【E3 2013】「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」新クラス&新ジョブや今後の展開について吉田直樹氏にインタビュー

アメリカ・ロサンゼルスにて2013年6月11日から13日(現地時間)まで開催されていた「Electronic Entertainment Expo(E3) 2013」。イベント最終日に「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを行った。

E3会期前日に行われた「PlayStation E3 2013 Press Conference」でPS4版が発表された「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」。PS4版は2014年の発売予定だが、PC版とPS3版は2013年8月27日発売と、残り2ヶ月と少しというところまで迫ってきている。

E3会場では、イフリートと戦えるE3用のバトルチャレンジとして本作も出展されており、途中で待機列が打ち切られてしまうほどの人気を博していた。日本だけでなく海外でも発売に向けて期待が膨らんでいる様子が伺えるなか、会期3日目に日本メディア向けに吉田氏の合同インタビューをする機会が得られたので、その内容をお届けする。

――E3会場で放送したプロデューサーレタ LIVEで巴術士、召喚士、学者のPVを公開されました。ペットを使役するこれらの職業のゲームデザインについて教えてください。

吉田氏:「旧FFXIV」では、サーバーでペットが管理できない状態にあり、そもそものクラスバランスも、アタッカーが多くキャスターが少ない状態でした。その2つの問題を同時に解決するため、ペットを扱え、なおかつキャスターであることを達成しているのが巴術士でした。特にデバフ(弱体)の概念がないと面白さが欠けた状態になってしまうため、戦術に組み込んだり、今後のエンドコンテンツやダンジョンを作っていくうえで、デバッファーの存在を入れたかったというのもあります。

では巴術士がペットとして使役するのは何がいいのかと考えたところ、カーバンクルであればキャラクター推しの面から見てもいいだろう、という話になりました。そして巴術士のクラスから派生するジョブは、「ペットといえば召喚」ということで召喚士となり、ここまではすんなりでした。

巴術士
召喚士

巴術士から派生するもうひとつのジョブである学者は、もともとローンチでの実装予定はなく、去年の9月から10月頃に、残りの期間でも開発が間に合うのではないか、となって一気に仕上げたジョブです。コンテンツファインダーでプレイヤー同士をマッチングする機能を搭載しても、ヒーラーが幻術士か白魔道士しかいない、しかも白魔道士は幻術士から派生するので、事実上ヒーラーは1クラスしかおらず、パーティーが形成されにくい問題が残っていました。バトルチームから「何とかするのでやらせて欲しい」と言って貰えたので、ヒーラー不足を解決するため、ヒーラーであっても違和感なく、しかもアタックもある程度できる職業を考えたときに、学者がいいのではないかとなったのです。

学者が使役するペットについては、最後までいろんな意見が出ていました。シルフはどうかという案もありましたが、そうするとシナリオ上蛮神ラムウが呼べなくなってしまうので(笑)、タイミング的に「ブレイブリーデフォルト フライングフェアリー」もあったし、あれも吉田明彦のイラストだし、可愛くてキャッチーだしフェアリーでいこうかなと。召喚士や学者になるためのジョブクエストはシナリオもよくできていますので、クエストの内容もぜひ楽しみにしていてください。

――ペットはそれぞれどういった存在になるのでしょうか?

吉田直樹氏
吉田直樹氏

吉田氏:E3前に放送した第7回プロデューサーレターLIVEでバディのチョコボが戦うシーンをお見せしましたが、基本的にはそれと同じで、ペットが持っているスキルやアビリティを自動で発動します。ただ、攻撃するのか攻撃を中止するのか、ガードなのかパッシブなのかといった設定が行えます。

ガードにしておくと、攻撃をしてきた敵に対して反撃を行いますが、パッシブにしておくと命令をしない限り攻撃をしにいきません。ヘイト(敵視)が乗った瞬間に攻撃を始めてしまうと、自分は逃げるつもりだったのにペットだけ戦っている状態になってしまうため、それを防ぐようにしています。作戦の切り替えには、アクションを用意してあるので、それをホットバーに登録して使うイメージです。

