「デスティニーチャイルド」キャラクター誕生の秘訣は落書きにあり?DMM GAMES版についても訊ねたキム・ヒョンテ氏インタビュー

ステアーズがiOS/Android向けに配信中、DMM GAMES向けにPC版をサービス開始予定の「デスティニーチャイルド」。本作のディレクター兼キャラクターデザインを担当するキム・ヒョンテ氏に、普段の制作の状況から現在事前登録受付中のDMM GAMES版についてまで、さまざまなことを訊ねた。

日本のコンテンツに対する深い理解があるからこそ生まれた「デスティニーチャイルド」

キム・ヒョンテ氏
キム・ヒョンテ氏

――まずは本作の魅力について改めて教えてください。

キム・ヒョンテ氏:本作の一番の魅力といえば、やはりほかのゲームでは見ることができない、独特のスタイルのキャラクターたちと、それらがLive2Dで生き生きと動くことにあると思います。

――リリースから二ヶ月ほどが経ちましたが、振り返ってみていかがですか。

キム・ヒョンテ氏:嵐のような二ヶ月でしたね。私が想定していた日本のユーザーさんの動向と、実際に遊んでいただいているユーザーさんの性質が異なることもあり、本作の意外な部分を楽しんでもらえているのは驚きました。そうした事実を踏まえた上でいろいろと考えた結果、私が「これは面白い!このキャラクターは良い!」と確信し、気持ちを込めて作ったキャラクターは、必ず日本のユーザーさんにも好きになってもらえる、ということに気付きました。これは1月21日に行われたファンミーティングでも実感したことで、徐々に「こうしたことをすればもっと本作を好きになってもらえる」という感覚が掴めた気がします。

――最近はLive2Dに対応した作品も多く見られるようになりましたが、本作においては最初からLive2Dに対応した作品としてリリースを検討されていたのでしょうか。

キム・ヒョンテ氏:そうですね。3年前からLive2D本社とコンタクトを取り、緊密に協力しながらツールの分析などを進めてきました。本作では、主人公などの主要キャラクターだけでなく、あまり出番の少ない、いわゆる脇役のようなキャラクターでもLive2Dで動かすことをポリシーとしています。現在ではLive2Dに対応した作品も増えてきましたが、本作のように400体近いキャラクターがすべて動くというのはかなり珍しい、本作ならではの特徴だと思っています。

――コラボキャラクターを含めて、確かにすべてのキャラクターが動くのはほかに類を見ないことですよね。

キム・ヒョンテ氏:例えばスライムだったり、アトレ秋葉原とコラボした際のトリであったり、作画という意味では簡単なキャラクターも、かなり高いレベルで動かせていると思っています。

――本作に登場するキャラクターといのは、やはり動かすことを前提に考えて考案されているのでしょうか。

キム・ヒョンテ氏:はい、イラストは動かすことを前提として描いているので、普通に描くよりもやや難しいですね。というのも、身体に隠れた髪の毛や衣装の装飾など、普通のイラストであれば見えない部分も動くことを想定してしっかりと描かなければなりません。イラストとしてのクオリティも大切ですが、同じくらい動かした時にいかに魅力的に映るかを意識して描くかが重要になっています。

くわえて、Live2Dでイラストを動かすためには、1キャラクター約200~300ピースほどにパーツを分けて描き、そこから各々のパーツを合わせて元のイラストに組み直す作業が必要となります。ある意味3Dを作るような手間と工数が要るので、こうした部分もほかのゲームではなかなかできない、本作ならではのこだわりでもあります。一度経験すると静止画では満足できなくなるような、Live2Dで動くキャラクターにはそういった生命力を感じますね。

――イラストそれぞれにこだわりがあると思いますが、1枚を仕上げるのにどれくらいの期間を要するものなのでしょうか。

キム・ヒョンテ氏:普通に描くとしたら一週間ほどですね。最近はほかの仕事との兼ね合いもあり、くわえてLive2Dの作業もあるので、一体のキャラクターを仕上げるのに約一ヶ月ほどの期間が必要になります。

――魅力的なキャラクターを多数生み出していますが、その中でも上手く描けない時期というのはあったと思います。そうした時に、モチベーションを戻す秘訣などはありますか。

キム・ヒョンテ氏:スランプや上手くいかない時期というのは、ほぼ毎回ありますね(笑)。ただ、本作は私のイラストがイメージとして全面に出るだけでなく、ゲームの中でも大切なコンテンツとして活躍している事を認識していますので、上手く行かない時も「手を動かしき続けるく」という気合で描いています。おすすめできない方法ですが、「コンディションは精神力でコントロールする」と考えてやっています。

――根性!ですね(笑)

キム・ヒョンテ氏:「ブレイドアンドソウル」(キム・ヒョンテ氏がキャラクター原案を務めるMMORPG)に携わった際は、3DCGのキャラクターが主な作品だったため、ある意味3Dの影に隠れることができたんです。しかし、本作は自分のイラストが主体になるので、イラストを見るとその時自分がどんな気持ちで描いていたかが分かってしまうんです。「こういう心境だったからこのキャラクターの性格はこうなったのかな」というようなことがユーザーさんにも透けて見えてしまう部分があり、自分の内面をさらけ出すような気持で作業をしています。

――そうした視点から各キャラクターを見るのも面白そうですね。

キム・ヒョンテ氏:プロとしては描き手の気持ちを表すのではなく、キャラクターを表現しなければならないので、ある意味恥ずかしい話でもあるんですけどね(笑)。

――Twitterなどでは、日本のファンの「デスティニーチャイルド」に関するさまざまなイラストが投稿されています。こうしたファンアートを目にすることはありますか。

