野球ファンの理想が全て叶えられるゲームに―「野球つく!!」開発陣にインタビュー

6月2日よりPC版のサービスが開始された、「プロ野球チームをつくろう!ONLINE」シリーズ最新作「野球つく!!」。シリーズ総合プロデューサー・瀬川隆哉氏と開発ディレクター・徳永剛氏へのインタビューを掲載する。

「野球つく!!」は、セガゲームスのプロ野球球団経営シミュレーション「プロ野球チームをつくろう!」シリーズの最新作だ。

9年続いた「プロ野球チームをつくろう!ONLINE 2」(以下、「野球つくONLINE 2」)を経てリリースされた本作の、進化したポイントや今後追加される要素、はたまた選手データが決められる過程を、シリーズ総合プロデューサーの瀬川隆哉氏と開発ディレクターの徳永剛氏にインタビューを行った。野球愛あふれるコメントに、ぜひ耳を傾けてほしい。

瀬川隆哉氏(左)、徳永剛氏(右)

※インタビュー実施日:2016年5月30日

野球ファンの理想が全部叶えられるゲーム

――6月2日のPC版のリリースを間近に控えて、今の心境はいかがですか?

瀬川氏:9年目でサービスを終了する「野球つくONLINE 2」から、ゲーム内容や遊び方、プラットフォームが大きく変わりました。プレイヤーからどんな反応が返ってくるのか楽しみですね。

――「野球つくONLINE 2」は私もプレイしていましたが、気がつけばそんなに経つんですね。

瀬川氏:運営開始から9年ですが、開発を始めたのは11年くらい前になりますね。

――改めて「野球つく!!」の概要を説明していただけますか?

瀬川氏:球団のGM兼監督になって、編成や采配を行いながらチームを強くしていくのが基本的なコンセプトのゲームです。プロ野球が好きな人が監督になって、自由に打順を決めたり、現役選手とレジェンド選手との夢の対決を楽しんだりといったコンセプトは踏襲しています。

ただ今回は、オーナーにもなれたり、選手を作れたり、ゲームの幅は大きく広がっています。プロ野球を好きな人って、子どものころに野球選手になりたいと思っていた人が多いと思うんですよ。そんな野球ファンの理想を全部叶えるようなゲームになっていますね。

――オーナーの役割が加わって幅広くなりましたね。

瀬川氏:「野球つく!!」は簡単に言うと、街を作るシミュレーションゲームと、球団運営のシミュレーションゲームが合わさっています。短期的にチームを強化するなら球団運営シミュレーションの部分に集中し、長期的に強くするなら街づくりからチーム全体を考えていきます。獲得したポイントをどのように配分していくか、頭を使ってチームを強くしていくゲームに仕上がっているのが一番の売りとなっております。

――プレミアムテストでは「ここまで街づくりができるんだ」と驚きました。

瀬川氏:プレミアムテストではレベルキャップを設定していましたが、サービス開始以降は更に大きな街が作れるようになります。例えば交通インフラでも、タクシー乗り場やバス停から始まって、「こんな壮大なものができるんだ」と思えるものも用意しています。街づくりだけで遊べるくらいのコンテンツを準備しています。

――9年続いた「野球つくONLINE 2」では、成功も失敗もあったと想像しますが、それを踏まえて本作で一番注力した部分はどこでしょう?

瀬川氏:11年ほど前の話になりますが、当時のオンラインゲーム市場では、スポーツシミュレーションゲームの分野はそれほど大きくなかったです。コンシューマ機でも「プロ野球チームをつくろう!」のシリーズを発売してきましたが、基本的には自分対CPUで戦うゲームだったので、選手が2人いることはありませんでした。

その中で、限られた選手をプレイヤー間で競い合って戦うために、「選手カード」を導入しました。今のプロ野球を題材にしたソーシャルゲームでは、選手はいずれもカード化されていますが、当時は「野球つくONLINE」が最初だったと思います。

プレイヤーに毎日ログインしていただける仕組みと、限られた戦力の中でどうやってチームを強くしていくか? というポイントに関しては、我ながらよくできたと思っています。

※選手カードに掲載されている数値は、本画像用に設定・表示されたものです。

ただ、当時はあまり運営面に注力できず、定期的な選手データの更新を中心に運営していたところがありました。世の中の潮流に合わせると、本来はどんどんアップデートしながら毎週さまざまなキャンペーンやイベントを行い、ゲーム内部のコンテンツも徐々に拡張していくべきだったのですが、それがなかなかできなかったという思いがあります。

その反省を活かして、「野球つく!!」では常に圧倒的なボリュームで更新していこうと考えています。毎週イベントを区切って、プレイヤーの皆さんで競い合ったり、共闘できたりする要素を増やしていきながら、プレイヤーの皆さんには10年間楽しんでいただけるようなゲームに仕上げていきたいと、運営メンバーも含めて考えております。

――野球シミュレーションゲームで“共闘”といいますと、どんな形になるのでしょうか?

