ネクソンが運営する「メイプルストーリー」初のオフラインイベント「メイプル10周年記念 オフライン感謝祭」が12月1日に開催された。その中で発表となった「REDアップデート」について、開発チームに詳しい話を伺えたので紹介しよう。
12月11日より、新大陸「ドーンヴェール」や「冒険者改変」、新職業「神の子 ゼロ」などが順次実装となる「REDアップデート」。今回は、ネクソンの運用チーム・中西啓太氏、メイプル本部 ライブ2室 室長 ベク・ドゥサン氏、日本メイプルチーム チーム長 ミン・ヨンミ氏、メイプルブーストチーム チーム長 キム・ヒョンソン氏、本部長 オ・ハンビョル氏にアップデートの内容について話を伺った。
10年という長期間の運営で見えた、ユーザーの変化とは
――「メイプル10周年記念 オフライン感謝祭」に対する感想をお聞かせください。
オ・ハンビョル氏:リハーサルの準備中は「どれだけの人が来てくれるだろう」と心配や緊張もあったのですが、入場開始後にどんどん人が集まってくるのを見て「こんなに多くの人に愛されているんだ」と改めて感じられました。本作は非常に長い間サービスを提供していますが、このようにプレイヤーの皆さんと接するイベントがありませんでした。これからはこうした機会をどんどん増やしていけたらと思います。
ベク・ドゥサン氏:かなり長い間プレイしてくださっているユーザーさんが多かったようで、こちらで思っていたよりも高い年齢層にご参加いただいていましたね。今後はこうしたファンの方々もふまえ、もう少し低い年齢層にも遊んでもらえるようなゲームを作ることを新たな課題としていきたいです。
――10年間という長期に渡る開発・運営を振り返ってみていかがですか?
オ・ハンビョル氏:本作は10年を迎えましたが、毎年新たな気持ちで開発をしています。アップデートの準備をするたびにコンセプトも変えていますし、プレイヤーのニーズもどんどん変わってきていますので。
サービスを続けている間に色々なノウハウを蓄積してきているので、お見せしたいものはまだまだあります。10年という長い期間の経過については感無量だと思っていますが、今後さらに10年のロングランをするにはどうすればいいか悩んでいるような心境です。
中西啓太氏:運用の視点で見ますと、初期の頃から遊んでいるユーザーと今のユーザーの性質はずいぶん変わっていますね。これまで何度もアップデートを繰り返していますが、とくにプレイヤーへの影響の大きいケースが何度かありました。
1番最初の、アイテム課金を実装したときに離脱したプレイヤーもいましたし、直近でいえば「BIGBANGアップデート」でもゲーム内のバランスが大きく変わりました。昔遊んでいた一部のユーザーが戻ってくれたという現象もあったのですが、このタイミングで離脱するユーザーも発生しています。今後の展開として、新規のユーザーを獲得するのも目標ではありますが、こうしたアップデートで離脱していったユーザーをどう戻していくのかも大事にしたいと考えています。
――「冒険者改変」も、古くから遊んでいるユーザー向けの要素なのでしょうか?
中西啓太氏:古くから遊んでくれているユーザーは、長らく冒険者を遊んでくれています。現在は4次転職までしかないので「5次転職を実装してほしい」という声も結構出ていますし、今回の改変は古くからのユーザーに何かしらのインパクトを与えていると思っています。
――韓国におけるユーザー層や嗜好の変化はどのようなものでしょう?
オ・ハンビョル氏:韓国では10代のプレイヤーがメイン層で、13~18歳が継続的に入ってくる状況です。10年前の10代と今の10代は違う気がしますし、10年前とは異なる部分も多いですね。例えば「BIGBANGアップデート」と「LEGENDアップデート」でライトなプレイヤーもずいぶん参入してくれました。
韓国では最近、ストレスなく手軽に遊べるゲームがトレンドになっています。とはいえ、韓国の成功に合わせた施策が日本でも必ず通じるわけではありませんから、日本では韓国とは異なる展開を行っています。例えば難しい仕様になっているハードなサーバを用意するなど、日本に合わせたコンテンツを導入してきました。
新職業「神の子 ゼロ」と「冒険者改変」
――韓国ですでに実装されている新職業「神の子 ゼロ」に対する反応はいかがですか?