召喚士が使うタイタン・エギというキャラクターであれば、ヘイトを多く稼ぐことができるスキルを使って敵をひきつけてくれるので、プレイヤーは後ろからデバフを入れたり、DOT(毒のように継続的にダメージを与えるもの)を入れて敵を倒していくのが基本的な戦闘スタイルです。学者のフェアリーはキャラクターとしては1つなのですが、呼び出すアクションでフェアリーの姿が変わり、回復に寄ったものと、味方のバフを行うものがあります。

――回復はフェアリーが行うのでしょうか?

吉田氏:学者自身が持っている回復のスキルもありますし、フェアリーが持っているスキルもあります。味方全員にバフを与えるものもあります。

――ペットを使役する職業では、ペットを呼び出している間はMPを消費するといったように、何かを消費し続けることはあるのでしょうか?

吉田氏:呼び出す際にだけMPを消費します。

――フェアリーは一体だけでスタンスを切り替えていくということですが、カーバンクルはどうなるのでしょうか?

吉田氏:カーバンクルも実はタイプがありますので、どのタイプのカーバンクルを呼び出すのか選ぶことになります。元が1体で姿を変えるというのはフェアリーが特別です。

――戦闘中にそのスタンスは切り替えられるのでしょうか?

吉田氏:今のところできないです。フェアリーはジョブクエストにも関わってくるので、あまりモノ扱いはしていませんし、無造作に使うようなキャラクターでもないですね。ただ、最後はバトルチーム次第。彼らが「面白くするのでこうしたい!」という要求には、できるだけ応えたいし、信頼しているので。

――ペット職それぞれの攻撃アクションはどのようになっているのでしょうか?

吉田氏:今後アタック系の動画を公開しますので、そちらをご覧いただいた方が伝わりやすいと思います。β4の前にさまざまな情報出しを行いますので、動画の公開もそのあたりを予定しています。学者が本で敵を殴るのは確定していますが、バトルチームは本を使ったウェポンスキルを作るかどうか悩んでいました(笑)。

プレイヤーの方からは、本を装備して連続で殴る姿を見たいという要望をいただいていますが、一時の感情に流れされて本で殴るウェポンスキルにしてしまっていいのかなと。本で殴るためには敵に近づかなければいけないので、「なんでキャスターが近寄るんだ」となってしまいかねないので(笑)。敵に近寄られた人のためのウェポンスキルにした場合も、うまい人ほど使う頻度が少なくなるため、どうするか調整しているところです。

学者

――召還獣はイフリートやタイタンをはじめ、「ファイナルファンタジー」シリーズに登場しているキャラクターがすべて出てくるのでしょうか?

吉田氏:召喚士が召喚する場合については、レベルキャップが解放されない限り召喚できるものはあまり増えません。蛮神バトルに関しては、どれだけ蛮神が降りてくるのかと思うほど増やしていきますが、それでシリーズに登場したものが全て出るというわけではありません。

――巴術士は召喚士と学者という2つのジョブに派生していくことがポイントですが、今後既存のクラスも複数のジョブに派生すると考えていいのでしょうか?

吉田氏:はい、そう考えていただいて大丈夫です。

――例えば剣術士であれば何に派生するのでしょうか?

吉田氏:ナイトがいたら暗黒騎士はほしいと前から言っていますが、僕はダークファンタジーが好きなので、暗黒騎士のジョブを作るならダークなことをやらなければいけないようにしたいんです。しかも一方しか選べない。ただ、それをプロデューサーレターLIVEで少し話したところ、反対意見が多かったので、どうしようかなと悩んでいるところです。

――「FFXIV」初期のコンセプトは持つ武器を変えるとロールも変わるといった感じでしたが、今はジョブが重要になってきている気がします。今後はどう派生していくのでしょうか?