キム・ヒョンテ氏:もちろんです。そうしたイラストを見つけた際には、なるべく“いいね!”やリツイートをすることで、感謝の気持ちを表すようにしています。イラストレーターとしても感謝していますが、ディレクターとしてゲームが皆さんに通じる事がとても幸せな気分になります。特に自分が大好きなイラストレーターさんから作品を書いてもらえる時は感動します。

――1月21日に行われたファンミーティングのフリートークでは、奥様のクエムさんもイラストレーターとして活躍していることが語られました。普段からお互いにイラストに対してアドバイスを行ったりするようなことはありますか。

キム・ヒョンテ氏:妻に関して言えば、まず私は会社では当然社長として職務をこなしますが、彼女からすると家に帰ってもその社長がいるわけですから、気が休まらず大変な苦労をかけてしまっていると思っています。

イラストのアドバイスなどは、ほとんど毎日お互いにしていますね。あとは、私が会社では自分の絵を描く時間がないため、自宅に帰ってから遅いときは翌日の早朝まで絵を描いていることはありますね。

――現在でも落書きのように、趣味のイラストを描くことがあるのですね。

キム・ヒョンテ氏:昔はそうした気持ちで描くことが多かったです。しかし、今は描いているうちに「この子は『デスティニーチャイルド』の中でこんな役割をしてもらうといいかも」というふうに、最終的に仕事に結びついてしまうことがほとんどですね(笑)。

――そうしたところから新しいアイディアが生まれるというのも、ユーザーからするとかなり興味深いお話ですね。ちなみに、描いていて楽しいキャラクターと、デザインを決定するまでに難儀したキャラクターはなにかありますか?

キム・ヒョンテ氏:自由に描けたと思うのは、「モナ」「リザ」「ダビ」の主要3キャラクターと、あとは「マアト」を描く時はとても楽しく描けていました。キャラクターのデザインについてはiOS/Android版ではユーザーの年齢などを意識した調整が施されておりましたが、DMM GAMES版では本来の魅力が十分に伝わるような姿に変化します。

――丁度DMM GAMES版(PC版)のお話があがりましたが、DMM GAMES版ではモーションの動きの幅や衣装そのものがより大胆に変化するのでしょうか。

キム・ヒョンテ氏:そうですね。よりオリジナルに近い表現ができると思います。

――UIについての変更はどうなっていますか。

キム・ヒョンテ氏:UIそのものは基本の形と変わりませんが、UXの部分に変化があると思います。大きなところだと画面の比率ですね。

――DMM GAMES版は縦表示になるのでしょうか。

キム・ヒョンテ氏:基本は縦長になりますが、ユーザーさんはさまざまな規格のモニターを持っていると思うので、なるべくどんな環境でも快適にプレイできるようにしたいと思っています。

――設定によって各々独自にカスタマイズできるのでしょうか。

キム・ヒョンテ氏:そうですね。

――ファンミーティングではコスチュームが変更可能になるキャラクターも発表されましたが、今後こうしたキャラクターを増やしていく予定はありますか。

キム・ヒョンテ氏:それについては今後も積極的にやっていきたいと思っています。ユーザーさんの立場からすると、自分が持っているキャラクターの外見が変わったり、また新しいものになってほしいという要望があるでしょうし、徐々に対応していければと考えています。

また、まだ確定ではないのですが、“どうしてこの外見(コスチューム)になったのか”という背景が分かるようなサイドストーリーも追加していきたいと思い、現在アイデアを練っています。

――今回、コスチューム以外にも職業そのものも変化するキャラもいますが、こちらにもそういったストーリーというのは用意されるのでしょうか。

キム・ヒョンテ氏:職業なども変更されるキャラクターは、既存の同一キャラクターとは全く別のキャラクターとして実装されます。ファンミーティングで発表されたのはデメテルとマアトですが、2人は人気が高いもののストーリーが短く、少し残念に感じられた方もいると思います。なので、こういう形で実装することで、より魅力を深掘りできるようになると思います。

――この2人は、今後実装される新ストーリーにおいて重要な役割を担っているとファンミーティングでお話されていましたが、新ストーリーについて何かお話しいただけることはありますか。

キム・ヒョンテ氏:それについてはゲームの中で紹介できればと思います。

――韓国版では温泉機能というものが実装されていますが、日本版でも実装の予定はありますか。

キム・ヒョンテ氏:より詳しい内容についてはまた後日発表できればと考えていますが、日本の温泉機能と韓国の温泉機能では、システムの面で少し異なるものになると思います。

――全く違うものというより、日本向けにアレンジしたものになるということでしょうか。

キム・ヒョンテ氏:ゲーム的には、全く違うものになるかもしれません。

――では、最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

キム・ヒョンテ氏:私は、ソーシャルゲームとは生活と密接な関係があると思っています。私は日本の漫画やアニメから、日本の文化についてはある程度触れてきました。しかし、皆さんの生活までは分かりません。なので、私なりに精一杯のことをやりましたが、最初から完璧なものを提供することはできませんでした。それでも、もっと皆さんの近くに歩み寄れるように日々精進することが私のやるべきことだと思っています。

これからもより良いものをお届けできるよう、諦めずに粘り強く努力を続けていきたいと思っていますので、温かく見守っていただければと思います。

――ありがとうございました。

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