瀬川氏:今考えているのはGvGですね。「野球つく!!」は自分のチームをペナントで1位にする遊び方がメインですが、それとは別軸で大きなイベントを起こして、皆で戦える場を提供しようと思っています。

例えば、オリンピックやWBCで、各球団がどの選手を出すのか?選手を出さない球団があるのか?というところに注目するのは面白いと思います。ゲームにおいても、皆でメンバーを出し合って代表チームを作っていく際に、主力選手を出すと自チームの戦力がダウンしてしまう恐れがある。そこを他のプレイヤーとコミュニケーションを取りながら、代表チームを作っていく。うまくいかないと特定のポジションに代表メンバーが偏ってしまう恐れもありますが、そういったところも逆に面白いのではないかと考えています。

――以前、現実のWBCでも実際にそんなことがありましたね。

瀬川氏:自分は選手を出さないからGvGに参加しない、というのもプレイスタイルの一つだと思っています。

――スポーツシミュレーションゲームの新しい遊び方になりそうですね。ところで、プレミアムテスト(クローズドβテスト)の反響はいかがでしたか?

徳永氏:b:プレミアムテストではアンケートを取らせていただいたのですが、すぐに半数近くのプレイヤーから回答をいただきました。開発側としては、今回新しく入れたホームタウンとつくろう選手が気になっていたところでしたが、そこは好評価をいただきました。

ただ、プレミアムテストでは「つくろう選手」で劇的に能力の高い選手を育てられるようにはしていなかったので、もっと強い選手を作りたいというご意見が多かったですね。そのぶん期待されているとも感じました。

従来の、選手を編成してペナントを進めていくところに関しては、安定した評価をいただくことができたので、全体的に評価は高かったのではないかと安心しています。

――逆に改善すべき点として取り組んだのはどんなところでしょう?

徳永氏:b:ゲーム内の演出にはかなりこだわって作っていたのですが、そのレスポンスが悪いとの指摘がありましたので、サービスインに向けて全体的な高速化に一番注力しました。遊びやすいゲームに仕上げられたのではないかと思います。

瀬川氏:かなり高速化できましたね。例えば試合の「ダイジェスト」では、イニングとイニングが変わるシーンで12秒ほどかかっていましたが、最終的には1秒まで短縮することができました。

――そんなに変わったんですか!?

瀬川氏:全体的にとても高速化されています。プレイヤーから一番ご意見をいただいたところでしたので。

――ダイジェストを見る人も多そうですね。

瀬川氏:一番多いのは試合結果のみですが、ダイジェストも多かったです。ただ、データを分析した中で驚いたのが、毎試合フルに試合を見ているプレイヤーがいらっしゃいました。ペナントも自動進行でそれなりに試合が溜まっていきますが、常に1打席1打席見ている方がいらっしゃったので、非常に感心しました。

――それはすごいです。本当に野球好きの方が遊んでいらっしゃるんですね。

瀬川氏:プレミアムテスト参加者が「野球つくONLINE 2」のプレイヤーが多かったということもあり、だいぶ“濃い”方に来ていただけたと思います。

「野球つくONLINE 2」のヘビーユーザーだったんですよ

――プレイしていて、現実ではまだ1軍で出番がない選手も収録されている点に懐の深さを感じました。そういう選手の能力値はどんなふうに決めているのですか?

瀬川氏:開発チームにいる「データ班」が、録画したプロ野球の試合を見ながら球種などをデータ化しています。

ルーキーは、学生のころのイメージやキャンプの情報、野球ニュースや雑誌を見て判断しています。シーズン中に来日した外国人選手は、データがあまりないのですが、同様に野球ニュースや雑誌を見たり、3Aに在籍していた人なら成績をチェックしたりして、ある程度予測値を入れながら作り上げています。

――選手の特徴をゲームに落とし込む上で難しいところはありますか?

