2013年8月27日に正式サービスを迎えたPS3/Windows用ソフト「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」では、プレイヤー数が想定を上回る人数だったことでログイン制限などの混雑が発生していた。その現状や今後の対策について、プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏にインタビューを行った。
本作ではサービス開始すぐの段階で、予想以上の人数がゲームに参加したことでサーバーの許容量を超え、新規キャラクター作成やログインに制限が掛けられていた。9月4日のメンテナンスで新規ワールドの追加と、コンテンツファインダーの負荷分散処理が行われ、全ワールドにおける同時ログイン人数の上限が拡大された。
このメンテナンスで大幅な改善が見られたが、ダウンロード版の販売を一時的に停止し、パッケージ版も出荷数調整が行われるなど、流通の制限は継続。9月12日には再度新規ワールドの追加が行われたため、流通制限の解除に向けて期待が寄せられているところ。
こうした混雑状況について、本作のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏に、今後の展開を含めて話を聞いた。また、現在プレイヤーの間で関心の高そうな内容や、「SCEJA Press Conference」で発表となったPS4版のβテスト、9月10日に配信となったアプリ「ファイナルファンタジーXIV: ライブラ エオルゼア」についても伺ってきたので、その内容をお伝えしていく。
ログインの混雑状況や細かな調整内容について
――まずはログイン制限や混雑状況など、これまでの状況と今後の対応について教えてください。
吉田氏:ローンチをさせていただいてから、我々の予想以上に多くのプレイヤーの皆さんに注目していただき、今までの日本のオンラインゲームではあり得ない程のログイン率とログイン時間になっている状況です。これは僕の判断ミスで、購入されてもログイン制限でプレイできない方がいる状態が約2週間にわたって続いており、本当に申し訳ありません。
9月12日のメンテナンスで、JPグループは一気に新規ワールドを5つ追加させていただきました。いつでも追加できる状態の新規ワールドも控えていますので、週末の接続状況や安定性を見て、早ければ9月15日の週には、一時的に停止しているパッケージの流通やダウンロード版の販売も再開できると考えています。
特に人が多い過密ワールドでは、日本の21時から24時頃までのピークタイムでは、ワールド内の特定ゾーンが維持できなくなる場所が出てくると思いますので、ある程度のログイン制限をさせていただく可能性があります。ただ、今回のワールドの追加で同時接続者数はJPグループだけでも4万~5万人は増やせますし、全体的にまた上限も引き上がるので、ログインできない事態はほぼ解消できると思います。
――ログイン制限はワールド全体の人数というよりも、1ゾーンの最大収容人数が原因となっているのでしょうか。
吉田氏:はい。例えばCarbuncleワールドでは、実績値として7,800~8,000人程の同時接続がありますが、やはりエリアによってラグが発生する状態が見られます。物理的には1ワールドあたり12,000人ぐらいまでログインしていただけると思いますが、単純にゾーンを維持するのが難しい状況になってしまいます。
――1ゾーンあたり1000人というのは物理的に変えることはできないのでしょうか?
吉田氏:根幹設計に関わってしまうため、物理的にゾーンサーバーの構成を変えるとなると、2~3ヶ月かかってしまいます。また、仮に1000人以上のプレイヤーの方を入れたとき、モンスターが足りないといった問題が発生しますし、単純にモンスターの数を増やすと皆さんのプレイ状況が落ち着いたときに今度は多すぎる事態になってしまいます。
そのため、今後予定しているワールド移転サービスを使っていただき、比較的空いているサーバーや友達のいるサーバーに移動していただけるように考えています。サーバー移転サービス開始の前にはどのサーバーは人が多いのかをお知らせしますので、比較的空いているとワールドをチョイスしていただくことで安定してプレイしていただけると思います。
サーバー名にこだわる方もいると思いますが、過密サーバーでもピークタイム以外はそこまで制限のかかる事態にはならなくなってきています。キャラクターが成長して人が分散したり、今はお祭りムードもあるのでたくさんプレイしていただいていますが、皆さんのプレイ時間が落ち着けばもっと多くの方がログインできるようになります。まずはメンテナンス後の週末に、サーバーの状況をリアルタイムで見ながら検討していこうと思っています。
――キャラクターが育っていくことで自然といろんなゾーンに人が行くようになると思いますが、コンテンツに手を入れて分散を促すようなことは考えているのでしょうか?
