多数のプレイヤー達が城の支配権を巡ってPvPを繰り広げる“攻城戦”は、MMORPGの魅力が凝縮されたコンテンツである。MMORPG「リネージュ」では、先日導入されたアップデートで攻城戦のハードルが大きく引き下げられ、気軽に参加できるようになったとのこと。詳しい経緯などを聞いてきたので紹介しよう。
エヌ・シー・ジャパンのMMORPG「リネージュ」において、11月5日、大型アップデート「革命戦争 後編 ~赤き獅子の進撃~」が実施された。元来はプレイヤー同士が繰り広げていた大規模PvPの“攻城戦”に、NPC勢力の“赤き騎士団”が参戦するというのが、その主な内容だ。赤き騎士団には、一般プレイヤーも参加できるので、攻城戦のコンテンツとしてのハードルがぐっと下がり、これまで以上に激しいバトルが展開されそうだ。
今回は同作の日本運営プロデューサーを務める中村 直樹氏に、アップデートの導入経緯や“革命戦争 前編”実装後の反響、そして、これまではあまり表立って語られてはいなかった「リネージュ」の世界観などについてあれこれ話を聞いてみた。
大規模PvPの“攻城戦”を遊びやすくしたうえで新システムを導入
――本日はよろしくお願いします。プレイヤーにとっては“【GM】Chun”としてもお馴染みの中村さんですが、具体的にどういったお仕事をされているのでしょうか。
エヌ・シー・ジャパン 中村 直樹氏(以下、中村氏):現在はリネージュの日本運営プロデューサーを担当している、中村です。自分は入社してから一環してリネージュに携わっており、さきほど期間を調べたところ、10年を超えていました(笑)
――10年! 業界内を見渡しても、一つのタイトルにそこまで長く関わる人って珍しいような。たとえば日本独自アップデートとして実装された“日ノ本”も、中村さんが直接関わっていたりするのですか?
中村氏:日ノ本に関してはメインストーリーの企画案をはじめ、マップ構成、モンスターのイメージ、経験値やドロップアイテムなどのバランシングなど、一通り自分が担当しています。ありがたいことに“日ノ本”のアップデートは他国でも好評で、台湾版のリネージュにも導入されていると聞いています。
――それでは本題に入りますが、今回のアップデートのベースとして、8月26日に“革命戦争 前編 ~赤き獅子の帰還~”が導入されているんですよね。
中村氏:OnlineGamerさんの記事でも紹介して頂きましたが、MMORPGを長時間プレイできない人でも攻城戦を楽しめるようにするのが、“前編”の主なコンセプトです。具体的には、攻城戦が発生する城の数が3箇所に減り、毎週日曜の午後8時スタートの定期開催になるなど、従来比で大分遊びやすくなっています。
――このようなアップデートを導入した背景としては、プレイヤーの遊び方の変化が挙げられるのでしょうか。
中村氏:そうですね。なにしろ「リネージュ」の正式サービスが始まったのは、今から12年以上前の話です。サービス開始当初は“MMORPG”というゲームジャンル自体、他にほとんど無く、物珍しい存在でした。当時は学生で寝食を忘れてハマったような人も、今では30代半ば以降で家庭を持ち、会社でも要職に就いているケースも少なくないでしょう。
仮にそういった人が「リネージュ」を久々に遊びたくなっても、色々な部分でハードルの高さを感じてしまうわけで、これを軽減するのが“前編”を導入する主な目的でした。
――“前編”の実施から2か月が経過しましたが、手応えはいかがでしょうか。
中村氏:攻城戦に手軽に遊べるになったという面で、好評だと受け止めています。攻城戦が開催される毎週日曜日の午後8時になると、以前と比較して約1.5倍のお客様がログインしています。ただ、開催時間が決まっているため、この時間に遊べないような人が攻城戦に参加できなくなるなど、別の問題も生じています。
――たとえば日曜日に夜勤業務を行っている人は、必然的に攻城戦に参加できなくなりますよね。
中村氏:そうなんです。そういった人達を考慮すると、諸手を上げて喜んでいいのか判断しかねています。とはいえ、開催時間を固定化する以上、総ての人にとってベストな時間が存在しないのも事実です。ですので、この件に関しては公式サイト上でアンケートを実施して、その反響次第では開催時間を調整することも視野に入れています。
11月5日のアップデートでNPCが率いる血盟が攻城戦に参戦!
