ガンホー・オンライン・エンターテイメントがサービスを行うPC向けMMORPG「ラグナロクオンライン」(RO)。2023年12月に正式サービスが21周年を迎えた本作について、運営チームの中村聡伸氏、山本兼寛氏のインタビューを掲載する。
スタッフ陣が振り返る2023年の「ラグナロクオンライン」
――本日はよろしくお願い致します。まずは、2023年の「RO」についての振り返りからお話を伺えればと思います。
中村氏:まず通常ワールドの実装物に関しては、ギリギリにはなりましたが2023年内とお約束していたものについては入れることができました。
――昨年インタビューでお聞きした時と、実装時期が結構ズレましたね。
中村氏:そうですね……。一番変わったのは拡張4次職が夏くらいと言っていたのが、アニバーサリーと同時期となってしまったことでしょうか。やはりスキルの調整とか、不具合の修正の作業に時間が取られてしまったのですが、実装自体には大きな問題はなく、多くの方に遊んでいただけているという状況です。
「幻想叢書」については比較的早いタイミングで実装でき、現在は7つが遊べる状態になっています。
――日本では、人気投票で1位になった教皇から実装された形でしたね。
中村氏:そうですね。7月の「虹の終わりの向こうの大冒険」を皮切りに、順次実装していくことができました。
「幻想叢書」自体は、BaseLv180以降のレベル上げ用のコンテンツとしても使えるようにしております。7つ全部をプレイすると、1日ごとにレベルアップに必要な経験値の55%を稼げるので、ストーリーを楽しんでいただいた後は、経験値稼ぎに活用していただくのが良いかなと。中には5分くらいで終わるものもあるので、幻想叢書だけ軽く遊んでレベル上げをするとか、自分の生活スタイルにあわせた遊び方をされている方もおられますね。
それ以外にも、ストーリーのアップデートとしてEPISODE:ISGARD~説話の地~(以下、説話の地)をだいたい予告通りの9月頃の時期に実装できました。新しいアイテムを手に入れられることもあり、多くの方に楽しんでいただいております。
――拡張4次職の実装にあわせて、BaseLvの上限も上がりました。
中村氏:ええ。BaseLvの上限を250、JobLvの上限を50まで拡張しました。BaseLv250になると入れるメモリアルダンジョン「星座の塔」も実装しています。レベル上げをやりきった方向けのエンドコンテンツ的な位置づけですね。塔の頂上では、新たに登場するイケメン支配者「ベテルギウス」が冒険者を待ち受けています。
12月19日には、BaseLv240から入れる新ダンジョン「アルデバラン時計塔地下 未知の空間」も実装し、「星座の塔」の前段階のレベル上げに使っていただけるものとなっています。
――ゲームのアップデートだけではなく、キャンペーンも活発にやられていましたね。反響が大きかったものはありますか?
中村氏:X(旧Twitter)で、やっていた中でとくに受けが良かったのは、ポリンの焼き印がつくホットサンドメーカーですね。あとは中にかき氷機を入れるとポリンの顔になるグラスも好評でした。
21周年のアニバーサリーを記念したものとしては、ゴージャスアプデ祭りというものも実施しまして、黄金蟲が描かれたオリジナルデザインのAmazonギフトカードが当たるキャンペーンも実施し、1年を通して結構賑やかな感じだったと思います。
――確かに、面白いグッズが多いですね。これはファンには嬉しい。
中村氏:あとは、動画や生放送で配信されている方も結構多くなっていた印象だったので、そういう方に向けた高級マイクのプレゼントや、パッケージの特典としてVTuber用モデルを収録しており、そちらもご好評をいただいています。やはり我々としても、プレイヤーの方々の動画配信を一緒に盛り上げることができればなと思っています。
ファン活動のサポートというところでは、ファンサイト用のキットを大幅に更新しました。1500点以上の公式イラストを全部ダウンロードでき、著作権のガイドラインさえ沿っていただければ自由に利用できるというものでして、ブログであったり動画の素材であったりに使っていただればなと。
各職業からモンスター、NPCに背景といろいろありまして、これまで公式イラストレーターの雄一郎さんに描いていただいたものはほとんど網羅していると思います。キャラクターは透過処理なども済ませたものになっているので、すぐ素材としてご利用いただけます。
Yggdrasillワールドでは2023年内に間に合わなかったコンテンツを最優先に実装
――2024年の「RO」のロードマップについて教えてください。
中村氏:まず拡張4次職が入ったことによって、現在転職できる最上位の職業のレベル帯については、BaseLv250、JobLv50で横並びになりました。拡張4次職の前は、職業によってはレベル上限が200とかのものもあり、皆で一緒に遊ぶのが難しい状況だったのを、ようやく改善することができました。