瀬川氏:肩の強さと足の速さが一番難しいですね。なかなか数字で出しにくいものなので、印象点も加味しています。足の速さも盗塁数という指標はありますが、打順の兼ね合いがあったり、足が速くても盗塁が下手な選手もいますので、そこはひたすらプレーを見ながら決めますね。開発チームにはいろんな球団のファンがいるので、そのチームや選手に詳しい人と擦り合わせながらダブルチェックをして能力値を決めています。

――取ったデータをお互いに見ながら均等化していくのですね。

徳永氏:b:これはサービスインから導入するのですが、新入団選手は「ニューカマー」という位置づけにしています。ニューカマーの選手は状況に応じて、劇的に能力を変えることを予定しています。最初はどれくらい活躍するかわからないので少し低めに能力を設定しているのですが、時が経つと突然化けたりします。ニューカマーの選手はキープしておくといいことがあるかもしれません。

瀬川氏:さらに下がる場合もありますけどね(笑)。でも高コストの選手のランクを上げるのは大変ですし、コストの低い選手でもランクが上がれば十分活躍できますね。実際にプロ野球を見ながら楽しめるポイントです。

――データのアップデートは随時行っていくのでしょうか?

瀬川氏:ペナント開始時、オールスター後、ペナント終了時の、4月、8月、11月あたり、年3回を予定しています。プロ野球を見ながら、この選手がこれくらい上がるんじゃないかとか、下がるんじゃないかとか、予想しながら編成してほしいですね。

――実際の選手の特徴がちゃんと落とし込まれると思うと、プレイしている方もより楽しめそうですね。

瀬川氏:野球は数字が大事なスポーツですので、一瞬で140試合回せるデバッグシステムを使いながら、盗塁数や安打数などの合計が実際のプロ野球の記録にどれだけ近づいて、それが各選手の成績にどう落とし込まれているか、かなりシミュレートしています。

「野球つく!!」は成長要素も多いので、いろんなものを加味しながら、パラメーターが伸びていけば成績もちゃんと上がっていくようにしていますね。

――データ班にいろんな球団のファンがいらっしゃるというお話がありましたが、開発しながら野球談義に花が咲いたりしますか?

瀬川氏:そうですね。たまにプロ野球の試合のチケットを開発メンバーにプレゼントすることがあるのですが、その取り合いが結構面白くて大変です(笑)。

――瀬川さんはずっと野球ゲームに携わっていらっしゃいますが、野球はやっていらしたのですか?

瀬川氏:やっていたわけではないのですが、もちろん野球は大好きです。私が子どものころから国民的スポーツで、巨人戦だけでなく阪神戦や近鉄戦もナイター中継でよく見ていました。

――徳永さんはいかがですか?

徳永氏:b:私も小さいころからやっていたわけじゃないんですが……。

瀬川氏:小さいころアラスカにいたんだよね。

――アラスカ!?

徳永氏:b:どちらかというとアイスホッケーをやっていました(笑)。私もテレビで見る程度だったんですが、瀬川の作っていた「野球つく」シリーズをプレイして、野球に興味をもちました。

瀬川氏:実は「野球つくONLINE 2」のヘビーユーザーだったんですよ。

――そうだったんですか!?

瀬川氏:同じ部署の部下でしたが、彼は自分で課金しながらずっと熱心にプレイしていました。

徳永氏:b:そのあと、いろいろ縁があって「野球つく」の開発を担当させていただくことになって、現在に至っています。

――開発する側になるくらい、野球と「野球つく」にのめり込んでいったのですね。

瀬川氏:徳永もだいぶ野球ゲームの経験がありまして、「MLBマネージャーONLINE」というカナダ、北米、日本、韓国、台湾でサービスしていたタイトルの企画リーダーを担当していました。

――そういえば、「MLBマネージャーONLINE」と「野球つく!!」のデザインは通じているものがあるように感じます。

瀬川氏:そうですね、本来は「野球つくONLINE 2」をずっとアップデートしていけば今の「野球つく!!」になったのかもしれませんが、「MLBマネージャーONLINE」は進化途中の作品でしたね。

このゲームをプレイすれば、それだけでプロ野球のすべてが楽しめるように

――プレイヤーにも注目されているホームタウン機能やつくろう選手を始め、試合の合間にも楽しめるコンテンツがかなり増えたと感じます。これらを実装する狙いはありましたか?

瀬川氏:短期で勝てる方法と中長期で勝てる方法を考え、前者を球団づくり、後者を街づくりとしました。そしてホームタウンの建物ひとつひとつに、収益が上がったり、観客がが来たり、選手が強化されたりと意味を持たせ、チームの成長に必要なものを集められるように設計しました。

チームを成長させるためにはエキサイトマッチで手に入るアイテムが必要など、ペナントレース以外にもいろんな切り口からチームが強くなるようにしています。

この設計の中には、プロ野球のすべての要素を入れたいと考えています。例えばFA(フリーエージェント)やトライアウト、トレードなどはまだ実装していませんが、プレイ時間とのバランスも考慮しながら、今後のアップデートで入れていこうと考えています。

――つくろう選手の他プレイヤーとの共有などは考えていらっしゃいますか?