――11月5日に大型アップデート“革命戦争 後編 ~赤き獅子の進撃~”が実装されます。このインタビュー記事の掲載時には実装済だと思いますが、まずは“後編”の基本コンセプトについてお願いします。
中村氏:“革命戦争 後編 ~赤き獅子の進撃~”は、8月26日に実装した“革命戦争 前編 ~赤き獅子の帰還~”と対になるアップデートです。ざっくり言うと、“前編”のアップデートで攻城戦のベースシステムが遊びやすくなっており、それを踏まえたうえで、“後編”で新システムを導入します。
具体的には、新たにNPCの血盟(勢力)が攻城戦に参戦してきます。この血盟には一般プレイヤーが気軽に参加できるようになっており、これまでと比べてコンテンツとしてのハードルがぐっと引き下げられ、そして更に活性化されると期待しています。
――参戦するNPC勢力は、ゲーム内ではどのような位置づけなのでしょうか。
中村氏:“前編”のアップデート以降、“デポロジュー”という君主のNPCがゲーム内に出現しているのですが、彼が今回のキーマンです。MMORPGの「リネージュ」は、原作となった漫画がバックグラウンドストーリーとして有るのですが、そこで主人公的な役割を担っているのがデポロジューなんですよ。
――ということは、主人公たるデポロジューに攻め込まれるプレイヤー達は“敵”という扱いなのでしょうか?
中村氏:「リネージュ」の世界では、本当の意味での“君主”は1人しかいないという設定です。攻城戦に参加している君主達は、全員が「我こそが正当な君主」と信じており、デポロジューもその中の一人という形です。誰が善い悪いというよりは、各々にとっての正義がある、といった感じでしょうか。
――デポロジューの血盟は、どれくらいの強さなのでしょうか。
中村氏:厳密にいうと、デポロジューはプレイヤーに対する呼びかけを行っているだけで、攻城戦には彼の守護騎士である“クリスト、イシルロテ、ゾウ”の中から1人が参戦します。各守護騎士はレイドボス級の強さで、ナイトやアーチャー等のNPCを従えています。それらに加えて、多数の一般プレイヤー達が参加するわけで、一大勢力となることは必至でしょう。
――参加するプレイヤーの人数次第でゲームバランスが大きく変わりそうですが、アップデートが先行して導入されている韓国サーバーでは、どのような感じでしょうか。
中村氏:韓国では合計で52のサーバーが稼働しているのですが、このアップデートの導入直後は、たった2つのサーバーしか攻城戦で防衛できなかったと聞いています。ですがNPCへの対策などを研究し、今はお互い良い勝負となっているようです。ちなみに詳細は申し上げられないのですが、戦争の結果に応じて、その後のNPC勢力のバランスがある程度調整される仕組みになっています。
――報酬関連のシステムはどのようになっていますか。
中村氏:戦果に応じて報奨金などが得られますが、それよりも、より気軽に攻城戦に参加できるようになることが、一番のメリットだと思います。大規模な血盟に参加せずとも楽しめますし、ここで攻城戦の魅力に触れたプレイヤーが、ゆくゆくは自ら君主として名乗りを上げくれることを期待しています。
――実際に未経験者が攻城戦に参戦するにあたり、最低限どれくらいの強さが必要なのでしょうか。
中村氏:目安となるのは“レベル52“です。というのもレベルが52以上のキャラクターは、強力なバフの“赤き騎士団員エンチャント”を受けて、攻城戦でそれなりに活躍できるようになるんです。現在の「リネージュ」は、育成システム“ハイパス”を経て、レベル52までサクッと育てられるので、たとえ新規で始められるような方にとっても、導線は問題ありません。まぁでも、何より大切なのは、“大規模PvP”というMMORPGならではのコンテンツに対する、チャレンジ精神だと思いますよ。
“赤き騎士団員エンチャント”
・レベル52~59:最大HP+50%、最大MP+50%、MR+10、攻撃成功+40、追加打撃+15、SP+10、AC-10
・レベル60~69:最大HP+30%、最大MP+30%、MR+5、攻撃成功+25、追加打撃+12、SP+5、AC-5
・レベル70~79:最大HP+10%、最大MP+10%、MR+3、攻撃成功+10、追加打撃+8、AC-2
・レベル80以上:攻撃成功+5、追加打撃+5
「リネージュ」の原作は少女漫画だった?!
――デポロジューと守護騎士3名が新たにゲーム内に登場するわけですが、そもそも「リネージュ」に原作のストーリーが存在していたことを、これまで失念していたような気がします。
中村氏:MMORPGとしての「リネージュ」には、原作のストーリーを積極的に反映させていないので、そう思われるのも無理のないことだと思います。ちなみに原作は1990年代に出版された漫画なのですが、韓国では今でも愛蔵版のコミックスが発売されているものの、いまのところ日本向けの翻訳はされていません。
――原作漫画のストーリーは、どういったあらすじなのでしょうか。
中村氏:愛蔵版で全7巻ものボリュームがある内容ですが、超駆け足で解説すると、アデンの王子デポロジューが、“ケンラウヘル”の陰謀により王位を脅かされます。これに対しデポロジューは、持ち前のカリスマ性を活かして凄腕の戦士や魔法使いなどを配下に集めつつ、最終的にケンラウヘルを退けてアデンを統治する、といったストーリーになります。もし良かったら、原作漫画をご覧になられますか?
