マーベラスAQLが運営する「ブラウザ三国志」では、2013年7月から「天覇争乱」アップデートが順次実装されている。本作の運営チームに、アップデートの意図を聞いてきたので、その内容をお伝えしよう。
「ブラウザ三国志」は、乱世を生きる君主として、4ヶ月という期間中に自国の領土を拡大して戦力を整え、戦乱渦巻く大陸の統一を目指すオンラインシミュレーションゲームだ。ブラウザゲームの草分けとして多くのユーザに愛され、2013年にはついにサービス開始から5年目に突入した。
そんな本作では現在、「天覇争乱」と題した大規模なアップデート計画が進行している。これは2013年7月から4回に分けて多彩なアップデートを行っていくもので、7月にはすでに「乱の章」として、ワールドの大統合が実現した。そして11月には、待望の新兵種となる、防御に特化した「盾兵」「重盾兵」と、攻撃に特化した「大剣兵」が一挙に追加される。
今回、本作のプロデューサーを務める五味一郎氏と、ディレクターの勝木洋輔氏に、一連のアップデートを実装する意図や、今後の展開について聞いてみた。
「天覇争乱」アップデートを進める「ブラウザ三国志」運営チームにインタビュー!
――まずは、現在実施されている「天覇争乱」アップデートの概要について、改めて教えてください。
五味氏:「ブラウザ三国志」はユーザーさんの応援もあり、今年で運営開始から5年目に突入することができました。「天覇争乱」アップデートは、主に長く遊んで来られたユーザーさんをターゲットとして考えています。ずっとプレイしてきた方々に、新たな気持で楽しんでもらうというコンセプトですね。
ひとつひとつのアップデートは、これまでも案として出ていたのですが、バラバラでやってもユーザーさんへのアプローチとしては弱いと考えました。そこで、短期間で次々と新要素を実装する「天覇争乱」を考えついたのです。
――11月のアップデートでは新兵種が複数追加されますよね。こちらにはどういった魅力があるのでしょうか?
五味氏:長く遊んでいるユーザーさんが新たな気持で遊ぶためには、やはり新兵種くらいの大きな新要素がなければいけないと思っていました。これまでの5年間は、システムを大きく変えることなく運営してきましたが、それだとどうしても、遊びがルーチンワーク化してしまいます。それを打破できる点は大きな魅力ですね。
新兵種のアイディア自体も以前からあったのですが、私がプロデューサーになったタイミングで、ゲームとしても新しいものにしたいと思い、実装することになりました。
――新兵種が一挙に加わると、ゲームバランスも相当変わるのではないでしょうか?
五味氏:変わりますね。9月19日からテストワールドを作り、3週間かけてテストを行ったのですが、そこでもゲームバランスに対する反響がかなりあり、約1,800通ものご意見をいただきました。
勝木氏:今まで定着していた攻略法が通用しなくなった代わりに、新しい攻略法も日々見つかっていって、そこは私たちの思惑通りに楽しんでもらえたようでした。しかし一方で、これまでユーザーさんが大切に育ててきたカードや、プレイノウハウを無駄にするわけにもいきません。そこが陳腐化してしまわないよう、慎重にバランス調整を行っています。
これまでとはまったく違ったプレイスタイルもあると思うので、既存のユーザーさんをメインターゲットにしつつも、今まで触れたことのない方でも、すぐに楽しめるのではないかと考えています。
――具体的に、どういった戦い方が生まれてくると考えていますか?
勝木氏:新兵種は、剣兵の上位に当たる「大剣兵」と、防御に特化した「盾兵」「重盾兵」が存在しますが、中でも大きいのは、これまでになかった防御特化の兵士が加わることです。これまでは大量の兵士を詰め込んで、なんとか守っていた場所も、「盾兵」「重盾兵」のおかげで運用が非常に楽になるはずです。
また、現在は良くも悪くもカードのパワーで勝負が決まってしまう面がありますが、兵士のバリエーションが加わることで、そのあたりのバランスも改善されるかと思います。
――時期としては、11月の上旬と考えていいのですか?
五味氏:11月の頭には、新兵種を実装したワールドが登場する予定です。テストワールドに参加できなかった方も、このワールドに来ればいち早く体験できるので、是非参加していただければと思います。
――スキルに関しては、新たに登場するものはあるのでしょうか?
勝木氏:新兵種が強すぎてもいけないので、それぞれに対抗できるスキルを実装しようと考えています。また、新たに追加される3種類の兵種はすべて歩兵科に当たります。そのため、歩兵科だとなかなか使いにくかった防御系スキルの価値が向上するのではと期待しています。
――新兵種の入手方法は、既存の兵種と変わらないのですか?
