ネクソンが現在オープンβテストを実施しているクロスプラットフォーム型シミュレーションRPG「三国志を抱く」。開発を手がける韓国Ndoors社にインタビューを実施したのでお伝えしよう。
「三国志を抱く」はネクソン初のクロスプラットフォーム型シミュレーションMMORPG。ウェブブラウザのみではなく、スマートフォンやタブレットなど、多様なプラットフォームで連動プレイを可能とし、好きな時にゲームの続きを楽しむことができるという、ゲームユーザー待望のプレイスタイルを実現可能としたタイトルだ。
開発を手がけるNdoors社 常務取締役員「キム・テゴン」氏は、韓国のゲームショウ「G-STAR2011」の会場で初めてお話をお伺いしたときには、韓国でのサービスを目標としており、日本でサービス中の「アトランティカ」のノウハウを最大限活かしたいと話していた。今回、キム・テゴン氏とノ・ウンジョン氏、ネクソン運営チーム「谷貝 幸宏」氏にお話を聞くことができたので紹介しよう。
今までを振り返って
――まずは日本国内でまもなくオープンβテストを迎えますが、まずは率直な感想を教えてください。
キム・テゴン氏:本作を開発するにあたり、韓国・中国・日本でサービスを展開しようと考えていました。その中で日本は特にゲーム文化が成長しているので、緊張もありますがとても期待しています。
――開発の期間は構想も入れるとどのくらいですか?
キム・テゴン氏:ゲームの構想から韓国でのサービスまで約3年です。
――開発の人数はどのくらいですか?
キム・テゴン氏:開発の段階によって人数は変動しますが、韓国でのサービス直前では100人くらい、現在では70人くらいが開発に携わっています。
――開発チームの職種の割合はどのくらいですか?
キム・テゴン氏:現在の人数で話しますと、デザイナーが約30人くらい、データベースやツールの作成を担当するプログラマーが約20人くらい、企画で約20人くらい働いています。
――企画の人数が多いんですね?
キム・テゴン氏:「三国志を抱く」はPCだけでなく、スマートフォンとタブレットにも対応するクロスプラットフォーム型なので、3つのバージョンそれぞれ別で制作しており、その分開発者も増えますね。
――開発チームにはゲームの制作経験者が多いのですか?
キム・テゴン氏:もちろん多いです。10年や20年ほどの経験者もいますが、多いのは5年ほどの経験を持つ人です。もちろんゲーム制作未経験の人もおり、ムービー制作には映画やテレビの業界から来た人が担当し、それぞれの専門分野のノウハウを結集したイメージです。
――2011年11月に「G-STAR2011」でお話をお伺いしましたが、それから今日までどのような苦労がありましたか?
キム・テゴン氏:当時、すでにクロスプラットフォーム型でのプレイは可能な段階でした。ですがその1年後にサービスを開始した理由としては、開発チーム内でバランス調整やモバイルとの連動要素の強化など「開発内でのβテスト」が1年間続いていたことです。
――クロスプラットフォームを実現する際に苦労した点を教えてください。
―キム・テゴン氏:クロスプラットフォームでは、3つの違ったOSでゲームが起動するため、「3つの違ったゲーム」を制作しなければならないことが一番苦労した点ですね。さらに1つのサーバを使用していることも調整が大変でした。――特にiOS、AndroidぞれぞれのOSでの開発で苦労した点を教えてください。
キム・テゴン氏:OSによって開発方法も異なり、バグチェックなども大変でした。また、iOSの審査はかなり厳しく、他のプラットフォームと足並みを揃えることが難しかったです。
――本作はPC版を先に開発し、その後スマートフォン、タブレットを随時開発していくのですか?
キム・テゴン氏:本作はPCブラウザ版を中心に設計し、高クオリティーでゲームをある程度作ってから、順番に他のプラットフォームへの最適化をしています。
――Unityエンジンを採用することで苦労した点を教えてください。
キム・テゴン氏:クロスプラットフォーム化を決めた際に、やはりUnityエンジンが最適だと判断しました。Unityエンジンはとても効率的ですが、当時は小さなプロジェクトに使用するエンジンという印象があったのですが、その後Unity開発メンバーとさまざまな問題を解決しながら開発を続けました。
――Ndoors社内では本作の評判はどうでしたか?
キム・テゴン氏:開発チームは、「三国志演義」の感動をゲームで伝えるため、使命感と自信を持って開発を進めています。
――Ndoors社内の開発以外のメンバーがプレイした感想はどうでしたか?
