夏休みの最後はエオルゼアでの冒険を―「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」発売後の展開について吉田直樹氏にインタビュー

スクウェア・エニックスは、PS3/Windows用ソフト「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」を8月27日に発売した(PS4版は2014年発売予定)。同日より正式サービスが開始となった本作について、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを行った。

OnlineGamerでは昨年行われた「E3 2012」を皮切りに、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」について吉田氏にさまざまな話を伺ってきた。1年以上にわたり何度もインタビューの機会をいただいてきたわけだが、発売を控えた忙しい時期にも関わらず、今回もインタビューの時間をいただくことができた。

本インタビューの収録はオープンβテスト実施前だったため、同テストを踏まえての質問はできなかったのだが、発売日時点で楽しめるコンテンツや今後の展開について話を伺ったので、早速その内容をお届けしていく。すでにゲームをプレイ済みの人もそうでない人もチェックしていただきたい。

発売を目前に控えた吉田氏へインタビュー

――βテストフェーズ3が終わり、オープンβテストやアーリーアクセス、正式サービスと誰でもプレイできる環境を控えた今の心境をお聞かせください。

吉田直樹氏
吉田直樹氏

吉田氏:ようやくここまで来たなと感じていますが、オンラインゲームは正式サービス開始日にパッチを配信することができますので、今もまだエンドコンテンツの最終的な難易度調整を毎日行っている状態です。なので終わったという感覚はなくて、これは発売日になっても変わらないかなと思います。

オープンβテストや正式サービスが始まったらサーバーの安定性を見なければいけませんし、「2.1」と呼んでいるパッチ、もちろんその後続パッチの開発もありますし、中長期計画のひとつである拡張パックへの工程管理も始まっています。恐らく発売から半年ぐらい経ち、お客様にご挨拶できるイベントができた時点で、やっと「発売したんだなあ」と実感が沸くかもしれません。

ただ、これだけ大規模でボリュームも多いゲームです。ゲーム内の全チェックが終わり、ひとまずのエンドロールを見たところで「開発チーム頑張ったな」という気持ちはあります。

――正式サービス後も続いていくわけですが、最初の大型アップデートはいつ頃を予定しているのでしょうか?

吉田氏:3ヶ月に一度の期間で考えていますので、2013年内には大きなアップデートを行いたいと思っています。一回のアップデートの規模は、「ファイナルファンタジーXIV(以下、旧FFXIV)」のアップデートのイメージよりもはるかに大きいものになります。それこそ3ヶ月に一度新作が出るぐらいの勢いでやるつもりですし、正式サービス時に入っているエンドコンテンツも相当な量を用意していますので、新規で始めた方が「遊びつくしてやることがなくなった」という事態にはならないと思います。

――最初の大型アップデートで実装される主な内容も教えてください。

吉田氏:かねてからお話ししているハウジングと、PvP(対人戦)を実装する予定です。PvPは正式名称が狼たちの檻「ウルヴズジェイル」という名前に決まりました。それ以外にもPvE(対モンスター戦)コンテンツとして、これまでやってこなかった「蛮族デイリークエスト」や、フィールドを使った遊びもいくつか予定しています。ダンジョンの追加もありますし、盛りだくさんの内容になります。

――「蛮族デイリークエスト」はどういったものになるのでしょうか?

吉田氏:詳細は今後発表させていただきますが、もっと蛮族を掘り下げたものになります。メインストーリーでは、「星のエネルギーを吸い取る“蛮神”を呼ぶため、蛮族は敵だ」と描かれることが多いですが、シナリオの一部では「実は蛮族って、人と本質的には変わらないのでは?」という話も出てきます。その辺りに焦点を当て、蛮族側の事情をもっと掘り下げていく遊びですね。

――以前お話しされていた「なぜ蛮族が悪いのか」というところですね。

吉田氏:そうです。蛮族にも事情がありますし、蛮神を呼ぶだけの理由もある。そういったところを蛮族側の視点でもやっていこうと思います。サービス開始時の段階でも、サブクエストでちょっと匂わせているところはあるのですが、蛮族側の声を大きく聞けるわけではないので、毎日コツコツプレイするような遊びとして実装していこうと考えています。

――レベルキャップの解放時期についてはいかがでしょうか?