オ・ハンビョル氏:韓国では今夏の「REDアップデート」で実装となりましたが、かなり評判はいいです。本作の既存職業に比べてストーリーを重視したコンテンツとなっているので、ストーリーを気に入ってくれたプレイヤーからの反応は良かったですね。日本の「JRPG」に近いという評価もいただきました。
――「神の子」の切り替えはどのように操作するのでしょうか?
ミン・ヨンミ氏:男性「アルファ」と女性「ベータ」の切り替えを「タッグ戦闘」といいます。アルファは太刀でフィールド狩りに、ベータは大剣でボス戦に強いという特長を持っているので、状況に合わせて利用していただければと思います。このほかにも、2人を一緒に戦闘させる「アシスト」や、スキルを連携できる「コンビネーションシステム」も用意しています。
――「アルファ」と「ベータ」は、どのような関係性なのでしょうか?
ミン・ヨンミ氏:「神の子」は、暗黒の魔法使いが時間の女神の輪廻(時間の女神、ルィンヌ)を封印しようとした時、後を継ぐ超越者として誕生したキャラクターです。しかし暗黒の魔法使いと軍団長の計略によって、鏡の世界に閉じ込められてしまいます。もともとは1人のキャラクターだったのですが、封印の際に本当の力を発揮できないよう分離させられてしまい、その過程で「アルファ」と「ベータ」という2人が生まれました。鏡の世界を脱出して、完全な自分を探すというのも目的の1つです。
オ・ハンビョル氏:ただ、自分探しというのはメインではありません。後々「なぜ2人になったのか」を知り、暗黒の魔法使いに対抗するのがメインの目的となります。
――「冒険者改変」には、外見の変化も加わっていますね。
キム・ヒョンソン氏:冒険者といえば本作の最初から登場していた職業で、多くの方に好まれています。その後のアップデートで「英雄」や「ノヴァ」など、トレンドに合わせた新しい外見のキャラクターも現れました。その反面、冒険者は10年前の外見そのままですので、若干古い印象もあります。外見以外にスキルも改変していますが「新鮮な印象にするため、外見も変更しよう」という考えが開発にありました。
中西啓太氏:新しい外見をすぐに利用できるのは、新規に作ったキャラクターだけですね。すでにキャラクターを作っているユーザーは、特別変更はできません。ゲーム内にある髪型変更アイテムなどを利用する形となりますが、アップデートの段階ですぐ行えるのかはまだ調整中です。人気が出れば変えられるようにしたいと思います。
――スキル改変のコンセプトについてお聞かせください。
キム・ヒョンソン氏:後から出た職業に比べてスキルが弱いという評価もあったので、こうした強さの部分でも補強しています。それと同時に、各職業の特長も活かすような内容に変えています。例えば槍を使う職業では「ダークナイト」に向かうので、暗い感じのエフェクトを作りました。魔法使いで氷や火を使う場合は、直感で属性を理解できるように変更したりしています。全体的に古いと感じられそうな要素を新しく変えるというのがコンセプトでした。
――「自由転職」システム導入へのきっかけは何だったのでしょうか?
キム・ヒョンソン氏:冒険者になると戦士や魔法使い、弓使いなどを選んでレベルアップしていくこととなりますが、ほかの職業に比べてレベルアップが難しく、道のりが長いともいわれています。前半には共通する内容も多いので、ほかの職業を遊ぶために新しいキャラクターを作る場合は同じような過程をやり直すこととなります。これはユーザーの負担になると思いますので、4次転職まで完了しているプレイヤーであれば、もっと簡単にほかの職業を体験してもらえるように取り入れました。
――韓国でのユーザーの反応はいかがですか?
