「FFXIV」が目指す次の10年とは?パッチ6.1以降のコンセプトや気になるグラフィックスアップデートについて吉田直樹氏へインタビュー

スクウェア・エニックスがサービス中のMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」。2月19日に配信された「第68回 FFXIV プロデューサーレターLIVE」にあわせてメディア合同インタビューが行われた。

2月19日に配信された「第68回 FFXIV プロデューサーレターLIVE」では、サービス運営について次の10年を見据えた開発指針と、次期拡張パッケージとなるパッチ7.0へのロードマップが公開。“ひとり”でも“みんな”でも遊べるRPGへの更なる進化や、グラフィックスアップデートの開発進捗、本作を無料で体験できる「フリートライアル」の配信が2月22日から再開されることなどが発表された。

今回、これにあわせる形でメディア向けの合同インタビューが行われ、「ファイナルファンタジーXIV(以下、「FFXIV」)」の見据える今後について、さらに深く掘り下げて聞くことができた。

「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏。

――「FFXIV」は約10年という年月をかけて1つの長い物語を完結させました。パッチ6.1以降は、また新しい冒険が待ち受けているのだと思うのですが、新しいストーリーも同じようなスパンで展開していくのでしょうか。あわせてストーリーのコンセプトもお聞かせください。

吉田氏:コンセプトという意味で言えば“冒険”です。今は“英雄”や“光の戦士”という肩書きが付いていますが、改めて一人の冒険者として色々な謎に向かっていく冒険をお届けしていきたいと思います。

今回「ハイデリン・ゾディアーク編」が完結しましたが、この名称はパッチ5.0くらいから急に言い出したものです。正直、パッチ2.0、パッチ3.0を作っている時に「ハイデリン・ゾディアーク編」だなんて思って作っていたかというとそんなことは無いんですよ。なので、この先も同じ長さでサーガを描くかどうかは分からないです。これは正直に言いますけど、「暁月のフィナーレ」でありとあらゆる伏線は回収してしまっています。ただ、世界には横たわる謎みたいなアイデアはありますし、それらを描いていく過程で、「ああ、これは一つの大きな流れにしても大丈夫だな」となったら舵をそちらに切っていくことになると思います。

正直前半は僕たちにとっても、また一つ一つの物語を全力でお届けするというコンセプトに立ち戻るつもりでいます。「漆黒のヴィランズ」や「暁月のフィナーレ」は、長年続けてきた物語の解答編をコストをかけて叩きつけたからこその衝撃になっていると思っていて。じゃあそれが、パッチ7.0で同じくらいの物語になるかというと、やはり積み上げが必要になると思っています。

とはいえ、ゲームとして満足いく内容にするというのは、僕たちが目標にしているところですので、それを達成できるように、プレイヤーの皆さんと一緒に河原で石を一個づつ積み上げていって、「どこまで高くできるか、一緒にやっていこうぜ」というのが今の気持ちです。

――ここ数年で大きく変わった流れとして「ストリーマー」という存在があると思います。配信をする上でのオプション対応などをゲーム内に用意する予定はありますか?

吉田氏:今のところ考えていません。例えば他人を表示しないオプションを配信用に用意したとして、人がいないMMORPGを放送することができてしまいます。変なネガキャンに使えてしまうこともあるので、僕は正直オプションに関してはポジティブではないです。

大人気なストリーマーさんの配信で人が集まってしまうというのは、「スターがわが町にやってきた!」みたいなものなので、そういった案件をご報告いただいたときには注意点を我々からお伝えして、サポートを強化していきたいと思います。

「漆黒のヴィランズ」から「暁月のフィナーレ」に至る中で、海外の大きなコミュニティを持っている配信者さんにこぞって「FFXIV」をプレイしてもらったときに、あまり遮るという行為をする人がいなかったんですよね。コンテンツクリアの場所で待ってクラッカーを鳴らしたり、整列してお祝いしたりだとか。あれが「FFXIV」の持っているコミュニティの温かさだと思っていて、僕はそれを信じたいですし、何かあれば話していく中で解決をしていきたい。なんでもかんでもシステムで封鎖する世界にはしたくないというのが僕の根本にあります。僕も20年以上、アメリカにサーバーのあるゲームで育てられて、本当に色々な人に優しくしてもらって今があるので。

大きくなったからこそやらなければいけない部分があるというのも分かってはいますが、オプションを用意したことで、それを利用しないことが問題になったりということもあると思います。ありとあらゆる方向性を考えていかなければならないのが僕の立場なので、今のところは考えていないです。

――パッチ7.0でもPS4の対応を行っていくというお話がありましたが、どれくらいまでサポートを続けていく予定でしょうか?