吉田氏:当面はキャップを解放するつもりはありません。新規で始めた方が「どんどん上にいっちゃうなあ…」と思ってしまわないように、レベル50になってから自分のキャラクターを強化するコンテンツやアイテム収集、バトルだけでなく生活系のコンテンツなどにもチャレンジしてもらえるようにしています。そして「このレベルで十分遊びつくした」と感じ、キャラクターそのものの成長が欲しいと思う時期になったら、レベルキャップの解放を考えます。キャップを上げてしまうと全クラス、全ジョブに対して引き上げをしなければいけないため、まずは新しいクラスやジョブの追加を行っていきたいと思います。

――最初にクラスやジョブを追加するタイミングはいつ頃の予定でしょうか?

吉田氏:それを今言うとざわざわしてしまいますので(笑)、まだ秘密にさせてください。

――クラスからジョブに派生していくのでジョブの追加は分かりますが、クラスの追加もあるのでしょうか?

吉田氏:ないとは言わないです。長期運営上、クラスを次々に足していくイメージではありませんが、ずっと言われている銃術士のことがありますので。

――新クラス実装後にゲームを新規で始める場合、スタート時に追加クラスも選べるのでしょうか。それとも転職に条件を設けるのでしょうか。

吉田氏:転職に条件を設定すると思いますが、まだ何とも言えません。都市に縛られ続けるのも大変ですので、既存のクラスとは違った形になる可能性はあります。

――武器種の追加は新しいクラスやジョブの追加と合わせてになるのでしょうか?

吉田氏:そうですね。メインアームを変えればクラスやジョブも変わるのがアーマリーシステムなので、クラスやジョブが増えれば武器種も増えていきます。ただ、ジョブに関しては、派生形が増えるだけなら武器種が増えない場合もあります。

――正式サービスを開始してから実施するゲーム内イベントの予定はありますか?

吉田氏:現実世界ではもうクラゲが浮いてるかもしれませんが…(笑)、夏なので夏祭りを行います。

――耐熱装備、言ってしまえば水着がもらえるものですよね。

吉田氏:はい。ちょっと遅い夏休みをエオルゼアで満喫していただこうかなと思っています。

ベンチマークの「キャラクター編」で耐熱装備を付けた姿を確認することができる。

――先日「ファイナルファンタジー」シリーズ間のコラボレーション「FINAL FANTASY GO THERE」が発表されましたが、自社内の「ファイナルファンタジー」以外のコンテンツとのコラボは考えているのでしょうか?

吉田氏:やっぱり「ファイナルファンタジー」には「ファイナルファンタジー」の世界がありますので、まずはそこからですね。ただ、「ここまでしかダメ」と線引きしているわけではありませんので、絶対にやらないということではないです。それこそ「ファイナルファンタジーXI」「ドラゴンクエストX」「ファイナルファンタジーXIV」とMMORPGが三本揃い踏みになりますので、MMORPGつながりで何かあってもいいのかな、という気持ちもあります。

――では他社タイトルとのコラボの可能性もゼロではない感じでしょうか。

吉田氏:ゼロではないと思います。ですが「旧FFXIV」のイメージを引きずっているうちは、他社様に迷惑が掛かる可能性もありますし、運営もグローバルで行っています。日本だけで盛り上がっても大きな意味がないですし、その辺りは慎重に考えています。海外のプレイヤーの方も「ファイナルファンタジー」の世界観のひとつとして楽しんでいただけるぐらいでなければ、面白くならないと考えています。

――8月8日に正式サービス開始前最後となるプロデューサーレター LIVEが放送されましたが、今後も放送は続けていくのでしょうか?

