スクウェア・エニックスは、「ドラゴンクエストX」の映像化プロジェクト「冒険者たちのきせき」第2弾として、実写ドラマ「EPISODE2.『どの職業で戦うか迷う話』」を公開した。
「ドラゴンクエストX」から生まれた奇跡のようなエピソードを映像化するプロジェクト「冒険者たちのきせき」。第1弾として公開されたオリジナルアニメ「EPISODE1.『名前の想い』」に続く今回は、主演に実力派俳優として知られる本郷奏多さんを起用し、約22分の本格実写ドラマが制作された。
本郷さんが演じる主人公が、「ドラゴンクエストX」を通して知り合った女性とのゲームプレイやチャットでの交流を通じて、現実世界の自身について見つめ直していく様子が、事細かな心理描写とともに表現されている。また、特設サイトでは、この実写ドラマの公開に合わせて、映像制作の基となった投稿者のエピソード原文や、そのほかにも寄せられたエピソードも公開された。
実写ドラマについて
劇場版「進撃の巨人」やTVドラマ版「アカギ」などに出演し、現在人気急上昇中の本郷奏多さんが演じる主人公が、「ドラゴンクエストX」を通して知り合った女性とのゲームプレイやチャットでの交流を通じて、自身について見つめなおしていく様子が、事細かな心理描写とともに表現されています。
実際の「ドラゴンクエストX」プレイヤーに投稿いただいたエピソードを基として、特徴的な演出を加えた約22分にも及ぶ本格実写ドラマとして制作いたしました。
実写ドラマストーリー
少なからず働く意欲があるものの、定職についていない主人公は、「ドラゴンクエストX オンライン」のゲームを通じ、看護師の仕事をしている女性プレイヤーと知り合う。ゲームの世界では“僧侶”として仲間を強敵から救い、彼女からも頼りにされている存在であったが、現実世界ではゲームの世界での役割とは程遠いような生活を送っていた。
そして、その女性プレイヤーとのチャットの中で、彼女が育児と両立しながら、看護師として“人助け”をしていることを知る。その事実を知った主人公は、自分の現実世界での生活に対して葛藤を抱き、自身について見つめなおしていく…。
映像制作スタッフからのコメント
DQX内では「人と人」のコミュニケーションが楽しまれています。見た目はゲームキャラであっても喋っているのは生の人ですから、リアル世界と同じく、思いがけない一言に励まされたり、気づかされたり、時には人生に影響を与えられることもあります。このミニドラマで描いたのはその実際のお話ですが、生き方を大きく変えることとなった出来事なので、ユーモラスさを多少交えながらも、全体として真摯な表現であるよう努めました。(「冒険者たちのきせき」クリエイティブディレクター 小霜和也)
本郷奏多さんからのコメント
ずっと好きだったドラゴンクエストに関わることができて嬉しいです。じっくり時間をかけて撮影したので、いい作品になっていると思います。映像がとても綺麗だと思いますので注目してください。
本郷奏多さんの「ドラゴンクエストX」との関わりや撮影時のエピソード
「ドラゴンクエスト」シリーズ初のオンライン版に衝撃を受ける?
もともと「ドラゴンクエスト」とオンラインゲームが大好きだった本郷奏多さん。本作品が出ることを知ったときは「衝撃的でした。『ドラゴンクエスト』は今までは一人でプレイするゲームでしたので、どうやってオンラインでみんなとプレイするのかとても気になりました」と、発売をワクワクしていた様子でした。
本郷奏多さんはゲーム内の「釣り」が好き?