そこで生きてくるのがYggdrasillワールドの存在です。そちらのコンテンツについてのお話は、山本の方からさせていただければと思います。
山本氏:先程中村の方から、予定していたコンテンツについてはすべて実装できたという話があったのですが、Yggdrasillワールドに限っていうと、半分くらいしか実装できていないというのが現状です。そのため、2024年は2023年に告知して、実装しきれなかったものを重点的に実装してきたいと思っています。
まず全体として、現状YggdrasillワールドはBaseLv220のJobLvが40となっていますが、すでに拡張4次職も使えるようになっています。1月末頃には、BaseLv上限を240、JobLvを45まで引き上げるアップデートも実施予定です。
それでもまだ通常ワールドと比べると上限が低いですが、レベル上限が上がるとYggdrasillワールド独自の対人コンテンツへの影響が大きいこともあって、一旦はBaseLv240、JobLv45を上限とさせていただければと思っています。
その上で、1月末には対人戦の大会であるRJS(RagnarokOnline Japan Siege wars)2024の1回目を開催予定です。なのでユーザーの皆様には、それまでレベル上げを頑張っていただき、大会にもご参加いただけると嬉しいなと。
――BaseLvをさらに上げる予定はあるのでしょうか?
山本氏:はい、RJSが終わった後、だいたい5月頃にBaseLv250、JobLv50への上限解放を行う予定です。2回目以降の大会は、そちらの上限にあわせたレギュレーションになると思います。
また、PvP関連の未実装コンテンツとして、5vs5で行う「バトルコロッセオ」というものもありまして、本来はこちらのテスト再開も2023年内を予定しておりました。これほどお待たせするつもりはなかったのですが、前提として拡張4次職が入ってからじゃないとテストが難しかった事情もありまして、最優先で取り組む予定です。
――昨年のインタビューでもお話いただいた、装備をレンタルして行うPvPコンテンツですね。
山本氏:はい。5対5のPvP、4次職・拡張4次職が使えて、装備やアイテムはレンタルするといった基本的な仕組みは維持しつつ、一度4次職・拡張4次職のバランスをテストしたいという所もありますので、まずは少しミニマムな形のテストからになると思います。
というのも、「RO」ってアイテムの種類も凄まじい量があるので、それぞれのレンタルコストを決めるのがすごく大変でして……。まずは絶対に必要だろうと思われるアイテムを優先した、最低限のキットから始める形式を考えています。
ユーザーの皆様には大変申し訳ないのですが、足りないものがあったらその都度ご要望をいただければ、できる限り対応したいなと。何らかの判断の上で入れていないということも勿論ありますが、我々が見落としている可能性もございますので、いろいろなご意見をいただけると大変助かります。
――コロッセオのテストは、いつ頃の時期になりそうですか?
山本氏:3月頃を想定しております。RJSが終わったらコロッセオ、その後にレベル上限が解放されて2回目のRJSといった流れでいければなと。
――コロッセオのBaseLvは、どのくらいになるのでしょうか。
山本氏:コロッセオについては、専用のキャラクターを使って対戦する形式ですので、その時々の状況にあわせた値にしたいと考えています。
職業は4次職と拡張4次職を使えるようにするつもりですが、通常の戦闘よりも人数が少ないので、レベルを高くしすぎるといつまで経っても勝敗がつかなかったり、逆に一瞬で終わってしまう可能性があります。とはいえ、低すぎると使いたいスキルがなかったりもするので、状況を見て決めていければなと。
その前提の上で、まだ決めてはいませんが、BaseLv240・JobLv40くらいの、普段戦い慣れているくらいのレベル帯を想定してはいます。
――PvEのコンテンツについてはいかがでしょうか。
山本氏:2023年には3つのコンテンツを入れようと思っていたのですが、実際に実装できたのは「蜃気楼の塔YE」、「ティアマト攻城戦YE」の2種類になります。とくに「蜃気楼の塔YE」については、拡張4次職を対象としたため実装時期も遅くなってしまい、大変申し訳なく思っております。
実装できたものの内、「ティアマト攻城戦YE」については問題ないのですが、「蜃気楼の塔YE」に関しては、PvEにおける最難関コンテンツという位置づけということもあってか、想定よりも遊ばれていないというのが現状です。2024年は、こちらのフォローもしていきたいと考えております。
――具体的にはどういった?