吉田氏:以前にもプレイヤーの方からご質問をいただき、番組で「14回まではやりたいね」とお話した通り、今後も続けていこうと思っています。この前もコミュニティチームと今後の放送スケジュールについて話をしていたのですが、正式サービス直後は毎月放送にしようかという話もありました。「新生FFXIV」は月額課金モデルなので、毎月盛り上がってもらえるようにしたいですし、僕らも楽しんでやらせてもらっているので、プレイヤーの方の質問に答える放送回と、次のパッチ情報を先出しする放送回、これを交互にやってみてもいいのかなと。

プロデューサーレター LIVEを含めて多数の動画を公開してきましたが、βテストには参加できなかったけど映像を見て興味を持ってくださった方や、プロデューサーレター LIVEを見て気になって予約した方をTwitterなどで見かけたので、これまでやってきてよかったなと思っています。

――番組中を始め、よく吉田さんがゲーム内に姿を見せていましたが、正式サービス開始後は控えるとか、変わらず続けていくとかはありますか?

吉田氏:あまり控える気はないですね(笑)。キャラ名を明かさずにプレイすることと、イベント的に“異邦の詩人”の格好をしてウロウロすることの両方があると思います。正式サービス開始後は、エオルゼアワールドツアーでもやるべきかな、と考えているぐらいです。

――お忍びでのプレイも続けていくんですね。

吉田氏:やっぱりゲーム内でプレイヤーの生の声を聞くことも必要だと思いますし、実際に自分がプレイすることで見えてくるものもあります。例えば、レベリングしてアイテムを集めていく中でどこに不満点があるのかについても、一人でプレイしている時と、多人数の環境の中でプレイしている時では、絶対に違いがあります。ディレクターとしてゲームの全チェックを行う時は、周りに何千人もいる状態でプレイしているわけではないので、細かな想定漏れが出る可能性はあり、その差異をパッチで調整していく必要もあります。ですので身分を明かしてしまうと生の声が聴けなくなってしまうため、こっそりプレイもしていきます。

――正式サービス開始後もバランス調整を行うと思いますが、今後こういったところに意見が欲しいといったことはありますか?

吉田氏:初期の運営が落ち着いた段階で、テストサーバーの公開もやらなければいけないと考えています。僕らが集中的に見てほしい部分がある場合は、有志のプレイヤーの方に一度テストサーバーにログインしていただき、そこで調整してからリリースするというやり方になると思います。もちろん、日々フォーラムに上げていただいているフィードバックにも目を通していますので、その辺りは「旧FFXIV」からやってきた方針を変えずに今まで通りやっていきます。

――フォーラムと言えば、ギル(お金)をテレポに使うことが多く、装備にあまり使わないという話題を見かけました。吉田さんの中では経済についてどのようなビジョンがあるのでしょうか?

吉田氏:それはβテストの範囲内だからですね。実はみなさん、βテストのフェーズ3を遊び過ぎなくらいプレイされているんです(笑)。僕らが取った最終的なデータでは、フェーズ3を1時間以上プレイした人が約50万人でした。その50万人の方の平均プレイ時間が30時間です。βテストフェーズ3はトータルで13日間しか実施していないのですが、プレイ時間が300時間を超えている方も結構いて、データがワイプ(削除)されるβテストとしては異常値と言えるぐらいです。ギルの使い道があまりないというのは、過去のβテストを含め、序盤だけを繰り返しプレイしていたからこその印象だと思います。

最初のスタートダッシュからいきなり経済が活性化することはなく、ある程度みなさんがゲームを進めた段階で、経済を動かすチャンスがしっかりと存在しています。βテストの範囲はその波が来る前に終わってしまうので、経済が動き出すのは正式サービスが始まり、ある程度時間が経ってからです。

フォーラムでは「吉田はバトルにしか興味がない」と言われることもありますが…(笑)、僕は「ドラゴンクエストX」の開発中期までチーフプランナーをやっており、「MMORPGの経済活動は需要と供給と消費と加工の4つがなければ回らない」という話を、最初に堀井さん(堀井雄二氏)にプレゼンしました。それぐらいMMORPGにとって経済循環が重要だと思っているのです。ただ、経済について語るというのは、下手をすると経済介入になってしまったり、独占のヒントになる可能性もあります。あまり迂闊に話すべきではない、というのもポイントではありますね。

ただ、1クラス目の育成ではなく2クラス目以降、そしてエンドコンテンツやPvPなど、結局のところバトルはアイテムを消費させます。そこに商機があるのは確かですので、その辺りから「新生FFXIV」の経済を推測していただけたらな、とは思います。

――クラフターのレベルを上げる途中で作ったものが売れないので、赤字になるといった意見もありますが、やはりそういったことを見越しているのでしょうか?

