9月18日にPatch4.4「狂乱の前奏曲」が実装される「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」(以下、FFXIV)について、本パッチで追加される要素についてプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを行った。
Patch4.4「狂乱の前奏曲」では、ガレマール帝国内部へと視点を向けたメインストーリーが展開される。消えた皇太子ゼノスの遺体。帝国内部で暗躍する「ゼノスの顔を持つ男」。そして、不可解な事象の裏に介在するアシエンの影。新章へと向けた始まりの物語が幕を開ける。
また、レイドコンテンツである「次元の狭間オメガ」の最終章となる“アルファ編”も実装。数々の強敵を生み出してきた最強の兵器であるオメガとの直接対決がついに実現する。
四聖獣奇譚からは新たな聖獣・朱雀が光の戦士たちと相まみえる。そのほかにも、ハウジング関連にマネキンなどの新たなシステムが追加。生活系コンテンツのさらなる拡充も図られるPatch4.4「狂乱の前奏曲」のことについて、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏に訊ねた。
アシエンの秘密も徐々に明かされていく“前奏曲”
――また新たな展開を予感させる終わり方をしていたPatch4.3のストーリーでしたが、今回Patch4.4「狂乱の前奏曲」におけるメインストーリーのあらすじと見どころを教えてください。
吉田直樹氏:今回は「紅蓮のリベレーター」というお話が完結し、次の新しいシーズンに向けての“第0話”になります。そのためインタビューでは語りにくい部分はあるのですが、「狂乱の前奏曲」では「紅蓮のリベレーター」完結に伴うエピローグの部分と、新章突入に伴うプロローグ部分がミックスされているような印象を受けると思います。ですので、かなり緩急激しいメインストーリーになっているはずです。
そうした背景から、できればですが、メインストーリーについては細切れに進めるのではなく、ある程度時間を取って一気に進めてもらえればと思います。そうしたほうが、より没入感があると思います。
――トレーラーを見て気になったのですが、サドゥやマグナイなど、これまで登場したキャラクターたちが総登場するような演出が印象的でした。
吉田氏:そうですね、その2人についても、今回メインストーリー絡みで再び登場します。これまで旧FFXIVからスタートし、新生してからはガレマール帝国軍の第XIV軍団長のガイウス・ヴァン・バエサルという男にフォーカスし、その後はドラゴンをキーワードに蒼天のイシュガルドが紡がれ、紅蓮編ではかねてからの脅威であったガレマール帝国軍の、その支配下に置かれているアラミゴと東方地域が舞台となり、これまで散りばめられてきた重要なキーワードもいよいよ残り少なくなってきました。
ただその残りのキーワードにも、いきなり踏み込むわけにはいきません……4ヶ国連合に新たにアラミゴ解放軍と、そしてトレーラーにも少し映っていましたがドマも接触をはじめ、“いよいよ新しい展開が始まるのかな”という期待感が、まずは最初の見どころになるのではないかと思います。
――ここでまた新しい目的が明示されるわけですね。
吉田氏:それと共に、これまで伏せられてきた真実やキーワードがズバッと飛び出したりもします。あまり引っ張るつもりのない伏線は、ここですべて明らかになっていきます。ですので、プレイヤーの皆さんがどう反応するのか楽しみでもあり、怖くもあります。
あとは、トレーラーの最後に「今再び、霊災のとき」というセリフが入っています。奇しくも旧FFXIVから“第七霊災”というものが発生し、新生FFXIVが出てから5年が経ち、物語上も“第七霊災”から5年の時を経て新生のお話がスタートしました。“5年”という数字が偶然にも符合したこのタイミングで、“新たな霊災”というキーワードが出てくるので、ここにもぜひ注目して遊んでもらえると嬉しいですね。
――Patch4.3にて、ドマにおける争乱は一旦幕を閉じたように思えます。特に、ヨツユの物語はFFXIVの中でもかなり異色というか、多くの人に衝撃を与えた内容だったと思いますが、プレイヤーの反応はいかがでしたか。