オ・ハンビョル氏:これまでは、ほかの職業を体験したければ一からやり直すというシステムを強要していた部分がありました。今回の自由転職システムは、ユーザーの利便性を改善しているので歓迎されたと思います。ただ、初期のクエストを好む人もいるので、これまでのプレイスタイルも併せ、気に入ったほうを選んでプレイしていただいています。
より深くストーリーを楽しめる仕組みや新職業「ビーストテイマー」も
――今回は、韓国よりも先にアメリカや日本に導入予定となるコンテンツがありますね。
ベク・ドゥサン氏:今までの海外プレイヤーの皆さんは、メインコンテンツの部分はすでに韓国で実装済みというものが多く、期待感が半減してしまったように思いました。このような状況を防ぐため、海外向けにも大規模な新コンテンツを入れられるよう準備しました。これが「コメルツ」と「ビーストテイマー」になります。
オ・ハンビョル氏:日本のプレイヤーの皆さんは色々なご意見をくれますが、なかでも10年間サービスをしていると「次のアップデートが予測できる」という評価もあったので、海外向けのサービスにも注力していきたいと思っています。韓国でも別途アップデートをしてコンテンツを入れていきますので、10年経って韓国と海外に独立したコンテンツを入れていけるようになりました。これからもご意見をいただきながら、こうした試みを持続的に行いたいと思います。
――「コメルツ」でストーリー要素を強めたのはなぜですか?
ベク・ドゥサン氏:ストーリーを楽しみたいと思うユーザーが多いだろうという部分もあるのですが、「メイプルストーリー」のメインには暗黒の魔法使いと英雄という、善悪の対決という構図があるんです。開発側としても、そこからもっと多様な話を扱ってみたいというのもあって、豊富な冒険話が出るような世界にしようという試みでもあります。
メインストーリー以外にももう少し幅広い世界をお見せしたいので、コメルツのクエストやストーリーは色々な方式でお見せしたいと思っています。今後のストーリーの展開をぜひ楽しんでください。
――新大陸でのストーリーはどのように進めればいいでしょうか?
キム・ヒョンソン氏:こちらでおすすめするルートは、冒険者もストーリーが弱い部分があったので、冒険者のルートを展開できる「冒険の書」というものを作りました。
まずはそれで100レベルくらいまで進行してもらい、次にマステリアをクリアするとドーンヴェール大陸に入れるようになります。
――「昼夜変化」について詳しくお聞かせください。
キム・ヒョンソン氏:昼が30分、夜は10分くらいと、夜は暗いので昼をやや長くしています。モンスターも昼夜共通のものや、夜にしか出現しないモンスターもいます。クエストでは特定の時間にしか出現しないモンスターを倒すものもありますので、こうした部分も楽しんでください。
――新職業「ビーストテイマー」のコンセプトはどのようなものでしょうか?
ベク・ドゥサン氏:詳しい部分は年末に公開を予定していますが、ここ1~2年ほどで出てきた新規職業は、かなりシリアスで重いキャラクターが多かったんです。本作の特長には「可愛らしい愉快なキャラクター」というのがあると思っていますので「久しぶりにはつらつとした元気なキャラクターを楽しめるようにしたい!」というのが、ビーストテイマーのコンセプトとなりました。
成長方式や転職方式も既存のキャラクターとは異なっているので、プレイのやり方がだいぶ変わる分、新鮮な気持ちで楽しんでもらえたらと思います。イベントで動画を見てくれたプレイヤーが「可愛い!」と叫んでくれたのはとても嬉しかったですね。
オ・ハンビョル氏:韓国とは異なるコンセプトでいきますので、開発も別チームで準備していますし、ディレクティングの方向も変えています。今までの職業で「シリアスなものは十分だ」と思う方々には、いい刺激になると思います。
韓国に先駆けて実装となる「交易システム」
――「交易システム」について詳しくお聞かせください。
キム・ヒョンソン氏:基本的にはキャラクターの強さも重要ですが、船にもスキルがあります。これをアップグレードすると色々なデバフをかけたり、砲弾を撃ったりすることもできます。重要性の割合でいえば、キャラクターと船が7:3くらいでしょうか。
――交易中の戦闘とは、どのようになるのでしょうか?