吉田氏:剣術士の中でも大剣や二刀流などを入れて武器種を増やすことは可能だと思っていますので、バトルというコンテンツが面白くなるためには何を足したらいいかというのと、プレイヤーの方が何を望んでいるのかの折り合いをつけることが必要になってくると思います。僕は暗黒騎士を早く入れたいですが、またアタッカーが増えてしまうという問題もありますので、何から追加するかを考えています。

また、長く続けていけば1クラスから2ジョブ以上に派生することも出てくると思います。単純に平行ジョブではなく、例えばですが、剣術士と斧術士からナイトと暗黒騎士に派生して、ナイトと暗黒騎士のジョブクエストもクリアしていれば、さらに上のジョブになれる、というのも将来的にないとは言えません。

並行するより前に進んでいくほうが面白いと思いますし、僕らも最上級のジョブが確定しているほうがコンテンツを作りやすいです。バトルシステムを最初のデザインに固執するつもりはあまりなく、時代がある程度進んだらガラッと変える可能性もゼロではないです。

――新しい派生ジョブの実装時期はいつ頃か考えているのでしょうか?

吉田氏:そうですね…エクスパンション(拡張パック)の前に何かひとつはやりたいと考えていますが、新しいクラスやジョブが増えるというのは皆さんに興味を持っていただきやすい部分ですし、一気に増やすタイミングはエクスパンションになると思います。ただ、「旧FFXIV」から一度もレベルキャップを解放していないので、RPGとしてキャラクターの成長を楽しみにしている方も当然いらっしゃると思うので、どこかのタイミングでレベルキャップの解放も考えています。そのタイミングで新しい職業を追加する可能性もあると思います。

――クラスを育ててジョブクエストをクリアすることでジョブに派生していきますが、それはバトルクラスに限られるのでしょうか。今後、ギャザラーやクラフターにジョブが追加される可能性はあるのでしょうか?

吉田氏:将来的にやらないとは言いませんが、今のところ予定はありません。クラフターやギャザラーを上位職にしていくよりも、僕らが“ハイレシピ”と呼んでいる上級のレシピを追加して、ほかのクラフターと協力することで凄いものを作れるようにする方向で考えています。例えばですが、バトルクラスが取ってきたアイテムを使って、ハウジング用の家具や装飾を作ったり、バディチョコボのアーマーを作ったりするという感じですね。

エオルゼアの世界で生きていく、経済を動かしていくことがクラフターやギャザラーのそもそものロールであり、エンドコンテンツであると思っています。仮に錬金術師と鍛冶師をレベル50まで育てると、派生できるジョブが実装されたとして、元のクラスを2つともやるのと何が違うのか、ということになってしまいますので、方向性は今申し上げたような伸ばす方にしていこうと思っています。

――漁師で魚を釣って売りギルを稼ぐ…といったRMT対策をするため、魚の価値があまり高くないとのことですが、漁師が釣った魚をほかの生産職が活用することはあるのでしょうか?

吉田氏:それは「旧FFXIV」のとき、鎧の一部に魚の皮が必要といったように、無理やり入れられていた要素ですね。そういった不自然な要素は要らないと話をしています。ゲームを作るときに陥りやすいのが平均化ですが、僕はバラつきがあってもいいと思っています。このクラスではこれができるんだから、こっちでもこれができたほうがいいよね、とクラス間の差をなくすようにしても、実はつまらなくなってしまいます。

無理やり平均化させると、アイテム構造などが歪な設定になり、結局プレイヤーが迷惑を被ることになってしまいます。βテストフェーズ3で漁師を公開していないのも、あくまで漁師は釣りのロールプレイを楽しみたい人がなる職業だからです。現実でカジキマグロを釣るような漁を仕事にしている人は別ですが、釣りが趣味の人が卸市場に魚を卸しに行かないじゃないですか。ですので、釣った魚を卸すように、生産職で必ず活用してもらうことを求めているのあれば、「漁師はそういうクラスではありません」という話をさせていただきます。

その代わり、釣竿や餌、仕掛けの選択、川のタイプを考察したりと、エオルゼアの自然を楽しんでもらえるようにしています。それから、ギリギリまでOKかNGか悩んでいましたが、雲海に釣り糸をたらすと、雲に住んでいる魚が釣れるといった要素があったりします。ファンタジーなので、流砂でも釣れるようにという案もありました。

――それは最終的にOKされたんですか?

