セガゲームスが現在PC/iOS/Android向けにサービス中の「野球つく!!」。サービス開始から半年が経過した本作の現状と今後の展開について、開発スタッフにインタビューを行った。
「野球つく!!」は、セガゲームスのプロ野球球団経営シミュレーション「プロ野球チームをつくろう!」シリーズの最新作として2016年6月2日よりPC版が、6月30日よりiOS/Android版のサービスがスタートした作品だ。
サービス開始からわずか半年の間に、野球ファンとシミュレーションゲームファンの双方から高い支持を得ている本作だが、今後はどんな展開に打って出るのだろうか。開発ディレクターの徳永剛氏、運営ディレクターの小川卓哉氏にインタビューを行ってきたので、本作に期待をかける人はぜひ読み進めてほしい。
大谷選手の二刀流も完全再現
――「野球つく!!」は配信から半年が経過しましたが、ここまでを振り返ってもらえますか。
徳永氏:あっという間に過ぎていったというのが正直なところです。当初は不具合もありユーザーさんにはご迷惑をおかけしましたが、現在は一通りの修正が終わり、安定したサービスを提供できているところです。私たちが想定していた以上に皆さんが熱心に遊んでくださり、とてもありがたいですね。
――かなり熱心に遊んでいる方も多いのですか?
徳永氏:そうですね。本作には選手育成のほかにも「ホームタウン」という街を大きくして成長を促す要素も入っています。街づくりだけでも十分に遊べるボリュームを持たせており、かなり個性豊かな街が出来つつあります。街の外観にこだわる方もかなりいて、今後はコンテストなどを開催したいと考えています。
また、育てた街からは自分だけのオリジナル選手「つくろう選手」が登場し、育てることも可能です。今ではその育て方も皆さんが熟知して、現役選手と競っても十分成績を残せる立派な選手に育てられている人も多くなって来ています。
小川氏:運営側から見ても登録者数は30万人を突破して、イベントも毎週なにかが打ち出せるようなローテーションが出来上がりつつあります。安定した運営が提供できるようになったので、これからはユーザーさんがより楽しめる仕組みを考えていきたいです。
――本作はPC版とスマートフォン版がありますが、それぞれで遊ばれかたに違いはありますか?
小川氏:意外とどちらのユーザーさんも変わらない印象ですね。当初はPC版が夜の時間帯に長時間遊ばれて、スマートフォン版は短い時間で少しずつ遊ぶと思っていました。しかし蓋を開けてみると同じような時間帯で遊ばれています。もちろん機種間でアカウントの紐付けができるので、遊びわけをしているユーザーさんも多いです。
徳永氏:PC版のほうがグラフィックの質が高く、またマウスで遊べる利点もあります。そのため、普段はスマートフォンで遊んでいる方も、PCを利用してくれているのは嬉しい話ですね。
――2つのハードで同時に運営するうえで、苦労する点はありますか?
徳永氏:開発の視点からだと、PC版はさまざまなスペックのものが存在しますし、Android端末もたくさんの種類があります。すべてで問題なく動くようにする検証は大変でしたね。
小川氏:運営面では実は両ハードでの違いはあまりなかったです。PCでもスマートフォンでも、やり方次第で問題なく同時運営できるというのは大きな発見でもありました。あとはマウス操作に対応したりと、インターフェイスの面で多少の違いがありますので、違和感なく楽しめるように調整した点は苦労と言えるでしょう。
――ユーザー層についても教えてください。やはり今までの「野球つく」シリーズをプレイしていた人が多いのでしょうか。
徳永氏:PCでは「プロ野球チームをつくろう!ONLINE」というシリーズがありまして、これをプレイしていた方がそのまま流れてきた側面があります。スマートフォン版は間口が広いおかげもあって、新規の方が多い傾向にありますね。
小川氏:シリーズを知っている方と新規の方が入り交じるのはある程度想定していたことで、誰でも公平に、楽しく遊べるようにS・A・B・Cと戦績によって戦うリーグが分かれるようになっています。またユーザー層という意味では、シミュレーションゲームファンと野球ファンという分け方もできます。野球ファンの方は好きな選手、好きな球団で遊ぶことに対するこだわりが強いです。一方シミュレーションゲームファンだと、すべての選手を万遍なく育てている印象があります。
――野球ファンの方もいるというお話ですが、2016年の日本シリーズは非常に盛り上がりましたよね。同じ時期にゲームも盛り上がったりはしたのですか?