吉田氏:僕を含めたシナリオチームも、かなり難しいテーマに直球で挑めたかなと思っています。当然、僕らはPatch4.3の結末を決めた上で物語を書いているので、最初のうちは「記憶を失って生きてるのはちょっと……」とか「だからって許すことはできない」という声もいただいていました。僕らは僕らが書き切ろうとしていた結末に向かって走っていたので、その辺りも含めて、パッチ4.3で描かれた結末は、上手くプレイヤーさんの感情を揺さぶれたのかな、とは思います。
ヨツユのお話は、なかなかビデオゲームというジャンルでは表現し辛い内容だったと思うのです。また、そのお話の中で起こる機微のようなものは、海外の方にはニュアンスが伝わりにくいかもしれない、と考えていました。ところが、海外の方にも非常に高い評価をいただけたのは、とても嬉しいことでした、先日のgamescomでも7、8メディアくらいの方から「シナリオとバトルコンテンツの融合は、FFシリーズの中でも1、2を争う出来だった」とお褒めの言葉を頂戴しました。
――ヨツユの話にもかかる部分ですが、今回カットシーンでは血の描写も激しくあり、こうした表現の部分もまた一歩踏み込んだように思えました。
吉田氏:特に狙ったわけではなく、今まで通りギリギリを攻めているだけです。FFXIVは戦記物語に近いお話になっているので、現状の取得レーティングで表現できるギリギリのラインで描写しています。本当はもっとやりたい気持ちはあるのですが、それは残虐にしたいという意味ではなく、戦争である以上、痛みを伴う場面は絶対にあるわけで、そうした時に絵がチープに見えてしまうのが嫌なのです。痛さを感じられないというか……。ただ、現状は幸いにもそうした批判はなく、こうした難しいテーマのシナリオにも、正面から挑んで体験をご提供できているかな、と思います。
――「蒼天のイシュガルド」のストーリーも、「紅蓮のリベレーター」のストーリーも、どちらも非常に完成度が高い内容だと思います。そのうえで、現状どちらの方が人気が高いですか。
吉田氏:当然、個々人の好みにもよると思いますが、日本では蒼天のほうが、若干人気が高いように感じますね。海外からは紅蓮をたたえてくださる声が大きかったです。
――国ごとにそうした反応が違うのは面白いですね。
吉田氏:そうですね。「紅蓮のリベレーター」リリース前のファンフェスで「アラミゴの奪還を目指してもらいます」と発表した時、やっぱり海外の人たちは「俺たちの手でアラミゴを助けてやろうぜ!」という反応がすごく強かったのですが、日本では「アラミゴを助けるの…?」「あの人たちあんまりいい人じゃないし…」みたいな反応が多くありました。この反応自体は予想していて、だからこそ紅蓮には東方地域を含むことにしました。ストーリーを含め、こうした部分は世界中のプレイヤーの反応を予測しつつ作っていかなければいけないと思っているので、そういった意味では今回は上手くやりきれたのではないかと思います。
――「紅蓮のリベレーター」では、キャラクターたちの人物像が綿密に描かれているのも魅力の一つだと思います。だからこそその後の展開が気になるところですが、これから先、例えばゴウセツの巡礼の旅の内容が語られるようなことはありますか。
吉田氏:よほどのことがない限り、本編では触れないと思います。野暮かな、と思っていて。その先はプレイヤーの皆さんの想像に委ねるのが一番かな、と。もしかしたら、サイドストーリーとして“紅蓮秘話”に近い形で何らかのお話をお届けすることはあるかもしれませんが、実現したとしてもそのレベルですね。
彼がひょっこり帰ってきて戦線に復帰する、ということはやらないと思います。ゴウセツの性格だったら無縁仏の横で大往生するかもしれないし、そうはいってもあのゴウセツが簡単に往生するわけもなく、最後の最後はやっぱりシュン坊のところに戻ってきて……と、そういうのも良いと思います。あとは皆さんの二次創作というか、それぞれが想像する最後で良いと思っています。
――そこはプレイヤー一人ひとりの結末に委ねるわけですね。
吉田氏:そうですね。何にでも答えを出すことが、必ずしも良いことではないと思っているからです。
――メインビジュアルでは、帝国側の人物たちの中にアルフィノが混ざっているのが印象的でした。これには何か特別な意味が込められていたりするのでしょうか。