吉田氏:最初僕はNGだと言ったんですが、どうしてもやりたいと言われたので、じゃあ説得力を出せるものならいいよと話をしました(笑)。

――雲海や流砂から釣れるのは魚なんですか?

吉田氏:まだ釣れるものの最終データは見ていないんです。「これはないだろう」と釣れるものを外す可能性はありますが、雲海や流砂から釣れるといったような形で、独自のことをやるのはOKだと話をしています。無理に漁師が釣ったものを世界に活かす必要はなく、「何でここにこのアイテムが必要になるんだろう?」と思うような事態にすることはやめてほしいと伝えてあります。

――では自然な流れ、例えば料理に魚を使うといったことはあるのでしょうか?

吉田氏:はい、それはあります。

――コンテンツをクリアすることで入手できるトークンにはヒエラルキーがあるとのことですが、下位のトークンは集めても不要になってしまうことが出てくると思います。トークンと交換できるラインナップは装備品だけなのでしょうか、それとも消耗品も考えているのでしょうか?

吉田氏:消耗品はあまり想定していません。ただ、ラインナップが永久にそのままにはならないと思っていただければ大丈夫です。MMORPGって、ゲームが何年も続くとどうしても敵の強さがインフレーションを起こしますし、どこかのタイミングで見直すタイミングを用意しようと考えています。恐らく3年に1度ぐらいの頻度だと思いますが、アイテムレベルでしっかりとデータ管理をしていますので、あまり心配はしていません。

誰にも見向きもされないものに関してはリニューアルする方針ですし、ゲーム序盤のコンテンツも古くなって誰もプレイせず、新規の方は新たに追加されたコンテンツで遊ぶといった状態になっていたら、ダンジョンのリニューアルなども行います。すでにクリア済みのプレイヤーが戻ってきてレベルシンクして挑めばメリットがあるものを用意して、序盤を盛り上げるといったことは定期的に行っていきたいと思っています。

――ゲーム内で操作方法などの「How To」がいつでも見られるようになりましたが、量が多いですよね。

吉田氏:まあ…膨大ですね(笑)。ただ、操作方法についてはこれ以上(※下の画面写真にある操作方法を)簡略化したら、恐らく10年続くゲームにならないと思います。本当に申し訳ないですが、この情報量を超えられない人はたぶんMMORPGを長くは続けられないと思います。

ですが、だからこそ細かくこだわっていて、ソロプレイ時にパーティーリストを非表示にするオプションはPS3版ではデフォルトで有効にしていて、とにかくウィジェットの1つでも減らそうと考えています。本当は画面右上のマップも表示させるか迷いましたが、さすがにマップがある安心感は大きいのでデフォルトで表示されるようにしています。

――正式サービス開始後、申し込み制によるサーバー移転サービスがありますが、引き継げるものと引き継げないものを教えてください。

吉田氏:サーバー移転と同じ仕様で、個人資産は全部持っていけますが、移転した先にフレンドはいませんので、当然フレンドリストはなくなりますし、入っていたリンクシェルやフリーカンパニーは脱退します。家と土地は権利書に戻して移動してもらうため、建て直しになりますが、買い直す必要はないと思います。移転先のワールドでは、元のワールドで立てた家の場所がすでに埋まっている可能性はありますので、その際は別の場所に建てていただくことになります。

――では基本的に個人資産は引き継げ、コミュニティはワールドごとに、という認識でしょうか。

吉田氏:はい、そうなります。あと同一のキャラクター名がいた時は、βテストフェーズ3の段階ではレガシー(※「旧FFXIV」で3ヶ月以上の課金を行ったユーザー)の方が最優先になっていますが、それ以降はタイムスタンプ、キャラクターが作成された時期が早いほうが優先される仕様にする予定です。

――今回E3でPS4版を発表されましたが、PS3版も自信があるとアピールされています。そこまでPS3版にこだわりを持つ理由は何かあるのでしょうか?