――ぜひお願いします。……ぱっと見た感じ、戦争よりも人間同士の交わりにスポットが当てられた、群像劇に近い感じでしょうか。といいますか、あのリネージュの原作が“少女漫画”だったことに衝撃を受けています(笑)
中村氏:自分も、初めて知ったときは驚きました(笑)。たとえばデポロジューの配下にいる“ジリアン”は男性ですが、満月の間に限り女性に変わるという神秘的な人物です。女性になったジリアンを見たデポロジューが一目惚れしてしまうのですが、彼には“イシルロテ“という許嫁が既にいて……といった風に、いかにも少女漫画らしい展開もあるんですよ。
――キャラクターの相関図を見ても凄く面白そうですし、翻訳してくれると嬉しいですねぇ。ちなみにこの原作漫画は、「リネージュII」との繋がりはあるのですか?
中村氏:「リネージュII」は、「リネージュ」の時代から約150年前のアデンが舞台となっています。ストーリー的にはスピンオフに近く、主要な登場人物もガラリと違っていますが、唯一、大魔術師のハーディンだけは両方のMMORPGに登場していますね。
2015年は韓国版からのアップデートのタイムラグを減らすことを目標に
――攻城戦以外に“革命戦争 後編 ~赤き獅子の進撃~”における大きな見どころはありますか。
中村氏:ゲームに30日以上ログインしていないアカウント、つまり休眠/復帰プレイヤー向けのフォローとして、「ホームカミングプログラム」を導入しています。これは専用の拠点/狩場のエリアや、お金、そして装備品などをまとめた内容です。
――レベル帯としては、どれくらいをサポートしているのでしょうか。
中村氏:レベル45~60前後のキャラクターにとって遊びやすい環境が整えられています。一昔前は“リネージュ=マゾいMMORPG”の代名詞的な存在でしたが、ハイパスや今回のホームカミングプログラムなどにより、大きく変わってきています。
――今後のアップデート計画について、話せる範囲でお願いしてもいいですか。
中村氏:まずお詫びさせて頂きたいのが、以前に告知を行った“日ノ本 第三弾”に関してです。これは日本独自アップデートとして、これまで第一弾/第二弾を導入しましたが、これらの開発作業に注力しすぎた結果、そのほかのアップデートの実装が遅れに遅れてしまいました。
現在この点を反省しており、韓国版で実装されたアップデートを、それほど長い期間を空けずに日本に導入することを目指しています。その結果、“日ノ本 第三弾”の実装が遅れてしまっているわけです。
――アップデート自体は滞り無く行われるわけですね。具体的なスケジュールはどういった感じでしょうか。
中村氏:11月5日に実装した“革命戦争 後編 ~赤き獅子の進撃~”の次は、“狩場のリニューアル”と“ドラゴンレイドのリニューアル“を、2015年の初頭に実施することが現在の目標です。具体的に言うと、現在不人気のエリア2箇所に関して、高レベル向けにリニューアルを行います。一方のドラゴンレイドに関しては、挑戦するドラゴンを“アンタラス、パプリオン、リンドビオル”の中から選んだうえで、難易度を“ノーマル/ハード/ベリーハード”から選べるようになります。従来の難易度がノーマルという位置づけで、それ以外の2つは報酬もグレードアップしています。
――そのほかに、お話しできる情報などはありますか。
中村氏:これは韓国で先日実装されて、現地で大きな注目を集めているのですが、新クラスの「戦士(仮)」を実装する計画があります。前衛系のクラスで初めて範囲攻撃系を使えるのですが、これがとにかく強力なんです。実装時期に関しては、2015年の春から夏にかけての間を目標にしています。そして、その次の大型アップデートで、“日ノ本 第三弾”が実装できれば、と考えています。
――このインタビュー記事の掲載日の翌日となる11月8日に、アップデート後第1回目の“攻城戦”が開催されます。最後になりますが、新しくなった攻城戦の開催に向けて意気込みをお願いします。
中村氏:11月5日に実施された大型アップデート「革命戦争 後編 ~赤き獅子の進撃~」により、これからは誰でも、毎週土曜日の夜8時から始まる攻城戦に参加できます。これまで攻城戦に参加したことのない人も気軽に参加して欲しいですし、一方、これまで頑張ってきた人は、デポロジューの守護騎士を打ち破ることを目標にして頂きたいです。また、新規/復帰のお客様に向けても、“ハイパス”や“ホームカミングプログラム”で万全の準備を整えてお待ちしてます!
――本日はありがとうございました。
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