山本氏:何度も戦闘不能になり、覚えながら進むという部分は変えないのですが、戦闘不能になってもその場で復活でき、続けて参加できるとかですね。現状の「蜃気楼の塔YE」は、戦闘不能になると即ダンジョンから追い出されてしまうので、ある程度先が見られるようなイベントを用意しようかなと。
もちろん、我々もギリギリのところを狙って難しくはしているのですが、難しさの中でも気持ちいい難しさと、諦めてしまう難しさがあると思っていて。諦めてしまうような難しさになるのは望ましくないというところです。
とくにExtraは、レベル99までしか参加できないという縛りもあり、ご参加いただけているユーザー様が想定より少なくなってしまっているので、そのあたりをイベントでフォローできればと思っています。
――実装が間に合わなかったものは、モンスターハウスでしょうか。
山本氏:ええ。「モンスターハウスYE」については、6月頃の実装を予定しております。
モンスターハウス自体は、10年くらい前から通常ワールドで実装されているんですが、コンテンツ自体がかなり古くなってしまっているので、それをベースに最新化したものとなります。
最新化するにあたって、古くなって使えなくなっているものもいっぱいあるので、一つのマップの中に大量のモンスターが湧き、皆でそれを倒すという大本の部分は守りつつ、いくつかのルールを現代版に改修する形になると思います。難易度的には、「ティアマト攻城戦YE」と「蜃気楼の塔YE」の間くらいにしたいなと。
――現状のモンスターハウスは、サーバーの負荷が大きいため通常ワールドからは撤去されるというお話もありました。
山本氏:はい、その予定です。今でも遊んでいただいている方には申し訳ないのですが、モンスターハウスがあることで、メモリアルダンジョンの生成時間が長くなってしまうとか、いろいろな弊害がありまして……。
コンテンツとしては結構面白いのも確かなので、早めにYggdrasill側にもっていきたいのですが、YggdrasillはYggdrasillで、先程ご説明したティアマト攻城戦とか蜃気楼の塔とか大規模コンテンツが既にあるので、そのままの形で入れると負荷が重なってサーバーが重くなりすぎる部分もあるんですね。
改修を加えるのはそのあたりの事情もありまして、現在遊んでいただいている方々には重ね重ね申し訳ないのですが、ご了承いただけるとありがたいです。
――確かに、お話を聞く限りでもなかなか実装が難しそうな印象を受けます。他に予定されているものはありますか?
山本氏:これも去年お話だけはさせていただいていたものですが、Yggdrasillワールドのオリジナルコンテンツとなる「不夜城」も2024年内に実装したいと考えています。モンスターハウスの方が優先順位は高いので、まだ結構先の話にはなるのですが、一応並行して実装のための準備は進めている状態です。
「不夜城」には「金・力・運」の3つのコンセプトがあり、参加にはお金で買ったり、モンスターを倒してもらえたり、ランダムでもらえたりするアイテムのいずれかが必要になるという部分は変わっていません。今はその先のネタを考えたりしている状態で、「RO」全体から集められるようなコンテンツにしたいと考えています。
――全体……ですか。ちょっとピンと来ないのですが、例えばどのような?