吉田氏:大きく2つありますが、まず1つは、長い間プレイヤーの方をお待たせしていることが理由です。僕が「旧FFXIV」を引き継いだとき、一番最初にお約束したのが「延期はしますが、必ず出します」ということです。その約束をちゃんと守ってから次に進みたかったのです。

もう1つは、僕らが作っているのはMMORPGであり、サブスクリプション(月額課金)モデルを採用しているため、単純にソフトが100万本売れればいいという訳ではありません。世界中、たくさんの方にプレイしていただき、ゲームをアップデートして楽しんでいただくビジネスモデルなので、一人でも多くの方にプレイしていただける環境を作る必要がありました。

そう考えたとき、PS3版を無しにしてPS4でサービスしますと言っても、さすがにPS4が発売初週で何千万台も売れることにはならないと思います。PS2からPS3への切り替えも相当長い時間がかかりましたし、まだまだPS3で遊べるゲームってたくさんあるじゃないですか。ハードの性能が飛躍的に上がったので色んなことができるようになりましたが、新ハードが浸透するまで時間がかかると思います。

そこでPS4のみに対応するといったらたくさんのプレイヤーが遊べる訳ではなくなってしまいます。そのため、まずはたくさん普及しているハードでプレイしていただいて、現世代機ながらMMORPGでここまでやれることを、スクウェア・エニックスのテクノロジーの凄さをPS3版で知っていただきたいと考えています。

その上で、「PC版と比較するとなあ…」とか「もっと快適な環境で遊びたい」となったとき、PS4でも遊べる選択肢が選べるという流れにしたいため、まずはPS3版に全力を注いでいます。ゲームのデータはもちろん全部PS4版に持ち越せますので、PS3版で今すぐ冒険を始めてもらえれば、PCのハードをアップグレードするかのように、自分が使っているマシンがPS4に変わったらそのまま遊ぶハードをスイッチしていただくことができます。

――PS4本体に期待しているところはどこでしょうか?

吉田氏:メモリです。ソーシャル機能やほかのデバイスとの連動といった要素もありますが、やはりメモリが大容量で高速ということは欠かせません。特に「新生FFXIV」では、同時キャラクター表示数で最終的にボトルネックになるのはメモリです。単純にテクスチャ解像度を上げることもできますが、例えばバックエンドのクラウドで集積して計算したデータをメモリに展開し、そのデータを使って地形が変わるといったシミュレーションにメモリを使うこともできます。

――E3で世界に向けて「新生FFXIV」の情報を発信したわけですが、その手ごたえや海外の反応はいかがでしょうか?

吉田氏:一番やってよかったと思うのが、イフリートと戦うバトルチャレンジですね。少しの時間だけMMORPGを遊んでも面白さは伝わらないので、僕は元々MMORPGのハンズオン、いわゆるフリープレイをやることに反対です。「旧FFXIV」ローンチ直前のE3でもキャラクターメイキングができるものを出展していましたが、やっぱりPRとしては微妙だなと感じていました。

ただ今回、お客様に盛り上がってもらえて、しかも「ファイナルファンタジー」らしさや「新生FFXIV」らしさが出せるのであれば出展してもいい、という話をしていました。開発チームはもちろん、北米のコミュニティチームにも頑張ってもらって、本当にギリギリまで調整して、8人で戦えるイフリート戦を急造してもらいました。無事にバグもない状態で実施でき、しかもPC版とPS3版を比較できる状態で出展していたのですが、「エキサイティングだね!」「すごいアメージングだ!」と、たくさんの方に言っていただけました。