吉田氏:まだ分からないです。多くのプラットフォームでサービスを展開して一人でも多くの方にプレイしてもらうというのが「FFXIV」のコンセプトの一つではありますが、ほとんど稼働していないのにサポートを続けるというのはデバック工数などを考えていくと、当然無いわけです。半導体不足の煽りを受けてPS5の出荷台数が伸び悩んでいる現状、パッチ7.0の状況下であればPS5を買いたいけど買えないという人は多いのかなと予想しています。プレイヤーの皆さんに安心して遊んでもらうためにも、今回改めて明言をしました。

もちろん、明言するだけでは意味が無くて、するからにはきちんと計算や処理の選定を行っています。PS4は短期間で開発したということもあり、改めて最適化する余地があることも検証済みです。今動いているPS4での最適化をパッチ6.Xシリーズ中に何段階かに分けて導入し、今の状態から軽く動作するようにした上で、第一次グラフィックスアップデートの機能をPS4にも全て盛り込みます。そのうえで、グラフィックスオプションを増やして、例えば新しく追加されるフォグのレイヤーに関してはフレームレートを優先したい場合は切れるようにします。これが「FFXIV」の基本的な考え方になっています。

今回皆さんにお見せした、テスト期間一か月と一週間のテストデータは、あれが標準だと思ってください。あれ以上のシェーダーをかけていけるのかというのは、何百人もの描画をしてバックグラウンド側の追加処理も入れて、全て最適化をした上で、「ヤバいやり過ぎた」とか、「これはオプションに回さないとダメだ」、というのをこれからやっていきます。ただ全てオプティマイズできるという思想の下に作られていて、それはPS4もPCも変わらずです。

――“ひとり”でも“みんな”でも遊べるRPGへの更なる進化というテーマが発表されましたが、改めてどのような方にプレイしてもらいたいと考えてこのテーマを打ち出したのでしょうか? 例えばいっそオフライン感覚で遊んでもらってもいいよという舵切りなのか、新しく入ってきた方にも最終的にはオンラインのコミュニティにも触れて欲しいという層の広がりを意図したものか、お伺いします。

吉田氏:これは兼ねてからお話していることなのですが、オンラインというかMMORPGの世界には現実では体験したことがないようなカルチャーやゲーム体験が間違いなく存在すると思っていますし、今でも信じています。最終的には、それを皆さんに届けたいという気持ちは何一つ変わっていないです。

ただ、ここまで認知を上げてなおプレイしてもらえないという方には、このままのやり方ではダメなのだろうと。そうなのであれば、例えばコミュニティの皆さんが友達を誘う時に、「シナリオは全部ソロでクリアできるからおいでよ」と、この一言のためだけにやろうとしています。

シナリオを楽しんでいただければ本当にそれでいいです。ただ、その内の何パーセントかの人がふとしたきっかけで友達ができたとか、マッチングでコンテンツに行ってみたら思っていたよりもみんな優しかったとか、最終的にマルチプレイだからこその面白さに繋がってくれると嬉しいです。そういう人たちがまた新しく「俺でもやれたから」と、広めていってもらいたい。それを武器にしてもらいですね。マーケティングPRチームの武器でもあるし、コミュニティの皆さんの武器でもあります。

僕は、このメッセージ性はゲームのジャンルを超えていけるんじゃないかと思っています。最終的には人と遊ぶこと、世界に人がいること、世界が共有されていることの凄さに到達してほしいなと思っています。

正直ネットワークに繋がっていないゲームってもう無いと思うんですよ。なのでオンラインゲームという名前もやめたいくらいです。タイトルも「FINAL FANTASY XIV Online」になっていますが、改めてOnlineを取りたいくらいの気持ちです。

――全メインクエストの必須IDと4人討滅戦がフェイスに対応するという発表がありましたが、フェイスシステム自体のアップデートなども予定されているのでしょうか? またフェイス対応によるIDの難易度調整はありますか?

吉田氏:これはプレイしていただくしかないと思っているのですが、フェイスのAIも強化していますし、スタッフの多くがフェイスのアルゴリズムを書ける準備をしてきたからこそ踏み切れたものなので、内部的なアップデートは非常に多いです。これはパッチ6.0の頃から行ってきたことではあるのですが。とはいえ、皆さんに目に見える形では分からないのではないかなと思います。頭良くなったなとか、躱すようになったなとかくらいでしょうか。

当然それをもってしても対応できないギミックも作ってきているので、それらはフェイスでもクリアできるようにIDのギミックを調整しているものもあります。

――「オーラムヴェイル」の実をとって状態異常を回復するギミックなどですかね。

吉田氏:あそこは必須IDじゃないので対応していないです。残念ながら「オーラムヴェイル」はそのままでございます(笑)。勘違いされがちなのですが、メインストーリーを進める上での必須IDですからね。

――フェイスはキャラクター同士の掛け合いなども魅力だと思いますが、そういったものも新しいフェイスで楽しめるのでしょうか?