吉田氏:それを実行する場合、海外も含めて好評をいただいているストーリーラインに手を入れなくてはいけなくなってしまいます。今の導線が、MMORPGでありながらスタンドアローンのゲームをやっている感覚でストーリーを楽しめるものとなっているため、そこに手を入れてまでというのは考えていません。それよりも新規ワールドを追加し、安定したワールドを供給させていただき、どこで遊ぶかを選択してもらえることを最優先に考えています。
――9月4日のメンテナンス以降はログインしやすくなりましたが、それまではログイン制限が掛かっているにも関わらず、キャラクターの新規作成が行えるような状況だったという印象があるのですが。
吉田氏:いえ、そこは必ずイコールの関係で、ログイン制限が掛かっている場合は新規のキャラクター作成もできない状況になっています。24時間体制でサーバーをチェックしており、ピークが来てゾーンを維持できない情報が出始めたら瞬間的に制限を掛け、空いたら解除することをこまめにやっています。例えば朝6時頃であればログインやキャラクターの作成もしやすくなっていますが、ピークタイムの瞬間を切り取るとずっと制限が掛かっているように思えてしまうため、そのような印象を持たれたのだと思います。
――なるほど。9月4日のメンテナンスで大幅な改善を行うまで、全サーバーをいったん停止させるということは考えたのでしょうか?
吉田氏:実際にログインできている方のほうが圧倒的に多いですし、24時間制限が掛かっている状況ではありませんでした。実際にそういった声もいただいておりましたが、プレイデータを拝見するとレベルが上がっていらっしゃいました。NA/EUグループではタイムゾーンがキレイに分かれているため、常に同接(同時接続者数)15万人と、上限に張りつくような状態でも、快適に皆さんへ遊んでいただけていました。全体サービスの影響を考えると、ピークタイムだけの問題で全サービス停止という判断はできませんでした。
――ワールド移転サービスは全員一回無料にしてほしいといった要望が来ていると思いますが、それについてはいかがでしょうか。
吉田氏:慎重に検討させていただいております。全員が一度無料で移転できる権利を付与させていただくとなると、移転を考えていなかった方も移転を考える可能性があります。そのため、例えばですがこの期間だけは無料で移転が可能といったように、権利付与ではない形を取らせていただくと思います。9月12日のメンテナンスが明けると日本は3連休になりますので、ログイン率の動向や新規ワールドの埋まり具合をコントロールした上で、次のステップに進むつもりです。
――現状はサーバーの安定性などを優先されていると思いますが、今回のログイン関連の問題やアップデートに関する展開などについて、βテストの頃のようなロードマップは出さないのでしょうか?
吉田氏:ワールドの拡張に関しては、フォーラム上で必ず次回の予告を公開させていただいておりますので、そこは今後も続けていきます。10月にはワールド移転サービスを開始させていただく予定ですが、皆さんのプレイデータを扱うことですので、しっかりとデバッグを行い、安定性を第一に考えています。正直なところ、数百万規模のキャラクターデータがありますので、ここでトラブルが発生すると取り返しのつかないことになりかねません。
「パッチ2.1」はかなり進行していますので、東京ゲームショウ2013のステージでは、映像つきでいくつか情報をお出しできると思います。「LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII」とのコラボレーションやハウジングをはじめ、クリスタルタワーや大迷宮バハムートといったエンドコンテンツの内容を動画で用意しています。
これらを皮切りに、サーバーが落ち着いた段階で毎月プロデューサーレターLIVEを実施して、パッチ2.1の実装まであとどれくらいか、どんなコンテンツがあるのかといった話をさせていただこうと考えています。パッチ2.1のボリュームは非常に多いため、ロードマップに落とす時間を使うのであればこまめに生放送を行い、開発の進捗を実機で見ていただいた方がいいかなと考えています。
コンテンツファインダーの在り方やコンテンツの調整について
――フォーラムでもコメントされていましたが、コンテンツファインダーのアイテム制限もパッチ2.1から導入予定となっていました。
吉田氏:最初にアイテムレベルの制限を設けなかったのは、明確な意図があるからです。ゲームを普通に進めていくと、インスタンスダンジョンや蛮神戦に挑んで勝てなければ「装備を集めよう」となると思います。ですのでまずは挑戦していただき、コンテンツファインダーでクリアを目指すのが難しいと感じたら、コミュニティ内やシャウトで仲間を募ったほうがいいかな、という雰囲気を作りたかったのです。
今は「固定パーティにした方がいいんじゃないか」「装備集めてこよう」といった議論がされていると思います。経験ができないまま、装備が整っていない人は足切りされていたら、非常にドライなものになってしまいます。攻略のために議論することが浸透すれば、アイテムレベルによる制限を入れたとしても、しばらくしてから新規で始めた方に「ここに行くなら装備整えた方がいいよ」といった話ができるようになります。経験と理解の上でルールが実施されるのと、ルールが先に存在するのとでは、受け取り方が格段に違うと考えました。
「ファイナルファンタジーXIV(以下、旧FFXIV)」が特殊なプロジェクトであるため、キャラクターが育っていて装備も強い「旧FFXIV」のプレイヤーの方たちも、今回新しくなったゲームデザインに触れていただくのは初めてになります。ですので、まずは渾然一体、「旧FFXIV」のプレイヤーの方も新規の方も一緒になってゲーム進行のイメージを持っていただき、そのうえで数値的な制限を入れた方がいいと考えていたので、意図的に制限は入れていませんでした。
キレイに想像通りの流れができればよかったのですが、やはり装備品の修理費用が高いこともあり、余裕を持ってプレイできる状況にならなかったのが原因かなと思っています。アイテムレベルの制限はコンテンツファインダー限定にしようと考えていますので、自分たちでパーティを組んで挑戦する場合は制限なくプレイできるようにする予定です。
――修理費は当初なぜこの価格設定になっていたのでしょうか?