吉田氏:毎度のことですが、新しいメインビジュアルはいろいろなところで広告として掲出されるので、本当ならばもう少し華のある絵にしたほうが、特に新規の方には分かりやすくて良いと思うのですが……僕らとしては、今回いよいよ残ったキーワードである“ガレマール帝国”というものに、真正面から取り組みますという意志の表れにもなっています。ですので、絵面としてはオッサンだらけのいささか渋い路線にはなってしまいますが、ガレマール帝国の主要人物を配置しました。
その際、現在のアルフィノの立ち位置を考えると、彼は今、そのちょうど中間点にいる。彼は帝国側の人間ではないものの、少なくとも今はマキシマと“影の狩人”と行動を共にしていて、かつ帝国支配領下で動いている。であれば、そちら側に配置するのがベターだと思いました。あとはその方が、皆さんがざわついてくれるかな、と……(笑)。
――すごく心配になりました(笑)。
吉田氏:それに、アルフィノを抜くと本当に“ドキッ☆オッサンだらけのパッチアート”みたいになってしまうので(苦笑)。アルフィノの表情については何度かリテイクを重ねました。泣き顔になりすぎるのも良くないし、死相が出てしまうのも良くないし、ギリギリのラインで調整してもらいました。
――Patch4.0のラストにて、ヴァリス帝と白法衣が話しているカットシーンがありました。その際、白法衣が仮面を外し、その顔を見たヴァリス帝が驚く場面がありましたが、あれは白法衣=ゼノスということだったのでしょうか。
吉田氏:その答えも、Patch4.4を見ていただければ分かります。ぜひその目でお確かめください。
――Patch4.3のラストで登場したガンブレードを使う新キャラクターですが、彼とのイベントバトルではかつて光の戦士が戦ったガレマール帝国軍の第XIV軍団長ガイウスを彷彿とさせる技がいくつか見受けられました。このガイウスについてですが、現在のエオルゼアの中で、彼は戦死したことになっているのでしょうか。それとも、生死不明という扱いなのでしょうか。
吉田氏:エオルゼアでは、諸説あるのではないでしょうか。ゼノスが光の戦士からすると自害したように見えていたものが、帝国側ではただ負傷しただけだと言われていたように、ガイウスについても目撃者は光の戦士しかいません。あの爆発であればおそらく死亡したのだろうという報告はしていると思います。遺体は見つかっていませんが、爆発に巻き込まれたのであれば焼失している可能性が高いわけで……ですので、国によっては「ガレマール帝国軍 第XIV軍団長“漆黒の王狼”ガイウス・ヴァン・バエサルは死んだ」と報じている地域もあれば、生死不明として扱っている地域もあるんだろうと思います。
――“影の狩人”と名乗った彼は、アルフィノに向かってアシエンの仮面を見せました。まだまだ謎の多いアシエンという存在ですが、彼らは“超える力”のような特別な力が無くとも倒せるものなのでしょうか。
吉田氏:アシエンという存在には“オリジナル”と“転生体”という2つ以外に、完全に下級のアシエンというものが存在しています。この下級アシエンは、実は2.X時代から登場していて、極蛮神系のクロニクルストーリーにて各地の蛮族を焚きつけて回っているのも下級アシエンです。極端に特別な力がなくても“狩れる”レベルのアシエンはいる、くらいに考えていただければと思います。
オリジナルや転生体のアシエンについては、常人では難しいでしょう。ムーンブリダが考案した特別な技術を用いたり、光の戦士のようにエーテル波動を扱えるような特殊な力がないと、真に彼らを消滅することはできないと思います。
――その仮面の色についてもお聞きしたかったのですが、“影の狩人”が腰に下げていた仮面は赤と黒の2色ありました。これは下級と上級のような、アシエンの位によって色が異なってくるということでしょうか。
吉田氏:その秘密についても、今はまだあまり語りたくないです……。ただ、それらの疑問についてもこれから真っ向から挑んでいくので、そう遠くないうちにアシエンに関する疑問は解けていきます。アシエン関係のお話が気になっている人は、ここから楽しみにしていただければと思います。
――個人的にサンクレッドの動向が気になります。これまでミンフィリアやヤ・シュトラ、リセなど、暁の面々が順々にフォーカスされてきましたが、そろそろ彼の活躍も見られそうでしょうか。