小川氏:おっしゃるとおり、10月末のタイミングで一気に新規ユーザー数が上がりました。そのとき入ったユーザーさんは、やはり広島東洋カープ、北海道日本ハムファイターズをファン球団に選ぶ方が圧倒的に多かったですね。
――11月、12月でもアップデートを行っていますが、こちらの注目ポイントについても教えてください。
徳永氏:12月には選手データを更新し、2016年の最終的な成績を反映しています。ユーザーさんがすでに持っている選手もすべて新たなデータに変わるので、これまで弱かった選手が強くなりますし、もちろんその逆もありえます。それを見越して事前に選手を集めるという楽しみ方もできますね。あとは選手のモーションも追加されたので、ぜひ注目してもらいたいです。
小川氏:11月にはさまざまな特典が手に入るプラチナ会員も改善しまして、会員になるだけでファン球団の監督カードを入手できます。今までは監督カードがあまり出ないと意見をいただいていただけに、大きな変更点だと思います。年末年始にも色々とプレゼントを用意しようと考えているので、期待してもらいたいです。
――新しい選手データの中で、特に注目してもらいたい選手はいますか?
徳永氏:やはり北海道日本ハムファイターズの大谷選手ですね。大谷選手は投手と野手の2枚を実装しておりまして、ゲームの中でも二刀流として使うことが可能です。この機能自体は以前から搭載されているのですが、意外とできることを知らない方も多いです。今回のアップデートで、大谷選手の能力値も大幅にアップしていますので、試してもらえるとうれしいですね。
小川氏:個人的には福岡ソフトバンクホークスの千賀投手は、配信開始当時から比べると格段にパラメータが上昇し強くなっています。これほどの強化をした選手は珍しいので、一度試してもらいたいです。
徳永氏:「野球つく!!」はシーズンで活躍すれば、ダイレクトに能力へ反映されます。千賀投手は今シーズン12勝をあげ、大きな飛躍を遂げただけに当然の更新といえますね。これに限らず、来シーズンの活躍を予想しながら選手を集めるのも楽しみであり、攻略のカギにもなりますね。
――データの更新はすべての選手に行われたのですか?
徳永氏:はい。本作には全チームの1・2軍の現役、監督、コーチ、合わせて600名以上の選手が収録されており、全て最新の査定を反映させています。
――700名というのはすごいですね…。無名の選手もしっかり査定されているのは、野球ファンにとっても嬉しいことですよね。
徳永氏:今は無名の選手でも、今後活躍すればゲーム内でも自然と強化されていきます。そういった変化の過程を見ていくのも楽しみ方のひとつです。
――ただ査定をしていくと、全野球ファンを納得させるのは難しいと思います。「この選手はもっと能力高くていいだろ」といった意見もあるはずです。そんな中でスタッフ内ではなにか方針、やり方はあるのでしょうか?
徳永氏:スタッフの中にバランス班という査定だけを担当するチームがあります。そのスタッフたちが成績をベースに能力を決めていきます。もちろん公平な査定を心がけていますが、足の速さや肩の強さはなかなか数値化できませんよね。ですからこのあたりは、日々の試合をチェックして決めていきます。
――なるほど。では、年末年始のイベントはどのようなものを予定していますか?
小川氏:まずは激闘JAPANイベントを年末と年始に分けて、立て続けに実施します。どちらも大物の選手の登場を予定しているので、楽しみにしてもらえればと思います。歴史に名を残す名選手が登場を予定しています。
――激闘JAPANというと過去にも何度か行われたイベントですよね。これまでの反響はいかがでしたか。
小川氏:最初のイベントではバースとクロマティが登場したのですが、かなりの参加率を記録しました。また参加したユーザーさんひとりひとりが、高頻度でプレイしているのも特徴的でしたね。面白いのは報酬の選手によって周回数に変化が見られることで、上手く良い選手を提供することで、今後のイベントでも人気が出るのではないかと予想しています。
――ちなみに、今までで一番反応の良かった選手は誰でしたか?
小川氏:侍ジャパンのチームが登場したときは如実に参加数が増えました。やはり侍ジャパンは強い選手が集まる象徴ですし、単純に知名度も高い選手が多いですから。
――あとはOB選手が登場するのも魅力だと思いますが、次に誰を出すかの基準や決め事はあるのですか?
小川氏:まずは運営チームがバランスを見ながらほしいと考える選手を優先します。それまでバリエーションの少なかったポジションも優先的に増やせるように考えています。そのあたりはユーザーさんのオーダー一覧を見て、外野が足りていないようなら外野手を出そうといった形ですね。
――ユーザーからの意見を反映させるケースもあるのですか?
小川氏:ユーザーからのご意見は、貴重なものが多く、いろいろ参考にさせてもらうケースが多いです。
徳永氏:本作は幅広い年齢層の方がプレイしていた、比較的高年齢の方も多いです。そうなってくると難しいのが、どの層にも訴求できるよう、万遍なくOB選手を集めることです。我々の世代だとバースやクロマティは分かっても、10代の方だとあまり知らないんですよね。
――野球ゲームならではの悩みですね。では、若い世代でも知っている選手も積極的に実装していくのですか?