キム・テゴン氏:Ndoors社では、社内で開発を手がけるプロジェクトすべてについて、開発者以外にプレイしてもらい、その意見を聞いています。もともと三国志が好きな社員は喜んでおり、三国志を知らないライトゲーマーの社員からはゲーム自体がちょっと難しい、という意見ももらいました。
――先行でサービスを開始した韓国でのユーザーの反応はどうですか?
キム・テゴン氏:本作のターゲットはコアなRPGファンですが、その中でも「三国志」の物語が特に好きな人は現在かなりゲームをやり込んでいます。また韓国では有名な三国志ポータルサイトと提携し、その会員と意見・要望を共有して開発に役立て行こうと思っています。
――韓国でのユーザーはアップデートに何を希望していますか?
キム・テゴン氏:RPGが好きなユーザーはもっとPvPの要素を増やしてほしいといった意見、三国志の好きなユーザーは登場人物や物語を増やしてほしいとの意見をもらっています。
――韓国のユーザーはPC・タブレット・スマートフォンどの機種で遊んでいますか?
キム・テゴン氏:スマートフォンのユーザーが多いと判断しています。
――ちなみに、キム・テゴン氏は本作を遊ぶ際はどのプラットフォームを使っていますか?
キム・テゴン氏:今使っているのはAndoidの機種です。やはり寝転がってゲームをプレイできるのは魅力ですね。
――韓国でのブラウザゲーム(Webゲーム)の普及について
キム・テゴン氏:韓国でもブラウザゲームは人気ですが、どうしても簡単であまり本格的ではないタイトルが多かったので、本作は既存のクライアント型のタイトル並みのボリュームを持ったゲームということで、ユーザーは驚いていたはずです。
――ちなみに本作のタイトル「三国志を抱く」はどこでもプレイができることを意味しているのですか?
キム・テゴン氏:三国志の物語を最大限楽しめるように、そしてユーザーの持つプラットフォームの全てをカバーしたいと行く意味で「三国志を抱く」と名づけました。
ゲーム内について
――三国志のドラマ部分だけでもかなりボリュームですが、音声や演出などこだわった点を教えてください。
キム・テゴン氏:三国志の物語では、カッコ良かったり、感動するシーンが多いのですが、それを全部テキストで表現するだけではなくて、ムービーのドラマとして実装しました。三国志は現在まで本やテレビなどでたくさん公開されているので、個人が持つイメージをさらに超えて行きたいと思い、映画やドラマなどの制作経験者を集め、すべてを強化しました。
――三国志演義やあまり知られていない秘話なども収録されているそうですが、それらを調べるのにどのくらい資料を準備しましたか?
キム・テゴン氏:開発を始める際に、膨大な三国志の書籍の中から一番正当性の高い作品を選び、さらにその中に少しでも出てくる出来事は、すべてゲーム内に実装することを目標としました。
――ドラマ部分のクオリティの高いグラフィックを実現する際に苦労した点を教えてください。
キム・テゴン氏:すべてが苦労したと言えます(笑)。グラフィックに関してはやはりPCが一番クオリティが高かったので、それをスマートフォンやタブレットの性能に合わせてダウングレードするため、「いかに差異を感じないように」する調整が大変でした。
――キャラクターなどのイラストは描き下ろしですか?
キム・テゴン氏:はい、すべて開発チームで描き起こしています。難しかったのは人数の多さだけではなく、ボイスに関してもそれぞれの武将のイメージがあるので苦労しました。
――「領地」では視点を動かせたり、建設中のアニメーションも凝っていましたが、苦労した点を教えてください。
キム・テゴン氏:「領地」の設計と企画面が一番苦労しました。いかにRPGと領地ゲームを自然な流れで融合するか、領地に力を入れすぎると複雑になってしまいますし、簡単だと面白くないので、どちらもバランス良く楽しめるように調整しました。
また、クロスプラットフォーム型でサービスすることも決まっていたので、PCでもモバイルでも楽しめる要素をきちんと入れ込めたと思います。
――メインストーリーだけでなくサブドラマも導入した理由を教えてください。
キム・テゴン氏:正統な世界観を持つ三国志の物語を、ユーザーに伝えることも本作の大きな目的なのですが、それだけでは既存の本を読むこととあまり変わりません。あまり描かれていない出来事を、サブドラマを通していろいろな視点から楽しめるように導入しました。これはゲームならではの手法ですね。
さらにゲームではユーザーが自分からNPCに話しかけたり、冒険をすることで、より没入することができます。
――クエストはどのくらいのボリュームがありますか?
キム・テゴン氏:クエストは現在1000ほど実装しています。今後実装予定の幕単位でさらに数百種類は追加されます。特に日本でのサービスに向けたローカライズが大変だったと思います。
――ボイスを導入した経緯を教えて下さい。
キム・テゴン氏:三国志の物語の主役はやはり「武将」です。ボイスを含め、武将の性格や個性をしっかり設定し、スキルなども特徴を活かして開発しました。
――日本版のボイスは聴きましたか?