スクウェア・エニックスは映像で押していく会社だと思われているかもしれませんが、「ゲームエクスペリエンスとして凄いね、絶対買うよ!」と言っていただけたので、ストレートに嬉しいです。E3はユーザーベースのイベントではなく、全員ゲーム業界の方で厳しい目線を持つはずの人たちですので、北米にも受け入れてもらえるのではと感じました。実はコミュニティチームのスタッフと「もしかしたら『新生FFXIV』は北米のプレイヤーが最大勢力になるかもね」と話をしていたぐらい盛り上がっていただけました。

――北米が最大勢力になるのでは、というのは盛り上がりからの判断だと思いますが、E3に出展して日本からの反響はきていますか?

吉田氏:北米のマーケットの中にいるMMORPGのプレイヤー人口と、日本のプレイヤー人口はかなり開きがあるので、どうしても絶対数は大きく違います。プレイ人口の多い北米にリーチできるゲームにもできただろうという手ごたえから、結果的に北米が最大勢力になるかもねという話です。

日本は「1.0」(「旧FFXIV」初期のバージョン)のときのネガティブなインパクトが全リージョンで一番強いです。それでも盛り上がってくれていることは重々承知しています。ですので、その声を徐々に広げていき、しっかり新規のお客様、「旧FFXIV」を止めてしまった方に訴求して、プレイヤー数の拡大に繋げたいですね。

――βテストフェーズ3でかなりの人数が当選されたと思いますが、どれくらいの人数になるのでしょうか?

吉田氏:「旧FFXIV」のクライアントをお持ちの方は今回から全員参加が可能になっており、それだけで約70万アカウント以上です。βテストへの応募だけで70万以上程の応募があったので……かなりの人数ですね(笑)。「ファイナルファンタジーXIII」に同梱されていた優先権をお持ちの方も全員当選させていただきました。ようやく色んなお約束が守れるタイミングになったと思っていますので、ホッとしています。

βテストフェーズ3のワールドは25個でスタートしており、レガシーの方のキャラクター引継ぎテストが始まるタイミングでは35個になりますが、βテスト中に50個まで用意できるよう準備しています。製品版の発売が近くなってきていますので、β3ではデータをワイプ(削除)しますと何度もお伝えしていますので、どれくらいのログイン率になるか分かりませんが、まずは一度楽しんでいただけたらと思っています。

――アメリカと日本でゲームの好みに対する違いを感じたことはありますか?

吉田氏:「新生FFXIV」は日本と海外、どちらにも受け入れてもらえるギリギリを狙ったつもりです。最近、海外のマーケットでは「ファイナルファンタジー」がちょっと幼稚だと言われ始めており、ゲーム中に選択肢がなく、決められたものを見せられている感じがするといった意見をストレートにいただいています。あとはもっとダークさがほしいという意見もあります。

ただ、最近は日本と海外、どちらのお客様も嗜好がそれぞれ異なっていて、ダークなところが好きな方もいれば、「ミコッテっていいキャラクターだよね」という方もいらっしゃいます。僕自身はクラシックな「ファイナルファンタジー」で、なおかつダークな路線が好きですし、日本にも確実にその路線が好きな方はいらっしゃるので、そこをまっすぐ狙っています。そのため、「新生FFXIV」に対しての反応は、日本も北米もあまり変わらないですね。

あと、北米の方って「映像がキレイなのは分かったけど、どんなストーリーが体験できて、どんな敵と戦うの?」と気にされるので、E3で公開した「FINAL FANTASY XIV “CRYSTAL’S CALL”」トレーラーはすべてインゲームのもので作るようにこだわりました。英語版のトレーラーは、ガイウスの「Eorzea」という一言目から始まりますが、こういう世界でクリスタルがあって、恐らくこいつが世界をどうにかしようとしていて、それに向かってみんなで戦っていく。召還獣たちとの戦いやドラマがあって、最後はさらなる悪役みたいな者が出てきて終わる…といった内容を真っ直ぐ表現できたので、評判はよかったです。

――βテストフェーズ3でPS3版のユーザーが参加しますが、そこで寄せられた意見を元に製品版までにもう一度改修する予定はあるのでしょうか?