吉田氏:サンクレッドは、Patch3.4にてミンフィリアが旅立っていったことを契機に、彼の中で一つのスイッチが入ったように思います。サンクレッドの生い立ちや、本当のところの心情などは、いずれかのタイミングで深掘りしたいと思っています。おそらく、プレイヤーの皆さんもサンクレッドが一番分からない存在なんじゃないかと思っています。ヤ・シュトラは意外とマトーヤのおかげで補強されたように思うので、彼の物語も今後しっかり描いていきたいですね。中村さん(サンクレッドのCVを務める中村悠一さん)からも「いい加減サンクレッドにそろそろ何かないんですか?」と言われているので……(笑)。
十字なのか南なのか、クロスさせるか近くの円に入るか
――まずは「次元の狭間オメガ零式:シグマ編」を振り返ったお話をお聞かせください。零式4層の踏破者の数や攻略にかかった時間など、開発的に手応えはいかがでしたか。
吉田氏:とても上手くまとまったと思っています。皆さんもレベル70になったジョブの扱いに慣れ、きっちり結果を出してくださったなという印象です。実はこの1、2週(インタビュー実施日:9月5日)の週末になんとか時間を作って、生放送「吉P散歩」用のキャラクターで「シグマ編零式:4層」に通っているのですが、募集の数を見ていてもシグマ編がリリースされる直前の「デルタ編を駆け込みでクリアしたい!」という募集の数に比べて、今回は皆さんクリアしてしまっているのか、そういった募集の数が少ない印象です。
――シグマ編のほうが踏破者の数が多い印象ですね。
吉田氏:そうですね。4層以外の募集を殆どお見掛けしないので、みんなクリアしているんだな、と思っています。
――難易度的な話になると、零式:シグマ編2層(チャダルヌーク)がやや簡単すぎるように感じました。
吉田氏:木人ですからね……。ただ、得意不得意はあると思っていて、1層は「~しながら~する」という方向性で、正直なところHP調整はかなりガバガバになっています。ですので、焦って攻撃しなくても余裕で倒せるようになっているのですが、ちょくちょく幽霊に吹き飛ばされたりする人もいますからね……。
――個人的には1層のほうが難しかったですね。
吉田氏:2層はきっちりと火力を出せる人がいれば、意外とあっさり抜けられます。その代わりというか、やっぱり3層で詰まる人は多かったですね。
――1、2層がすんなり通りやすい分、3層の壁が顕著だった印象でした。
吉田氏:今は基本的に1と2層はがんばればクリアでき、3層が壁になるという方針にしていますので、良い結果かなとは思っています。
――アルファ編もその流れは続く予定ですか。
吉田氏:そのつもりではあります。一方で「次元の狭間オメガ」のストーリー自体が、オメガが自己強化するためのトーナメント戦をやらされているという構図です。最終章となる今回のアルファ編では、光の戦士たちはこれまでデルタ編、シグマ編とそのトーナメント勝ち進んできたわけです。ということは、当然逆ブロックから同じように勝ち抜いてきた者たちとぶつかるわけで、つまり設定としては、今回戦う相手はこれまでよりもはるかに強い相手になっているはずだと……。
――自然と今までよりも強敵でないといけませんからね。
吉田氏:ケフカと比べると……うーん、でも1層だし……と、いろいろ悩みはしましたが、難易度的にはいつも通りくらいには落ち着けたかなと思っています。ただ、「次元の狭間オメガ」の最終章でもあるわけですから、特に2層の先からはしっかり手ごたえのある難易度になっています。できる人はすんなりと通過できると思いますが、得意不得意が分かれやすい作りですので、焦らず取り組んでいただきたいですね。
――ちなみに、トップ層のプレイヤーは初週でどのくらいまで進んでくると思いますか。
吉田氏:うーん、もうわからないですね。そして、想定もしていません。絶のおかげでトップ層のプレイヤースキルの上がりっぷりが凄まじいので、もう日付などはあまり気にしていないです。シグマ編よりは短くないといいな、くらいの感覚です。今は絶があり、零式は最高難易度のコンテンツではなくなっているので、それより短くクリアされて当然かなと思っています。
とはいえ、零式であることに変わりはないので、レイドの後半は特にご注意ください。激しい戦いになります。
――やっぱり今回も、3層はストッパーになりますか。
吉田氏:3層は制作に苦戦しました。ドイツから帰った翌日に零式全層のチェックを行い、1層からその場でギミックを説明してもらってプレイするというのを繰り返していたのですが、どうしても僕の中で3層が腑に落ちなくて……フェーズを丸々一つなくすような、かなり大掛かりな手の加え方をしました。今まで(デルタ編、シグマ編)のような作りではないので、そこもまた楽しみにしてもらえればと思います。