キム・テゴン氏:もちろん聴きましたよ。昔から日本のゲームが好きでプレイしてきましたので、雰囲気はとても日本向きだと感じました。
――シミュレーションバトルでの開発の苦労を教えてください。
キム・テゴン氏:バトル部分を開発する際、「アトランティカ」で採用されたターン制バトルのノウハウを使用し、モバイルでも操作しやすいように調整、スピーディーなバトルを実現しました。
――タッチ操作用のUIの開発で苦労した点を教えてください。
キム・テゴン氏:PCのゲームではUIがかなり複雑で多く、それをすべてモバイルに移植することはできません。無理矢理に実装してもかなり使いづらく、各プラットフォームに合ったものをそれぞれに開発しました。
――PvPの要素で苦労した点を教えてください。
キム・テゴン氏:PvPはユーザーが一番敏感なコンテンツです。どのプラットフォームでも平等にプレイできるように、モバイル版ではユーザーが直接操作しなくても、軍事行動などでAIが自動で行動するように差別化を図って調製しています。
――スマートフォンでは特に外出中のプレイ時のバッテリー消費の問題がありますがどのように調整しましたか?
キム・テゴン氏:PC版を開発しているときには全然考えていなかったのですが…。現時点の解決策としては、モバイル版では端末のバッテリーが低下すると、ゲームが自動でグラフィックやフレームレートのクオリティーを徐々に低下させて、電力を抑えることを考えています。また端末自体の熱放出についても各機種でテストを実施しています。
――スマートフォンでは電波の悪い状況ではゲームではどんな対処をしますか?
キム・テゴン氏:本作はセキュリティの問題で、必ずサーバにアクセスしなければなりません。ゲームプレイ中に電波が途切れてしまった際には、直前でのデータを保存し、再接続をすればロードなしでゲームを再開できるようにしています。
日本での展開や今後について
――日本のテレビCMはご覧になりましたか?
キム・テゴン氏:日本はゲームのCMが多いですね。特に本作のCMは短い時間の中で面白さを最大限紹介してくれているので驚きました。CMに出演している中村獅童さんの武術の動きはビックリしましたよ。
――5月27日に新宿で開催されたCM発表会の楽屋で中村獅童さんとはお話しましたか?
―キム・テゴン氏:ペンがなくてサインが貰えなかったの残念でした(笑)。
――(CBTなどで)日本プレイヤーの反応はいかがですか?
ネクソン谷貝氏:もちろん良い意見・悪い意見などたくさんの声を頂きましたが、その中でも正式サービスを期待している声が特に多かったので嬉しかったですね。
――日本語での吹き替えやローカライズに関しては満足していますか?
キム・テゴン氏:すごく満足しています。特にローカライズしなければならない箇所も多かったのでクオリティーを高く維持してくれて嬉しいですね。
――ちなみに日本市場へ向けてローカライズなどの期間はどのくらいかかっていますか?
ネクソン谷貝氏:9ヶ月くらいはかかっています。翻訳の担当は1~2人なんです。Ndoors社とは頻繁にやり取りをして調整しています。
――今後、日本オリジナルのアップデートは予定していますか?
キム・テゴン氏:現在、日本CMで登場する中村獅童さんをゲーム内のキャラクターとして作成し、ユーザーに配布します。個性を重視する日本のユーザーが希望する武将のスキルや特徴も開発していこうと思っています。
――アップデート実装の期間の目安を教えて下さい。
キム・テゴン氏:韓国の基準ですが、2~3ヶ月に1回、幕単位のアップデートを予定しており、1つの幕でプレイ時間は約2ヶ月くらい、全10幕を予定しています。
――Ndoors社としては今後本作の他にどのようなタイトルを手がけていく予定ですか?
キム・テゴン氏:「三国志を抱く」の開発を通して、クロスプラットフォームのノウハウを蓄積できました。それを活かした大作のタイトルを6月に韓国で発表しようと考えています。Ndoors社ならではの単純ではない作品を準備しています。
――今年の秋の「G-STAR2013」には出展しますか?
キム・テゴン氏:「三国志を抱く」は出展しませんが、その他2タイトルの出展を予定しています。
――日本で正式サービスを待つユーザーにメッセージをお願いします。
キム・テゴン氏:「三国志を抱く」は、歴史ある物語「三国志」を最先端の技術「クロスプラットフォーム」で再現したゲームです。伝統と技術を大切にする文化が根付いている日本のユーザーに合ったゲームになっているのでぜひ楽しんでもらえれば嬉しいです。
――ありがとうございました。
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