山本氏:例えば、普段からいろんなアイテムを集めているプレイヤーさんがいたとしたら、実は今まで集めてきた何気ないアイテムが、不夜城ですごく役に立ったり、攻略に役立つアイテムを報酬としてくれるNPCを実装と同時に通常ワールドに配置して、それを探してもらったり。Yggdrasillワールドなら蜃気楼の塔を攻略していたら良いことがあったり、いろんなコンテンツから必要なアイテムを集めて不夜城を攻略するようなイメージですね。
――かなり壮大なコンテンツになりそうですね。
山本氏:そうですね。ただ、そういったコンテンツにする以上は、その前に少しずつネタを仕込んでいく必要がありますし、しばらくお時間をいただきたいなと。
目標としては、今年のアニバーサリーにあわせられれば……と思ってはいるのですが、去年お約束したものを実装できなかった現状がありますので、なかなか難しいかもしれないというのが正直なところです。
というのも、「RO」は今年もシステムアップデートをどんどんやっていくことになると思うのですが、Yggdrasill限定の新コンテンツより、現在遊んでいだだいているユーザーの方々の利便性の向上を優先した方がいい状況も起こり得ます。ただ、アニバーサリーのタイミングで大型のエンドコンテンツが入り、大勢の方にプレイして盛り上がっていただくのが理想なのは間違いないので、全力は尽くしたいなと。
今回のインタビューでも、2024年の6月以降に実装するYggdrasillの新コンテンツのお話はしていないかと思いますが、アニバーサリーに向けて不夜城の作業を予定しているためです。
――2024年の後半は、「不夜城」がアップデートの目玉となりそうですね。
山本氏:そうできるよう善処します(笑)。Yggdrasillワールド自体が、通常ワールドでできないことをやろうというコンセプトで作られていて、「不夜城」はまさにYggdrasillワールドしか体験できないコンテンツになると思いますので、とにかく頑張りたいです。
モンスターハウスも、ここ5年くらい言い続けて実装できていないので、口にするのが怖い部分もあるのですが、しっかりと作りたいと思っております。ご期待いただければありがたいです。
新エピソード「EPISODE:ISGARD~死なない者~(仮称)」は2024年秋頃実装予定
――2024年の通常ワールドについても教えていただけるでしょうか。
中村氏:もちろん、通常ワールドのアップデートもございます。色々とやっていきたいことはあるのですが、一番大きなものは、説話の地の次のエピソードになります。すでに「死なない者」という仮のサブタイトルも決定しております。
説話の地のネタバレも含まれているのですが、あらすじとしては、イスガルドの地に封印されているルガンというヨルムンガンドを崇拝している一族がいて、その長であるラスガンドに、冒険者の追跡を逃れてきたイルシオンの研究者であるバゴットが「強くなる方法がある」と言って取り入るんですね。冒険者は彼らを追跡していくのですが、あと1歩のところでバゴットとラスガンドに逃亡されてしまうというのが、イスガルドのストーリーでした。
「死なない者」はその続き、バゴットたちを探すところからスタートします。ただ、大陸中を探してみてもその痕跡が全然見つからず、残るは禁忌の地とされている氷の渓谷のみとなり、その地に足を踏み入れることになるという展開になります。
――説話の地では名前しか出ていなかった、ラスガンドが本格的に登場すると。
中村氏:そうですね。ビジュアルのボスっぽさをみていただけば分かる通り(笑)、今回は敵対するキャラクターとして登場します。
あと、「死なない者」には新しいNPCも登場するんですが、この見た目が結構変わっていまして……。
――これは……確かにインパクトがあるビジュアルの猫ですね。ネットで似たような画像見たこともありますけど(笑)。
中村氏:この猫の正体については、今のところは伏せさせていただきたいのですが、ヒントとしては長い胴体をもつ、封印されていた何かに関わってくるのかな、という。
イスガルド編の続きとなりますので、イスガルドに行く時に同行してくれた仲間たちも引き続き冒険に加わってくれます。彼らと一緒にラスガンドたちを追いかけて、その野望を阻止するというのがストーリー的な目的になります。
――必要レベルについてはどのくらいを想定していますか?
中村氏:説話の地の時点で必要なBaseLvが220、4次職か拡張4次職というのが前提でしたので、同じかもう少し上のレベルが条件になってくると思います。
一応現状は、BaseLv240を想定していますが、実際にはそのタイミングでの皆さんの状況にあわせることになるかと思います。実装時期としては秋頃を予定しております。
――エピソード以外のアップデートも予定していますか?
中村氏:韓国の方でインターフェースの更新などの利便性を向上させるアップデートをいくつかやっているので、それを日本でも導入できるタイミングで入れていきたいなと。DirectX9への対応だったり、細かい部分を随時やっていく形になるかとは思います。
――UIの変更について、具体的に教えていただくことはできますか?