吉田氏:もちろん工数に入れています。βテストフェーズ2までで40万人ほどのプレイヤーに参加していただきましたので、PC版プレイヤーの協力もあってゲームの根幹部分は仕上げたつもりでいます。PS3版プレイヤーの皆さんに見ていただきたいのは、キャラクターの表示優先順位や、表示の切り替わりなどです。例えば、重要なNPCがなかなか表示されないとか、これだけの人数がいると表示が切り替わりすぎて大変とか、そういったプレイ感のフィードバックを重点的にいただきたいと考えています。

それ以外のフィードバックが要らないという話ではありませんが、僕の中に「新生FFXIV」というゲームの芯があるので、現状から大きくブレることはないものが多いと思います。バトルも納得のいくまで調整しましたが、複雑なバトルにするほど負荷が高くなりますので、βテストフェーズ3で慎重に1歩ずつ最後のテストを行うつもりです。

――「LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII」とのコラボレーションについての感想をお聞かせください。

吉田氏::スクウェア・エニックスはどんどん変わってきているのかなって思っています(笑)。「ファイナルファンタジーXI」と「新生FFXIV」はMMORPGなので、ほかの「ファイナルファンタジー」と毛色が違うようなところがあったかもしれませんが、「もっと昔のようなノリでいいんじゃない?」といった流れが出てきたかなと。ミコッテの種族衣装を着たライトニングも、クオリティが高くて(笑)、単なるコラージュじゃなくて「これ実機ですよね!?」ってなりました。

ライトニングさんのほうが先に出ていて、一定数以上のファンを獲得しているキャラクターですので、「新生FFXIV」を知らずに「LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII」をプレイしてくださった方が、「新生FFXIV」の事を調べて「ちょっと触ってみようかな」と思っていただけたら、やっぱり嬉しいですね。

あとは、投げられたボールは全力で打ち返す主義なので、こちらも負けないよう少ないコストで効果が出ることを「新生FFXIV」でも実施したいなと思っています。たぶん開発チームからは「どこにそんなコストが!」って言われそうな気がしますが、帰りの飛行機で何か考えます(笑)。

――シリーズの立ち位置について、ちょっと毛色が違うかもしれないということですが、吉田さんとしてはほかのスタンドアローンの「ファイナルファンタジー」と同じ扱いが理想なのでしょうか?

吉田氏:毛色が違うと感じるかは人に寄りますが、「ファイナルファンタジー」のナンバーを背負っている僕が「MMOだしオンライン専用だから、FFXIVは『ファイナルファンタジー』と違ってもいいや」と思っていたら、それはファンの方に失礼ですし、一度も思ったことはありません。むしろプレイヤーの方に「ファイナルファンタジーXI」と「新生FFXIV」はスタンドアローンのものと別だよねと言われてしまうことの方が悲しいので、多くの人に「ファイナルファンタジー」だと言ってもらえるよう、色んな要素や工夫を取り入れています。

今後、例えば「THEATRHYTHM FINAL FANTASY」で「新生FFXIV」の曲が使われるようになったり、「DISSIDIA FINAL FANTASY」シリーズが進んだときに「新生FFXIV」のキャラクターが登場できるように、ファンの方の間で市民権を得ていきたいなと思っています。

――フリートゥプレイ(基本料無料)のスタイルが主流になってきているなか、サブスクリプション(月額課金)であることの売りだと思う部分はどこでしょうか?