吉田氏:有るものもあれば無いものもあります。名も無き冒険者の場合はそこまでしゃべらないですね。あんまりそこで感情移入されても……というのがありますので。名のあるキャラクターが一緒にきたときは話すこともあります。

改めて3月4日のプロデューサーレターLIVE(以下、PLL)でお伝えする予定ですが、「フェイス」というシステム名の呼び方をやめることにします。イメージがこれまでのものに引きずられてしまうので。幻体を育成していく暁のメンバーはフェイスという考え方ですが、それ以外は「ストーリーサポーター」か「ストーリーサポート」という名前にして、あくまで別システムという形に変えていこうと思います。

――グラフィックスアップデートのタイミングで、キャラクタークリエイトの幅は広がりますか?

吉田氏:それはグラフィックスアップデートとは別の問題なんですよ。パラメーターなので通信量の問題が非常に大きく、現段階ではやるともやらないとも言えないです。テストしていく中でしかわからないので。ただ正直、掛け算でやることが増えてしまうので、デザイナーは乗り気ではないです。

どちらにせよメモリも含めた仕様設計にガリガリと絡んでしまうところなので、グラフィックスのアップデートと同時に行うのは作業工数的にかなり厳しいです。

――メインクエストの改修でコンテンツルーレットのメインクエストに対応する2つのIDが大きく変わるとのことですが、これは通常のIDのような、いわゆる3ボス制のダンジョンに変わり、そこに当てはまらないものがクエストインスタンスバトルとして独自に作られるというイメージでよろしいでしょうか。

吉田氏:はい。なので、メインストーリーというルーレットは無くなると思います。普通のIDとしてレベリングに並ぶことになります。

――「魔導城プラエトリウム」では魔導アーマーに乗るギミックなどもありましたが、IDの内容も大幅に変わるのでしょうか?

吉田氏:ごっそり変えています。あの2つのIDは、新生の時にレギュレーションも無視して作っているのですが、二度と遊べなくなってはしまいます。なので、「シドが来るの遅い」って言いながらダンスして待つこともなくなります(笑)。

――ひとりでも遊べるという部分で強化がされますが、例えばスキル回しを学べる「中級者の館」などを用意する予定はありますか?

吉田氏:課題だとは思っていますが、メインストーリーのIDをフェイスで遊べるようになると、自己練習をされる人が増えるんじゃないかと思っています。IDをできるだけ早くクリアしようとするとフェイスにばっかり頼れないじゃないですか。必然的に練習の場が増えるんじゃないかなと。

いずれにせよ正解に近いものを学ぶ機会がゲームの中でシステム上無いと……とはいえ木人はあるのですが。木人はやはりキワにあるので、もう一段何かやりたいというのは話し合っています。

――サポートシステムを使っている時にだけスコアが出るとかはどうでしょう?

吉田氏:「FFXIV」はバランス調整を頻繁に行っているので、それを毎回全てに反映するのか……というのはかなり難しいですね。もちろん開発都合ではあるのですが、そう簡単に準備できないという理由もそういったところにあります。

できるだけフットワークを軽く皆さんのジョブのバランス調整を行おうとしたときに、何かの判定コンテンツを作ってしまうと、ジョブの調整にも影響が出てしまうんですよね。自分たちや皆さんの足枷になるものをおいそれと実装しずらいというのはご理解ください。ただ、課題ではあると認識しているので、頑張っていきます。

――既存IDのサポート対応について、それに伴って「冒険者小隊」はどのような扱いになっていくのでしょうか?

吉田氏:「冒険者小隊」の中身は、フェイスシステムで組まれているガンビットとはまったく別の仕組みで作られています。あれはプランナーがスクリプトで無理やり動かしているものなので、今仮に「冒険者小隊」をアップデートしようとすると、メインクエストIDの改修とカニバってしまいます。

もし「冒険者小隊」をこの先も発展させていくのであれば、全てのフェイス対応が終わったタイミングで、フェイスと同一のシステムに置き換えてしまったほうがいいと思っているので、それまではアップデートを一時止める予定です。ごめんなさい、凄く愛着を持って育成してくださっているのは承知なのですが、いずれ合流させるためにも開発コストはメインストーリーのIDに割り振らせていただければと思っています。

――フィールドオブジェクトの強化なども発表されましたが、キャラクター表示人数も増えるのでしょうか?