吉田氏:はい。そこは「旧FFXIV」のイメージを引きずっていることも影響しているかもしれません。バトルクラスを必ず一つは上げてくださいとお話ししていますし、そこで稼いだギルをクラフターやギャザラーのレベル上げ分の活動に回してほしい、というのが僕の考えです。仮にクラフターだけを上げようとすれば、素材を買って入手しなければいけないものがあるため、それは確かに赤字になります。

ですが、バトルクラスをプレイしている際にモンスターから素材を入手したり、あるいはギャザラーで収集した素材を使えば、コストはどんどん減っていきます。クラフターを成長させるために何をどれだけ提供するかは、プレイヤーの皆さんで決めていただきたいと思っています。ほかのクラスをやらずにクラフターのレベルだけを上げようとしたら当然ギルが必要になりますし、駆け出しの職人が作ったものなんてそうそう売れません。NPCのショップから買った素材で生産するだけで黒字になるというのはバランス上あり得なく、ゲームとして破綻した状況になってしまいます。

人より早くそのクラスを成長させたいのであれば、クラフターの場合はギルをかけるなど、どこかにリスクが発生します。そういったリスクがあるからこそ、ゲームは面白いと思いますし、バトルクラスもギャザラーも、そしてクラフターもやることで、ギルが減らずに素材も取れますし、そういった遊び方こそが、アーマリーシステムかなとも思うのです。

ですのでレベル10になったら、全クラスを解放して回ったほうが楽しみは増えると思います。その方がギアセットも豊富に揃いますし(笑)。自分たちでプレイスタイルを縛らず、自由に遊んでいただきたいですね。

――確かに私も全クラスに手を出すタイプなので、やることがどんどん増えて、ゲームを止めるタイミングを見失ったりします。

吉田氏:はい。純粋にできることが増えていくだけですし、むしろクエストをある程度進めてから、いっぱいになったアイテムボックスを見て「これで何が作れるんだろう」と考えたり、「あとはギャザラーでこの素材を手に入れれば目的のものが作れる!」といった楽しみ方ができるのが、アーマリーシステムの最もいいところだと思っています。

プレイヤーの方の多くは、どうしてもメインで遊ぶクラスのレベルを早く上げようと考えてしまいがちです。でも色んなクラスに手を出すことで、縦に伸びる速度が遅くても、できることの範囲は大きく広がります。結果、プレイヤースキルも上昇しますし、知識も増えます。かけた時間の分だけキャラクター自身の強さも上がっていくので、結局は浮気性の方が案外ゲームを素直に楽しめるという気はしますよね(笑)。

――経済に関連して、レガシーサーバー(「旧FFXIV」からの引継ぎユーザーがいるサーバー)では市場にアイテムが安く出回りキャラを育てやすく、新規サーバーでは自分が売り手側に回りやすい。それぞれ利点がありますが、サーバーを選ぶ際の参考意見をお聞かせいただけますか。

吉田氏:印象の問題で、正直なところどちらもあまり変わらないと思います。レガシーの方は非常に財力があり、いきなり経済へ参入するのは難しいので、そこに少しでも不安を感じる方は新規サーバーで始めるのがいいと思います。ただ、レガシーの方はすごく優しいので、自分たちがいるワールドに来た新規プレイヤーの方には、ものすごく手厚く対応してくれると思います。MMORPGが初めてで色々教えてもらいたい人や、「旧FFXIV」の話を聞いてみたい方は、レガシーサーバーをオススメします。

――レガシーサーバーの中には、人が多くて引継ぎキャラクターの移転申請が締め切られてしまったところもありましたが、新規の枠は用意されているのでしょうか?

吉田氏:「旧FFXIV」のアカウントをお持ちの方が、復帰してどれだけ定着されるかによります。サービス開始の段階では閉じている予定ですが、様子を見つつアナウンスしていく形になります。

――βテストフェーズ3のフィードバックで予想通りだったものや予想外だったものなどはありますか?