徳永氏:そうですね。その年に引退した選手はいち早くOB選手として実装するようにしていきたいですね。
小川氏:過去にアンケートを取ったときには、ここ数年で引退した選手は多くのユーザーさんから要望をもらいました。しかしまだすべてを出せているとは言えない状況なので、今後に期待していただければと思います。
徳永氏:実装予定のOB選手は100人近くいまして、あとはタイミングを見て、順次実装していく予定です。またOB選手に関しても伝説級の選手には固有のモーションをつけているので、そこも注目してもらいたいですね。
――モーションまで再現しているのはすごいですね。
徳永氏:我々としても力の入れているところで、以前から東京ヤクルトスワローズの畠山選手などはかなり似ていると定評があります。スワローズではほかにも、山田選手の左足を上げるバッティングフォームなど、細かい仕草も再現できています。
小川氏:OB選手だと山田久志さんのアンダースローは上手く再現できていますね。OB選手だと特徴的なフォームの選手も多いので、見ているだけでも楽しいですよね。
――それは現役選手も全員再現されているのですか?
徳永氏:さすがに実際に出場していない選手は難しいですが、高コストの選手であれば、ほとんど再現しています。来年から入団するルーキーの選手に関しても、シーズンを追って随時対応していきたいです。
プロ野球開幕、WBCでは新たな動きも
――今後のアップデートの予定についても教えてください。
徳永氏:大きなところでは3月にWBCが開催され、その後プロ野球のシーズンも始まります。これに先駆ける形で大きなアップデートを行う予定です。シミュレーションゲームらしい仕掛けを予定しております。
――シミュレーションゲームらしいというと、具体的にはどんな内容になりますか?
徳永氏:今は能力値によって強さが決まってしまいますが、それだけでなく試合で発揮する特殊能力など、もうひとつ強さの基準となるものを導入したいと考えています。あとはリーグについても、上級者だけが参加できる最上位のリーグを追加したいです。
ほかにも前回のインタビューでも少しお話した、GvGも将来的に追加したいと思っています。これは3月のアップデートの内容ではありませんが、継続して検討しているところですので、ご期待ください。
――GvGとなると、ユーザー間がコミュニケーションする機能も実装するのですか?
徳永氏:はい。ユーザーの皆さんがファン球団や好きな選手について語り合えるような場を、GvGに先駆けて実装する予定です。もちろんゲームの攻略も含めて、さまざまな話題で盛り上がってもらいたいです。
小川氏:本作はみんなで楽しむ側面と、1人で黙々と楽しむ側面が存在し、ユーザーさんのプレイスタイルも二極化しています。我々開発スタッフとしては、その両方が満足できるようにシステムを追求していくつもりです。
――WBCのタイミングでは、やはり新たな選手の追加も考えているのでしょうか。
徳永氏:WBCは開幕したタイミングで、すぐに侍ジャパンの特別なカードを配信できるように調整しています。もちろんそれに合わせたイベントも仕込んでいるところです。なので日本代表にはぜひ勝ち進んで、野球全体を盛り上げてもらいたいですね(笑)。
――決勝まで進めば、ゲームも自然と盛り上がりますからね(笑)。WBCを機にゲームを始めようとする人もいるかと思いますので、初心者へ向けたアドバイスなどがあればいただけますか。
徳永氏:まずは自分が思う理想のチームを作って、戦ってみてください。すると要所で秘書からのアドバイスが聞けて、オーダーの悪いところも教えてくれます。アドバイスに沿ってチームを編成し直していけば勝てるようになるはずなので、秘書のアドバイスをぜひ利用してほしいです。また選手には調子が設定されていて、絶不調の選手だと能力が高くてもなかなか活躍できません。単純な能力値だけでなく、絶不調の選手をカバーできるように層を厚くしておくことも大切です。
――ずっと同じ選手を使っていても勝てないと。
徳永氏:現実でも調子の波ってあるじゃないですか。それはゲームでも同じで、誰であっても調子の悪いときは本来の能力を発揮できません。そんなときはしっかりと休ませて、新しい選手に変えることをおすすめします。
小川氏:あとはとにかく毎日ログインして、一通り遊んでもらうことが攻略の近道だと思います。特にファンクラブ企画はチーム強化に必要なYPを効率よく稼ぐことができるので利用してみてください。
――それでは最後に、今後の展開に期待するファンにメッセージをお願いします。
小川氏:リアルを追求しつつ、OB選手も登場するファンタジーな部分を融合させた作品に仕上がっています。野球ファン、シミュレーションゲームファンの双方が満足できる内容を追求していますので、今後のイベントやアップデートにも期待してください。
徳永氏:野球ファンにとっての理想をゲームという形で実現するのが本作のコンセプトです。これからも野球にまつわる施策を続々と実装していくので、ぜひ期待してください。特に2017年は間違いなく野球が盛り上がるタイミングですので、実際の野球とゲームを比較しながら、楽しんでもらいたいと思います。
――ありがとうございました。
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