キム・ヒョンソン氏:交易のために航海していると、海賊が現れたりクラーケンが襲ってきたりするので、戦闘は船上で行います。基本動作は通常の操作と同じような形ですね。船のスキルもキーを登録できますので、自分で攻撃できます。
ベク・ドゥサン氏:砲弾以外にもいくつかスキルがあるので、さまざまなスキルを適切に使用して、早く戦闘を終らせることを目標にしてみてください。いかに早く終了するかにより、報酬が異なります。
――報酬にはどのようなものがありますか?
キム・ヒョンソン氏:交易品そのものはユーザーが使用できるものではありませんが、交易を行うとコインが手に入ります。それを消費すると、新たに投入となる160レベルのアクセサリ類アイテムを購入できます。交易の途中で襲ってくるボスを倒せば、160レベルの防具、武器をランダムでドロップすることもありますね。160レベルのアイテムを入手するためには、現時点では必ず交易を行う必要があります。
多くのコインを入手する方法としては、より遠い地域が欲しがっている交易品を運ぶという方法があります。早い時間に交易をクリアすると追加報酬も発生するので、交易のレベルを高めて早く進行するのもいいでしょう。交易の地域はドーンヴェールの内部だけでなく、既存のメイプルワールドに存在していた地域とも交易も可能です。
――船上での戦闘で、もし負けた場合はどうなるのでしょうか?
キム・ヒョンソン氏:ステージで勝敗を決めるようなものではないので、負けてもそのままやり直しとなります。交易そのものはある程度時間がたてば成功となるのですが、早ければ早いほどいい報酬が獲得できます。戦闘不能になると制限時間をフルに使ってしまいますね。
――交易にはどの程度の時間を想定しているのでしょうか?
キム・ヒョンソン氏:交易の時間は地域によって異なりますが、短いもので3分、長いところで30分ほどです。これは制限時間を最大に使った場合ですので、レベルを高めて進行すればもっと早く終りますよ。
――交易はソロ専用ですか?
キム・ヒョンソン氏:現在ではソロ専用となっていますが、パーティで交易システムを楽しめるシステムも開発中です。後々のアップデートでの実装をお待ちください。
――ユーザーにメッセージをお願いします。
オ・ハンビョル氏:韓国のみならず、日本でも多くの方が長らく愛してくださった分、こちらとしても責任を感じながら開発をしています。10年を迎えて嬉しいという反面、これからも愛され続けるためにどうすればいいか真剣に悩んでいるところです。
新しいコンテンツ、プレイヤーの皆さんが望まれるコンテンツを常に提供していきたいと、今回のアップデートも準備してきました。これからも皆さんに楽しんでいただけるように開発を行っていきたいと思いますので、ご期待ください。
中西啓太氏:この夏で10年を迎えましたが、プレイヤーの皆さんが遊んでくれるからこそ、これだけ続いたのだと思っています。今まで年に2回大型アップデートを行ってきていますが、離脱するユーザーが出てきてしまうポイントを何とかしていきたいと考えています。
これから先、より積極的にユーザーの意見を聞きながら運用を行っていきたいと思います。公式サイトでのアンケートももっと増やして意見を伺いたいので、気になることがあったらぜひ伝えてください。
ミン・ヨンミ氏:今回の「REDアップデート」は、その名前が意味するような革命的な改変、発展的なサービス、楽しいコンテンツの提供ということに重点を置いております。しかし、まずはプレイヤーの皆さんが望まれることをアップデートしていきたいと思っています。今回のオフラインイベントでは、不具合の修正要望が非常に強いことを理解しました。新しいコンテンツを入れていくことも頑張りたいと思いますが、不具合修正の面も努力していきますので、今後も「メイプルストーリー」を愛してくださいますようお願いいたします。
――ありがとうございました。
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