吉田氏:実はもう少しコンテンツのクリア率が高いと思っていました。ただ、この結果というのは、我々の想像以上に初めてMMORPGをプレイされる方が多いのかな、というところにも繋がっていると思います。ロールが分からないままマッチングして、何度も繰り返しながら体で覚えていくスタイルになっているので、全滅回数が想定よりも多かったことが原因です。全滅による耐久度へのダメージはリリース前に抑えたのですが、今度は修理費がまかなえなくなっていたので、そこは調整させていただきました。
――修理費の値下げは嬉しいのですが、システムでギルを回収しないとギルが余る可能性も出てきますが、その点は大丈夫なのでしょうか?
吉田氏:むしろギルの排出量はもう少し上げようとしていますので、そこを心配されなくても大丈夫です。現状ですと、あまりにも金策が大変で、マーケットで何かを購入しようとか、装備品の修理費ぐらい平気だからダンジョンに付き合ってあげようとか、気持ち的なゆとりが持てなくなってしまいます。あまり下方修正するつもりはないですし、むしろ最初はかなりシビアにギルの排出量を絞っていたので、緩和していきます。
――ギル排出量や修理費が高かったこともあってか、経済に不安を持っている方もいるようですが。
吉田氏:テコ入れや調整はこれからも続けていきますし、まだサービス開始から3週間程です。皆さん夢中になってストーリーをやっていて、あまりマーケットに注目していない方もいると思いますし、「旧FFXIV」と違って1クラス目はレベリングの中で装備が整うようにサポートしています。今お話したように、現状ではギルの排出量が少ないため、ギルを節約するために自分でダンジョンに行って素材を集めた方がいい、という状況になっています。パッチ2.1ではPvPやハウジングなど、ギルを大量に消費するコンテンツが入りますので、そこまでにギルの排出量などを調整し、パッチ2.1以降で大いに消費していただこうと考えています。
――修理費の高さもありましたが、レベリングはインスタンスダンジョンよりもF.A.T.E.だ、という雰囲気ですが、その辺りに手を入れることは考えていますか?
吉田氏:普段からお話していますが、ひとつの選択肢を押し付けたくはないので、「こっちの方が楽」と感じたら、それでもいいのかなと思います。いずれダンジョンに行くのであれば練習しなくてはいけないですし、練習のためにレベルシンクを使うのであれば、新しくゲームを始めた方とマッチングされる機会が増えるので、あまり気にしていません。遊び方はいっぱいあっていいと思いますし、僕らが想定しているバランスと大きく崩れる場合は調整させていただきますが、現状はそこまでではありません。
――F.A.T.E.だとベヒーモスとオーディンは極端に人が集まり、PCでも敵が見えない状態になります。今はお祭り感があることも影響していると思いますが、こちらの調整は予定されているのでしょうか?