勝木氏:そうですね。それぞれに設定された資源を集めて、研究施設で作るという、これまでと同じ流れになっています。
――アップデートのタイミングで新カードは追加されるのでしょうか?
勝木氏:アップデートのタイミングは全ワールド同時ではなく、11月頃から順次実施していく予定となっています。なので、カードは徐々に追加されていきますが、そのタイミングについては、ワールドごとでバラバラになってしまうかと思います。本作的にカードが追加されるのは、やはり全ワールドでアップデートが終わってから、ということになりますね。
五味氏:新カードではありませんが、既存のカードのリファインも随時行っていく予定です。4年前のカードですと、デザインも古くなっているものも見受けられるので、そこはイラストを新しくしていきます。
コアユーザーが集まり、盛り上がりを見せたテストワールド
――次に、お話にも挙がっているテストワールドについてお聞かせください。こちらは3週間限定での実施でしたが、具体的にどのような反響があったのでしょうか。
勝木氏:思っていた以上に盛り上がった、というのが率直な感想ですね(笑)。特に初日は驚くほどの同時接続数を記録しまして、私たちの想定を上回る人気でした。ですが、あまりの接続数だったため、サーバーの遅延などのトラブルも起こしてしまいました。その点はこの場を借りてお詫びしたいです。今後、同じようなテストを行う場合は、反省を活かして運営していきます。
――1,800通近い意見が送られてきたと仰りましたが、どういった内容が目立ちましたか?
勝木氏:主に新兵種のパラメータに関するご意見・ご要望が多かったですね。具体的な内容はユーザーさんによって、「強すぎる」であったり「弱すぎる」であったり、さまざまでした。アップデートのタイミングでは、これらのご意見を上手く反映して、最適なバランスに仕上げます。
五味氏:あとはテストワールドそのものに対する感想も多かった印象です。今回のテストワールドは、ゲームスピードが約4倍になっていたのですが、「快適だったから、他のワールドにも実装してほしい」といったご意見をいただきました。また、3週間後にゲームがリセットされてしまうにもかかわらず「課金させてほしい」という方も非常に多かったです。
――テストワールドとはいえ、ユーザーの皆さんもかなり本格的にプレイしていたみたいですね。
五味氏:そうなんですよ。テストワールドのユーザーさんには、ログインボーナスとして6,000CPを配布していたのですが、それでも足りなかったみたいで、私たちとしてはとても嬉しい反応でしたね。
個人的にとても印象に残っているのが、最後の1周間に全同盟が協力して、大戦争を行うことになったことです。私たちが企画したわけではないのですが、皆さんが自主的にイベントを作ってくれて、本当に熱心なユーザーさんに集まってもらえたと実感しましたね。
――やはり新兵種が加わったことで、イベントを通してさまざまなプレイスタイルを試してみようと考えるユーザーが多かったのでしょうか?
五味氏:それもありますし、クローズドのワールドだったので、後腐れなく自由に楽しめる環境だったことも影響したと思います。
――テストワールドでは、新兵種はどのような扱われ方をしていたのでしょうか?
五味氏:やはり目玉なだけあって、攻守にわたって新兵種を駆使するユーザーさんが大多数を占めていましたが、その中でも大剣兵は非常に強かったようです。
盾兵と重盾兵は既存の3兵種に強い代わりに、大剣兵に弱いという特徴があります。大剣兵を猛威を振るった理由には、このあたりの相性も大いに影響したのではないでしょうか。
――運営チームとしては、ユーザーの遊び方は予想していたところもあったのでしょうか?