吉田氏:予想外だったのは、何といってもPS3をSD(TV)でプレイしている人が多かったことです。PS3版をプレイした方が「思ったほどキレイじゃなかった」とフォーラムに書き込んでいるのを見て驚き、環境を確認したらSDだった、ということがありました。ヨーロッパにSDが多いのは知っていたのですが、予想以上に日本でもSDの人が多いのは驚きました。普段からPS3でゲームをプレイされているのであれば、HDの映像とは違うことに気付くと思いますし、久しぶりにPS3を動作させてくれた方が多かったのかなと感じています。

助かった部分としては、物量が尋常ではないところに細かくフィードバックいただけた点ですね。βテストフェーズ3から大量のデータが入っていますので、例えばクラフト(生産)でこの組み合わせを実行すると必ずHQができてしまうとか、そうした問題を潰していくことができました。コンテンツファインダーが賛否両論だったのは、大体予想通りでした。

――コンテンツファインダーについてはマッチング速度を優先するため同一ワールドの人だけを対象にしないなど、フォーラムでコメントされていましたね。

吉田氏:コンテンツファインダーは当初のコンセプト通りなので、僕の中では現状のものに違和感はありません。やっぱりマッチングするまでに時間が掛かると、利用するプレイヤー数が減り、利用者が減るとさらにマッチング率が落ちていくという悪循環になってしまうので、とにかく早くマッチングすることを優先しています。

ただ、皆さんからの要望も理解していますので、コンテンツファインダーを使ってパーティを組んだほかのワールドの人とコミュニケーションが取れるよう、今後サポートしていこうと思っています。それは「FINAL FANTASY XIV, 新生The Lodestone」での交流だけでなく、例えば別のワールドの人から移転の誘いをもらってワールドを移ると特別なサービスが受けられるとか、ワールドをまたいでコミュニティが形成できるように考えています。

あとは、ランダムマッチングに限りますが、コンテンツファインダーでパーティを組んでコンテンツをクリアした際、MVPを投票できるようなシステムも検討しています。MVPでしか獲得できないトークンがあり、それを使って交換できるアイテムがある、といった形ですね。そのシステムを実装するのと同時に、今日コンテンツファインダーで組んだ人の一覧が「FINAL FANTASY XIV, 新生The Lodestone」に出力され、そこからコミュニケーションを取るといったシステムも考えています。

――例えば別ワールドにいる特定の人と任意でマッチングして遊べる、といったことは考えられていますか?

吉田氏:今のところをそれをするつもりはありません。それでしたら、いっそ同じワールドに移っていただきたいという考え方ですね。というのも、AのワールドにはAさんが属しているコミュニティがあり、BのワールドにはBさんの属しているコミュニティがあった場合、AさんとBさんの繋がりは各コミュニティ内の人からは見えないんです。「あの人、なんでほかのワールドの人とばっかり遊んでいるんだろう…」となりかねないため、ワールド移転で同じコミュニティに所属してほしいと思います。

――キャラクタークリエイションができるベンチマークの配信後、反響はいかがでしたか?

吉田氏:キャラクタークリエイションした画像がネット上にたくさんアップされていたので、多くの方の目に留まってくれたのではないかと思っています。ベンチマークとしてスコアを計測してくださった方も、「スコアが上がってる。最適化頑張っているんだな」といったポジティブな意見が多かったです。キャラクタークリエイションだけなら低スペックPCでもできますので、興味を持っていただける機会になればいいなと考えています。

――放送を見ていた人には改めてになりますが、プロデューサーレター LIVEで披露されたスマートフォンアプリがどういったものか教えてください。

吉田氏:アイテムの一覧やその入手方法、ダンジョンやクエストで獲得できる報酬など、さまざまなデータがアプリ上で閲覧できるというものです。オフィシャルとして提供するのはデータだけですが、ダンジョンの攻略方法などについてはプレイヤーの皆さんが書き込めるwiki状態にしていますので、ワイワイと楽しみながらプレイに役立つ情報交換をしていただければと思います。