吉田氏:減らすことは無いと思うのですが、いたずらに増やしてしまうとグラフィックスアップデートのパフォーマンスチューニングと綱引きになってしまうので、今の数は最低限保持がベースにあります。今以上にたくさん表示して欲しいという声と、表示人数は今のままで個々を綺麗にしてくれという声とだと、後者の方が多いんじゃないかなという気がします。おそらく表示できない場合も、モブハンやユーザーイベント時くらいかなとは思うのですが……。結構難しいのですが、今より下がることは無いと思っていてください。

――PLLではグラフィックスアップデートの例が公開されましたが、その中で印象的だった反応や、発表した際の手応えを教えてください。

吉田氏:まずは一番最初に「疲れた吉田」と呼ばれたフォトリアルの画像を出したときに、「これは無いわ」「そうじゃねーよ」という声がもっと出ると思ったんですよ。そしたら「あ……うん」「……あー、なるほどね」という空気で。僕が「これは違うと思うんだよね」と言った途端に「違う!」となったのが、皆さんめちゃめちゃ優しいなと(笑)。でもあそこは一瞬焦りましたね。「ヤバい、これが良いって言われたらどうしよう」と。

グラフィックスクオリティを上げるときに色々なテクニックがある中で、どこを目指すのかというのは結構難しいんです。今回は僕とテクニカルアニメーターとキャラとBGの各リーダー全員でテストデータを見ながらああだこうだと進めていったのですが、今回のデータは、一般的なフォトリアルでもなければ一目でわかるクオリティの高いCGでもないわけで、「FFXIV」を知らない人からすると「大したこと無いじゃん」って思われる危険性もありました。

ですが、それも良いじゃないかと。皆さんに掛け替えのない自分の分身として扱ってもらっているキャラクターが、「違う、これじゃない」となってしまうことの方がよっぽど良くないので。そこを凄く話し合って作ったので、「良かった」「そうなんだよ、これなんだよ」と多くの方に言ってもらえたのが嬉しかったですね。プレイヤーの皆さんと「コレでいこう!」と握手をできた感覚があったので、凄く良かったです。

PLLで発表されたフォトリアル寄りのテストデータ。
このあと、「ここまでリアルにはなりません」と表示される。
実際のテストデータはこちら。

――グラフィックスアップデートは吉田さん主導で始まったのですか? それともスタッフの間から沸いてきたのでしょうか?

吉田氏:それは僕から言わないとなかなか開発チームからは言えないですよ。個人個人では、「もっとメモリを使いたい」とか「マルチテクスチャを使いたい」とかはありますけど。ただどうしても工数は増えてしまうので、僕から「やるぞ」と。

やっぱり悔しいですよ。他のタイトルが色々な手法やメモリを潤沢に使っている中で、僕たちは長い間ずっとこの手法でしか作れないので。工数が増えることは承知で、「今回やろうと思うんだけど、どうだい?」と聞いたら「やりましょう!」という感じでした。

あとは最初心配されたのは物量でしたね。「その回答をする前に、パッチ7.0で全ての装備のコンバートをする必要があるかどうかを聞かせてください」とか、「NPCを全て新仕様に置き換えるのが必須かどうかと、パッチ7.0の発売イメージを教えてください」とか(笑)。

僕もエンジニアの端くれなんで、それは出来ないこともわかっていますし、パッチ7.0からの新リソースでそっちを対応して、できることから順次やっていこうと。一度に全てできないことは僕からプレイヤーの皆さんに説明するし、プレイヤーの皆さんもそれで良いと言ってくれると思うよと話をしました。

――パッチ6.0で「ハイデリン・ゾディアーク編」が完結したことで、プレイヤーとしてもこれからの方向性がまったく未知な状態になっていると思います。パッチ6.Xシリーズを遊んでいる中でパッチ7.0が地続きで見えてくるのか、それともパッチ6.Xシリーズとパッチ7.0はセパレートされているのか、どちらでしょうか?

吉田氏:いやぁ~、その時次第ですかね……。これは僕、ライブタイトルの良いところだと思っていて、微妙なニュアンスは皆さんの反応を見ながらダイレクトに脚本を調整していくんですよ。僕の中ではパッチ7.0のトレイラーが少しずつ動き始めているんですけど……どうだろうなぁ(笑)。とはいえ僕のこの表情を見ていただければ、「こいつまた楽しそうに、なんか作っているな」というのは感じてもらえると思うので(笑)。

もちろん、どのような反応になるか怖い部分もあります。「漆黒のヴィランズ」や「暁月のフィナーレ」を作っている時も怖いんですよ。ただ僕たちは思い切って「どうだいこれは!」と言うことしかできないので。それは今までもずっと続けてきたし、これからも変わりません。

とはいえ、パッチ6.1の途中くらいからは「は?」という感じになると思います。ますますパッチ7.0のイメージが分からなくなると思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。

――ありがとうございました。

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