勝木氏:予想していた部分もありつつ、ユーザーさんからいただいたご意見で考えなおした部分もあります。アップデートの配信時までには、パラメータや研究条件の調整は間違いなく行いますし、細かいバグの修正ももちろんやります。私たちの理想とユーザーさんの理想を突き合わせた内容でお届けしますので、ご期待ください。
五味氏:パラメータの調整以外でも、ユーザーさんのご意見を反映する箇所は多々ありまして、その中のひとつがアイコンですね。当初は同じカテゴリーだからという理由で、盾兵と重盾兵のアイコンを似せていたのです。しかし、ユーザーさんからは「見分けがつかない」といった意見があったので、そこはひと目で判別できるよう、修正を加えます。
――内容はもちろんですが、デザインも意識して開発していると。
五味氏:特にアイコンの場合は、小さく表示されると視認しづらいですからね。修正後は一方のキーカラーを変えるなど、瞬時に分かるデザインになります。ユーザーさんのご協力のおかげで現在の問題点もはっきりしましたし、良いテストになったと感じています。これを本番でも、しっかりと活かしていきたいですね。
――お話を聞いていると、かなり有意義なテストになったみたいですね。
五味氏:実は私自身も、身分を明かしたうえでテストワールドに参加していたんです。初めこそユーザーさんから怪しまれることもありましたが、私のことを知ってくれている方もいて、1人のプレイヤーとして楽しむことができました。
注目の「装具」機能は現在鋭意開発中
――新兵種以降もアップデートを行う予定とのことですが、そちらの進捗状況を教えてください。
五味氏:5月に開催したファンミーティング「公開君主会議」では、武将に持たせる「装具」の実装を発表しましたが、こちらはもう少し時間がかかりそうですね。というのも、現在は膨らみ過ぎた仕様をまとめており、どのように収束させて、ユーザーさんに届けるかを考えている段階なのです。
――装具が入ることで、バランスが一変する可能性もあると思いますが、実装することになった経緯を教えてください。
五味氏:これも新兵種と同じく、コアなユーザーさんをメインにしたコンテンツですね。長く遊んでいるユーザーさんですと、カードが育ちきってしまい、カスタマイズができない方もいます。そんなカードに装具を付けることで、また新たなカスタマイズ要素が加わります。
レベルを上限まで上げたカードはもちろん、これまで活躍の機会がなかったカードも、装具と組み合わせることで使いやすくなるケースもあるかと思います。また、装具があることを前提にした育成方法も生まれてくると思いますし、ユーザーさんの新しい刺激になることを期待しています。
――お話にもあったファンミーティング「公開君主会議」ですが、このときのユーザーの反響はいかがでしたか?
五味氏:「公開君主会議」以前の「ブラウザ三国志」というと、大々的に露出する機会があまりない作品でした。しかし、私がプロデューサーになってからは「もっとユーザーさんとの距離を縮めていこう」というスタイルになったのです。
私がプロデューサーになる以前にも、オフラインイベントの企画はあったのですが、諸事情で中止になってしまいました。「公開君主会議」は、私たちとしても念願のオフラインイベントでしたし、コアなユーザーさんが集まったこともあり、とても盛り上がった、良いイベントになりました。
――今後、オフラインイベントを行う予定はあるのでしょうか?
五味氏:具体的な予定はありませんが、ぜひやりたいと思っています。「公開君主会議」は新情報の発表がメインだったので、次に開催するとしたら、もう少しユーザーさんが参加できる内容にしたいですね。
――現在御社では、「ブラウザ キングダムライジング」を運営していますよね。世界観は「ブラウザ三国志」と似ている部分が多いと思いますが、今後どのように差別化していこうと考えていますか?
五味氏:「ブラウザ キングダムライジング」は、「ブラウザ三国志」よりも若干ライトユーザー向けに作られているゲームです。「ブラウザ三国志」は、君主を作成した3日後には攻撃されてしまうといった、緊張感の強いゲームですから(笑)。
コミュニティの性質を見ても、「ブラウザ三国志」のほうが強いと思いますね。常に戦闘可能な世界で生き残るためには、他プレイヤーとの繋がり が必要不可欠だとおもいます。ただ、「ブラウザ キングダムライジング」は決まった期間でのイベントのような戦争システムになっていますので気軽に戦闘を楽しめる魅力がありますね。
――コミュニティの観点から言っても、自然とユーザーの住み分けはできていると。
五味氏:私の知る限りではユーザー層もあまり被っていませんし、お互いの良さを引き出しつつ、上手く運営ができていると感じています。結局のところは「どちらが住みやすいか」という話になってくるので、強いコミュニティを求めている方は「ブラウザ三国志」のほうが合うと思います。
――一連の「天覇争乱」アップデートを含めて、今後本作をどのように育てていきたいと考えていますか?
五味氏:まずは、今予定している残りのアップデートを、しっかりと皆さんに届けるところからですね。私自身も楽しみにしているアップデートですし、無事に実装した際は、ユーザーさんと一緒に楽しみたいと思います。
また、アップデートとは関係ないところでも、ご意見・ご要望は届いているので、しっかりと反映させていくつもりです。ユーザーさんあってのゲームですし、皆さんとともに、より良いゲームに育てていきたいですね。
――最後に、本作のファンへのメッセージをお願いします。
五味氏:私はテストワールドのように身分を明かしてプレイしているワールドもあれば、身分を明かさず、純粋に1人のファンとして遊んでいるワールドもあります。そこでは要望として寄せられない、細かいご意見も拾っていますので、今後の「ブラウザ三国志」の展開にも期待していただけたらと思います。
勝木氏:運営側が新要素を押し付けるのではなく、ユーザーさんが望むものを導入し、自由に遊べる環境を作っていきたいと考えています。
――ありがとうございました。
(C)Marvelous Inc.