中村氏:入れられればになりますが、アイテムの整列機能や取引の際のzenyの桁数が色別でわかりやすくなる表示などですね。
「RO」はやっぱり20年前のゲームなので、そのあたりの演出が地味なものが多いんです。動画や生放送で配信いただくことを考えると、もう少し見栄えはよくなっていた方がいいだろうなと思っていて。
昔と比べると、戦闘シーンのエフェクトとかも大分派手にはなったんですが、まだまだできることはあると思いますし、実際既に韓国でアップデートされている要素もいくつかありますからね。
――確かに、文字だけの演出だと配信を見ている人にはぱっと見では分かり辛いですしね。
中村氏:あとは、開発元のGravity社の方で告知されていることでもあるのですが、4次職のキャラクターがそれ以外の職業の外見に変更する機能も実装予定です。例えば、ルーンナイトの上級職がドラゴンナイトになるのですが、性能的にはドラゴンナイトだけど見た目はルーンナイトの格好で冒険できるようになります。
――それはかなりプレイヤーにとって嬉しいですよね。見た目が好きでも性能的に変えざるをえないことは少なくなかったでしょうし。
中村氏:そうですね。長年同じ職業でプレイしていて、転職したけど前の姿に戻したいという方は結構いらっしゃるので。韓国の方ではすでに一部が実装されているのですが、日本でも2024年中には入れたいなと。
そのアップデートにあわせて、「エクストラカラー」のバリエーション追加も実装できればと思っています。今まで3次職までのキャラクターはデフォルトカラーの1色とエクストラカラーの2色、合計3色しかなかったのですが、これが7色のカラーバリエーションの中から選べるようになります。こちらもユーザーの皆様に喜んでいただけるのではないかと思います。
※開発途中のため、内容は変更される可能性があります。
――アバターのバリエーションが増えるのは間違いなく喜ばれますよね。
中村氏:アップデート以外にも、イベントも結構充実しているゲームでして、日本では季節イベントを毎月やっております。2月はバレンタイン、4月は精錬祭、夏にはブートキャンプといったイベントを開催しており、定番イベントは2024年も引き続いて実施予定です。
その合間を縫って「深淵の回廊」と呼ばれるイベントもやりたいと考えています。「深淵の回廊」は、かなり昔から続いている高難易度コンテンツでして、開催する度に新要素を追加していました。
この「深淵の回廊」に登場するグローザというキャラクターがいるんですが、実装当時は本当にごく一部の人しかクリアできなかったのが、現在は全プレイヤーの5~7割くらいがクリアできるようになっています。
――当時と比べると、かなり装備やスキルも充実しているでしょうしね。
中村氏:今回新しく登場するのは、全盛期の若い頃のグローザと女王ジラントです。初回実装時にどちらも戦えるかまでは決まってないのですが、おそらく女王ジラントの方が先になるかなと。
「深淵の回廊」自体、レベル上げに使えたり、特定のエンチャントができる装備が入手できたりするのもあり、かなり人気の高いイベントでもあるので、4次職・拡張4次職用の新要素を引っ提げてまた開催したいと思っています。
あとはもう一つ、2020年に「ラグコレ」というオシャレをテーマにしたイベントを開催したんです。このイベントのサブ要素として、おしゃれバトルというのがありまして、キャラクターが身につけている衣装や装備に評価点がついて、そのまま戦闘力になって、コマンド形式でバトルするんです。
まだタイトルは仮なんですが、そのおしゃれバトルを新しくした「コーデバトル」というイベントを実施できないかと検討しています。当然コーデバトルでも、衣装に評価点がついて戦闘力になるんですが、現状の「RO」に実装されている衣装・装備って、2200種類を越えているんですよ。
――それは……一つ一つにポイント設定するとなると、かなり大変ですね。
中村氏:はい。ですがその分、十人十色どころじゃない膨大なオリジナルコーデを楽しめます。有料で売っているものもありますが、無料で手に入る衣装と装備、イベントで配っているものとかもたっぷりとあるので、そのあたりも活用してコーデを楽しんでもらえればなと。
世界のいろんな場所には、コーデバトルをしたがっているNPCを配置して、対戦して勝利すれば称号などの報酬が獲得できるような流れを考えています。
――どれくらいの規模になるんでしょうか。
中村氏:配置するNPCの数は100以上を予定しています。ハロウィンの時のランタンハントというイベントでは600個くらいランタンを置いたので、それに比べると少ないんですけど。