――零式:シグマ編4層は程よい忙しさで、戦っていて非常に楽しかったです。またバフを合わせるだけでなく、ボスの位置取りによって攻略の難度が変わるMTならでは仕事などもあり個人的には嬉しかったのですが、アルファ編でもこうした内容は引き続きあるのでしょうか。
吉田氏:零式:シグマ編4層と零式:アルファ編最終層は制作担当者が同じなので、やっぱり傾向はありますね。
――零式:シグマ編4層では、これまで以上にさまざまな攻略法が編み出されてきました。特に、海外と日本ではギミックの処理方法が大きく異なる場合もあります。JPサーバーで主流の、いわゆる“縦/DHD/十字”という処理方法は、開発的には想定されていた処理方法でしたか。
吉田氏:「縦」はケフカを殴る時間を稼ぐため、もう少し別の方法でしたが、縦とそこまで大差はないです。位置取りだけですね。それ以外はほぼ想定通りです。
――妖星乱舞の処理には南処理方法もありますが、こちらはどうでしたか。
吉田氏:特にこれに落ち着くだろう!という意図はなく、ひとまず開発では十字、くらいでした。妖星乱舞はジョブによったりすると思っていたので、十字が流行ったのは広く一般的ならそうかな、という感じです。
ただ、DHDの時のマッドヘッドの線の処理だけは、不安定な方法が定着したな、とは感じています。開発チームというより、あくまで僕個人の意見ですが、最も火力を出さなければいけないDPSの4人が、アドリブ判断が必要で移動量も多く、メレーDPS同士が被った時はどちらかが殴りにくくなる……という今のDPSペアがすれ違う方法が定着したのは、理由が良くわからないですね(笑)。
――吉田さんは確か、線をクロスさせる方法を推奨されていましたよね。
吉田氏:中国でもクロスでしたね。中国はむしろこれ以外が存在しない。安定感が高いのはクロスだと、今でも思います。繋がった線の最も遠い円に入り、線が北から繋がっているなら円の北側へ、南からなら南側へ移動するだけで、あとは動く必要もなく、どっちが外に行くなどの打ち合わせもなくDPS4人が殴り続けられる方法です。マッドヘッドの移動距離が長くなるので、立ち止まっていてもマッドヘッドが到達するころには範囲ヒールが効果を発揮しますし、移動もないので範囲ヒールから漏れることもありません。ヒーラーはケフカの真下へ、タンクはやや下がって北側のマッドヘッドをかわすだけになります。ほぼ事故が起きません。
日本の皆さんのマクロを作る技術というか、誰でもできるようにきっちりテンプレ化する技術は世界で最も優れていると思います。だからこそ、あれだけ完璧にマクロが作られているのに、あそこだけどうして……と5年運営してきて、はじめて思いました(笑)
――線がクロスしていると、当たりそうで怖い気はしますね。
吉田氏:よくそう言われますが、ヒーラーはケフカの真下で範囲ヒール。タンク二人は少し北へ引けば当たりません。この方法は「吉P散歩」でも言ったことがあるのですが、それでも浸透しませんでしたね(笑)
――クロス処理は野良だと全く見ませんね。
吉田氏:固定ではそこそこ見かけるんですが、むしろ野良でこそ流行りそうな気がするんですよね。一番最初に流行った攻略方法だとしても、今までは時期が経つに連れて効率的な方法に修正されて定着していったので、今回はちょっと驚きました。
――14時間生放送のプロデューサーレターLIVEにて、「ファイナルファンタジー」よりカオスの実機映像が公開されました。カオスといえばガーランドと関係が深いキャラクターですが、今回彼と戦う可能性はありますか。
吉田氏:そこはあまり深読みせず、あの映像の通りに受け取っていただければ問題ないと思います。そもそも、オメガというのが別時空・別空間・別時間軸から、勝手にエーテルを使って創造したもの同士を戦わせているだけで、エクスデスにしろケフカにしろ、本物ではありません。所詮、オメガが計算で作り出したものであって、そこは根底からブレることはありません。なので、あまり元のシリーズに引っ張られないほうがいいと思っていて、僕らもそれだけは絶対しないようにしています。
――個人的にオメガと直接戦いたかったので、トレーラーでその姿を確認できて安心しました。
吉田氏:あれは少なくともプライムではない、とだけ言っておきます(笑)。