吉田氏:僕の価値観では、フリートゥプレイとサブスクリプションはどちらか劣っているといったことではなく、単なるビジネスモデルの違いだけだと考えています。どっちが正義でも悪でもありませんので、ゲームにフィットしたものを選べばいいだけです。

サブスクリプションでスタートした目的というのは、毎月お客様からプレイ料金をいただき、その利益をアップデートという形で還元する、安定した運営を行いたいからです。「FFXIV」では中長期計画を出してここまで進んできましたので、それをこれからも続けていきたいのです。

超大規模なMMORPGを作るとなると、普通は投資家に出資してもらわなければいけませんが、スクウェア・エニックスは一社単独で作っています。もちろん株主はいますが、赤字にならない運営をしている限り、いただいた利益をスタッフの給料に反映した上で、プレイヤーの皆さんに新しいコンテンツを提供することができます。長期的に安定した運営を続けられれば、僕らも長期的に利益をいただけますし、何よりプレイヤーの皆さんに安定して楽しんでいただけます。

フリートゥプレイとサブスクリプション、どちらが良いか悪いかと言うつもりはなく、プレイヤーに還元できるもののサイズやスケールを考え、安定した長期運営を目指したいと言う目的があったため、サブスクリプションが一番向いていると思って選択しています。これまでハッキリ言ったことはありませんでしたが、「旧FFXIV」も月額課金を始めてからお客様の数が3倍以上になっています。MMORPGではありえない成長曲線をデータで実証できていますので、真面目に面白いものを提供し続ければ、お客様はそれにお金を支払って遊んでくれると考えています。

――「旧FFXIV」を引き継がれたときに思い描いていたものと、今の段階ではどの位置までたどり着けた印象でしょうか。

吉田氏:まだローンチしていないので何とも言えませんが、2年半前に「新生するからには、ここまではやろう」と思っていたことに対して、140%ぐらいはいったと思います。2年半というと長く感じられるかもしれませんが、このクオリティとボリュームで、4言語対応、PC版とPS3版をゼロから作り、しかも「旧FFXIV」の改修と運営を行いながらここまでこれたので、僕としては当時想定した以上です。スタッフにも恵まれ、自分で言うのも変ですが「やっぱりスクウェア・エニックスはすごいな」と思いました。

「ファイナルファンタジー」という形では、グローバルスタンダードなMMORPGを体現しながら、「ファイナルファンタジー」らしいストーリーとキャラクター、これだけの数のクラスとジョブを揃えられたという意味で、100点のスタートが切れると思います。ここから200点、300点になるよう、アップデートの計画もしていますのでお楽しみに。

「ファイナルファンタジー」のMMORPGとしては順調ですが、僕は非常にコアなMMORPGプレイヤーなので、もし「ファイナルファンタジー」ではないMMORPGを作っていたら、もっと別の形になっています(笑)。それこそフリートゥプレイモデルにして、PvPサーバーもある超コアな感じになるような気はします。その線引きはしっかりやっていますので、プレイヤーの皆さんはご安心を(笑)。

――拡張パックの発売時期というのはいつ頃の予定でしょうか?また、拡張パックまでに行う大型アップデートの大まかなロードマップを教えてください。

吉田氏:プロデューサーとして精査した訳ではありませんが、ローンチ後のドタバタはある程度あると思うので、どれだけ計画がずれるかという問題があります。大体1年半ぐらいで拡張パックを出したいですが、たぶん1年半と言って2年近くになるのかな…というのが大まかな感覚です。

相当なフィールド数を作りこんで、コンテンツを盛り込んだ状態でお届けしたいので、1年では短すぎて拡張パックと呼べるだけのボリュームにはならない気がしています。パッチのアップデートについては、2ヶ月半から3ヶ月に一度くらいで考えており、拡張パックが発売されるまでを1年半ぐらいとすると、大体どれくらいの回数になるか想像していただけるんじゃないでしょうか。

――ありがとうございました。

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