その分、過去のイベントやエピソードに出てきたキャラクターをおしゃれな姿で再登場させたり、配置するNPCにはこだわりたいなと。全員見た目を変えられるわけではないですが、「こんなキャラいたなぁ」「こいついつも見てるな」みたいな21年の振り返り的な楽しみも含めたイベントにできたらなと考えております。
――めちゃくちゃ盛りだくさんで、期間限定イベントにするのは勿体なさそうなくらいですね。
中村氏:規模の大きい期間限定イベントというのは結構定期的に開催してまして、とくに大きいのが6月にやるメロンフェスタですね。
色々なアイテムが作れるイベントなんですが、衣装とか装備が大量にあって、一回の開催期間中に全部作るのってかなり難しいんですよ。その分、定期的に開催して、漏れた分のアイテムは次回以降でも作れる形にしているんです。コーデバトルについても、次回の開催も含めてトータル的に積み上げていく形もアリなのかなと。
もちろん、理論上は1回でやり尽くすこともできるようにするのは前提で、最近の動向を見ながらの判断にはなりますが、定期的に開催されるイベントとして、長いスパンで楽しんでいただけるような方向性を考えていますね。
他のイベントでも、毎年こういうことをやっているから、事前に有給とったりキャラクターの準備をしたり、生活の一部みたいな感じで楽しんでいただけている部分もありますので。
――かなりイベントの方も目白押しとなりそうですね。
中村氏:そうですね。そういった新しいチャレンジもしつつ、BaseLv250対象の高レベル向けバトルコンテンツも入れていきます。
一応、レベルキャップについても、2024年内にはBaseLvを260上限まで上げたいですね。新エピソードを入れる前あたりの時期にできればと考えております。
拡張4次職ではスピリッドハンドラーが圧倒的な人気
――少し2023年の振り返りに戻りますが、拡張4次職についての反響はいかがでしたか?
中村氏:ありがたいことに問題もほぼ出ておらず、多くのユーザーの皆様に楽しんでいただけております。具体的な人数までは出していないんですけど、実装の当日には結構な割合の方々が、拡張4次職の転職試験にチャレンジされていました。
同時にBaseLvも250まであげましたが、中には一週間経つか経たないかくらいで上限まで上げられている方もおられましたね。元々、250までのハードルは低めにしていたのもありますが、予想より早いペースでレベルを上げ終わった方も多かったです。
――とくに人気の高い職業はありますか?
中村氏:もうダントツでスピリットハンドラーです。元々、ほとんどの方が一人はもっているくらいサモナーの所有率が高いのもあるんですけど。2位のソウルアセティックの4倍くらい差があります。
サモナー自体が転生がいらない職業で、純粋にレベルだけ上げていればスピリットハンドラーになれるというお手軽さも影響しているのかなと思います。キャラクターとしての人気の高さもありますが。
――拡張4次職のお試し的な形でも選ばれていると。
中村氏:元々、サモナー以外の職業が上位特殊職というちょっと変わった職業なのもあって、こだわりが強い方が多いんです。4次職がきても、ずっとリベリオンやスーパーノービスを使い続けられていたり。もちろんライト層の方もいるんですけど、スピリットハンドラー以外の職業を作られている方はとくに濃いというか、熱心に情報発信をされている方が多い印象があります。
――対戦ゲームで、ややマイナーなキャラの使い手が「職人」と呼ばれたりしますが、そんなイメージですよね。
中村氏:本当にそうですね。装備1つ1つもこだわるし、 ステータスも何度も振り直してみたり、熱心な方が多いです。その分、何かあった時に色々とご意見もいただいたくこともあるのですが、すごく楽しんでいただけているのが伝わってくるのがありはたいですね。
――少し前には、「RO」公式コスプレイヤーのよきゅーんさんが「ビデオゲームの公式コスプレイヤーを務めた最長期間(女性)」のギネス記録を習得されたこともニュースになりました。
中村氏:あれについては、まずよきゅーんさんの方からギネスの申請をしたいという相談が来たんです。それで20年間の公式コスプレイヤーの活動を証明する書類であったり、各メディアさんに相談し、当時の記事のURLを集めていただいたり、我々も申請にご協力させていただきました。
この記録は当然ゲーム自体が20年続いていないと成り立たないので、長く運営できて良かったという想いもありつつ、よきゅーんさん自身がものすごい努力をされている方で、非常に「RO」を愛していただけているので、我々としてもすごくありがたいお話でした。
――昨年のインタビューでは、日本の運営が関与できる範囲が以前より広くなっているというお話もありました。現在は開発的な業務も担う中で、今まで見えていなかった大変さに気づいた部分もありましたか?