――そういえば、今回も零式はほかのコンテンツと同タイミングで、パッチが当たったらすぐに開放されますよね。
吉田氏:はい、すべて同時です。これは以前にもご説明したのですが、零式の実装を少し遅らせてほしいというフィードバックがあるのは知っていますし、その逆の意見があるのもまた知っています。このことについて応えようとしていないわけではなくて、一度しっかりご説明したのですが、おそらく新規のプレイヤーさんが増えてきていることもあって忘れられているのだと思います。
改めてご説明すると、アイテムレベル(以下、IL)というのは、拡張開発の時点で2年くらい先までバランス設計を終えています。どのタイミングでコンテンツを開放して、どのタイミングでILのキャップを開放して、どのタイミングで新式装備を出し、どのくらいの強さにするというのは、コンテンツがどうあれ年単位で設計しています。これがもし仮に、僕が「いいから零式を2週間遅らせよう」と決定した場合、ただコンテンツの開放時期がずれるだけでは済まず、周辺にあるアイテムの排出や強さ、コンテンツ自体の難易度に致命的な変更を与えてしまいます。
Patch4.4にてまた週制限トークンが更新されますが、例えば零式を2週間ずらすと、トークンで高いアイテムレベルの胴装備が入手できてしまうんです。そうなると新式装備を買う人の数も少なくなるでしょうし、零式もトークン胴装備があることを想定して調整することになります。また、その場合報酬のアイテムレベルも見直した方が良いのではないか?ということになり、周辺にあるものをすべて変更する必要が出てきます。
――目先の問題だけではないというわけですね。
吉田氏:では、Patch3.0や4.0のタイミングで何故それがやれているかと言うと、それよりも相当前に準備を進めているからです。レベリングがあり、メインシナリオが終わるまでの時間を確保し、その分だけ週制限トークンや新式装備を入れるタイミングを計画的にずらしています。この設計をパッチ運用中に大きく変えること自体は可能ですが、先ほどもお話しした通り、影響を及ぼすのがレイドに挑戦している人たちだけに留まらなくなるんです。クラフターの新式の売り時というのもしっかりと作って上げなければなりませんし、極蛮神武器のアイテムレベルにも変更が必要かもしれない。レイドのためだけにそれをやるには、あまりにもリスクが高く、時間が足りないのです。
そのため申し訳ないのですが、メジャーアップデートのタイミングではそこまでのことはできません。もしこの設定を変えるとしたら新しい拡張以降の話になります、ということなのです。できないとも、やらないとも言っているわけではなく、ゲームの根幹に関わる部分なので、今のタイミングでは、おいそれとは手が出せないというわけです。皆さんのお声はしっかり受け取っていますので、今後しっかり考慮していくつもりです。
――続いて「朱雀征魂戦」についてお聞きします。今回、導入はメインクエストからの分岐となりますか。
吉田氏:いえ、違います。メインクエストとは別ですので、パッチが当たったらすぐに開放できるようになります。
――攻略する上でのキーポイントは何かありますか。
吉田氏:足元と周りをよく見ましょう、ですかね! あとはデプラスマンには気を付けて(笑)。
――今回も報酬は武器になりますか。
吉田氏:武器です。零式を攻略する人はまず朱雀を周回して武器を取るか、新式武器を禁断するか、どちらかしてから挑戦した方がいいと思います。
――Patch4.4ではピュアDPS2職(黒魔道士、侍)の火力が引き上げられるとのことですが、これは単純にスキルの威力が上がるという調整なのでしょうか。
吉田氏:そうです。侍はコンボ威力が上昇し、黒魔道士は単純にとあるアクションの効果が上がるので、総火力が向上します。
――より扱いやすくなるような調整は今回入れてありますか。
吉田氏:そちらのほうはないです。今回は単純に火力だけです。
――ジョブ調整に関連して、現状STという役割の適性が、ナイトが頭一つ抜けているように思えるのですがいかがでしょうか。
吉田氏:うーん……どうでしょう。個人的には今の戦士のポテンシャルは非常に高いと思っています。現状、暗黒騎士がMTをやるなら戦士でもナイトでもSTはやれると思いますし、戦士×ナイトの組み合わせだったら確かに戦士をMTにするパターンのほうが多いんだろうとは思います。ナイトはホーリースピリットがある分、距離があっても火力を出せる柔軟さがあり、かばうを使って一時的にダメージやデバフの肩代わりができる。シグマ編は特にそうかもしれません。