このデータベースは「FINAL FANTASY XIV, 新生The Lodestone」と連動していますので、最新のデータをアプリ側で取得しておけば、オフラインの状態でも閲覧できるようになっています。

――放送ではほかにも「ベテランリワード」の話がありました。これについても教えてください。

吉田氏:「ベテランリワード」は累計の課金月数に応じて、ミニオンや新しいマウントといったインゲームアイテムがもらえるというものになります。設定している上限までではありますが、まとめて課金いただければ、2ヶ月目や3ヶ月目のアイテムをいきなり獲得することもできます。

30日報酬はミニオンの「マメット・カーソル」と、キャラクタークリエイションを一度だけやり直せる「幻想薬」(左)
60日報酬は耐熱装備支給券と、ミニオンの「黒チョコチョコボ」(右)
90日報酬はミニオンの「タイニーアイ」(左)と、マウントの「アーリマンレゾネーター」(右)になっている。

――報酬はミニオンをはじめ、能力に関係ないものになるのでしょうか?

吉田氏:強さに関わるものは一切ないですし、累計でカウントしていますので、ゲームを続けてくだされば誰でもいずれ手に入るようになっています。最初の1ヶ月目報酬はキャラクターリメイク権になっていますので、1ヶ月ぐらい遊んでからしっくりこない場合でも、もう一度だけキャラクタークリエイションをすることが可能です。

――キャラクターの作り直しが何度もできるようにしたくないという方針だったと思いますが、使用期限などはどうなるのでしょうか。

吉田氏:キャラクターリメイクの機会を頻繁に用意するつもりはありません。ただ、長く遊ぶうえで、1ヶ月程プレイしたあとに少し調整したいというリクエストはあると考えており、1ヶ月目の報酬にすることで、全員にキャラクターリメイク権を一回はお渡しできると考えました。この権利は一回ログインしたら消滅するようになっていますので、いくつも権利を保持できるような状態にはなりません。その線引きはポリシーがあります。

――βテストフェーズ3ではプレイできなかった巴術士について教えてください。

吉田氏:回復魔法を持っているのでヒーラーだと思っている方もいると思いますが、ロールについてはアタッカー(DPS)になります。ペットのカーバンクルと一緒に戦うことができ、呼び出せるカーバンクルは魔法を使う「カーバンクル・エメラルド」と、タンク役の「カーバンクル・トパーズ」の2種類がいます。

ペットには命令するまで待機する「ピース」、プレイヤーに敵視を抱いた敵を優先して止める「インターセプト」、自分で考えて戦わせる「フリーファイト」、そしてカーバンクルが使えるアクションの指示を出せる「セミオーダー」というコマンドがあります。

――カーバンクルはほかにも種類がいるのでしょうか?

吉田氏:いえ、2種類です。巴術士はレベル1の状態では「ルイン」という魔法しか持っておらず、レベルが上がるとキャスト(詠唱)なしで毒を入れられる「バイオ」を覚えます。その次に覚える「サモンI」というスキルでカーバンクル・エメラルドを呼び出せるようになります。カーバンクル・トパーズを呼ぶためのスキルは、さらにレベルを上げた先で受けられるクラスクエストで修得することができます。

――アタッカーとのことですが、どういった戦い方をするクラスになるのでしょうか。

吉田氏:これまでのクラスとは全く違うクラスになっており、基本的には敵に毒を入れまくって戦うデバッファータイプになっています。攻撃力そのものは高くないのですが、複数の毒を入れることができるので、毒の効果時間をキッチリ管理して戦うことで、トータルのDPS(単位時間あたりのダメージ量)が出せます。高レベルのアクションになりますが、毒状態の敵に使うと周囲のモンスターに毒の効果が拡散する「ベイン」というアクションがありますので、誰か一人のターゲットを毒にしながら、最後はベインで毒をばらまくというのがオーソドックスな戦い方になります。

巴術士は、使い魔の「フェアリー」を操る学者(ヒーラー)と、
蛮神の力を変容させて使役する召喚士(アタッカー)のジョブに派生していく。

――毒を入れて攻撃して…というのは弓術士に似ている感じでしょうか?