中村氏:そこについては、常時見えているかなと思いますね(笑)。
山本氏:元々、国ごとの考え方だったり、開発元としての立場の想いという違いはあって、そこのすり合わせというのは常にやっていましたから。いろいろ権限をいただいているとはいえ、最終的には開発元と相談して決めますし、今は昔より提案できる回数が増えたというのが正しいかもしれませんね。
中村氏:事前に「こういう部分は守ってくださいね」というのは当然いただいていて、例えば本来のストーリーを捻じ曲げたりみたいなのは当然NGです。一方で、「日本のプレイヤーさんのレベル帯がこのあたりだから、配置するモンスターの強さはこれくらいにしよう」といった部分は、我々の側で決められるようになりました。
――そのあたりの裁量権があるのは大きいですよね。
中村氏:そうですね。やっぱり何かあった時、すぐこちらで再調整ができるようになったのは大きいと思います。前は少しでも変える時は開発の承諾をもらう必要があって、結構反映できるまで時間が掛かったんですが、そのあたりもシームレスになりましたから。
山本氏:全世界で運営されるタイトルなので、世界的には正しくても日本には合わない……みたいなケースも結構あって。そういう時にお互いの意見の違いみたいなのが発生してたんです。裁量権をいただけたことで、そのあたりが緩和されたのはやりやすくなった点ですね。ちょっとスキルがおかしいという時も、開発に伝えるまでのプロセスが省略されて、スピード感も前に比べればかなり早くなったと思います。
中村氏:少し裁量権とは別の話になるんですけど、コミュニケーションツールなどが進化したおかげで、純粋な意思疎通のスピードが早くなったのもありますね。今は不具合を見つけた時、動画をチャットツールですぐ共有できるんですけど、昔は動画をアップロードしてURLを貼ってという、地味に手間が掛かっていましたから。
山本氏:20年前を思い出していただくとなんとなく分かると思いますが、オンラインチャット用のツールも今使っているものとは全然違いますしね。メッセンジャー的なツールも今ほど一般的ではなかったので、そもそも会社として使っていいのかという問題もあって。オンライン通話ですらなく、普通の電話でやりとりしていたことを考えると、環境の変化がプラスになっている部分は結構あるなと感じています。
――MMORPGだと、開発と運営が分かれているケースは結構あると思うですが、「RO」くらい運営側に裁量権があるタイトルって珍しいんでしょうか。
中村氏:珍しい方になるとは思います。やっぱり翻訳だけして提供するのが一般的ですから。
スマホ向けだと、最初からグローバルを前提に言語だけを切り替えるタイトルも多くなってきていますけど、我々は単なるローカライズではなく、カルチャライズを重視してやっているので、そういったタイトルとは根本的な考え方が違っています。
山本氏:国ごとにここまで違いがあるゲームというのも、とくに最近はなかなかないんじゃないかと思いますね。もちろん、「RO」として守らなければいけない大本のルールがあった上ですが、そこにどう肉付けするかの部分を任せていただいているので。イベントの中身とかも、各国ごとに結構違ったりするんです。
中村氏:国によっては、開発元が直接運営しているところもあるのですが、日本に関しては我々に任せていただいている状況ですね。
――そのあたりの信頼関係が築けているのは、21年という時間の積み重ねがあってこそですよね。
中村氏:そうですね。21年……私自身もずっと関わっていたわけではないんですけど、ガンホーに来たのが2008年頃なので、だいたい15、16年くらいになるでしょうか。単一タイトルをここまで長くやっている人間は、なかなかいないかもしれませんね(笑)。
――最後に、「RO」の22年目にむけての意気込みをお願いします。
中村氏:21周年を迎えたとは言っても、色々できること、やりたいこともたくさんありますし、今も開発元が新しい開発をどんどんやってくれています。これからも、まだまだ広がっていく「RO」の世界を皆さんにご提供できるかなと思っておりますので、2024年も引き続き期待して楽しんでいただければと思います。
――ありがとうございました。
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