――データ的にそういった傾向があるわけでは特にないのでしょうか。
吉田氏:気楽に野良で零式に行かれる方には、その傾向がやや強い気はします。固定かそうでないかでかなり変わってくる部分だとは思います。僕のところは、MT暗黒でST戦士ですね。
――インターベンションやかばうといったスキルも相まって、ST枠が推奨されている傾向があるように思います。
吉田氏:そうですね。推奨はしていないので、皆さんの使いこなしの成果だと思います。
――ふと思ったのですが、零式におけるタンク2構成を変えようと思ったりしたことはこれまでにあるのでしょうか。
吉田氏:それはないです。仮にタンクが一人だった場合、つまらないバトルになると考えています。スイッチについてもタンクが二人いるからスイッチをさせているわけではなく、タンクというロールに対して遊びを提供しようと考えた時に、パートナーがいないとボスを引っ張りひたすらヘイトを維持して防御バフを使用するという遊びにしかならなくなってしまうんです。
タンクが二人いるからこそスイッチのような遊びが可能で、片方のタンクが耐えている間にもう片方のタンクがギミックをこなしたり、ヘイトを入れ替えることでアドバンテージを作ったりするようなことができるので、この構成を変えようと思ったことは1度もないですね。
――ハウジングに新たなアイテムとしてマネキンが追加されますが、これはクラフターの新しい製作アイテムとして実装されるのでしょうか。
吉田氏:いえ、ハウジングエリアにいるよろず屋NPCや、配置できるよろず屋使用人NPCから購入することができます。
――購入できるんですね! それは意外でした。では、最後にプレイヤーさんに向けて一言お願いします。
吉田氏:14時間生放送も終わり、僕らの中でも5周年気分はすっかり抜けました。6年目として、このPatch4.4をリリースして、いよいよ次の展開へ引き上げて行こうという意識のほうが強くなっています。本当にこの5年間はいろいろなことがありましたし、新生したとはいえ初期の頃はまだまだ脆弱でした。でもこの5年間は本当にたくさんの世界中の光の戦士の皆さんに支えられ、現状では基本的なMMOの仕組みやPvEコンテンツというものは、一旦ベースは完成したと思っています。もちろん、まだまだ足りないと感じる方はいらっしゃると思いますが、俯瞰して見た時にきちんとレイドがあり、カジュアルに遊べるコンテンツがあり、エウレカのような新しいチャレンジもできている状態なので、ここから先はもっとFFXIVでしかできないことを充実させていこうと思っています。
例えば楽器演奏であったり、グループポーズの機能拡充であったり、今回導入するハウスアピールやマネキンによってお店屋さんをロールプレイすることもできるようになります。FFXIVという世界に住むこと、暮らすことというのを、より広げていきたい。ここに到達できるMMORPGは、世界を見ても数が少ないと思います。
だから、ここから先はバトルやシナリオはもちろんのこと、今まで手が回らなかったそういった部分に力を入れていきます。「FFXIVでしかできないよね」「FFXIVってなんでもできるよね」と思ってもらえるような、ほかのタイトルに追いつくのではなく、今度は引き離しにいく、6年目7年目はそういう姿勢で進んでいければと思っています。その第一歩が今回のPatch4.4になります。メインクエストやレイドなどにどうしても目を引っ張られがちになりますが、そうした準備はもういくつか進めていますし、システムも今後入っていくと思います。どちらの面も楽しみにしていただけると幸いです。
いよいよファンフェスティバルも始まります。Patch4.4から北米ファンフェスが開幕し、その次のPatchからヨーロッパ、そして日本と続いていきます。それ自体もリアルと連動した一連のストーリーとして感じられるよう僕らもイベントを企画しているので、ファンフェスもFFXIVの一部だと思って楽しんでもらえたら嬉しいです。新章にぜひ、ご期待ください。
(C) 2010 - 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. LOGO ILLUSTRATION: (C) 2010, 2014, 2016, 2018, 2021 YOSHITAKA AMANO