のマップはあったんですが、さらにその奥に進めるようになったんです。謎の銅像があったりして、ストーリーも楽しみながら進められます。レベルを上げたはいいけど次がないという部分がちょこちょこ出てきていたので、タイミング的にはちょうど良かったのではないかと思います。

――なるほど、分かりました。ちなみに、今回のアップデートにあたってどのようなキャンペーンを行う予定ですか?

楢氏:新作と同じくらいのボリューム感でキャンペーンをやっていこうと考えています。その意味では今まで遊んでくれた方も新しく来て下さる方にも、十分満足いただけるキャンペーンになっています。

――台湾ではすでに大型アップデートが実施ずみとのことですが、評判はどのようなものでしたか?

車田氏:台湾では新スキルの部分が特に好評だったと聞いています。

楢氏:台湾の実績でいうとプレイヤー数が1.5倍になっています。ですから、台湾では大いに受け入れられたリニューアルだったと考えていますね。

――1.5倍! それはすごいですね。

こちらが深海を舞台にした新マップ。強力なモンスターが多数登場するのでやりごたえは満点とのこと。

6月以降も大型アップデート級の新要素がめじろ押し!

――今回のリニューアルにあたって、日本のユーザーさんの声が反映された部分はありますか?

楢氏:日本のお客様からはスキルバランスの問題というのをご意見としてよくいただくんですが、それらはすべて開発会社のほうに伝えていまして、開発会社のほうでは各国のお客様の声を集約して全世界版として調整しているんですね。なので、台湾で実施されたリニューアルにはすでに日本のお客様の声も反映されているわけです。

――そうだったんですか。まったく知りませんでした。

車田氏:もちろん、日本に合わないものは除外しますけどね。

楢氏:ですから、完全一致ではないんですけれどもおおもとのベースのところには日本のお客様のご意見もちゃんと採り入れられています。

今回のリニューアルには日本のユーザーの要望もしっかり反映されているのだ。

――どんなところが全世界版と一致していないのか聞いてもいいですか?

車田氏:細かい調整の部分になるんですが、一部のコンテンツを抜いて先行でサービスしたというのがあります。ひと固まりのパッケージになってから要素を抜くのって技術的にすごく難しいので、抜ける段階でいいものを少しでも早くという感じで。細かすぎて具体的にどこをどうと言うのは難しいんですけど。

楢氏:お客様に飽きさせないための細かい工夫と言いますか、大きなアップデートが控えているんだけれど、それまでちょっと時間がかかるというときに一部分をちょこっと抜き出して先にみたいな感じですね。

――今回のリニューアルで運営の仕方が変わってくる部分はありますか?

楢氏:これまでやってきたことに対して、お客様はついてきてくださっていると感じておりますので、そんなに大きく変わることはないですね。もちろん、お客様のほうから「こういう運営をしてほしい」というご意見は随時いただいていますので、そういったところは反映させていきたいなと思っています。

車田氏:立て直しのためのリニューアルではなく、あくまで継続的に行ってきたアップデートの一環ですからね。

――これまでの方針を継続していくと。

楢氏:当然、上は目指していきますが、最初に言ったとおり現在でもちゃんとプレイヤーが集まっていて売り上げも成り立っている状況なので。

車田氏:みなさんに本当に楽しんでもらうということを意識しながら、変わらず進化していきますといったところでしょうか。

楢氏:そうですね。そこの方針さえ変えなければ、これからもお客様はついてきてくださると思っています。

長くサービスを続けるため、たくさんのユーザーさんに遊んでもらえる環境を目指していくとのこと。

――1年半の実績の蓄積ですね。今だから言える裏話みたいなものはありますか?

車田氏:初めはつらかったですねぇー(強調)。特に視点ですね。実は最初、視点が固定されていて回らなかったんですよ。

楢氏:「引き」と「寄り」しかなかったんですよね。サービス開始前に直してもらったんだっけ?

車田氏:そうです、そうです。今だから言えるんですが、とにかく操作系はすごく大変でした。懐かしいですね。

――やはり立ち上げ前後は大変なんですね。

車田氏:立ち上げ前の準備段階が一番ですね。今、振り返ってみると本当に大きく変わりました。コンテンツが少ないと、こちらから催促したこともありましたし。思い出すと感慨深いものがあります(遠い目)。

楢氏:オープン当初は本当によくあるオンラインゲームのコンテンツ量だったんですよね。1年半たって本当にコンテンツが充実したなという実感があります。

車田氏いわく、内部では立ち上げ後もあわあわすることの連続だったそうだ。

――それでは今回の大型アップデート後の展開を簡単に教えてもらえますか?

車田氏:8月に新しいシステムを導入することが決まっています。9月以降は開発からの1年分のロードマップがきているんですか、これをどの順番に入れていくか検討していくことになりますね。いやらしいことを言うと、先行する台湾での結果をサンプルにして好評だったものを先に入れたり、イベントなどのタイミングに合わせたりすることになると思います。基本月1のアップデートを持続していくという感じになりますね。

――8月のアップデートというのもけっこう大きいんですか?

楢氏:大きいですね。これからのアップデートは全部大型と言ってもいいんじゃないでしょうか。

――新しい職業も追加されるんですよね。

車田氏:そうですね。さすがにタイミングは明かせませんが、新職業も実装されます。

――そのほかの部分で新しいサービスなどは考えておられますか?

車田氏:名前は変わるかもしれませんが、6月に「ギルドファーム」、7月に「ペット保育園」という新機能の実装を予定しています。

――新マップの登場はありますか?

車田氏:もちろん。ストーリー的に北のノース大陸と南のサウス大陸があって、南から行ってやっと北まで来たくらいですから、まだまだこれからですね。

楢氏:新ペットや新アバターといったものの追加も考えています。この記事が掲載されるころにはいろいろ情報が出ているんじゃないですか? かわいらしいものがたくさんあるので、ご期待いただければと思います。また、今年の11月22日に2周年を迎えるんですが、そのタイミングでも何か行うと思います。

かわいくてユニークなアバター衣装やアイテムなども新たに登場するとのこと。

――本当にコンテンツラッシュですね。

車田氏:ゲームの部分を楽しんでもらいつつ、ベクターからゲームとは違う部分の面白さも二段構えで提供していけたらいいですね。個人的な立場としては楽しんでいただいた上で、ご祝儀として売上にもちょこっと貢献してもらえたら最高です(控えめに)。すみません、いやらしくて(笑)。

――運営会社としては大事なことだと思いますよ。それでは最後にメッセージをいただけますか。

楢氏:「ミルキー・ラッシュ 晴空物語」はこれまでの集大成になりますので、ぜひ楽しんでください。

車田氏:くり返しになりますけど、ぜひ楽しんでいただいて……気が向いたらでいいんで、売上向上にご協力を(全員爆笑)。

――分かりました(笑)。本日はありがとうございました。

今後も長きにわたってサービスを続けていくためという今回の大型アップデート。運営状況が好調でありながら、タイトル変更という大きなテコ入れをあえて実施する強気の姿勢に、本作をよりよいタイトルにしたいという運営陣の高い意識を感じることができた。「晴空物語」から「ミルキー・ラッシュ」へと変わる、今回のリニューアルによって同作はどのような変化を遂げるのか。実際にプレイするのを楽しみにしていてほしい。

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