吉田:うーん…違いますね。弓術士の場合は最初に毒を入れたら、後は押し切ることが多いですよね。巴術士は毒の種類によって効果時間が異なるので、敵が倒れるまでの間、毒が切れないように上書きして残り時間を伸ばしていかないと、結果としてDPSがあまりでなくなってしまいます。

――毒というとボスに効かないイメージがありますが、毒の効かない敵はいるのでしょうか?

吉田氏:ほとんどいません。そうすると役目がなくなるクラスが出てきてしまうため、ボスにも毒は効きます。

――クラスとしての役目がなくならない範囲で、物理体性とか魔法耐性があるような敵はいるのでしょうか?

吉田氏:エンドコンテンツにはいますが、そこまでには登場しません。これも「巴術士が」といった考え方ではなく、魔法で攻撃しなければいけないといった形です。単に物理が効かないのではなく、ダメージは通るけど物理攻撃を反射して、しかも残りHPに合わせて反射してくるので、魔法系のクラスやジョブで削ってからタンクも参加させるといった戦術にしないとやられてしまうといった感じです。魔法反射のバリアが掛かった敵も同時に現れるので、こっちは魔法系で、こっちは物理系で…というように、みんなが必要とされる考え方でバトルコンテンツを作っています。

ただ、今言ったような敵が出てくるエンドコンテンツの難易度は尋常じゃないので、今お話しした敵に会える人がどれくらいいるのかな…と(笑)。正式サービス開始時から挑戦できますが、パッチ2.1までに果たして何人がクリアできているのか、というレベルになると思います(笑)。

――エンドコンテンツと言えば、大迷宮バハムートはどういったイメージで進んでいくのでしょうか?

吉田氏:ボスが何体もいて、そのボスたちを倒すとフェーズが1、2、3と進んでいくイメージです。フェーズごとに進行状況がセーブされ、フェーズ1を突破したらフェーズ2から始められます。ただ、フェーズ1を何度も繰り返すことができるとアイテムをひたすら稼げてしまうので、それはできないようになっています。

――エンドコンテンツの代表として大迷宮バハムートのほかにクリスタルタワーも思い浮かびますが、こちらはどのようなコンテンツになっているのでしょうか?

吉田氏:クリスタルタワーは当初よりも方針をかなり変えて、カジュアルにしようと考えています。ゲーム全体のバランス調整をしてきた中で、ちょっと余裕が少ないかなと感じたので、24人で集まって超大型モンスターにみんなで特攻して楽しむ、ぐらいの軽い気持ちで遊べるようにしています。そのため、コンテンツファインダーにも対応できるよう、大幅にテコ入れしています。

――コンテンツファインダー対応となると、24人の場合どのようにマッチングされるのでしょうか。

吉田氏:開発として一番簡単なのは、すでに組まれているパーティ同士をマッチングさせるシステムですが、8人パーティを組むところからコンテンツファインダーでマッチングさせてほしいという意見は必ず出てくると思います。まだどうなるかは明言できないのですが、何とか理想形に近づけようとしているところなので、詳細はもう少しお待ちください。

――最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。

吉田氏:「旧FFXIV」からプレイして応援していただいた方には本当にお待たせしました。毎回お待たせしましたと言っていますが、ようやく逃げも隠れもせず発売を迎えられることになりました。ここまで来れたのは、応援してくださった方のおかげです。

僕もそうですが、開発スタッフ一同、そしてスクウェア・エニックスとしても、皆さんに楽しんでもらえるゲームをお届けすることが恩返しだと思ってきました。PS3版も長らくお待たせしましたが、これが現時点のスクウェア・エニックスが出せる最高品質のゲームですと胸を張って言える形で、世に出せる状態になりました。夏休みの最後は、ぜひエオルゼアでの冒険を楽しんでください。

「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」はここで終わりではなく、今後も3ヶ月に一度のペースで大型アップデートを行いますし、プロデューサーレター LIVEなどを通じて生きていくゲームです。通常版の価格もお求めやすくなっていますので、「いつもの『FF』なんだな」ぐらいの気持ちでプレイしていただければ幸いです。

――ありがとうございました。

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