吉田氏:「新生FFXIV」の動作が軽いことの秘密に、メッシュによるキャラクターの表示判定というものがあります。かなりテクニカルな内容になるのでお話していないのですが、8m単位のメッシュの中で隣り合うメッシュとの表示判定を行い、非常に多くのキャラクターを出しても軽いという状況を実現しています。ただ、その8mの枠内に80体以上のキャラクターが入ってしまうと、隣のメッシュから「優先順位が判断できない」というシチュエーションが発生してしまいます。
8mの枠内にいると優先順位によって、確実に表示されるのですが、隣り合うメッシュにいて、なおかつそのメッシュ内にも80人を超えるキャラクターがいると、いくら優先順位を調整してもキャラクターの表示が上手く意図通りにならない場合があります。ボスの攻撃も、吹き飛ばしなどで、できるだけ人を「散ら会させる」攻撃を組み込んでいるのですが、今集まっている人数が想定をはるかに超える人数なので、ベヒーモスとオーディンだけ別仕様にできないか検討しているところです。
データベースアプリ「ファイナルファンタジーXIV: ライブラ エオルゼア」やPS4版のβテスト発表について
――9月10日にiOS版「ファイナルファンタジーXIV: ライブラ エオルゼア」が配信されました。今後のアップデートで課金要素を実装予定とありますが、どういった内容になるのでしょうか?
吉田氏:この半年間はデータをどんどん追加していき、データベースアプリとしての完成度を高くしていきますので、課金要素の実装はかなり先になります。「ファイナルファンタジーXIV: ライブラ エオルゼア」から自分のキャラクターでログインしてアイテム整理をしたり、マーケットでアイテムの売買を行うなど、サーバーを直接的に使う機能は有料にさせていただこうと考えています。
――データベース部分での課金ではないんですね。現状ではインスタンスダンジョンやF.A.T.E.などのデータはありませんが、これらを追加する予定はあるのでしょうか?
吉田氏:今後行うアプリのアップデートでは、まずはアイテムのレシピを追加します。その後はアクションリスト、ダンジョンの情報、F.A.T.E.という順番で追加していく予定です。ゲームデータと連動しますので、ゲームデータ側の対応を終えなければ出せないため、順次対応しているところです。
――PS4本体の発売日にPS4版のβテスト開始と発表されました。このβテストはいわゆるオープンβテストとクローズドβテスト、どういった形式を予定しているのでしょうか?
吉田氏:やっぱりPS4本体を購入した方はすぐにテストしたいと思いますので、できるだけオープンβテストでいきたいと思っています。ただ、明言すると開発チームに怒られてしまいそうなので(笑)、一週間程クローズドβテストを実施してから、という可能性もあります。
――PS4版のβテストでは新規と引継ぎ、どちらから始めるのでしょうか?
吉田氏:ハードウェアが新しくなることもそうですし、PS4におけるPlayStation Network上の仕様に関してエラーがないかということもチェックしていくので、最初は新規のキャラクターにてテストしていただく予定です。PS3版から引き継いでいただくのはβテストの途中、もしくは製品版からになると思います。
――「DUALSHOCK4」独自の機能に対応する予定はあるのでしょうか?
吉田氏:UIは使える機能が増えたので、それに対応させていただこうと思っています。
――PS3版をプレイしている方はPS4版のパッケージを再度購入しなくても、無料で乗り換えが可能との発表もありましたが、ほかに特典はあるのでしょうか?
吉田氏:それをやってしまうと、PCユーザーが「特典のためにPS4を」となってしまうので、今のところ極端なものは考えていません。PS3版のパッケージを持っていればPS4版へ無料で移行できる、というのは今のところ「新生FFXIV」だけなので、大きなメリットだと思います。
――PS4版のグラフィックはPC版のどのあたりになるのでしょうか?
吉田氏:現状の最高品質ぐらいはいけると思います。
――それならPCスペックが低い方の選択肢にもなりそうですね。
吉田氏:はい。ノートPCでプレイされていたり、もっと上のスペックでプレイしたい方からすると、新しいPCだけでなくPS4という選択肢を視野に入れていただいてもいいと思います。PS4ではメモリも増えますので、PC用のゲーミング系キーボードやマウスを繋ぎ、PCのように使用することも可能だと思いますので、選択肢の多いハードです。
――最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。
吉田氏:想定以上のご好評をいただきながら、希望される時間にログインできない状態が続いていましたが、ようやくログインしやすくなってきたと思います。もう一段階落ち着いたところで市場への流通も再開できる見込みですし、これからも一人でも多くの方に「ファイナルファンタジー」を楽しんでいただこうと考えています。情報はこまめにアップデートさせていただきますので、「新生 Lodestone」をチェックしていただきつつ、ゲームも楽しんでください。そしてここから怒涛の更新に向かって頑張りますので、アップデートの内容にもご注目ください。
――ありがとうございました。
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