瀬川氏:今は、自分の夢が叶わなかった人がプロ野球を楽しんだり、ゲーム開始当初における戦力として起用するために入れてはいるのですが、やはりせっかく育てた選手にはそれなりの思い入れがあると思います。引退したつくろう選手のマーケットをつくるイメージはあって、それをFAやドラフト、トライアウトに活かすなど、別軸の遊びに今後つながっていく可能性はありますね。

――サービスイン後もさらに遊びが広がりそうですね。開発側から見た本作の魅力はどこに感じていますか?

徳永氏:b:まず気軽に遊べるところです。1日数分でも、オーダーをセットして置いておくだけで自動進行していくのがいいと思います。私も最初はその理由で「野球つくONLINE」を始めました。

また、編成をしていくうちに選手のことがわかって興味が湧いてきます。実は「野球つく!!」では一球一球ちゃんとシミュレートしていて、選手一人一人の成績が残るので、理想のチーム作りにこだわる方にもリアルな野球が感じられる納得の出来だと思います。

コツコツと長期間プレイできる要素も増えていますし、監督や選手、オーナーなど、プロ野球に関わるさまざまな立場からプロ野球が堪能できます。

――野球さえ好きならば、どんな角度からも楽しめる作品になっていますよね。

瀬川氏:徳永は「野球つくONLINE」のヘビーユーザーだったので、ゲームに登場した当初は低コストだった選手が、実際にプロで活躍していった後にアップデートで高コストの選手になっていくと、「この選手、コスト2のころから使ってたなぁ」ってよく言ってました。東京ヤクルトスワローズの小川泰弘投手とかがそうでしたね。「野球つく!!」にもその要素がありますので、思い入れをもってプレイできるゲームです。

――ゲームから知った選手を、現実のプロ野球でも見て楽しめるきっかけになりそうですね。選手といえば、選手特有のモーションが今回かなり加わりましたね。

瀬川氏:そうですね。これに関しては運営していきながら更に増やしていく予定です。

――そのほかに今後増やしていく要素などはありますか?

徳永氏:b:選手カードのバリエーションを増やしていきます。キャリアハイ時の能力になるリバイバルカードや、選手のサインが入ったカード、レジェンド(OB選手)カードをどんどん追加していきます。

また、本作は二軍監督を登場させることができるので、二軍監督を使った要素も用意しています。できる限りタイムリーな選手や出来事を、いいタイミングで提供できるようにしていきます。

あとはプレミアムテストで使えなかったスカウトを解放するなど、いろんな形でイベントとして選手が獲得できるようにします。選手が入団する機会が増えていきますので、今後を楽しみにしていただければと思います。

――イベントはどれくらいの頻度で行われますか?

瀬川氏:大体1週間から10日くらいの期間で開催して、その後少しだけ間隔を空けるというスパンですね。プレイヤーの皆さんで競い合うイベントや、フレンドになったらお得なイベント、選手のカードを強化していくイベントなど、それぞれテーマを決めて実施していく予定です。

――スマートフォン版の進捗はいかがでしょう。また、PC版との差異はありますか?

瀬川氏:今年の夏にリリースと発表していますが、できるだけ早い時期に配信しようと考えております。

野球つく!!」を両方のプラットフォームでリリースすれば、プレイしたい人が皆遊べると考えています。家ではPC、通勤通学の途中ではスマートフォンで遊んでいただくなど、いつでもどこでも「野球つく!!」にログインできるようにしたかったのです。

もちろんPCで見れば、よりリアルでリッチなグラフィックで見れます。それぞれの利点や用途に合わせて、常に、また多くの方に遊んでいただけるようにプラットフォームを設定しました。

徳永氏:b:内容的な差異はありません。試合シーンのグラフィックが違いますが、同じ遊びができることを基本に作っています。

――ありがとうございます。最後に、先ほど「10年」というお話もありましたが、どんな野球ゲームに育てていこうと考えているか、お聞かせください。

徳永氏:b:「野球つくONLINE」シリーズをプレイして野球が好きになった、野球の見方が変わったというご意見を必ずいただきます。ぜひ興味がある方はプレイしていただいて、さらなる魅力を知ってほしいと思います。

瀬川氏:恐らく10年以上すると、本物のプロ野球もだいぶ進化していくと思います。野球の良いところは歴史があるところです。私が子どものころはWBCは無かったですし、オリンピックにプロ選手が出たり、日本の選手がメジャーリーグに移籍することもありませんでした。それが歴史の中でさまざまな進化を遂げています。

そのように進化し続ける現実のプロ野球に合わせて、「野球つく!!」も常にプレイヤーを驚かせるゲームに進化させていきたいと思っています。「野球つく!!」をプレイするだけでプロ野球の世界の全てを楽しめるように、長い期間楽しんでいただけるような作品にしていきたいと思います。

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