「ドラゴンクエストX」のお気に入りの遊び方について、本郷奏多さんは「釣りが好きです。釣りバトルのシステムのクオリティが高く、とても面白いと思いました。ゲーム内の友人からは、いつも釣り竿を持ち歩いているため、笑われます」と答えていました。
3日間ですべてを撮り終えた
3日間の現場で約60時間の撮影を行った本郷奏多さんは、撮影での印象に残っていることについて、「李監督とお互いのキャラクターのバックボーンも共有し、監督の細かい設定や深いこだわりなどを丁寧に演じていきました。なるべく監督のイメージを体現できるよう、ワンカットごとにキャラクターの心情を話し合い演じていくことができました」とお話されていました。
※撮影中/撮影終了時の本郷さん
冒険者たちのきせき EPISODE2.「どの職業で戦うか迷う話」概要
タイトル:冒険者たちのきせき EPISODE2.「どの職業で戦うか迷う話」
尺:21分37秒
サイト公開日:9月10日(日)
サイトURL:http://www.dqx.jp/kiseki/
出演俳優:本郷 奏多
監督:李 相日
制作:AOI Pro.
原文エピソード
投稿者:滝川治助さん「どの職業で戦うか迷う話」
「ナースなんだ」とウェディ娘は言うのだった。
部屋でひとりゲームに興じていた僕には、あだっぽく聞こえた。
一緒にパーティーを組んでボスモンスターと戦っている最中だった。
ゲーム内では僧侶の僕はその夜、いつもより丁寧に、彼女にホイミをかけた。
ドラゴンクエストは楽しいけれど、ゲームを終えればたちまち現実が押し迫ってきて、向き合わざるを得ない。
僕は無職だった。派遣のアルバイトで日銭を得て、どうにか暮らしを繋いでいるが、年をとっていくことが不安だった。
年をとるということは、親が老けるということや、同級生たちが立派になったり結婚したりしていくことを含んでいる。
流れていく時間が、恐ろしいのだ。
ドラゴンクエストは幅広い年齢層に人気のゲームだ。
「今日は学校の授業参観日だったよ」
世間話のつもりで話すウェディ娘だったが、聞いているうちに、親として参観日に臨んだらしいと分かった。
僕の想像とは食い違ってきた。
「子どもが小学校に入るとたいへん」
ウェディ娘の言葉が、僕の胸に刺さった。
ひとつはウェディ娘が妙齢の乙女ではないことだ。それはいい。
それよりも、僕の親もこのように僕を育てたのだろうと予感させられたことだ。
僕は子どもとして参加したことしかないが、参観日には当然、子ども以外の視点もあるのだ。
今まで気付かずにいたことがショックだった。
さらには、小学生というものは年々と学年が上がっていくが、僕は変わらぬ今を生きている。
僕には季節が無いような気がした。就職しようと考えた動機は、そんなところだった。
仕事はなかなか見つからなかった。
やっと見つけた就職先は介護職だった。それでも嬉しくて、介護の仕事をはじめたことをウェディ娘に告げた。
慣れない仕事で疲れてしまい、ゲームができない日も増えた。
勤めて九ヶ月くらい経ち、ほんのわずか、ボーナスが出た。
嬉しくてはしゃいだ。初めてのボーナスで親にプレゼントを買った。コーヒーカップだ。
やがて職場で何か介護に関わる資格を取ってはどうかと教えられた。
無資格でいるよりも、資格があるほうがいいらしい。
介護に関係する資格は山ほどあって、取得しやすいものもあれば、学校に通わねばならないものもある。
何がいいのか見当もつかなかった。
そういう話をウェディ娘にすると「じゃあ、看護師は?」と薦められるのだった。
看護師には正看護師と准看護師があり、准看護師のほうなら僕にも達成できそうに思われた。
ウェディ娘が学生時代に使った教科書やノートがあるから、送ってあげてもいいと言ってくれた。
ドラゴンクエスト内だけの付き合いだけど、三年以上も親交があるので、僕は住所を知らせた。
果たして、荷物は届いた。
古くなり紙が柔らかくなった教科書と、きれいな文字のノートだった。
青春の残り香のようなものが、感じられないでもなかった。
来春から僕は夜間学校に通う。この教科書やノートが、きっとくじけそうになる僕を励ましてくれるだろう。
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